免疫グロブリン療法
免疫グロブリン療法(めんえきグロブリンりょうほう)(英: Intravenous immunoglobulin、略称: IVIG)、免疫グロブリン大量療法とは、Fc活性をもつIgGを静脈投与する治療法である。時に大量免疫グロブリン療法、まれに免疫グロブリン大量点滴静注療法と呼ばれる。
投与される製剤には1000人を超える献血者の血漿から抽出された多価IgG(免疫グロブリンG)が含まれている。IVIGの効果は2週間から3カ月続く。以下の3つの主要な分類群に対する治療法として主に用いられている。
- 免疫不全(X連鎖無γグロブリン血症、低γグロブリン血症、低い抗体レベルを伴う獲得免疫障害)
- 自己免疫疾患(例: 特発性血小板減少性紫斑病)および炎症性疾患(例: 川崎病)、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症など
- 急性感染症
目次
作用機序編集
不明な点が多いがいくつかの仮説が存在する。
適応症編集
感染症
自己免疫疾患
- 川崎病[1]
- ギラン・バレー症候群/フィッシャー症候群[2]
- 特発性血小板減少性紫斑病[1]
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)[1]
- 重症筋無力症[1]
- 皮膚筋炎[1]
- 多発性硬化症[1]
- 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(チャーグ・ストラウス症候群)
- 尋常性天疱瘡
投与方法編集
γグロブリンとして0.4 g/kgを5日間連続点滴静注を行う方法が一般的である。投与方法としては投与開始の始め1時間は0.01 mL/kg/min、徐々に速度を上げて0.03 mL/kg/minとし重大な副作用がなければ翌日からは最高速度で投与する。
ml/kg/min | 単位 | 体重10kg | 体重50kg | 体重70kg | |
---|---|---|---|---|---|
開始から1時間 | 0.01 | ml/hr | 6 | 30 | 42 |
その後の最高速度 | 0.03 | ml/hr | 18 | 90 | 126 |
副作用編集
頻度の多い副作用としては肝機能障害、悪寒、発熱など認められ、稀であるが重大な副作用として過粘稠症候群、ショック、急速投与による肺水腫などが知られている。
発症時期 | 副作用名 | 対処法 |
---|---|---|
投与後30分以内 | 頭痛、悪寒、筋肉痛、胸部苦悶感、全身倦怠感、悪心、発熱 | 点滴速度を遅くすることで対応。1〜2日で消失する。 |
治療中または治療後 | 無菌性髄膜炎、皮疹(汗疱)、尿細管壊死、血栓塞栓症、低ナトリウム血症、顆粒球減少症 | 数日から1ヶ月ほど持続しその後消失 |
適応禁忌編集
ヒト免疫グロブリン過敏症、IgA欠損症、重篤な肝不全、重篤な腎不全、血漿浸透圧が上昇する疾患、最近の深部静脈血栓症の既往などで禁忌となる。IgA欠損症患者では免疫グロブリン製剤に含まれるIgAに対してアナフィラキシー反応を起こすことがある。ただしこの合併症は極めてまれである。
出典編集
- ^ a b c d e f g 野村恭一「神経疾患に対する免疫グロブリン療法」、『日本内科学会雑誌』第96巻第9号、2007年9月10日、 2046-2053頁、 doi:10.2169/naika.96.2046、 NAID 10020166210。
- ^ 日本神経学会 2013.
参考文献編集
- 日本神経学会、「ギランバレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン」作成委員会 『ギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群診療ガイドライン2013』 南江堂、2013年。ISBN 978-4-524-26649-4。
- 献血ベニロンに関する資料
- 免疫グロブリン製剤の適応