床削り(ゆかけずり)は、画家ギュスターヴ・カイユボット1875年に制作した油彩画である。

『床削り』
フランス語: Raboteurs de parquet
英語: The Floor Scrapers
作者ギュスターヴ・カイユボット
製作年1875年 (1875)
種類油彩キャンバス
寸法102 cm × 147 cm (40 in × 58 in)
所蔵オルセー美術館フランスの旗 フランス パリ
登録RF 2718

概要 編集

ブルジョワ階級の邸宅の床を仕上げるためにやスクレーパーで削る仕事をしている都市労働者を描いた作品である[1]

当時、ジャン=フランソワ・ミレーが『落穂拾い』で小作農を描いたり、ギュスターヴ・クールベが『石割り人夫』で田舎の労働者を描いた例はあったが、都市労働者を描いた作品は少なかった。カイユボットの場合、クールベやミレーと異なり、社会的・倫理的・政治的メッセージを排除し、労働者らの仕草、仕事道具、小物などを冷静に写実的に描いているところに特徴が見られる[2]

カイユボットは、レオン・ボナのもとでアカデミックな絵画を学んでいた。この作品では、高い視点からの遠近法が強調され、床板の並び方は伝統的な約束に則ったものとなっている。裸の上半身は、古代の英雄のように描かれている[2]

カイユボットは、この作品を1875年サロン・ド・パリに提出したが、落選した。一部の批評家からは、主題が低俗であると評された[2]

 
カイユボットによる他のバージョンの『床削り』1876年。

カイユボットは、この作品を含む2点の『床削り』を、『ピアノを弾く若い男』、『窓辺の若い男』などブルジョワ風俗を描いた作品とともに、1876年印象派第2回グループ展に出展した[3]。印象派展に対しては、全体的に厳しい批評が多かったものの、好意的な評価としては、ルイ・エドモン・デュランティが、カイユボットの鋭いデッサン力や都市風俗の描写を称賛した。一方、エミール・ゾラは、2点の『床削り』について、写真のような正確すぎる描写のために芸術的に劣ると評した[4]

来歴 編集

カイユボットが亡くなった1894年、彼の遺言執行者となったピエール=オーギュスト・ルノワールを通じてフランス政府に寄贈され、1896年リュクサンブール美術館に受け入れられた。1929年ルーヴル美術館に移管され、1986年オルセー美術館に移管されて現在に至る[5]

脚注 編集

  1. ^ 床の鉋かけ(床削り、床に鉋をかける人々)”. salvastyle.com. 2019年5月5日閲覧。
  2. ^ a b c Les raboteurs de parquet [The Floor Planers]”. Musée d'Orsay. 2019年5月5日閲覧。
  3. ^ 島田 (2009: 266-67)
  4. ^ 島田 (2009: 120-22)
  5. ^ Raboteurs de parquet”. Musée d'Orsay. 2019年5月5日閲覧。

参考文献 編集

  • 島田紀夫『印象派の挑戦――モネ、ルノワール、ドガたちの友情と闘い』小学館、2009年。ISBN 978-4-09-682021-6