基本クラスライブラリ: Base Class Library、通称BCL)は共通言語基盤 (CLI) における標準ライブラリである。共通言語仕様 (CLS) を満たす全てのCLI言語から利用可能となっている。

ボーランドマイクロソフトが1999年6月8日に結んだ特許契約の成果物で、Visual Component Library (VCL) から派生したライブラリとなっている。また、一部のコンポーネント[要説明]についてはバグまでもが完全移植されている。なお、これらのバグについては互換性維持のために修正されず現在も残されており、新たなコンポーネントの追加でその問題に対処している。

CLIは多数の共通機能をカプセル化するためにBCLを含んでおり、それはプログラマの仕事をより簡単にする。 ネットワークやセキュリティといった、C/C++を含む他のほとんどの言語の基礎ライブラリよりもずっと大きな領域をサポートしており、Javaクラスライブラリと比肩しうる。 CLIの最初の実装である.NET Frameworkは、BCLの起源である。BCLにおけるほとんどの機能はMono.NET Coreにも移植されている。BCLはときどきFramework Class Library (FCL) として間違って言及されることがあるが、これは、実際はマイクロソフト固有の名前空間を含むスーパーセットである。

BCLは.NET Frameworkのそれぞれのバージョンで更新・機能追加されている。

名前空間 (namespace) 編集

いくつかの名前空間 (namespace) は、マイクロソフトによって公式にBCLの一部だとみなされているものもあれば、そうでないものもあるかもしれない。しかし、マイクロソフトによるCLIの実装である.NET Frameworkによって提供されるライブラリの一部としては、すべてが含まれている。

標準化された名前空間 編集

ECMA 335 6th EditionおよびISO/IEC 23271:2012 standardsとして標準化された名前空間について記述する[1][2]

System
この名前空間はプログラミングの需要の核たるものを含んでいる。各種の基本数値型、文字列型 (String)、日時型 (DateTime)、論理値型 (Boolean) などのクラスと構造体、コンソール (Console)、数学関数と数学定数 (Math)、属性例外および配列など、各種の基本クラスやインターフェイス、環境をサポートしている。
System.Collections
プログラミングで使用される多くの共通なコンテナあるいはコレクションクラスを定義している。リスト (ArrayList)、キュー (Queue)、スタック (Stack)、ハッシュ (Hashtable)、連想配列 (実装としてはHashtable, DictionaryBase, SortedList) などである。
.NET Framework 2.0以降では、ジェネリックプログラミングのサポート (Generic) を含んでいる[3]
System.Collections.Generic
ジェネリックコレクションを定義するインターフェイスとクラスが含まれています。
System.Diagnostics
アプリケーションに診断機能を提供する。イベントログ、パフォーマンスカウンタ、トレース、およびシステムプロセスに関する相互作用に関する機能である。[4]
System.Globalization
国際化対応したアプリケーションを記述するための手助けとなる機能を提供する。文化 (culture) に結び付けられた情報、言語、国や地域、カレンダーの使用法、日付のフォーマット法、通貨、数字などが定義されるようになる。[5]
System.IO
異なるストリーム (stream)、ファイルやほかのストリームを読み書きする機能を提供する。ファイルシステムに対するアクセスする機能も提供する。[6]
System.Net
現代的なネットワークで使用される多くのプロトコルのためのプログラミングインターフェイスを提供する[7]HTTP, FTP, SMTPなど。セキュアな通信としてTLSなどが提供される。
System.Reflection
型、メソッド、フィールドに対するオブジェクトビューを提供する。これにより、コードの動的な生成や型を行使する能力が得られる[8]。CLRのリフレクション機能にアクセスするAPIを公開する。
System.Runtime
アプリケーションやCLRの実行時の振る舞いを管理する機能を提供する。COMやネイティブコードと相互運用するいくつかの能力により、分散コンピューティングおよびバイナリ形式あるいはSOAP形式へのオブジェクトのシリアライズが実現される[9]
System.Security
CLRセキュリティシステムの下層構造を提供する[10]。この名前空間はアプリケーションにポリシーと権限に基づいたセキュリティを構築する機能を提供する。暗号化サービスなど。
System.Text
さまざまなエンコード、正規表現、より効果の高い文字列の操作メカニズム (StringBuilder) などをサポートする[11]
System.Threading
マルチスレッドプログラミングを容易にする。スレッドの活動とデータへのアクセスの同期を可能にし、またシステムにより供給されたスレッドプールを提供する[12]
System.Xml
XML処理のための標準ベースのサポートを提供する[13]。読み書き、スキーマ、シリアライズ、検索、変換の機能を含む。
System.Diagnostics.CodeAnalysis
分析ツールとの相互作用のためのクラスが含まれる。これらのツールは名前付けやセキュリティ規則といった慣例をコード化するための準拠用のコードを分析するために使用される[14]
System.Diagnostics.Contracts
事前条件や事後条件、そして普遍条件といったプログラム契約を表すための静的クラスを含む。[15]
System.Diagnostics.Eventing
アプリケーションのインストルメントに使用するためのクラスが含まれる。インストルメンテーションを可能にすると、Event Tracing for Windows (ETW) トレース サブシステムにイベントデータを記録する。[16]
System.Diagnostics.PerformanceData
この名前空間内でカウンター データを提供するためのクラスを使用する。カウンターはパフォーマンス モニターのようなコンシューマーにパフォーマンス モニターをさらすために使用される。パフォーマンスカウンターアーキテクチャの完全な解説は、パフォーマンスカウンターを参照すること。[17]
System.Diagnostics.SymbolStore
System.Diagnostics.SymbolStore 名前空間は、Microsoft intermediate language (MSIL) マップのソース行のような、デバッグ シンボル情報の読み書きを可能にするクラスを提供する。.NET Frameworkをターゲットとするコンパイラは、プログラム データベース (PDB) ファイルへのデバッグ シンボル情報を保存できる。デバッガとコードプロファイラーツールは実行時にデバッグ シンボル情報を読める。[18]

標準化されていない名前空間 編集

これらの名前空間はECMAあるいはISO standardとして標準化されておらず、マイクロソフトの実装特有のものである。しかしながら、これらの実装を強制しなくても、これらのうち完全あるいは一部は他のCLI実装に実装されている。

System.CodeDom
このライブラリは実行時にコードを生成し実行する機能を提供する。[19]
System.ComponentModel
コンポーネントおよびコントロールに対する実行時およびデザイン時の振る舞いを実装する機能を提供する。「属性、型のコンバーター、データソースのバインディング、およびライセンスコンポーネントの実装のための」インフラを含んでいる。[20]
System.Configuration
設定のハンドリングのインフラを提供する。[21]
System.Data
この名前空間はADO.NETアーキテクチャを表現する。データアクセスおよびデータサービスのためにプログラマが使用できるコンピュータソフトウェアコンポーネントの集合である[22]
System.Deployment
ClickOnceを使用してアプリケーションをアップグレードする方法をカスタマイズする機能を提供する。[23][24]
System.DirectoryServices
マネージドコードからActive Directoryへのアクセスを提供する。[25]
System.Drawing
GDI+によるグラフィックス機能へのアクセスを提供する。2Dおよびベクターグラフィックス、画像処理、印刷、およびテキストサービスを含む[26]
System.EnterpriseServices
エンタープライズ向けアプリケーションのために、COM+サービスへのアクセスを.NETオブジェクトに提供する。これにより、.NETオブジェクトをより実践的なものとすることができる[27]
System.Linq
IQueryable<T>インターフェイスおよび関連するメソッドを定義する。これによりLINQが追加提供される[28]
System.Linq.Expressions
デリゲートおよびラムダ式により構文木として記述された高レベルなコードが実行時に検査され、実行されることを許可する。[29]
System.Management
情報を検索することができるようになる。「HDDの空き容量がどれだけあるかとか、現在のCPUの機能は何かとか、データベースにどのアプリケーションが接続しているか、など」[30]
System.Media
システム音声やWaveファイルの再生能力を提供する。[31]
System.Messaging
「モニター、およびネットワークの管理者メッセージキューへの接続、送受信、メッセージの検索など」[32] .NET Remoting は提供される機能のもう一つの名称である。この名前空間はWindows Communication Foundationにより取って代わる予定である。
System.Resources
アプリケーションを異なる文化や言語向けに国際化するため、多くの異なるリソースを管理する機能を提供する。[33]
System.ServiceProcess
アプリケーションをWindowsのサービスとして起動する機能を提供する。[34]
System.Timers
「イベントを指定した間隔で発生させる機能を提供する」[35]
System.Transactions
ローカルもしくはネットワーク相手とのトランザクション処理を提供する。[36]
System.Web
さまざまなウェブに関連した機能を提供する。ブラウザ/サーバー間のコミュニケーションおよびXMLウェブサービスを作成することを可能にする。ほとんどもしくはすべてのこれらのライブラリはASP.NETで使用される。
System.Windows.Forms
この名前空間はWindows Formsアーキテクチャを含み、ネイティブのWindowsインターフェイス(Windows API)をラッピングする。これによりWindows向けのGUIアプリケーションをマネージドコードで記述することが可能になる。[37] このシステムはWindows Presentation Foundationにより置き換えられる予定である。

関連項目 編集

.NET frameworkの将来的な機能 編集

参照 編集

  1. ^ .NET architectural components”. Microsoft Docs. マイクロソフト (2020年10月5日). 2021年5月9日閲覧。
  2. ^ ECMA-335 6th Edition / Common Language Infrastructure (CLI) Partitions I to VI”. Ecma International (2012年6月). 2021年5月9日閲覧。
  3. ^ MSDN Documentation - System.Collections Namespace
  4. ^ MSDN Documentation - System.Diagnostics Namespace
  5. ^ MSDN Documentation - System.Globalization Namespace
  6. ^ MSDN Documentation - System.IO Namespace
  7. ^ MSDN Documentation - System.Net Namespace
  8. ^ MSDN Documentation - System.Reflection Namespace
  9. ^ MSDN Documentation - System.Runtime Namespace
  10. ^ MSDN Documentation - System.Security Namespace
  11. ^ MSDN Documentation - System.Text Namespace
  12. ^ MSDN Documentation - System.Threading Namespace
  13. ^ MSDN Documentation - System.Xml Namespace
  14. ^ MSDN Documentation - System.Diagnostics.CodeAnalysis Namespace
  15. ^ MSDN Documentation - System.Diagnostics.Contracts Namespace
  16. ^ MSDN Documentation - System.Diagnostics.Eventing Namespace
  17. ^ MSDN Documentation - System.Diagnostics.PerformanceData Namespace
  18. ^ MSDN Documentation - System.Diagnostics.SymbolStore Namespace
  19. ^ MSDN Documentation - System.CodeDom Namespace
  20. ^ MSDN Documentation - System.ComponentModel Namespace
  21. ^ MSDN Documentation - System.Configuration Namespace
  22. ^ MSDN Documentation - System.Data Namespace
  23. ^ MSDN Documentation - System.Deployment.Application Namespace
  24. ^ MSDN Documentation - System.Deployment.Internal Namespace
  25. ^ MSDN Documentation - System.DirectoryServices Namespace
  26. ^ MSDN Documentation - System.Drawing Namespace
  27. ^ MSDN Documentation - System.EnterpriseServices Namespace
  28. ^ MSDN Documentation - System.Linq Namespace
  29. ^ MSDN Documentation - System.Linq.Expressions Namespace
  30. ^ MSDN Documentation - System.Management Namespace
  31. ^ MSDN Documentation - System.Media Namespace
  32. ^ MSDN Documentation - System.Messaging Namespace
  33. ^ MSDN Documentation - System.Resources Namespace
  34. ^ MSDN Documentation - System.ServiceProcess Namespace
  35. ^ MSDN Documentation - System.Timers Namespace
  36. ^ MSDN Documentation - System.Transactions Namespace
  37. ^ MSDN Documentation - System.Windows.Forms Namespace

外部リンク 編集