メインメニューを開く

団地妻(だんちづま)とは、日本の団地(企業の社宅を含む集合住宅)に入居している主婦のことである。

現実社会における団地妻の実態については外部から窺い知ることのできない部分が多い。しかし、団地妻という形象は、実際の主婦についてよりも、主婦同士の織りなす人間関係を描いた昼ドラの定番的テーマとしてとか、ポルノ作品や官能小説などで描写される、夫の留守中に不倫するといったほぼクリシェと化したイメージのように、フィクションの世界で独特のイメージを形成している。

目次

由来編集

「団地妻」という用語自体の初出は、日活ロマンポルノの第1作・「団地妻 昼下りの情事」(1971年)である。この作品がヒットしてシリーズ化し、またフィクションのテーマとしてしばしば模倣されたために、「団地妻」という形容はすっかり淫靡なニュアンスをおびるようになり、ポルノ作品のテーマの定番となっていった。

これが生まれた背景としては当時の社会情勢がある。当時の日本は高度経済成長期であって、地方の若者は職を求めて都市部に流入し多くはサラリーマン[1]となったが、都市部では急速な人口増加により深刻な住宅難が発生した。それを解消するため、1960年代には日本住宅公団により当時としては良質な団地が大量に供給され[2]、そういった団地は当時の庶民にとり憧れの存在であった。こういった事情から結婚した中流サラリーマンの夫婦が最初に住むところといえば団地であった[3]。そして夫は企業戦士となって猛烈に働き、妻は専業主婦[4]として暮らしていた。このため、「会社員の夫は仕事一筋で構ってくれない。そこで夫が仕事に出かけている昼下がり、専業主婦の若い人妻が暇と寂しさと情欲をもてあまして、団地にやってきた男と密かに不倫に走る」という設定に現実感があったのである。

その後『団地妻』シリーズは製作され続けたが、時が経つと共に住民の高齢化もあってイメージが合わなくなったのか、1979年を最後にシリーズは終わる。2012年現在においては団地の多くは老朽化し住民も高齢化しているとされ上記のイメージとは違っているが、「団地妻」という形象そのものはクリシェとして残っている。

イメージ編集

フィクションにおいて「団地妻」は次のようなイメージで描かれることが多い。

  • 集合住宅に住む若い夫婦で、妻はごく平凡な専業主婦である。
  • 夫は仕事に忙しいため妻に構ってくれない。結果として妻は性的に欲求不満を感じている。
  • 都会の生活になじめていない、あるいは近所付き合いが乏しい、夫が相談相手になってくれない、などの理由から、妻は孤独を感じている。
  • 専業主婦としての単調な生活に飽き、また社宅の場合は社員の奥さん同士の人間関係に疲れ、閉塞感を抱いている。また、夫を仕事に子供を学校に送り出し、午前中に家事を終えると、午後(昼下がり)は暇をもてあましている。このため妻は変化や刺激を欲している。
  • そんなところにやってきた男(例:配達員、営業マン、クリーニング屋さん、新聞屋さん、もしくは出前で来た従業員)に迫られた挙句に関係を持ってしまう。

作品編集

ほか多数

関連文献編集

  • 大山顕、佐藤大、速水健朗「団地妻はいかに生まれしか」『団地団 ~ベランダから見渡す映画論~』キネマ旬報社、2012年。ISBN 9784873763866
  • 寺脇研「団地妻シリーズの衝撃」『成人映画の時代』光文社〈光文社新書メールマガジン〉、2010年12月。

脚注編集

  1. ^ 当時のサラリーマンには新中間層中産階級というイメージがあり、その妻も同様であった。一億総中流も参照。
  2. ^ 詳細は公団住宅を参照
  3. ^ なお当時の住民の多くはずっと団地に住み続けるわけではなく、年を重ねて資金を貯めると新興住宅地(典型的にはニュータウン)に一戸建てを建てて移っていった。そのため住人は若く一定の収入があり、その妻にも「若奥さん」というイメージがあった。
  4. ^ 当時は既婚女性は主婦として夫を支え家庭を切り盛りすることが求められており、パートタイマー等として外に出て働くということはあまり良く思われていなかった。なお男女雇用機会均等法が成立したのは1985年である。

関連項目編集