徳利
徳利(とっくり、とくり)とは、首が細く下部が膨らんだ容器の一種。現在では主に日本酒を注ぐために使われる。
概要編集
陶製または金属製、ガラス製で、内容量によって180 mLから1.8 L程度まである。現在ではそのなかでも、燗酒に用いる180 mLから360 mL程度の容量のものがよく売られている。
注いだとき「トクトク」と音がするものが好まれ、この意味では口が広すぎてはならないが、一方で狭すぎては内容物がスムーズに出てこない。両者の兼ね合いからは、小指が入る程度のものが適している。
酒器としては、鎌倉時代頃までは瓶子が使われていたが、注ぎ口が小さく酒を注ぐに不便な事から、次第に徳利に代わっていった。瓶子と比べると徳利の形は多種多様であり、共通性は瓶子より多少注ぎ口が広いという程度である。
ガラス瓶やプラスチック製の液体容器が普及する以前には、酒に限らず醤油、油など液状のものを貯蔵するために広く使われた(醤油徳利、油徳利)。現在でも風味に悪影響を及ぼさないとして陶製の徳利が好まれることがあり、蕎麦店などではそばつゆを徳利(蕎麦徳利)に入れて供することも多い。
数え方は「一本」、または肩に下げて持ち歩いたことから「一提」(ひとさげ・いっちょう)とも数える(「一枝」(いっし)という数え方もあるがあまり使われない)。
一般に徳利を銚子(お銚子)と呼ぶこともあるが、本来、銚子は中国の薬缶に似た注ぎ口と柄の付いた、金属製の液体の加熱器具であり、日本では酒器として、酒宴や神道式の結婚式などで用いられているものを指すため、誤用である。鹿児島県で焼酎を燗するのに使うちょかも本来の銚子の一種。
文化編集
落語編集
徳利は落語にも多く登場し、備前徳利、御神酒徳利など、「徳利」の名を持つ演目も存在する。このように、かつて徳利は伝統的な液体容器として生活に密着した道具であった。
通い徳利編集
酒屋が貸し出していた陶磁製の小売用容器は通い徳利と呼ばれ江戸時代中期に一般化した[1]。別名を貧乏徳利(源蔵徳利)ともよばれるこの徳利は、主に美濃の高田で焼かれ、ガラス・プラスチック容器が一般化する以前、酒等の小売店は客に店名・商標等を書いた徳利を渡し、商品(酒)をその中に注ぐという方式で販売していた。客は中身を使いきったら空の徳利を持って再び来店し、代金と引き換えに商品を注いでもらう、という方式をとっていた。一部の酒類の大規模量販店が、安売りの手段、あるいは演出として、類似の販売方法を行っている例もある[要出典]。
トックリコロガシ編集
大阪の被差別部落で行なわれていた婚姻習俗で、徳利を転がす婚約成立の儀礼[2]。仲人が娘の家に行って縁談を調えると、男側の仲間たちが簡単な酒肴を携えて娘の家へ行き、娘の親や親戚、仲人らと盃を交わし、飲み終わると、徳利(または一升瓶)を倒してころころと転がす[2]。これが済むと原則として破談にはできず、男は結婚式までの数か月、あるいは一年以上、公然と娘の家へ通って関係を持つことができる[2]。また、各地に死者の部屋で徳利をまわしたり、ザルを転がすザルコロガシの習俗がある[2]。