ロスチャージ裁判(ロスチャージさいばん)とは、日本のコンビニエンスストア最大手であるセブン-イレブン本部と、その加盟店の間でおこった裁判である。

最高裁判所判例
事件名 不当利得返還請求事件
事件番号 平成17(受)957
最高裁判所第二小法廷
判例集 集民 第224号521頁
裁判要旨

コンビニエンス・ストアのフランチャイズ・チェーンを運営する甲とその加盟店の経営者である乙との間の加盟店基本契約の条項中に、乙は甲に対し加盟店経営に関する対価として「売上総利益(売上高から売上商品原価を差し引いたもの)」に一定の率を乗じた額を支払う旨の定めがある場合において、

  1. 「売上商品原価」という上記文言は、企業会計上一般に言われている売上原価を意味するものと即断することはできないこと
  2. 本件契約書の付属明細書には廃棄ロス原価(消費期限間近などの理由により廃棄された商品の原価合計額)及び棚卸ロス原価(帳簿上の在庫商品の原価合計額と実在庫商品の原価合計額の差額であって、万引きや各店舗の従業員の商品等の入力ミスなどを原因として発生した金額)が営業費となることが定められ、甲の担当者は、上記契約が締結される前に、乙に対し、それらは営業費として加盟店経営者の負担であることを説明していたこと、
  3. 乙が上記契約締結前に甲から店舗の経営委託を受けていた期間中,当該店舗に備え付けられていた手引書の損益計算書についての項目には、「売上総利益」は売上高から「純売上原価」を差し引いたものであり、「純売上原価」は「総売上原価」から「仕入値引高」、「商品廃棄等」及び「棚卸増減」を差し引いて計算されることが記載されていたこと
など判示の事情の下では、上記契約条項所定の「売上商品原価」は、実際に売り上げた商品の原価を意味し、廃棄ロス原価及び棚卸ロス原価を含まないものと解されるから、これらは、乙が支払うべき加盟店経営に関する対価の上記算定に当たり、売上高から控除されない。
最高裁判所第二小法廷
裁判長 津野修
陪席裁判官 今井功中川了滋古田佑紀
意見
多数意見 全員一致
意見 今井功、中川了滋(1.-2.について)
反対意見 なし
参照法条
民法91条
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フランチャイザー(本部)対フランチャイジー(加盟店)では日本初の本格的な法廷闘争であり、セブン-イレブンに限らず、現在のコンビニエンスストア業界の会計方式が世間一般に知られるようになったきっかけの裁判でもある。

概要 編集

コンビニエンスストアにおける損益計算は、企業会計上で一般的に行われている計算と違い、廃棄ロス(販売期限切れや汚破損などで販売できなくなった商品)や棚卸しロス(帳簿上の在庫と実際の在庫の差)にもロイヤリティーをかける悪慣習がある。そのことについて、宮城県内でセブン-イレブン店を運営しているオーナーら5名が、同本部に対して損害賠償を求めた裁判である。

平成17年2月24日東京高等裁判所は加盟店オーナーの言い分を認めセブン-イレブン本部に約2,243万円の支払いを命じる判決を出す[1]。しかし、セブン-イレブン側はこの判決を不服とし上告

平成19年6月11日最高裁判所は東京高裁の先判決を破棄し差戻す判決をし、事実上、セブン-イレブン本部の逆転勝訴となった。

裁判の争点 編集

ロスチャージとは廃棄ロスや棚卸ロスした商品に対して、契約に基づいて加盟店が仕入れ金額の全額(=仕入れ金額の原価と負担となるように(つまり、本部の仕入れ負担が発生しないように)粗利を算出し、この粗利に基づいて加盟店がロイヤリティを支払う取り決めである。

一般的な企業会計上の基準ではこの様な算定がされていなかったり、フランチャイズ契約書に記載がない事(実際は記載されている)が最高裁まで争われたが、契約書や契約締結前の事前説明で認識できるものとの判断を下し、加盟店側の訴えを退けた。

この会計基準は2018年現在のコンビニ大手チェーンでも採用されている。

脚注 編集

  1. ^ セブンイレブン廃棄ロス訴訟、本部敗訴も報道されず - マイニュースジャパン、2005年8月24日

関連項目 編集

外部リンク 編集

  • 最高裁判所第二小法廷判決平成19年6月11日最高裁判所裁判集民事224号521頁、平成17年(受)第957号『不当利得返還請求事件』(判例情報。2018年1月12日閲覧)