ラテン語の格変化

ラテン語の格変化(declension)とは、ラテン語の文法において、単語の語尾を変化させて文法上のを示す手続きである。「格変化」するのは名詞代名詞形容詞である(動詞の語形変化は「活用<conjugation>」と呼ぶ)。 ラテン語の格変化には5つの種類があり、語尾と文法上の性に応じて格変化番号を振ってグループ分けされる。 一般的には第1格変化、第2格変化、第3格変化、第4格変化、第5格変化の5つである(ローマ数字のI, II, III, IV, Vで数える場合もある)。全ての名詞がこのどれかのパターンに従って格変化する。不規則の格変化も若干存在する。

形容詞の格変化は2つのグループに分かれる。 一つはbonus, bona, bonum (「良い」)のグループで、第1格変化(女性)と第2格変化(男性・中性)になる。 もう一つはceler, celeris, celere (「速い」)のグループで、第3格変化になる。 形容詞には第4格変化と第5格変化はない。

代名詞も2つのグループに分かれる。 一つはego (私)、 (君)などの1人称と2人称の人称代名詞で、格変化は不規則になる。 もう一つはhic (これ)、ille (あれ)などの3人称の代名詞で、第1格変化と第2格変化になるが、単数属格では-ī/-aeではなく-īus/-iusとなる点に注意を要する。

数詞(基数)では、ūnus (1), duo (2), trēs (3)はそれぞれの不規則な格変化がある(ūnusの属格は代名詞のように-īusとなる、など)。

※ラテン語の格変化について、基本的な概略についてはラテン語の文法#名詞を参照。

文法上の格編集

ラテン語の名詞には7つの格がある。主格(nominative, Nom)、属格(genitive, Gen)、与格(dative, Dat)、対格(accusative, Acc)、奪格(ablative, Abl)、呼格(vocative, Voc)、地格(locative, Loc)。 このうち、地格を持つのは町の名前、小さい島、その他のわずかな単語に限られる。

格の意味と機能編集

主格編集

主格は文の主語や主語の属性を表す。

Augustus imperātor Imperiī Rōmānī fuit.
アウグストゥスはローマ帝国の皇帝だった」。
Urbs Rōma caput mundī vōcātur.
ローマの町は世界のと呼ばれている」。

属格編集

属格は所有者を表す。

  • 所有の属格(possessive genitive): 所有者を表す。
castra hostium or hostium castra
敵の陣営」

その他の用法は次の通り。

  • 主語の属格(subjective genitive): 属格で主語(動作者)、名詞で動作(動詞)を表す関係を作る。
Caesaris mors
カエサルの死」(「カエサルが死んだ」では「主語+動詞」の関係になるが、それを「属格+名詞」で表している)
  • 目的語の属格(objective genitive): 属格で目的語(動作の対象)、名詞で動作(動詞)を表す関係を作る。
rēctor deum
神々の支配者」(「神々を支配する」では「目的語+動詞」の関係になるが、それを「名詞+属格」で表している)
  • 部分の属格(partitive genitive): 属格で表された事物の一部分であることを表す。
pars Galliae
ガリアの一部」
  • 定義の属格(genitive of definition): 属格で名詞を定義する。
virtūs iūstitiae
正義という美徳」
  • 描写の属格(descriptive genitive): 事物や人物の性質を描写する。
vir magnī ingeniī
大きな才能を持つ男性」
  • 価値の属格(genitive of price): 事物の価値・価格を表す。
quantī ēmit?
「彼はそれをいくらで買ったのか?」


以下は、動詞・形容詞とともに用いる属格である。

  • 記憶に関係する動詞(「忘れる」「記憶している」など)
Dominus oblītus est meī.
「神は私のことを忘れてしまった」。
  • potior, vescor, opus estなどの動詞(「所有する」「食べる」「必要だ」)
totīus Galliae sēsē potīrī posse sperant
「彼らはガリア全土を獲得できることを望んでいる」。
  • 「満たす」の意味の動詞、「満ちている」の意味の形容詞
hic saccus plēnus est pirōrum.
「このバッグは梨でいっぱいだ」。
  • 「恥じる」「飽きる」の意味の動詞
Taedet mē huius quotīdiānī mundī
「私はこの日常世界に飽き飽きしている」。
  • 「告発する」など、法的な手続きの動詞
patrem accusāvit adulteriī occultī
「彼は父を姦淫の罪で告発した」。



与格編集

与格は間接目的語を表す。

Pater puerō librum dōnat
「父は子に本を与える」[1]


その他の用法は次の通り。

  • 与格支配の動詞・形容詞の目的語(verbal regime dative): 与格を要求する「服従する」「似合う」「似ている」などの動詞・形容詞の目的語となる。
Quam similis sōli est, Naevia, noster amor!
「おお、ナエヴィアよ、私たちの愛は何と太陽に似ていることか!」
  • 所有の与格(possessive dative): 名詞の与格で所有・帰属を表す場合がある。
Caesarī multī inimīcī erant.
カエサルには多くの敵がいた」。
  • 目的の与格(purpose dative): 行為の目的を表す。
Non omnes mīlitēs glōriae pugnant.
「全ての兵士が栄光のために戦うわけではない」。
  • 重複の与格(double dative): 一つの与格形で所有の与格と目的の与格が同時に表される。
Ipsum bellum est mihi cūrae
「この戦争は私にとっては重大な関心事だ」。
  • 起点の与格(origin dative): 起点や視点を表す。
Vir bonus regī vidētur.
「この男は王からは善人に見える」。
  • 行為者の与格: ゲルンディウム(動詞の受動未来分詞、-ndus, -nda, -ndum形)とともに用いて動作の行為者を表す。
Haec nōbīs agenda sunt
「これらのことは私たちがしなければならない」(文字通りには「これらのことは私たちによってなされなければならない」)。
  • 利益の与格(beneficial dative): 動作が誰のために行われるかを表す。
Graecīs terrās colimus
「私たちは土地をギリシャ人たちのために耕作する」。
  • 心性の与格(ethical dative): 行為に関わる人物を強調する。感情的な意味合いが強い。
Quid mihi Celsus agit?
「ケルススは私のために何をしてくれるのか?」(「私」はケルススの行動に対して特別な感情を抱いている)



対格編集

対格は他動詞の直接目的語を表す。

Scīpiōnis Āfricānī exercitus incurret hostem.
「スキピオ・アフリカヌスの軍勢は敵を攻撃する」。



その他の用法は次の通り。

  • 程度の対格(accusative of extent): 動作が行われている時間の長さを表す。
trecentōs annōs Rōmanī tōtum Mare Mediterrāneum imperāvērunt.
「ローマ人は地中海全体を300年間、支配した」。
  • 方向の対格(accusative of direction): 運動が向かう方向を表す。通常、前置詞のin (ある場所へ入っていく) かad (ある場所へ向かう)とともに用いるが、町の名前や小さな島では前置詞は使われない。
Rōmam rediit
「彼はローマへ戻った」。
Lēgātus in Hispāniam missus est
「レガトゥスはヒスパニアへと派遣された」。
Mīlitēs ad oppīdum appropinquant
「兵士たちは要塞へ立ち向かう」。
  • 従属節の不定詞文で(in infinitive completive sentences): 従属節では、主語は対格をとり、動詞は不定詞となる。「言う」や「のように見える」などの動詞の従属節によく見られる用法。
Dīcō priōre nocte vēnisse in M. Laecae domum
「私は、君が前夜、マルクス・ラエカの家へ来た、と言っているのだ」(Dīcōに導かれた一種の間接話法で、tēが主語を対格で表し、vēnisseが完了の不定詞となっている)
  • 対格支配の前置詞とともに(with certain prepositions):[2]
Fretum Gādītānum partem maris inter Hispāniam et Āfricam est
「ジブラルタル海峡はヒスパニアとアフリカの間の海の一部である」。
  • 従属節の主語・述語文で(as a predicative clause of the direct clause): 従属節の主語・述語ともに対格となる。
Pauperēs existimant dīvitēs fēlīcēs
「貧しい人々は金持ちは幸せだと思っている」[3]
  • 感嘆表現の対格:
Mē miseram!
哀れな私よ!」



奪格編集

奪格はラテン語の格のうちで最も使用範囲が広く、柔軟性の高い格である。 奪格は、インド・ヨーロッパ祖語に存在したとされる離格(separative)、具格(instrumental)、地格(locative)の3つの格が合流して一つになったものである。


  • 場所の奪格(place ablative): 行為がどこから始まったか、どこで行われたかを表す(注意:対格は、行為がどこへ向かって行われるかを表す)
Hannibal, fīlius Hamilcaris, Carthāgine nātus est.
「ハミルカルの息子、ハンニバルはカルタゴで生まれた」。
Ex Graeciā ad Ītaliam nāvigāvērunt.
「彼らはギリシャからイタリアへ航海した」。
  • 分離の奪格(separation ablative): 物理的に分離する(分離させる)ことを表す。
Cicerō hostēs ab urbe prohibuit.
「キケロは(敵の)軍勢を町から遠ざけた」。
  • 道具の奪格(instrumental ablative): 行為が行われる手段・道具を表す。
Mārcus pēde vexābat Corneliam quae dormīre volebat.
「マルクスは、眠りたがっているコルネリアを足で邪魔した」。
  • 方法の奪格(manner ablative): 行為がどのように行われるかを表す。
Allobroges crebris ad Rhodanum dispositis praesidiīs cum magna cūrā et dīligentiā suōs finās tuentur.
「アロブロゲス族の人々は、ローヌ川に衛兵を配置し、警戒しながら怠りなく彼らの辺境線を防御した」。
  • 時間の奪格(time ablative): 行為が行われる時間を表す。
Nē quis tamen īgnōrāret, quibus in locīs Caesar exercitusque eō tempore fuissent [...]
「カエサルとその軍勢が当時、どこにいたかを誰も知らなかったので[...]」
  • 絶対的奪格(absolute ablative): 行為が行われる状況を表す。
Urbe captā, Aenēas fugit
町が陥落すれば、アエネアスは逃げる」。
  • 同伴の奪格(accompanying ablative): 前置詞cum(英with)を付けて、行為が誰と一緒に行われたかを表す。
Egō et Iūlia cum nostris amīcis de amīcitia dicebamus.
「ユーリアと私は友情について友人たちと話していた」。
  • 抽出の奪格(separation ablative): 全体のうちの幾つか(何人か)を言うとき、全体の母体が何であるか、どの母体から選別・抽出された数であるか、を表す。前置詞ē/ex (英from)を付ける。
Centum ex viris mortem dice timēbant et nihil clementiae exspectābant.
私たちの住民のうち百人は長い間、死を恐れており、誰も温情は期待していなかった」。
  • 行為者の奪格(agent ablative): 受動態の文で行為者を表す(英語の受動態文のby)。行為者が人間の場合には、前置詞ā/ab (英 by)を付ける。
Atticus adoptātus est ā Caeciliō.
「アティクスはカエキリウスに養子に迎えられた」。
Populus mīlitiā atque inopiā urgēbātur.
「人々は軍隊と貧困で圧迫されていた」。
  • 比較の奪格(comparison ablative): 比較の対象相手(英語の比較文のthan以下)が奪格になる。
Vīlius argentum est aurō, virtūtibus aurum.
「銀は金より安く、金は美徳より安い」。
  • 原因の奪格(cause ablative): 行為の原因・理由を表す。
Clāmāre gaudiō coepit.
喜びのあまり、彼は叫び始めた」。
  • 差異の程度の奪格(difference degree ablative): 二つかそれ以上の事物を比較するとき、その相違の程度を表す。
Puella multō prudentior est puerō.
「その少女はその少年よりもずっと分別がある」。
  • 描写の奪格(description ablative): 「描写の属格」に類似している。名詞の性質を表す。
Philosophus magnā sapientiā.
大変賢い哲学者」(文字通りには「大変な賢明さを持つ哲学者」)
  • 特定の奪格(specification ablative): ある事物を説明するときに、話の焦点を絞って限定する。
Corpore senex esse poterit, animō numquam erit.
「彼は肉体は年老いるかもしれないが、精神は決して老いないだろう」。
  • 価値の奪格(price ablative): 「価値の属格」に類似している。事物の価値・価格を表す。
Antōnius rienda addixit pecūniā.
「アントニウスは王冠を金銭で売った」。



呼格編集

呼格は人や物への呼びかけに用いる。英語では語形変化せずにイントネーションの変化や句読点による区切りで表現される。

  • "Mary, are you going to the store?" (メアリー、お店に行くところですか?)
  • "Mary!"(メアリーよ!)


呼格は名詞の主格と同形になるケースがほとんどだが、例外もある。 例えば、第2格変化の男性名詞単数形では、語尾の-usと-iusがそれぞれ-eと-īに変化する。Brutus(ブルータス)はBrute(ブルータスよ!)、Vergilius(ヴェルギリウス)はVergilī(ヴェルギリウスよ!)となる。


ただし、命令法の動詞とともに用いられる場合には-usと-iusのままとすることも可能である。

  • "Venī huc, Brutus"(ここに来い、ブルータス!)
  • "Dīc nōbīs fabulam, Virgilius"(私たちに物語を語ってくれ、ヴェルギリウス!)。


最後に、ギリシャ語に由来する第1格変化の男性名Aenēās(アエネアス)はAenēā(アエネアスよ!)となる。

複数形では呼格は必ず主格と同形になる。

この記事では、単数・複数ともに、主格と呼格が同形となることを前提とし、異なる場合は逐一、説明を付加する[4]




地格編集

地格は行為が行われる場所を表す。初期のラテン語では地格は広範囲に用いられていたが、古典ラテン語期になると、滅多に使われなくなり、町の名前や小さい島の名称、その他の僅かな単語で使われるにすぎなくなった。この言語上の変化もあって、古代ローマ人は、島(ヨーロッパの島々)というのは、シチリア島、サルデーニャ島、コルシカ島、クレタ島、キプロス島、ブリテン島、アイルランド島を除けば全て小さいのだ、と考えるようになった。

地格の機能は奪格に吸収され、合流していった。地格の語尾は、第1・第2格変化の単数では属格と同形になり、第3格変化の単数では与格と同形になった。複数では、第1から第5までの全ての格変化パターンで、奪格と同形になった。第4・第5格変化の地名でも、奪格の語形が地格を兼用するようになった。

ただし、場所を表現するのに、前置詞を用いず、地格のみを用いる名詞も若干存在する。例:bellum → bellī「戦争で」、domus → domī「家で」、rūs → rūrī「農村で」、humus → humī「地上で」、mīlitia → mīlitiae「軍務で、戦場で」、focus → focī「炉端で」「共同体の中心で」。

アルカイック期には、第3格変化名詞の単数地格は、与格・奪格と交換可能だったが、アウグストゥス時代になると、与格の使用が固定化していった。地格は行為が複数の場所で(同時に)行われることを表現できない。複数の地格が文法上、存在するのは、Athēnae(「アテネ」、女性複数主格)のように絶対複数(pluralia tantum、複数の語形で単数の意味を表す)の固有名詞が存在したためである。「彼/彼女/それは家にいる」という文は"Est domī"のように地格を用いて表現できるが、「彼らが彼らの(各々の)家にいる」は不可能で、"Sunt in domibus suī"(「彼らはそれぞれ彼ら自身の家にいる」)と言う必要がある。"Sunt domī"では「彼らは一つの家にいる」(家族・親族・一族として、訪問・来客時など)の意味になってしまうためである。なお、形容詞には地格の語形がない。

地格 説明
単数 複数
第1格変化 Rōmae -ae Athēnīs -īs 単数は属格と同じ。
複数は奪格と同じ。
第2格変化
Corinthī Delphīs
第3格変化 Carthāgine
Carthāginī
-ī, -e Trallibus -ibus 与格・奪格と同じ。
第4格変化 portū
senātī

第5格変化 diē
特殊な名詞 domī
humī
rūrī, rūre
-ī, -e



語形の同化現象編集

語形の同化現象(syncretism)は、複数の格が同じ語尾をとる現象で、ラテン語ではよく見られる現象である。以下に代表的な例を示す。

中性名詞の語形編集

  •  中性名詞は単数・複数ともに主格・対格・呼格が同形になり、複数形では3つとも語尾が-aとなる。この現象はインド・ヨーロッパ祖語から受けつがれた特徴である。語尾が-aとなるのは古代ギリシャ語も同じであり、また、語尾は異なるが、ドイツ語で中性名詞の主格(1格)と対格(4格)が同形(定冠詞das、不定冠詞einなど)になるのも、この系譜に連なるものである。


格の語尾編集

  • 呼格は複数形では全ての名詞で主格に一致する。単数形でも大半の名詞で主格と一致するが、例外は第2格変化で-usで終わる男性名詞と、若干のギリシャ語起源の名詞のみである。後者の例では、第1格変化のAenēāsの呼格がAenēāとなる。
  • 第1・第2・第4格変化の男性・女性名詞(外来語を除く)では、単数属格が複数主格と同形になる。
  • 第1・第5格変化の名詞(外来語を除く)では、単数属格と単数与格が同形になる。
  • 複数では、与格は常に奪格と同形になる。単数では、第3格変化のI型(純正タイプの中性名詞・形容詞)、第4格変化の中性名詞、第2格変化では与格と奪格が同形になる。
  • 複数では、与格・奪格・地格は常に同形になる。
  • 第4・第5格変化では奪格と地格が同形になる。




名詞編集

(これより以下はラテン語の文法#格変化_(declinatio)から転送・編集)


ラテン語の名詞は、性(gender)・数(number)・格(case)によって語形を変える。これを格変化(declension)と呼ぶ。

性とは文法上の性であり、ラテン語の名詞には男性(masculine)・女性(feminine)・中性(neuter)の3つの性がある。

数には単数(singular)と複数(plural)がある。古典ギリシア語の双数(dual)はラテン語にはない。

主格・属格・与格・対角・奪格・呼格・地格の7つの格のうち、呼格はおおむね主格と同形であり、地格についてはこの格を持つ語自体が稀である。従って、通常の名詞の語形変化は、冒頭の5つの格にほぼ限定され、名詞1つにつき、単数・複数で計10の語形に変化するのが大半のパターンである。

格変化はおおよそ規則的であり、パターン化されている。典型的なものは下記の5つ。多く数えても10個程度である。

形容詞も名詞の性・数・格に一致して格変化する。

ラテン語の名詞の格で重要なのは単数主格と単数属格である。単数属格の語尾(-ae, -ī, -is, -ūs, -eī)が分かれば、その名詞がどのタイプの格変化になるか、名詞の語幹がどうなるかは一目瞭然となる。そのため、辞書には通常、この2つが掲載される。

ラテン語の名詞の格変化は5つのタイプに分類される。 第1格変化(A型)、第2格変化(O型)、第3格変化(子音型・I型)、第4格変化(U型)、第5格変化(E型)。


※ 名詞の具体例は wikibooks:ja:ラテン語の文法を参照。


第1格変化(A型)編集

第1格変化は語尾が-aで終わる女性名詞が大部分を占める。 例、via, viae f. (道), aqua, aquae f. (水)。

例外的に男性名詞もわずかながら存在するが、職業に関係する語が多い。 例、poēta, poētae m. (詩人), agricola, agricolae m. (農夫)、nauta, nautae m. (水夫)。

第1格変化表で目立つのはaの音が多いことで、この点から「A型格変化」とも呼ばれる。単数主格(辞書形)と単数属格がそれぞれ-a, -aeとなる。


fēmina, fēminae f.「女性」

単数 複数
主格 -a (fēmina) -ae (fēminae)
属格 -ae (fēminae) -ārum (fēminārum)
与格 -ae (fēminae) -īs (fēminīs)
対格 -am (fēminam) -ās (fēminās)
奪格 (fēminā) -īs (fēminīs)
  • 単複ともに、呼格は主格と、地格は与格と同形である。




ギリシャ式格変化編集

この他、第1格変化にはギリシャ語由来の単語が含まれていて、これには3つの格変化パターンがある。古代ギリシャ語名詞の第1格変化(アルファ格変化)に由来する格変化である。複数の格変化は上記と同じである。

単数で不規則な変化をするのが特徴だが、しばしばラテン語化されることがあり、例えば、athlēta (運動競技の選手)は、ギリシャ語の元の形はathlētēsだったものが、ラテン語化した例である。

なお、アルカイック期のギリシャ語では第1格変化(アルファ格変化)の名詞・形容詞はラテン語と同じ語形をとっていた。例えば、古典ギリシャ語期のnephelēgerétēs Zeus (雲を集める人、ゼウス)は、その数世紀前のアルカイック期にはnephelēgerétaという、語尾に-aをとる語形だった。


Aenēās, Aenēae m.「アエネーアース」(人名。希:Αινειας アイネイアス)

単数 複数
主格 -ās (Aenēās) -ae (Aenēae)
属格 -ae (Aenēae) -ārum (Aenēārum)
与格 -ae (Aenēae) -īs (Aenēīs)
対格 -ām, -ān (Aenēām, Aenēān) -ās (Aenēās)
奪格 (Aenēā) -īs (Aenēīs)
  • 呼格は奪格と同形。


pyritēs, pyritae m.「火打ち石」(希:πυριτης)

単数 複数
主格 -ēs (pyritēs) -ae (pyritae)
属格 -ae (pyritae) -ārum (pyritārum)
与格 -ae (pyritae) -īs (pyritīs)
対格 -ēn (pyritēn) -ās (pyritās)
奪格 -ē, -ā (pyritē, pyritā) -īs (pyritīs)
  • 呼格は奪格と同形。


epitomē, epitomēs f.「要旨」(希:επιτομη)

単数 複数
主格 (epitomē) -ae (epitomae)
属格 -ēs (epitomēs) -ārum (epitomārum)
与格 -ae (epitomae) -īs (epitomīs)
対格 -ēn (epitomēn) -ās (epitomās)
奪格 (epitomē) -īs (epitomīs)
  • 呼格は奪格と同形(この場合、主格とも同形)。




第2格変化(O型)編集

第2格変化の大半を占めるのは男性名詞と中性名詞である。例、男性名詞:equus, equī (馬)、puer, puerī (少年)。中性名詞:castellum, castellī (砦、要塞)。 女性名詞も僅少ながら存在するが、多くは貴石、植物、木、町の名称などである。

通常、単数主格では、語尾が、男性名詞は-us、中性名詞は-umとなる。他に、男性名詞には語尾が-erのものも若干存在するが、この全てに共通するのは、単数属格で語尾が-īとなる点である。 第2格変化表で優勢な音はoであるため、「O型格変化」とも呼ばれる。


equus, equī m.「馬」

単数 複数
主格 -us (equus) (equī)
属格 (equī) -ōrum (equōrum)
与格 (equō) -īs (equīs)
対格 -um (equum) -ōs (equōs)
奪格 (equō) -īs (equīs)
  • 呼格は、複数では主格と同形。単数では-e (eque)となる。


dōnum, dōnī n.「贈り物」

単数 複数
主格 -um (dōnum) -a (dōna)
属格 (dōni) -ōrum (dōnōrum)
与格 (dōnō) -īs (dōnīs)
対格 -um (dōnum) -a (dōna)
奪格 (dōnō) -īs (dōnīs)
  • 呼格は主格と同形。


第2格変化:r語幹編集

第2格変化には辞書形の語尾が-erとなるものがある。これには2つのパターンがある。 一つ目は語幹の変化を伴わないもの。 もう一つは語幹の変化を伴うものである。後者は、単数主格以外では、語幹のeが脱落する。


第2格変化:r語幹(語幹変化なし)
puer, puerī m.「少年」

単数 複数
主格 - (puer) (puerī)
属格 (puerī) -ōrum (puerōrum)
与格 (puerō) -īs (puerīs)
対格 -um (puerum) -ōs (puerōs)
奪格 (puerō) -īs (puerīs)
  • 呼格は主格と同形。


第2格変化:r語幹(語幹変化あり)
liber, librī m.「本」

単数 複数
主格 - (liber) (librī)
属格 (librī) -ōrum (librōrum)
与格 (librō) -īs (librīs)
対格 -um (librum) -ōs (librōs)
奪格 (librō) -īs (librīs)
  • 呼格は主格と同形。



第3格変化(子音型・I型)編集

第3格変化はラテン語では最大の名詞グループである。単数主格の語尾は-a,-e, -ī, -ō, -y, -c, -l, -n, -r, -s, -t, -xまで多岐に渡っている。男性・女性・中性の全てを含む。例:flōs, flōris m. (花), pāx, pācis f. (平和), flūmen, flūminis n. (川)。このグループの共通点は単数属格の語尾が-isとなる点である。

単数主格の語尾として多いのは性ごとに次の通り。男性名詞は-or (amor, amōris, 愛)、女性名詞は-īx (phoenīx, phoenīcis, 不死鳥)、中性名詞は-us(その他の格でr語幹となる。onus, oneris, 負荷。tempus, temporis, 時間)。


第3格変化は大きく分けて「子音型」と「I型」の2つに分かれる。この違いは複数属格にiが出現するかどうかにあり、子音型では語幹子音+umとなり、I型では語幹子音+iumとなる。 さらに後者のI型は「I型:純正タイプ」と「I型:混合タイプ」に分かれる。

第3格変化の地格は-ī/-e (単数)、-ibus (複数)となる。例:rūrī「田舎で」、Trallibus「トラレスで」[5]


第3格変化:子音型編集

以下、順に、中性名詞、流音幹(語幹変化なし)、流音幹(語幹変化あり)、鼻音幹(n語幹。語幹変化あり)、鼻音幹(m語幹。語幹変化なし)、黙音幹(破裂音。語幹変化なし)の6つの例を示す。


corpus, corporis n. 「体」
[-, -is(中性名詞。語幹変化あり)]

単数 複数
主格 - (corpus) -a (corpora)
属格 -is (corporis) -um (corporum)
与格 (corporī) -ibus (corporibus)
対格 - (corpus) -a (corpora)
奪格 -e (corpore) -ibus (corporibus)
  • 呼格は主格と同形。


amor, amōris m.「愛」
flōs, flōris m.「花」
[-, -is(流音幹。語幹変化なし)]

単数 複数
主格 - (amor, flōs) -ēs (amōrēs, flōrēs)
属格 -is (amōris, flōris) -um (amōrum, flōrum)
与格 (amōrī, flōrī) -ibus (amōribus, flōribus)
対格 -em (amōrem, flōrem) -ēs (amōrēs, flōrēs)
奪格 -e (amōre, flōre) -ibus (amōribus, flōribus)
  • 呼格は主格と同形。


pater, patris m.「父」
māter, mātris f.「母」
[-, -is(流音幹。語幹変化あり)]

単数 複数
主格 - (pater, māter) -ēs (patrēs, mātrēs)
属格 -is (patris, mātris) -um (patrum, mātrum)
与格 (patrī, mātrī) -ibus (patribus, mātribus)
対格 -em (patrem, mātrem) -ēs (patrēs, mātrēs)
奪格 -e (patre, mātre) -ibus (patribus, mātribus)
  • 呼格は主格と同形。


homō, hominis m.「ヒト」
[-, -is(鼻音幹・n語幹。語幹変化あり)]

単数 複数
主格 - (homō) -ēs (hominēs)
属格 -is (hominis) -um (hominum)
与格 (hominī) -ibus (hominibus)
対格 -em (hominem) -ēs (hominēs)
奪格 -e (homine) -ibus (hominibus)
  • 呼格は主格と同形。


hiems, hiemis f.「冬」
[-s, -is(鼻音幹・m語幹。語幹変化なし。hiemsが唯一の語例)]

単数 複数
主格 -s (hiems) -ēs (hiemēs)
属格 -is (hiemis) -um (hiemum)
与格 (hiemī) -ibus (hiemibus)
対格 -em (hiemem) -ēs (hiemēs)
奪格 -e (hieme) -ibus (hiemibus)
  • 呼格は主格と同形。


lēx, lēgis f.「法、法律」
[-s, -is(破裂音・黙音幹。語幹変化なし)]
(注意:単数主格の語尾(-s)の影響を受けて、表記上、語幹変化があるように見えるが、実際の語幹変化はない。具体的には、発音→表記の順に、c+s→x、g+s→x、t+s→s、d+s→sのように表記が変わっているだけである。pとbの場合は変化はない)

単数 複数
主格 -s (lēx) -ēs (lēgēs)
属格 -is (lēgis) -um (lēgum)
与格 (lēgī) -ibus (lēgibus)
対格 -em (lēgem) -ēs (lēgēs)
奪格 -e (lēge) -ibus (lēgibus)
  • 呼格は主格と同形。




第3格変化:I型(純正タイプ・混合タイプ)編集

I型は「純正タイプ」と「混合タイプ」に分かれる。

純正タイプは「同数音節ルール(parisyllabic rule)」に従うものと「中性名詞」があり、混合タイプは「二重子音ルール」に従うタイプである。

純正タイプのうち、「同数音節ルール」は、単数の主格と属格で音節数が同じになる、という規則で、男性・女性名詞の例がある。例:amnis, amnis m.「流れ」(音節数はともに2つ)。単数主格(辞書形)の語尾が-isとなる(語尾-esのものもある)。

混合タイプの「二重子音ルール」は、単数属格の語尾-isの直前が子音二つになる、という規則で、「同数音節ルール」以外の男性・女性名詞がこれに分類される。例:pars, partis f.「部分」。

純正タイプのもう一つ、中性名詞は、全て、辞書形の語尾が-al, -ar, -eのどれかになる。例:animal, animālis「動物」、cochlear, cochleāris「スプーン」、mare, maris「海」。

純正タイプは単数・複数ともに特殊な語尾をとり、混合タイプは、単数では第3格変化の子音型になるが、複数ではI型となる。


turris, turris f.「塔」
hostis, hostis m.「敵」
vulpēs, vulpis f.「狐」(語尾は-ēs)
[純正タイプ・同数音節ルール]
(注意:単数の対格/奪格に-im/-ī、-em/-eの二種類があるが、双方を許容する語もある)

単数 複数
主格 -is (turris, hostis) -ēs (turrēs, hostēs)
属格 -is (turris, hostis) -ium (turrium, hostium)
与格 (turrī, hostī) -ibus (turribus, hostibus)
対格 -im / -em (turrim, hostem) -īs (-ēs) (turrīs (turrēs), hostīs (hostēs))
奪格 -ī / -e (turrī, hoste) -ibus (turribus, hostibus)
  • 呼格は主格と同形。


単数 複数
主格 -ēs (vulpēs) -ēs (vulpēs)
属格 -is (vulpis) -ium (vulpium)
与格 (vulpī) -ibus (vulpibus)
対格 -em (vulpem) -īs (-ēs) (vulpīs (vulpēs))
奪格 -e (vulpe) -ibus (vulpibus)
  • 呼格は主格と同形。


frōns, frondis f.「木の葉」
frōns, frontis f.「ひたい」
[混合タイプ・二重子音ルール]
(注意:単数主格の語尾(-s)の影響を受けて、表記上、語幹変化があるように見えるが、実際の語幹変化はない。具体的には、発音→表記の順に、c+s→x、g+s→x、t+s→s、d+s→sのように表記が変わっているだけである)

単数 複数
主格 -s (frōns, frōns) -ēs (frondēs, frontēs)
属格 -is (frondis, frontis) -ium (frondium, frontium)
与格 (frondī, frontī) -ibus (frondibus, frontibus)
対格 -em (frondem, frontem) -īs (-ēs) (frondīs (frondēs), frontīs (frontēs))
奪格 -e (fronde, fronte) -ibus (frondibus, frontibus)
  • 呼格は主格と同形。


imber, imbris m.「大雨」
[混合タイプ・二重子音ルール]

単数 複数
主格 - (imber) -ēs (imbrēs)
属格 -is (imbris) -ium (imbrium)
与格 (imbrī) -ibus (imbribus)
対格 -em (imbrem) -īs (-ēs) (imbrīs (imbrēs))
奪格 -e (-ī) (imbre (imbrī)) -ibus (imbribus)
  • 呼格は主格と同形。


animal, animālis n.「動物」
mare, maris n.「海」
[純正タイプ・中性名詞]

単数 複数
主格 - (animāl) -ia (animālia)
属格 -is (animālis) -ium (animālium)
与格 (animālī) -ibus (animālibus)
対格 - (animāl) -ia (animālia)
奪格 (animālī) -ibus (animālibus)
  • 呼格は主格と同形。


単数 複数
主格 -e (mare) -ia (maria)
属格 -is (maris) -ium (marium)
与格 (marī) -ibus (maribus)
対格 -e (mare) -ia (maria)
奪格 (marī) -ibus (maribus)
  • 呼格は主格と同形。




第4格変化(U型)編集

第4格変化はほとんどが男性名詞で、flūctus, flūctūs m. (波)、portus, portūs m. (港)の例がある他、例外的に若干の女性名詞、中性名詞も存在する。例:manus, manūs f. (手)、genū, genūs n. (ひざ)。

全てに共通するのは、単数属格の語尾が-ūsとなる点である。

第4格変化表で優勢なのがuの音であることから、「U型格変化」とも呼ばれるが、語尾のパターンに関しては第3格変化(i語幹)と似ている部分が非常に多い。

第4格変化には、単数主格の語尾により、-usと-ūの二つのパターンがある。


luxus, luxūs m.「贅沢」

格\数 単数 複数
主格 -us (luxus) -ūs (luxūs)
属格 -ūs (luxūs) -uum (luxuum)
与格 -uī (luxuī) -ibus (luxibus)
対格 -um (luxum) -ūs (luxūs)
奪格 (luxū) -ibus (luxibus)
  • 呼格は主格と同形。


cornū, cornūs n.「角」

単数 複数
主格 (cornū) -ua (cornua)
属格 -ūs (cornūs) -uum (cornuum)
与格 -uī (-ū) (cornuī (cornū)) -ibus (cornibus)
対格 (cornū) -ua (cornua)
奪格 (cornū) -ibus (cornibus)
  • 呼格は主格と同形。


稀なケースとして、複数の与格と奪格で、-ibusが-ubusになるケースもある。例:artūs pl. (手足)。

第4格変化の地格は単数の語尾が-īか-ūとなる。例:senātī(議会で)。

不規則変化:domus編集

domus (家、住居、家屋、家庭、家族)は、第4格変化(U型)に第2格変化(O型)が混じった不規則な格変化をする(特に文学作品で)。

ただし、実際の用法では、第4格変化の-us語幹のような規則変化をすることが多い(単数奪格と複数対格のみ、母音のuがoに変わって-ō, -ōsとなる)。

以下では、とりうる全ての活用形(第4格変化と第2格変化の混合)をまず掲げ、その後に、最も一般的に使われる活用形(第4格変化の-us語幹に近似)を抽出した形で示す。


domus, domūs f.「家」

全ての活用形

格\数 単数 複数
主格 domus domūs
属格 domūs
domī
domuum
domōrum
与格 domuī
domō
domū
domibus
対格 domum domōs
domūs
奪格 domō
domū
domibus


最も一般的な活用形

格\数 単数 複数
主格 domus domūs
属格 domūs domuum
与格 domuī domibus
対格 domum domōs
奪格 domō domibus
  • 呼格は主格と同形。地格はdomīとなる(「家で」)。なお、「家に」は対格(domum)を、「家から」は奪格(domō)を用いる。




第5格変化(E型)編集

第5格変化の単語例は少なく、ほとんどが女性名詞である。例:rēs, reī f. (こと、物)、diēs, diēī m. (日、日付。週の名称としては女性名詞になる)。 全てに共通するのは、単数属格の語尾が-eīか-ēīとなる点である。「E型格変化」とも呼ばれる。


rēs, reī f.「こと、物」

格\数 単数 複数
主格 -ēs (rēs) -ēs (rēs)
属格 -eī (reī) -ērum (rērum)
与格 -eī (reī) -ēbus (rēbus)
対格 -em (rem) -ēs (rēs)
奪格 (rē) -ēbus (rēbus)
  • 呼格は主格と同形。


diēs, diēī m.「日、日付」

格\数 単数 複数
主格 -ēs (diēs) -ēs (diēs)
属格 -ēī (diēī) -ērum (diērum)
与格 -ēī (diēī) -ēbus (diēbus)
対格 -em (diem) -ēs (diēs)
奪格 (diē) -ēbus (diēbus)


語尾が-iēsの場合、属格・与格が長母音のēīとなり(例:diēs)、語尾が子音+ ēsの場合、短母音のeīとなる(例:rēs)。

第5格変化の地格は単数奪格と同じ-ēとなる(単数のみ)。例:hodiē (副詞で「今日は」)。




代名詞編集

(これより以下はラテン語の文法#格変化_(declinatio)から転送・編集)

人称代名詞・再帰代名詞編集

以下の表は人称代名詞(1人称・2人称)、再帰代名詞(1人称・2人称・3人称)である。

1人称・2人称は人称代名詞・再帰代名詞のどちらも不規則変化で、性の区別はない。3人称の再帰代名詞sē, suīは主語自身に言及する機能があり、主語の単数・複数の区別なく用いられる。


※3人称の人称代名詞は下記「指示代名詞」の項の「3人称の指示代名詞(is, ea, id)」を参照。

人称代名詞(1人称・2人称)

数・格\人称 1人称 2人称
単数 主格 egō, ego
属格 meī tuī
与格 mihi tibi
対格
奪格
複数 主格 nōs vōs
属格 nostrum, nostrī vestrum, vestrī
与格 nōbīs vōbīs
対格 nōs vōs
奪格 nōbīs vōbīs


再帰代名詞(1人称・2人称・3人称)

数・格\人称 1人称 2人称 3人称
単数 主格 - - -
属格 meī tuī suī
与格 mihi tibi sibi
対格 mē (mēmē) tē (tētē) sē (sēsē)
奪格 mē (mēmē) tē (tētē) sē (sēsē)
複数 主格 - - -
属格 nostrī vostrī suī
与格 nōbīs vōbīs sibi
対格 nōs vōs sē (sēsē)
奪格 nōbīs vōbīs sē (sēsē)


属格meī, tuī, nostrī, vestrī, suīは通常の属格の意味で用いられるが、nostrum, vestrumは「部分の属格」に用いる(「私たちのうちの~人」「あなたたちのうちの~人」などの意味)。

1人称・2人称の単数対格mēmēとtētēは強調形だが、あまり使用されない。3人称再帰代名詞の対格sēsēは古形で、主として雅文に用いられる。他に強調形には、語尾-metを付ける形が存在する (egomet, tūte/tūtemet, nosmet, vosmet)。全ての格に格変化するが、属格複数に付ける形は使われない。

「同伴の奪格」(~と一緒に)は、通常、前置詞cumと奪格の組み合わせで表すが、人称代名詞(1人称・2人称)、再帰代名詞、(後述の)疑問代名詞では、-cumを語尾として奪格形に直接付ける形を用いることがある。mēcum(私と一緒に)、nōbīscum(私たちと一緒に)、tēcum(君と一緒に)、vōbīscum(君たちと一緒に), sēcum(彼・彼女・それ・彼ら・彼女ら・それら自身と一緒に)、quōcum?(誰と一緒に?。quīcumもある)。



所有代名詞編集

以下は所有代名詞(所有形容詞)の格変化の表である。meus, mea, meum(私の)、tuus, tua, tuum(君の)、suus, sua, suum(自身の)、noster, nostra, nostrum(私たちの)、vester, vestra, vestrum(君たちの)の5つになる。

meus, mea, meum
私の、私のもの
(英my, mine)
単数 複数
男性 女性 中性 男性 女性 中性
主格 meus mea meum meī meae mea
呼格
対格 meum meam meōs meās
属格 meī meae meī meōrum meārum meōrum
与格 meō meō meīs
奪格 meā
tuus, tua, tuum
君の、君たちのもの
(英your, yours)
単数 複数
男性 女性 中性 男性 女性 中性
主格 tuus tua tuum tuī tuae tua
呼格 tue
対格 tuum tuam tuōs tuās
属格 tuī tuae tuī tuōrum tuārum tuōrum
与格 tuō tuō tuīs
奪格 tuā
suus, sua, suum
彼(ら)・彼女(ら)・それ(ら)自身の(もの)[再帰形容詞]
(英his, her, its, theirs [reflexive])
単数 複数
男性 女性 中性 男性 女性 中性
主格 suus sua suum suī suae sua
呼格 sue
対格 suum suam suōs suās
属格 suī suae suī suōrum suārum suōrum
与格 suō suō suīs
奪格 suā
noster, nostra, nostrum
私たちの、私たちのもの
(英our, ours)
単数 複数
男性 女性 中性 男性 女性 中性
主格 noster nostra nostrum nostrī nostrae nostra
対格 nostrum nostram nostrōs nostrās
属格 nostrī nostrae nostrī nostrōrum nostrārum nostrōrum
与格 nostrō nostrō nostrīs
奪格 nostrā
vester, vestra, vestrum
voster, vostra, vostrum
(vosterは古形)
君たちの、君たちのもの
(英your, yours)
単数 複数
男性 女性 中性 男性 女性 中性
主格 vester
voster
vestra
vostra
vestrum
vostrum
vestrī
vostrī
vestrae
vostrae
vestra
vostra
対格 vestrum
vostrum
vestram
vostram
vestrōs
vostrōs
vestrās
vostrās
属格 vestrī
vostrī
vestrae
vostrae
vestrī
vostrī
vestrōrum
vostrōrum
vestrārum
vostrārum
vestrōrum
vostrōrum
与格 vestrō
vostrō
vestrō
vostrō
vestrīs
vostrīs
奪格 vestrā
vostrā


再帰の人称代名詞sē, suīの所有代名詞(所有形容詞)がsuus, sua, suumになる(「彼・彼女・それ・彼ら・彼女ら・それら自身の)。

Patrem suum numquam vīderat (Cicero)
「彼は(そのときまでに)自分自身の(suum)父親に会ったことがなかった」


suus, sua, suumは主語自身に言及するときにのみ用い、他の人物(3人称)に言及するときには、指示代名詞(後述)の属格eius(彼・彼女・それの)を用いる。複数のときはeōrum(彼ら・それらの)、eārum(彼女らの)となる。

Fit obviam Clodiō ante fundum eius (Cicero)
「彼はクロディウスに彼の(eius、=クロディウスの)農場で会った」


1つの文の内部に異なる主語が置かれる場合には、sēやsuusはどの主語への言及も可能である。

Patrēs conscrīptī ... lēgātōs in Bīthȳniam miserunt quī ab rēge peterent, nē inimīcissimum suum secum haberet sibique dēderet (Nepos)
「元老院はビーティーニアへ大使らを派遣した。大使らの使命は、王に対して、彼ら自身(suum、=元老院・大使ら)の敵を彼自身(secum、=王)の手元に置くのではなく、彼ら(sibique、=元老院・大使ら)へ引き渡すように求めることであった」
(英:The senators ... sent ambassadors to Bithynia, who were to ask the king not to keep their greatest enemy with him but hand him over to them)


なお、「彼」を意味する3人称の指示代名詞については、次の節を参照のこと。



指示代名詞編集

指示代名詞の格変化(関係代名詞不定代名詞も同様)は基本的に第1・第2格変化の形容詞と同じだが、以下の違いがある。

  • 主格は不規則になるものがある。
  • 単数属格は-aeや-īではなく-īusとなる。
  • 単数与格は-aeや-ōではなく-īとなる。

この違いは代名詞の格変化全般に当てはまる特徴となっていて、いくつかの特殊な意味の形容詞(tōtus「全体の」、sōlus「唯一の」、ūnus「一つの」、nūllus「何も~ない」、alius「他の」、alter「二つのうち片方の」など)でもこのパターンの格変化をする。

指示代名詞・関係代名詞・不定代名詞は形容詞としても用いる(指示形容詞・関係形容詞・不定形容詞)。ただし、疑問代名詞のquis(誰?)、quid(何?)は形容詞用法ではquī, quodとなる。



3人称の指示代名詞(is, ea, id)編集

指示代名詞is, ea, id(それ・あれ、「弱い指示代名詞」とも呼ぶ)は3人称の代名詞として用いられる(彼・彼女・それ)。

数・格\人称 男性 女性 中性
単数 主格 is ea id
属格 eius eius eius
与格
対格 eum eam id
奪格
複数 主格 iī (eī) eae ea
属格 eōrum eārum eōrum
与格 iīs (eīs) iīs (eīs) iīs (eīs)
対格 eōs eās ea
奪格 iīs (eīs) iīs (eīs) iīs (eīs)


形容詞としても用いられる。例:is homo(その男性、that man)、ea pecunia(そのお金、that money)。ラテン語には定冠詞は存在しなかったが、is, ea, idは指示の意味合いが弱い代名詞であるため、しばしば物事を軽く指し示す機能を帯びて定冠詞的にも用いられる。この2つの例はthe man, the moneyのように定冠詞の意味にもなる。

所有形容詞はなく、所有の意味では属格形eius, eōrum/eārumが用いられる。例:pater eius(彼・彼女の父親)、pater eōrum(彼ら・それらの父親)。



īdemの格変化(īdem, eadem, idem)編集

指示代名詞(指示形容詞)のīdem, eadem, idemには「同じ」(the same)の意味がある。指示代名詞(「弱い指示代名詞」)のisから派生し、語尾に-demを付ける。複数属格(男性・中性)のeōrundemのように-demに影響されて音が変化するケース(元の指示代名詞はeōrum)には注意を要する。

人称 人称
男性 女性 中性
単数 主格 īdem eadem idem
属格 eiusdem eiusdem eiusdem
与格 eīdem eīdem eīdem
対格 eundem eandem idem
奪格 eōdem eādem eōdem
複数 主格 iīdem (eīdem, īdem) eaedem eadem
属格 eōrundem eārundem eōrundem
与格 iīsdem (eīsdem, īsdem) iīsdem (eīsdem, īsdem) iīsdem (eīsdem, īsdem)
対格 eōsdem eāsdem eadem
奪格 iīsdem (eīsdem, īsdem) iīsdem (eīsdem, īsdem) iīsdem (eīsdem, īsdem)



強意の指示代名詞(ipse, ipsa, ipsum)編集

「強意の指示代名詞」とはipse, ipsa, ipsumで、「彼自身・彼女自身・それ自身」を表し、対象の人・物を強調する。格変化は2人称・3人称の指示代名詞と同じになる。

人称 指示代名詞
男性 女性 中性
単数 主格 ipse ipsa ipsum
属格 ipsīus ipsīus ipsīus
与格 ipsī ipsī ipsī
対格 ipsum ipsam ipsum
奪格 ipsō ipsā ipsō
複数 主格 ipsī ipsae ipsa
属格 ipsōrum ipsārum ipsōrum
与格 ipsīs ipsīs ipsīs
対格 ipsōs ipsās ipsa
奪格 ipsīs ipsīs ipsīs



その他の指示代名詞(hic, iste, ille)編集

以下は「これ、それ、あれ」を表す指示代名詞、hic(これ・この), iste(それ・その), ille(あれ・あの)の格変化の表である。hicは話し手に近いもの、これから述べようと思っているものを指す。isteは聞き手に近いもの、すでに述べられたものを指す。illeは話し手、聞き手のどちらからも遠いものを指す。

指示代名詞 これ(hic, haec, hoc) それ(iste, ista, istud) あれ(ille, illa, illud)
男性 女性 中性 男性 女性 中性 男性 女性 中性
単数 主格 hic haec hoc iste ista istud ille illa illud
属格 huius huius huius istīus istīus istīus illīus illīus illīus
与格 huic huic huic istī istī istī illī illī illī
対格 hunc hanc hoc istum istam istud illum illam illud
奪格 hōc hāc hōc istō istā istō illō illā illō
複数 主格 hae haec istī istae ista illī illae illa
属格 hōrum hārum hōrum istōrum istārum istōrum illōrum illārum illōrum
与格 hīs hīs hīs istīs istīs istīs illīs illīs illīs
対格 hōs hās haec istōs istās ista illōs illās illa
奪格 hīs hīs hīs istīs istīs istīs illīs illīs illīs




関係代名詞・疑問代名詞編集

疑問代名詞(疑問形容詞)は質問をするときに用いる。関係代名詞と疑問形容詞の格変化は同じであり、疑問代名詞はそれとはいくつかの語形が異なっている(詳しくは下表の下を参照)。疑問代名詞を複数で用いるのは稀である。疑問代名詞の複数は関係代名詞の複数と同形である。


関係代名詞(疑問形容詞と共通)

数・格\性 男性 女性 中性
単数 主格 quī quae quod
属格 cuius cuius cuius
与格 cuī cuī cuī
対格 quem quam quod
奪格 quō quā quō
複数 主格 quī quae quae
属格 quōrum quārum quōrum
与格 quibus quibus quibus
対格 quōs quās quae
奪格 quibus quibus quibus


疑問代名詞

数・格\性 男性 女性 中性
単数 主格 quis? quis? quid?
属格 cuius? cuius? cuius?
与格 cuī? cuī? cuī?
対格 quem? quem? quid?
奪格 quō? quō? quō?


  • 男性:単数主格は、関係代名詞・疑問形容詞でquī、疑問代名詞でquisとなる。
  • 女性:単数主格は、関係代名詞・疑問形容詞でquae、疑問代名詞でquisとなる。単数対格は、関係代名詞・疑問形容詞でquam、疑問代名詞でquemとなる。単数奪格は、関係代名詞・疑問形容詞でquā、疑問代名詞でquōとなる。
  • 中性:単数の主格・対格は、関係代名詞・疑問形容詞でquod、疑問代名詞でquidとなる。



代名詞の相関語編集

指示代名詞、関係代名詞、疑問代名詞、不定関係代名詞、不定代名詞(及び、指示形容詞など、それぞれの対応する形容詞・副詞)のリストを下表に掲げる[6]。これは、「相関語」(英:correlatives, pro-form)と呼ばれて相互に関連する一群の代名詞(及び形容詞・副詞)を整理したものである。

指示詞
(英Demonstrative)
関係詞
(英Relative)
疑問詞
(英Interrogative)
不定関係詞
(英Indefinite relative)
不定詞
(英Indefinite)
母音
または t-
qu-, c-, u- 繰り返し
または -cumque
aliqu-, alic-
基本
(何、basic)
is
それ<彼>
quī
~するところの<物・人>
quis?
何<誰>?
quisquis
何<誰>であれ~するところの
aliquis
何か<誰か>
いくつ
(number)
tantus
それほど多くの
quantus
~ほど多くの
quantus?
いくつ?
quantuscumque
いくつであれ~するところの
aliquantus
いくつかの
どんな種類の
(種類, type)
tālis
そのような
quālis
~のような種類の
quālis?
どんな種類の?
quāliscumque
どんな種類であれ~するところの
(aliquālis)
(ある種類の)
どこで
(place where)
ibi
ここで
ubi
~するところの
ubi?
どこで?
ubiubi
どこであれ~するところの
alicubi
どこかで
どこへ
(place to, whither)

ここへ
quō
~するところへ
quō?どこへ? quōquō
どこであれ~するところへ
aliquō
どこかへ
どのように
(様態, manner)

そのように
quā
~のように
quā?
どのように?
quāquā
どのようにであれ
aliquā
どうにかして
どこから
(place from, whence)
inde
そこから
unde
~するところから
unde?
どこから?
undecumque
どこであれ~するところから
alicunde
どこかから
いつ
(time)
tum
そのとき
cum
~するとき
quandō?
いつ?
quandōcumque
~するときはいつでも
aliquandō
いつか
どれほど多くの
(counting)
tot
それほど多くの
quot
~ほど多くの
quot?
どれほど多くの?
quotquot
いかなる数量であれ~するところの
aliquot
ある数量の
どれほど頻繁に
(repetition)
totiēns
それほど頻繁に
quotiēns
~ほど頻繁な
quotiēns?
どれほど頻繁に
quotiēnscumque
どれほど頻繁であれ~するところの
aliquotiēns
ある頻度の




形容詞編集

第1・第2格変化編集

第1・第2格変化の形容詞は、男性・女性・中性で異なる語尾を持つ。男性は-us(か-er)、女性は-a、中性は-umとなり、基本形はaltus, alta, altumのようになる。 語尾が-iusの場合は、呼格の語尾が-eとなるが(例:ebrie「おお、酔っ払いの男よ!」)、これは同じ-ius語尾の名詞と同様である(例:fīlie「息子よ!」、fīliusの呼格の古形)。

altus, alta, altum
高い、長い、背が高い(英high, long, tall)
単数 複数
男性 女性 中性 男性 女性 中性
主格 altus alta altum altī altae alta
呼格 alte
対格 altum altam altōs altās
属格 altī altae altī altōrum altārum altōrum
与格 altō altō altīs
奪格 altā
sōlitārius, sōlitāria, sōlitārium
孤独な、寂しい
単数 複数
男性 女性 中性 男性 女性 中性
主格 sōlitārius sōlitāria sōlitārium sōlitāriī sōlitāriae sōlitāria
呼格 sōlitārie
対格 sōlitārium sōlitāriam sōlitāriōs sōlitāriās
属格 sōlitāriī sōlitāriae sōlitāriī sōlitāriōrum sōlitāriārum sōlitāriōrum
与格 sōlitāriō sōlitāriō sōlitāriīs
奪格 sōlitāriā



第1・第2格変化:-r語幹形容詞編集

男性の語尾が-rとなるものが若干ある。これは名詞の「第2格変化:r語幹」と同じで、母音のeが保たれるものと、eが消失するものに分かれる。例として、前者はmiser, misera, miserum、後者はsacer, sacra, sacrumがある。

miser, misera, miserum
悲しい、哀れだ、不幸だ
単数 複数
男性 女性 中性 男性 女性 中性
主格 miser misera miserum miserī miserae misera
対格 miserum miseram miserōs miserās
属格 miserī miserae miserī miserōrum miserārum miserōrum
与格 miserō miserō miserīs
奪格 miserā
sacer, sacra, sacrum
神聖な
単数 複数
男性 女性 中性 男性 女性 中性
主格 sacer sacra sacrum sacrī sacrae sacra
対格 sacrum sacram sacrōs sacrās
属格 sacrī sacrae sacrī sacrōrum sacrārum sacrōrum
与格 sacrō sacrō sacrīs
奪格 sacrā



第1・第2格変化の代名詞的形容詞編集

第1・第2格変化の代名詞的形容詞には、属格・与格が不規則となるものが9つある。暗記の利便性から、9つの頭文字をとって"ūnus nauta"と呼ばれたりする。

ūllus, ūlla, ūllum
いかなる(英any)
単数 複数
男性 女性 中性 男性 女性 中性
主格 ūllus ūlla ūllum ūllī ūllae ūlla
対格 ūllum ūllam ūllōs ūllās
属格 ūllīus ūllōrum ūllārum ūllōrum
与格 ūllī ūllīs
奪格 ūllō ūllā ūllō




第3格変化編集

第3格変化の形容詞は「第3格変化:I型」の名詞と共通するが、単数奪格では-eではなく-īを用いることが多い(名詞の場合は、-īとなるのは「I型:純正タイプ」のみである)。また、vetus, veteris (年取った)のように、「語尾が一つ」の形容詞では、単数奪格は-e、複数属格は-um、中性複数の主格・対格は-aとなる。


第3格変化:語尾が1つ編集

これは、単数主格の語尾が、男性・女性・中性の全てで同じになるタイプである。ただし、格変化は性ごとに異なる。


第3格変化:語尾が1つ(i語幹)

atrōx, atrōx
ひどい、残酷な
単数 複数
男性 &
女性
中性 男性 &
女性
中性
主格 atrōx atrōx atrōcēs atrōcia
対格 atrōcem atrōcēs
atrōcīs
属格 atrōcis atrōcium
与格 atrōcī atrōcibus
奪格


第3格変化:語尾が1つ(i語幹以外)

vetus, vetus
年取った
単数 複数
男性 &
女性
中性 男性 &
女性
中性
主格 vetus vetus veterēs vetera
対格 veterem
属格 veteris veterum
与格 veterī veteribus
奪格 vetere



第3格変化:語尾が2つ編集

これは男性・女性が同じ語尾となり、中性のみが異なるタイプである。男性・女性の語尾は-is、中性は-eとなる。属格は男性単数主格と同形(-is)になるため、見出し語としては通常、掲載されない。

agilis, agile
素早い、俊敏な(英nimble, swift)
単数 複数
男性 &
女性
中性 男性 &
女性
中性
主格 agilis agile agilēs agilia
対格 agilem agilēs
agilīs
属格 agilis agilium
与格 agilī agilibus
奪格



第3格変化:語尾が3つ編集

これは男性・女性・中性で異なる語尾となるタイプである。名詞の「第2格変化:r語幹」と同様、男性の語尾は-erとなる。女性は-ris、中性は-reとなる。 属格は女性単数主格(-ris)と同形になる。

celer, celeris, celere
速い、俊敏な(英swift, rapid, brash。eを保持)
単数 複数
男性 女性 中性 男性 &
女性
中性
主格 celer celeris celere celerēs celeria
対格 celerem celerem
属格 celeris celerium
与格 celerī celeribus
奪格
alacer, alacris, alacre
活発な、生き生きとした(英lively, jovial, animated。eが消失)
単数 複数
男性 女性 中性 男性 &
女性
中性
主格 alacer alacris alacre alacrēs alacria
対格 alacrem alacrem alacrēs
alacrīs
属格 alacris alacrium
与格 alacrī alacribus
奪格




形容詞の比較級・最上級編集

形容詞の比較級は、第1・第2格変化、並びに、第3格変化で「語尾が1つ」と「語尾が2つ」のタイプでは、男性・女性では-ior、中性では-iusを、それぞれ語幹に付ける。属格はどちらも-iōrisとなる。これは第3格変化(i語幹以外)となる。最上級は語幹に-issimus, -issima, -issimumを付け、第1・第2格変化となる。


比較級と最上級の通常パターン編集

altior, altius
より高い、より深い (altusの比較級)
単数 複数
男性 &
女性
中性 男性 &
女性
中性
主格 altior altius altiōrēs altiōra
対格 altiōrem
属格 altiōris altiōrum
与格 altiōrī altiōribus
奪格 altiōre
altissimus, altissima, altissimum
最も高い、最も深い (altusの最上級)
単数 複数
男性 女性 中性 男性 女性 中性
主格 altissimus altissima altissimum altissimī altissimae altissima
呼格 altissime
対格 altissimum altissimam altissimōs altissimās
属格 altissimī altissimae altissimī altissimōrum altissimārum altissimōrum
与格 altissimō altissimō altissimīs
奪格 altissimā



通常の語尾編集

形容詞 原級 比較級 最上級
clārus, clāra, clārum (明るい、著名な、英clear, bright, famous) clārior, clārius clārissimus, clārissima, clārissimum
frīgidus, frīgida, frīgidum (冷たい、英cold, chilly) frīgidior, frīgidius frīgidissimus, frīgidissima, frīgidissimum
pugnāx, pugnāx (pugnācis) (けんか好きな、英pugnacious) pugnācior, pugnācius pugnācissimus, pugnācissima, pugnācissimum
benevolēns, benevolēns (benevolentis) (優しい、英kind, benevolent) benevolentior, benevolentius benevolentissimus, benevolentissima, benevolentissium
fortis, forte (強い、英strong, robust) fortior, fortius fortissimus, fortissima, fortissimum
aequālis, aequāle (等しい、英equal, even) aequālior, aequālius aequālissimus, aequālissima, aequālissimum



-er語尾編集

男性単数主格が-erとなる形容詞(第1・第2格変化、第3格変化)では、比較級は上と同じで語幹に-iorを付けるが、最上級では-rimusとなる。

形容詞 原級 比較級 最上級
pulcher, pulchra, pulchrum (美しい、英pretty, beautiful) pulchrior, pulchrius pulcherrimus, pulcherrima, pulcherrimum
sacer, sacra, sacrum (神聖な、英sacred, holy) sacrior, sacrius sacerrimus, sacerrima, sacerrimum
tener, tenera, tenerum (繊細な、英delicate, tender) tenerior, tenerius tenerrimus, tenerrima, tenerrimum
ācer, ācris, ācre (鋭い、英valliant, fierce) ācrior, ācrius ācerrimus, ācerrima, ācerrimum
celeber, celebris, celebre (著名な、英celebrated, famous) celebrior, celebrius celeberrimus, celeberrima, celeberrimum
celer, celeris, celere (速い、英quick, fast) celerior, celerius celerrimus, celerrima, celerrimum



-lis語尾編集

第3格変化のうち、語尾が2つで、男性・女性の語尾が-lisとなるものは、最上級が不規則になるものがある。このグループの形容詞は下表の例のみである。

形容詞 原級 比較級 最上級
facilis, facile (た易い、英easy) facilior, facilius facillimus, facillima, facillimum
difficilis, difficile (難しい、英hard, difficult) difficilior, difficilius difficillimus, difficillima, difficillimum
similis, simile (似ている、英similar, like) similior, similius simillimus, simillima, simillimum
dissimilis, dissimile (異なった、英unlike, dissimilar) dissimilior, dissimilius dissimillimus, dissimillima, dissimillimum
gracilis, gracile (細身の、英slender, slim) gracilior, gracilius gracillimus, gracillima, gracillimum
humilis, humile (控えめな、英low, humble) humilior, humilius humillimus, humillima, humillimum



-eus/-ius語尾編集

第1・第2格変化のうち、語尾が-eus, -iusとなるものは、比較級・最上級の語形変化がなく、magis (「より~」、英more)、maximē(「最も~」、英most)を付けて複合的に表現する。 magis, maximēはmagnoperē(多く、英much, greatly)の比較級・最上級である。

語尾が-uusとなる形容詞もこれに属する(ただし、-quusと-guusを除く)。

形容詞 原級 比較級 最上級
idōneus, idōnea, idōneum (適した、英suitable, fitting, proper) magis idōneus maximē idōneus
sōlitārius, sōlitāria, sōlitārium (孤独な、英solitary, lonely) magis sōlitārius maximē sōlitārius
ebrius, ebria, ebrium (酔った、英drunk) magis ebrius maximē ebrius
meritōrius, meritōria, meritōrium (価値のある、英meritorious) magis meritōrius maximē meritōrius
grāmineus, grāminea, grāmineum (草の多い、英grassy) magis grāmineus maximē grāmineus
bellātōrius, bellātōria, bellātōrium (好戦的な、英warlike, bellicose) magis bellātōrius maximē bellātōrius
arduus, ardua, arduum (険しい、英lofty, steep) magis arduus maximē arduus



不規則な比較級・最上級編集

以下は比較級・最上級が不規則となる形容詞である。

形容詞 原級 比較級 最上級
bonus, bona, bonum (良い、英good) melior, melius (より良い、better) optimus, optima, optimum (最も良い、best)
malus, mala, malum (悪い、英bad, evil) pēior, pēius (より悪い、worse) pessimus, pessima, pessimum (最も悪い、worst)
magnus, magna, magnum (大きい、英great, large) māior, māius (より大きい、greater) maximus, maxima, maximum (最も大きい、greatest)
parvus, parva, parvum (小さい、英small, slight) minor, minus (より小さい、lesser) minimus, minima, minimum (最も小さい、least)
multus, multa, multum (多い、英much, many) plūs (より多い、more) plūrimus, plūrima, plūrimum (最も多い、most)
propinquus, propinqua, propinquum (近い、near, close) propior, propius (より近い、nearer) proximus, proxima, proximum (最も近い、nearest, next)
mātūrus, mātūra, mātūrum (熟した、英ripe, mature) mātūrior, mātūrius (より熟した、riper) mātūrrimus, mātūrrima, mātūrrimum (最も熟した、ripest)
nēquam (価値の薄い、英worthless) nēquior, nēquius (より価値の薄い、more worthless) nēquissimus, nēquissima, nēquissimum (最も価値の薄い、most worthless)
posterus, postera, posterum (次の、英next, future) posterior, posterius (後の、later) postrēmus, postrēma, postrēmum (最後の、last, latest)
postumus, postuma, postumum
superus, supera, superum (上の、英above) superior, superius (より上の、upper) suprēmus, suprēma, suprēmum (最も上の、uppermost)
summus, summa, summum
exterus, extera, exterum (外の、英outward) exterior, exterius (より外の、outer) extrēmus, extrēma, extrēmum (最も外の、outermost)
extimus, extima, extimum
īnferus, īnfera, īnferum (下の、英below) īnferior, īnferius (より下の、lower) īnfimus, īnfima, īnfimum (最も下の、lowest)
īmus, īma, īmum
senex, senis (老いた、英old, aged) senior, senius (より老いた、年上の、older, elder) senissimus, senissima, senissimum (最も老いた、最も年上の、oldest, eldest)
iuvenis, iuvenis (若い、英young, youthful) iuvenior, iuvenius (より若い、younger)
iūnior, iūnius
iuvenissimus, iuvenissima, iuvenissimum (最も若い、youngest)
iūnissimus, iūnissima, iūnissimum [8][9]




数詞編集

基数詞(cardinal numerals)で格変化するのは、ūnus (1), duo (2), trēs (3), 200から900までducentī (200), trecentī (300)以下の8つ、mīlle (1000)のみで、これらは形容詞と同様の格変化と性がある。

ūnus, ūna, ūnumは第1・第2格変化の形容詞と同様の格変化となり、属格は-īus、与格は-īとなる。duoは不規則変化となり、trēsは形容詞の第3格変化の複数と同じ格変化になる。200から900まで(-centī)は第1・第2格変化の形容詞と同じとなり、milleは単数では不変化だが、複数では名詞の「第3格変化:I型」の中性名詞・複数と同じになる。

ūnusに複数形が存在するのは、「絶対複数名詞」(pluralia tantum)に使用するためである。例:ūna castra (1つの宿営地、中性複数), ūnae scālae (1つのはしご、女性複数)。

ūnus, ūna, ūnum
「1」(英one)
単数 複数
男性 女性 中性 男性 女性 中性
主格 ūnus ūna ūnum ūnī ūnae ūna
呼格 ūne
対格 ūnum ūnam ūnōs ūnās
属格 ūnīus ūnōrum ūnārum ūnōrum
与格 ūnī ūnīs
奪格 ūnō ūnā ūnō



ambō (両方の、英both)の格変化はduoと同じだが、duoは短母音のo、ambōは長母音のōとなる。この2つの格変化はインド・ヨーロッパ語族の双数(dual)に由来するもので、双数はラテン語では失われた数である。

duo, duae, duo
「2」(英two)
複数
男性 女性 中性
主格 duo duae duo
対格 duōs
duo
duās
属格 duōrum duārum duōrum
与格 duōbus duābus duōbus
奪格
ambō, ambae, ambō
「両方の」(英both)
複数
男性 女性 中性
主格 ambō ambae ambō
対格 ambōs
ambō
ambās
属格 ambōrum ambārum ambōrum
与格 ambōbus ambābus ambōbus
奪格
trēs, tria
「3」(英three)
複数
男性 &
女性
中性
主格 trēs tria
対格 trēs
trīs
属格 trium
与格 tribus
奪格



centum (100)は不変化だが、200以降の100台の数には格変化がある。

ducentī, ducentae, ducenta
「200」(英two hundred)
複数
男性 女性 中性
主格 ducentī ducentae ducenta
対格 ducentōs ducentās
属格 ducentōrum ducentārum ducentōrum
与格 ducentīs
奪格



mīlle (1000)は単数で不変化の形容詞だが、その複数形のmīliaは名詞の「第3格変化:I型」の中性名詞複数形と同じ格変化になる。例えば、「4000頭の馬」は、quattuor mīlia equōrumとなり、「馬」(equus)を複数属格(equōrum)で用いる(文字通りには「馬の4000」)。

mīlle
「1000」(英one thousand)
mīlia, mīlium
「~千」(英x thousand),
「数千、幾千もの」(英thousands)
主格 mīlle mīlia
mīllia
-ia
対格
属格 mīlium
mīllium
-ium
与格 mīlibus
mīllibus
-ibus
奪格


上記以外の基数詞は、形容詞・名詞のどちらの用法でも、不変化となる。




副詞編集

副詞には格変化はない。副詞は形容詞から作る。


第1・第2格変化の形容詞から作る副詞編集

第1・第2格変化の形容詞では、語幹に-ēを加える。

形容詞 副詞
clārus, clāra, clārum (明るい、明らかな) clārē (明るく、明らかに)
validus, valida, validum (強い、たくましい) validē (強く、たくましく)
īnfīrmus, īnfīrma, īnfīrmum (弱い) īnfīrmē (弱く)
solidus, solida, solidum (完全な、堅い) solidē (完全に、堅く)
integer, integra, integrum (新鮮な) integrē (新鮮に)
līber, lībera, līberum (自由な) līberē (自由に)



第3格変化の形容詞から作る副詞編集

第3格変化の形容詞では、語幹に-terか-erを付ける。

形容詞 副詞
prūdēns, prūdēns (prūdentis) (慎重な) prūdenter (慎重に)
audāx, audāx (audācis) (大胆な) audācter (大胆に)
virilis, virile (勇敢な) viriliter (勇敢に)
salūbris, salūbre (健全な) salūbriter (健全に)



副詞の比較級と最上級編集

副詞の比較級は、形容詞の比較級の中性単数主格と同形になる。最上級は形容詞の最上級に語尾-ēを付けて作る。また、第1・第2格変化の形容詞で、-eus, -iusで終わるものは、語尾変化をせず、magis/maximēを用いて複合的に表す。

原級 比較級 最上級
clārē (明るく、明らかに) clārius clārissimē
solidē (完全に、堅く) solidius solidissimē
idōneē (適切に) magis idōneē maximē idōneē
prudenter (慎重に) prudentius prudentissimē
salūbriter (健全に) salūbrius salūbrissimē



不規則な副詞とその比較級・最上級編集

形容詞と同様に、副詞にも比較級・最上級が不規則になるものがある。

原級 比較級 最上級
bene (良く) melius (より良く) optimē (最も良く)
male (悪く) peius (より悪く) pessimē (最も悪く)
magnopere (素晴らしく) magis (より素晴らしく) maximē (最も素晴らしく)
multum (多く) plūs (より多く) plūrimum (最も多く)
parvum (少なく) minus (より少なく) minimē (最も少なく)
nēquiter (無益に) nēquius (より無益に) nēquissimē (最も無益に)
saepe (頻繁に) saepius (より頻繁に) saepissimē (最も頻繁に)
mātūrē (適宜に) mātūrius (より適宜に) māturrimē (最も適宜に)
prope (近く) propius (より近く) proximē (最も近く)
nūper (最近) nūperrimē (最も最近)
potis (できるだけ) potius (むしろ) potissimē (特に)
prius (事前に) prīmō (最初に)
secus (異なって) sētius
sequius (より少なく)



特殊な格変化編集

単数のみ・複数のみの名詞編集

「絶対単数」の名詞がある(singulare tantum、単数形しか存在しない名詞)。

  • 物質:aurum(金)、aes(銅)
  • 抽象名詞:celeritās(速さ、スピード)、scientia(知識)


他方で、「絶対複数」の名詞がある(plurale tantum、語形は複数だが意味は単数となる名詞)。

  • 祭りの名称:Saturnālia(農神祭)
  • castra(宿営)、arma(武器)
  • 地名:Thēbae (テーベ。ギリシャとエジプトにあった町)


格変化しない名詞編集

格変化せず、全ての格(単数)で同形となる名詞(indeclinable nouns)がある。

  • fās(運命、神の掟)
  • īnstar(外観)
  • māne(朝)
  • nefās(罪)
  • nihil, nīl(無。英nothing, none)
  • secus(性別)


性が変わる名詞編集

性が変わる名詞(heterogeneous nouns)がある。複数の性を兼用する。

  • 第2格変化の男性名詞と中性名詞の例がある。意味は変わらない。
  • 単数の性と複数の性が異なる名詞がある。意味が変わることがある。


単数 複数
balneum n. (風呂、英bath) balneae f. または balnea n. (浴場、英bathhouse) 意味変化
epulum n. (祝宴、英feast, banquet) epulae f. (祝宴、英feast, banquet) 意味不変
frēnum n. (馬のくつわ、英bridle, curb) frēnī m.(馬のくつわ、英bridle, curb) 意味不変
iocus m. (冗談、英joke, jest) ioca n. or ioci m. (冗談、英jokes, fun) 意味不変
locus m. (場所、位置、英place, location) loca n. (地域); locī m. (本や議論の個所、英places in books, arguments) 意味変化
rāstrum n. (鍬・熊手、英hoe, rake) rāstrī m. (鍬・熊手、英hoes, rakes) 意味不変



複数で意味が変わる名詞編集

複数で意味が変化する名詞には次の例がある。

単数 複数
aedēs, aedis f. (建物、神殿、英:bulding, temple) aedēs, aedium (部屋、家屋、英rooms, house)
auxilium, auxiliī n. (手助け、援助、英help, aid) auxilia, auxiliōrum (援軍、英auxiliary troops)
carcer, carceris m. (牢獄、独房、英prison, cell) carcerēs, carcerum (スタート地点の囲い、英starting traps)
castrum, castrī n. (とりで、要塞、英fort, castle, fortress) castra, castrōrum (宿営、兵営、英military camp, encampment)
cōpia, copiae f. (たくさんの、豊富な、英plenty, much, abundance) cōpiae, copiārum (軍勢、英troops)
fortūna, fortūnae f. (運、英luck, chance) fortūnae, fortūnārum (富、幸運、英wealth, fortune)
grātia, grātiae f. (魅力、好意、英charm, favor) grātiae, grātiārum (感謝、英thanks)
impedīmentum, impedīmentī m. (妨げ、英impediment, hindrance) impedīmenta, impedīmentōrum (旅行の荷物、英baggage, baggage train)
littera, litterae f. (文字、英letter [alphabet]) litterae, litterārum (手紙、文学、英letter [message], epistle, scholarship, literature)
mōs, mōris m. (性癖、習慣、英habit, inclination) mōrēs, mōrum m. (慣行、個性、英morals, character)
opera, operae f. (努力、辛さ、英trouble, pains) operae, operārum m. (労働者、英workmen)
*ops, opis f. (保護、英help) || opēs, opium (財産、富、英resources, wealth)
pars, partis f. (部分、英part, piece) partēs, partium (職務、英office, function)



格の順序編集

格の表示順序に関しては、近現代のラテン語の教科書では、世界共通で統一された唯一のものは存在しない。


主格・(呼格)・対格・属格・与格・奪格・(地格)編集

<Nom–(Voc)–Acc–Gen–Dat–Abl–(Loc)>

この順序は、異なる格で同形となるものをまとめて表示しようという姿勢を反映している。呼格と地格は通常、省略される。つまり、主格・対格・属格・与格・奪格を表示することになるが、これはラテン語のテキストでの出現頻度の高さを大雑把に表すものでもある。初級者向けの教科書でもこの順序で提示されることになる。Benjamin Hall KennedyのLatin Primer (1866)の出版以降、イギリスとイギリス連邦の国々で通用している順序である。ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、スペイン、ポルトガルでもこの順序が普通である。


主格・属格・与格・対格・(呼格)・奪格・(地格)編集

<Nom–Gen–Dat–Acc–(Voc)–Abl–(Loc)>

この順序はビザンツの文法学者に発するもので、元来はギリシャ語の記述に使われていた順序である。アメリカで通用している標準的な順序だが、呼格は末尾に移動することが増えている。Wheelockの文法書(1956)では呼格と地格は省略され、概説的な説明が付されるのみであり、主格・属格・与格・対格・奪格・(呼格)の順序となっている。 ポーランドでも通用しているが、これは、ポーランド語の格(計7つ)の表示順序と同じためでもある。ただし、ポーランド語では奪格の個所に具格(instrumental)が入る。 オランダでもこの順序が一般的である。オランダ語自体は格変化システムを消失している言語だが、根本的な理由としては、ラテン語・古代ギリシャ語・ドイツ語で格変化の表示順序が同じになり、学習の効率面で優れているというメリットによるところが大きい。日本でもこの順序であり、事情もオランダに似ている。 ドイツでも一般的だが、これはドイツ語の格の表示順序(主格・属格・与格・対格)がこれと同じためである。リトアニアも同様に、リトアニア語の格の表示順序が同じことによる。 主格・属格・与格・対格・呼格・奪格の順序はギリシャ(古代ギリシャ語、現代ギリシャ語、ラテン語の全てで)とイタリアでも標準的な順序として採用されている。 地格はこれとは切り離して扱われる。ラテン語では滅多に使われることがなく、古典ラテン語期には廃れていたとされるためである。


その他編集

ブラジルの文法学者、ナポレオン・メンデスは、主格・呼格・属格・与格・対格・奪格という、珍しい順序を採用していた。Latinumのポッドキャストは主格・呼格・対格・奪格・与格・属格で、これは暗記のしやすさを優先的に考慮している。



参考文献編集

  • A Student's Latin Grammar, by Cambridge Latin Course's Robin m. Griffin, Third Edition
  • Gildersleeve, B. L.; Gonzalez Lodge (1895). Gildersleeve's Latin Grammar (3rd ed.). Macmillan. ISBN 0-333-09215-5.
  • Greenough, J. B.; G. L. Kittredge; A. A. Howard; Benj. L. D'Ooge (1903). Allen and Greenough's New Latin Grammar for Schools and Colleges. Ginn and Company.


脚注編集

  1. ^ Sintaxis de los casos”. La lengua latina. Ministerio de Educación de España. 2009年7月16日閲覧。
  2. ^ 対格支配の前置詞のリスト。Giralt, Sebastià. “Gramàtica llatina: preposicions”. Labyrinthus. 2009年5月20日閲覧。
  3. ^ Angelo Altieri Megale (1988). Gramática Latina. Puebla (México): Benemérita Universidad Autónoma de Puebla. ISBN 968-863-084-5 
  4. ^ https://www.youtube.com/watch?v=EtN_62_pKYs
  5. ^ Allen and Greenough's New Latin Grammar §80
  6. ^ Allen and Greenough's New Latin Grammar §152: correlatives
  7. ^ Gildersleeve & Lodge (1903), Gildersleeve's Latin Grammar, p. 39
  8. ^ https://books.google.com/books?id=tDxpAAAAcAAJ&pg=PA230&lpg=PA230&dq=iunissimum&source=bl&ots=VK6m1hfYPv&sig=ACfU3U3TwURYeFnyUozXa1kEDGGpYyT_MA&hl=es-419&sa=X&ved=2ahUKEwi6rcbG66vgAhVxLH0KHRmvCwUQ6AEwAHoECAAQAQ#v=onepage&q=iunissimum&f=false
  9. ^ https://books.google.com/books?id=F5NJAAAAMAAJ&pg=PA155&lpg=PA155&dq=iunissimum&source=bl&ots=apRhUB9D7w&sig=ACfU3U3CWPudXi64xxkIF00II79LbDafJw&hl=es-419&sa=X&ved=2ahUKEwi6rcbG66vgAhVxLH0KHRmvCwUQ6AEwAXoECAEQAQ#v=onepage&q=iunissimum&f=false

外部リンク編集