弐臣伝
『弐臣伝』(じしんでん)または『欽定国史弐臣表伝』とは清の正史(欽定の史書)の1つであり、明から清へ鞍替えした120人(父兄の附としてリストされる3人を含めると実数は123人)の漢人の官僚の伝記である。「弐臣」とは「二朝に仕えた節操のない臣」のことで、当時は投満の漢奸を指す言葉である[1]。甲類と乙類の2巻からなる[2]。
概要
編集清の入関から130年を経た乾隆帝の時代に編纂されるものである。当時の社会情勢は清の初期と大きく異なり、明末に清の侵攻に抵抗し続けた人物を「忠臣」と評価することに対し、率先に清に帰降した、いわゆる清の建国の有功者を「弐臣」と評価するようになった。これらの「弐臣」をテーマとする史書はこの弐臣伝である[2][1]。
甲類と乙類は清の建国に対する功労の大きさによって区分される。甲類は清廷の役に立った51人で、乙類はあまり評価すべきところがない69人である。また、120人のうち、文官は63人(甲14人、乙49人)、武官は57人(甲37人、乙20人)である[2]。
- 甲類上「入本朝而能没王事者」9人
- 甲類中「顕有勲績者」10人
- 甲類下「著有労効者」32人
- 乙類上「略無事蹟者」23人
- 乙類中「後経獲罪者」18人
- 乙類下「曽経従賊及初為賊党者」28人
リスト
編集以下の出典による[3]
甲類
編集- 甲類上:劉良臣、孫定遼、孔有徳、王鼇永、王正志、徐一范、徐勇、郝効忠、馬得功
- 甲類中:李永芳、孟喬芳、張存仁、劉武元、祖可法、尚可喜、洪承疇、劉芳名、李国英、張勇
- 甲類下:祝世昌、鮑承先、王世選、祖大寿、祖沢潤・祖沢溥兄弟、祖沢洪、鄧長春、耿仲明、全節、呉汝玠、宋権、王宏祚、李化熙、任濬、曹溶、衛周允、李鑑、胡茂禎、高第、孔希貴、張煊、徐起元、賈漢復、張天禄・張天福兄弟、馬寧、常進功、盧光祖、高進庫、霍達、呉六奇、陳世凱、田雄
乙類
編集脚注
編集- ^ a b 岡本さえ (03 1976). “弐臣論”. 東洋文化研究所紀要 (東京大学東洋文化研究所) 68: 101-177. hdl:2261/2220. ISSN 05638089 .
- ^ a b c 渡辺修「「弐臣伝」と山東の「弐臣」」『史苑』第37巻第1号、1976年12月、1-12頁、doi:10.14992/00001136、ISSN 03869318。
- ^ “欽定國史貳臣表傳-數位典藏與學習聯合目錄”. catalog.digitalarchives.tw. 2022年2月9日閲覧。