リナルドとアルミーダ (カラッチ)

リナルドとアルミーダ』(: Rinardo e Armida: Rinaldo and Armida)は、イタリアバロック絵画の巨匠アンニーバレ・カラッチが1601-1602年ごろ、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。現在、ナポリカポディモンテ美術館に所蔵されている[1]。元来、ローマファルネーゼ宮殿の離れにあたるパラッツェット (Palazzetto) に飾られていたが、1734年にナポリに移された。その後、フランス軍によって略奪されたり、パレルモへ運ばれたりしたが、1815年以後はナポリに落ち着いた[1]

『リナルドとアルミーダ』
イタリア語: Rinaldo e Armida
英語: Rinaldo and Armida
作者アンニーバレ・カラッチ
製作年1601-1602年ごろ
種類キャンバス上に油彩
寸法154 cm × 233 cm (61 in × 92 in)
所蔵カポディモンテ美術館ナポリ

作品 編集

この絵画はオドアルド・ファルネーゼ枢機卿のために描かれた作品で、トルクァート・タッソの16世紀の叙事詩解放されたエルサレム』の1場面 (第16歌18-23) に登場するリナルド (タッソ)英語版と魔女アルミーダ (タッソ)英語版を描いている。リナルドはアルミーダの瞳に映る自分の姿を見ながら、彼女に鏡を差し出すが、映し出されたアルミーダの顔は微笑み、リナルドの顔は燃えていた[1]

本作はタッソの文学を絵画化した最初の作品である。アンニーバレは「ヴィーナスとアドニス」や「ヴィーナスとマルス」といった伝統的な図像を転用し、アルミーダの宮殿にくつろぐ2人を描いている。彼らを草むらから覗く2人の戦士は、画中で鑑賞者の視線を繰り返すことで、鑑賞者を画中の世界に引き込む[1]

本作の制作年については推測の域を出ない。手がかりとなるのはアグッキの1603年4月23日の記述で、彼はタッソの物語を描いた絵画を見に行き、その折に予期せずアンニーバレの『眠るヴィーナス』 (コンデ美術館シャンティイ) を見たと述べているが、タッソの物語の絵画というのが本作のことである。アグッキの文面には、ブドウの収穫期で主人が留守の時に絵画を見たとあるので、本作は前年の1602年秋には完成していたことになる。アグッキはわざわざ本作を見に行ったくらいなので、本作は完成後それほど時間が経っていなかったと思われる。したがって、作品は1601-1602年に制作されたと推定される[1]

本作は、アンニーバレもしくは助手との合作とされる。アンニーバレの工房が形成されるのは1602年以後のことである。したがって、もし作品が1601年に描かれたのなら、アンニーバレが1人で描いたと考えるべきであり、1602年に描かれたのなら助手の手を認める可能性が生じる。実際、この絵画には、アンニーバレの他の作品の水準に達していない部分があるのも確かである。同時に、助手が制作に関わったとしても、アンニーバレが素描を提供し、仕上げに相当手を入れたであろうことも確かである[1]

脚注 編集

  1. ^ a b c d e f ナポリ宮廷と美 カポディモンテ美術館展-ルネサンスからバロックまで-、2010年、82頁。

参考文献 編集

外部リンク 編集