光明真言(こうみょうしんごん)は、正式名称は不空大灌頂光真言(ふくうだいかんぢょうこうしんごん)という密教真言である。密教経典である「不空羂索神変真言経(菩提流志訳)」や「不空羂索毘盧遮那仏大灌頂光真言(不空訳)」に説かれる。

光明真言曼荼羅

概要 編集

23の梵字から成り、最後の休止符「ダ」を加えて、合計24の梵字を連ねる。

梵字
 
𑖌𑖼𑖀𑖦𑖺𑖑𑖪𑖹𑖨𑖺𑖓𑖡𑖦𑖮𑖯𑖦𑖲𑖟𑖿𑖨𑖯𑖦𑖜𑖰𑖢𑖟𑖿𑖦𑖕𑖿𑖪𑖯𑖩𑖢𑖿𑖨𑖪𑖨𑖿𑖝𑖿𑖝𑖧𑖮𑗝𑖽
デーヴァナーガリーによる表記: ओं अमोघ वैरोचन महामुद्रा मणि पद्म ज्वाल प्रवर्त्तय हूं
発音と意味
oṃ amogha vairocana
オーン 不空なる御方よ 毘盧遮那仏(大日如来)よ
オン アボキャ ベイロシャノウ
唵 阿謨伽 尾盧左曩
mahāmudrā[1][2][3] maṇi padma
偉大なる印を有する御方よ 宝珠よ 蓮華よ
マカボダラ マニ ハンドマ
摩訶母捺囉 麼抳 鉢納麼
jvāla pravarttaya hūṃ
光明を 放ち給え フーン(聖音)
ジンバラ ハラバリタヤ ウン
入嚩攞 鉢囉韈哆野 吽

なお、amogha(アボキャ)は不空成就如来を、vairocana(ベイロシャノウ)は大日如来を、mahā-mudra(マカボダラ)は阿閦如来を、maṇi(マニ)は宝生如来を、padma(ハンドマ)は阿弥陀如来を指すと解釈され、金剛界五仏(五智如来)に対して光明を放つように祈願する真言である[4][5]

密教ではその神秘性を保つために梵字や陀羅尼を翻訳せずに、そのまま梵音を読誦するのが通例である。日本では、平安時代から光明真言法による加持が修されてきた。

なお、上記は真言宗(智山派以外)の唱え方であり、真言宗智山派および天台宗では異なっている。

  • おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まに はんどま じんばら はらはりたや うん(真言宗智山派の場合)
  • おん あぼきや びろしゃな まかぼだら まに はんどま じんばら はらばりたや うん(天台宗の場合)

功徳・利益 編集

「不空羂索毘盧遮那仏大灌頂光真言(不空訳)」によれば、以下の功徳・利益が説かれる。

  • 過去の一切十悪五逆四重諸罪や、一切の罪障を除滅する。
  • 十悪五逆四重諸罪によって、地獄・餓鬼・修羅に生まれ変わった死者に対し、光明を及ぼして諸罪を除き、西方極楽国土に往かせる。
  • 先世の業の報いによる病人に対し、宿業と病障を除滅する。

光明真言曼荼羅 編集

五字真言(अ वि र, हूं खांa vi ra hūṃ khāṃ、ア・ビ・ラ・ウン・ケン)の五つの梵字(地・水・火・風・空の五大種子)を、頭から順に、向かって中央・下・左・上・右に配置し、それらを取り囲むようにして光明真言の24梵字を円周状に配置した「光明真言曼荼羅」も伝わる。

脚注 編集

外部リンク 編集