定置網(ていちあみ、fixed fishing net、単にfixed netあるいはset netと呼ばれることもある)とは、定置網漁に用いる固定式漁具の一種。なお小型のものは水生生物の調査器具でもある[1]。定置網は沿岸を回遊する魚を遮る垣網とそれにそって魚が入る囲網、主網によって構成されている。[2]魚は回遊中に障害物にぶつかると、より水深が深い沖のほうに向かって進行方向を変える習性があり、これを利用して回遊魚を垣網にそって囲網へと誘導する。魚は囲網を泳ぎ回るうちに、奥にある主網へと誘導される仕組みである[3]。定置網は漁獲量が多いだけでなく、陸地から漁場までの距離が近いため、高鮮度の魚介類を水揚げすることができる。さらに漁場が近いということは漁労現場の見学・学習にも利点を有しており、観光業の活性化という点でも地域への経済波及効果が大きい。一方、定置網の設置には多額の資金を要し、急潮や台風の被害を受けることもあるという弱点も存在する[4]

富山県射水市沖の定置網

漁具 編集

袋状又は垣根状の魚網とそれを海底の一定の場所に固定・留置する杭やロープから構成される。漁具の主部である魚網の内部に滞留させた魚群を、網ごと引き上げたり、船上から刺し網などで捕獲する。

漁業法では、定置網漁とは水深27m以上の海域に設置された定置網を用いるものとされている。しかし現在でははるかに深い水深100m以上に設置されている定置網もある。

2002年の世界定置網サミットが縁となり、2005年から国際協力でタイへの「越中式定置網」の技術指導が行われた[5]

調査器具 編集

小型のものに水路等に設置して移動する魚や水生昆虫を捕獲する調査器具の定置網がある[1]

脚注 編集

  1. ^ a b 野外調査”. 農林水産省. 2020年2月2日閲覧。
  2. ^ 日本海学推進機構 キッズ日本海学
  3. ^ 神奈川県HP 相模湾の定置網(ていちあみ)漁業
  4. ^ 玉置泰司 定置網漁業の今日的評価 地域漁業研究第58巻,第1号,2018
  5. ^ 400年の歴史 越中式定置網を世界へ - JICA北陸