小鯛王(おだいのおおきみ、生没年不詳)は、奈良時代中期の歌人置始工置始多久美(おきそめのたくみ)とも呼ばれる。

記録 編集

生没年・出自・経歴など不詳。

万葉集』巻16の「夕立の雨うち降れば春日野の尾花が末の白露思ほゆ」(万葉集16-3819)「夕づく日さすや川辺に作る屋の形をよろしみ諾(うべ)よそりけり」(同16-3820)の2首の歌の左注に「小鯛王は更の名を置始多久美といふ、この人なり(小鯛王者更名置始多久美、斯人也)。」と記述されており、『藤氏家伝』武智麻呂伝に神亀年間の風流侍従の1人として名前が見える置始工(おきそめのたくみ)と同一人物と見られる。

左注には、「小鯛王、宴居の日に、琴を取れば登時(すなはち)必ず先づ、この歌を吟詠す」ともあり、3820番の「うべよそりけり(つい足が向く)」という歌の意味と付合していない。これは作者の名が工匠を意味する「タクミ」であることと、この2首の内容が関係があるのではないかと考えられる[1]

脚注 編集

  1. ^ 小学館『萬葉集』五p256注

参考文献 編集

  • 坂本太郎平野邦雄監修『日本古代氏族人名辞典』吉川弘文館、1990年。
  • 『萬葉集』(五)完訳日本の古典7、小学館、1986年