主要部内在型関係節:internally-headed relative clauses)とは、関係節の一種であり、被修飾名詞(主要部)をその内部に含むを指す。

概説 編集

世界の言語では様々な関係節化のストラテジーが用いられているが、その中には主要部となる名詞が関係節の外に現れるものと、関係節の内側に現れるものが存在する。前者は主要部外在型関係節と呼ばれる一方、後者は主要部内在型関係節と呼ばれる。

以下はバンバラ語西アフリカマンデ語派)におけるその主要部内在型関係節の例である。

(1)    Tyὲ  be  [n  ye  so  min  ye]  dyɔ 
その男  PRES  私  PST  家  見る  建てる 
「その男は私が見た家を建てている。」[1]

例文(1)において、名詞so「家」はそれを修飾する節(「私が見た」)の中に生起している。

日本語の主要部内在型関係節 編集

現代日本語においては、主要部外在型関係節に加えて、主要部内在型関係節も用いられることが知られている。

主要部外在型関係節

  • 「[皿の上にあった]りんごをくすねた。」[2]

主要部内在型関係節

  • 「[りんごが皿の上にあった]のをくすねた。」[2]

日本語の主要部内在型関係節は、「臨場性」「現場性」を伝える構文として特に書き言葉において用いられる[3]

地理的分布 編集

主要部内在型関係節を持つ言語は世界中に存在するが、とりわけ北アメリカの言語英語版、及び北東インド周辺(ミャンマー中国の隣接地帯を含む)の言語では頻繁に見られる[4]

出典 編集

  1. ^ Comrie 1989, p. 145.
  2. ^ a b 野村 2013, p. 1.
  3. ^ 堀江, 秋田 & 北野, p. 74.
  4. ^ Dryer 2013.

参考文献 編集

  • Comrie, Bernard (1989). Language universals and linguistic typology: syntax and morphology. 2nd edition.. Chicago: University of Chicago Press 
  • 堀江, 薫、秋田, 喜美、北野, 浩章「屈折・派生」『言語学類型論』開拓社、2021年。 

関連項目 編集