二塩化二硫黄(にえんかにいおう、英語: Disulfur dichloride、sulfur monochloride化学式:S2Cl2[4][5][6][7])は硫黄塩素から成る無機化合物である。 化学構造はCl−S−S−Clの形をしており、過酸化水素の構造と類似している。二塩化二硫黄の純物質は黄色の液体である[8]構造異性体チオスルホキシド(化学式:S=SCl2)は二塩化二硫黄に紫外線が照射された時に化学変化して一時的に生成する。

二塩化二硫黄
識別情報
CAS登録番号 10025-67-9 チェック, 85408-26-0 (isobutenate) チェック
PubChem 24807
ChemSpider 23192 チェック
19158348 (isobutenate) ×
UNII NJ7YR2EV0D ×
EC番号 233-036-2
国連/北米番号 3390
MeSH Sulfur+monochloride
RTECS番号 WS4300000
特性
化学式 S2Cl2
モル質量 135.04 g/mol
外観 薄い琥珀色から赤みを帯びた黄色、油状の液体[1]
匂い 悪臭、刺激臭[1]
密度 1.688 g/cm3
融点

−80 °C, 193 K, -112 °F

沸点

137.1 °C, 410 K, 279 °F

への溶解度 加水分解する
溶解度 エタノールベンゼンエーテルクロロホルム四塩化炭素などに可溶[2]
蒸気圧 7 mmHg (20 °C)[1]
磁化率 −62.2·10−6 cm3/mol
屈折率 (nD) 1.658
構造
配位構造 C2, ゴーシュ
双極子モーメント 1.60 D [2]
危険性
安全データシート(外部リンク) ICSC 0958
EU分類 有毒 (T)
有害 (Xn)
腐食性 (C)
環境への危険性 (N)
NFPA 704
1
2
1
Rフレーズ R14, R20, R25, R29, R35, R50
Sフレーズ (S1/2), S26, S36/37/39, S45, S61
引火点 118.5 °C (245.3 °F; 391.6 K)
発火点 234 °C (453 °F; 507 K)
許容曝露限界 TWA 1 ppm (6 mg/m3)[1]
最低致死濃度 LCLo 150 ppm (mouse, 1 min)[3]
関連する物質
関連する塩化硫化物 二塩化硫黄
塩化チオニル
塩化スルフリル
関連物質 二フッ化二硫黄
二臭化二硫黄
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

合成

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二塩化二硫黄は硫黄の部分塩素化によって合成される。常温でも反応性は良い。

S8 + 4 Cl2 → 4 S2Cl2 ΔH = −58.2 kJ/mol

また、二硫化炭素の塩素化によっても得られる。二塩化二硫黄の純物質は過剰量の硫黄との混合物である黄橙色の液体からの蒸留によって得られる。

反応

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硫黄と塩素からの二塩化二硫黄の合成において過剰量の塩素が存在する場合は二塩化硫黄が生成する。 この場合、液体の色は薄黄色となり、橙赤色を帯びてくる。ただし、この反応は可逆的であるため、放置すると塩素と二塩化二硫黄に分解する。

S2Cl2 + Cl2 ↔ 2 SCl2 ΔH = −40.6 kJ/mol

二塩化二硫黄は多量の硫黄に溶解し、溶液中ではわずかにジクロロポリスルファンが生成する。

S2Cl2 + n S → S2+nCl2

加水分解では二酸化硫黄が生成する。

16 S2Cl2 + 16 H2O → 8 SO2 + 32 HCl + 3S8

硫化水素との反応では二硫化水素などのポリスルファンが生成する。

2 H2S + S2Cl2 → H2S4 + 2 HCl

脚注

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  1. ^ a b c d NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0578
  2. ^ a b Pradyot Patnaik. Handbook of Inorganic Chemicals. McGraw-Hill, 2002, ISBN 0-07-049439-8
  3. ^ Sulfur monochloride”. 生活や健康に直接的な危険性がある. アメリカ国立労働安全衛生研究所英語版(NIOSH). 2024年12月12日閲覧。
  4. ^ Holleman, A. F.; Wiberg, E. Inorganic Chemistry Academic Press: San Diego, 2001. ISBN 0-12-352651-5.
  5. ^ Hartman, W. W.; Smith, L. A.; Dickey, J. B. (1934). "Diphenylsulfide". Organic Syntheses (英語). 14: 36.; Collective Volume, vol. 2, p. 242
  6. ^ R. J. Cremlyn An Introduction to Organosulfur Chemistry John Wiley and Sons: Chichester (1996). ISBN 0-471-95512-4
  7. ^ Garcia-Valverde M., Torroba T. (2006). “Heterocyclic chemistry of sulfur chlorides – Fast ways to complex heterocycles”. European Journal of Organic Chemistry 4 (4): 849–861. doi:10.1002/ejoc.200500786. 
  8. ^ F. Fehér "Dichlorodisulfane" in Handbook of Preparative Inorganic Chemistry, 2nd Ed. Edited by G. Brauer, Academic Press, 1963, NY. Vol. 1. p. 371.