朝鮮の民間療法(ちょうせんのみんかんりょうほう)とは、朝鮮半島において民間に伝承されてきた治療行為である。

朝鮮民間療法の一例
患部に鎌を突き立てれば治るとされる。

李氏朝鮮の医療・疫病史をみると、迷信に基づいた治療が一般的であり、たとえばアーソン・グレブストスウェーデン語版の『悲劇の朝鮮』[1]によれば、「牛糞を塗る」「ヒマワリの種を湯がいて食べる」「患者がモモの種を二つに割り、一方に『日』の字、もう一方に『月』の字を書いて一気に飲み込む」「小さなを三匹生きたまま丸飲みする(腹痛に即効)」「重症の場合は焼いたの足を四本食べる」「じっくり沸かしたお湯に四十歳の女性の頭髪を入れて飲む」といった方法が採られており、大韓帝国の最後の皇太子(純宗)の妃・純明孝皇后は、腹が腫れる病気にかかったため、国内一の名医の診察を受け、腹に悪霊が棲みついたと診断され、城門の戸板をはがして煎じて飲まされ、死亡した[2]

多くの国での民間療法と同様、科学的根拠が不明なまじない的なものが多く、現在ではほとんど行われていない。

なお本記事は民俗史的記事であり、朝鮮半島の伝統医学である韓医学とは異なる。

『朝鮮民俗集:全』に収集された民間療法

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身不足(栄養不良、身体衰弱、身体発達不充分を言う)[3]

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  • の木に「寄生する木を」煎じて服する
  • 「南瓜の上に止まった」青蛙の後ろ足2本を食べる
  • 12、3歳の童の小便を服用する

気不足(神経衰弱等精神の衰弱したものを言う)[3]

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  • の汁を飲む(後の補身湯"ポシンタン"である)
  • 古き火鉢を粉末にして空腹時に酒と混ぜて飲む(火鉢に霊的な信仰がある)
  • 長男の胎盤を煎じて日に3回飲む(胎盤食は大陸では現在も行われている)[要出典]

肺病(気不足に含む)[3]

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  • 人肉の粥を食べる

精神病(狂症)[3]

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内腫症[4]

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  • 犬の糞水を1日2 - 3回飲む
  • 農家で長年使った小便溜桶を煎じて飲む
  • 青蛙の卵10胞を4、5日に食べる

足の麻痺[5]

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  • 鼻の頭に唾を塗る

瘧(二日瘧)[5]

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  • 人糞を黒飴に包み3日間夜露を受けて丸薬にして呑む
  • 古い人頭骨を焼き粉にして水で飲む
  • 患者が男なら牝牛と、女なら牡牛と接吻する

シャックリ[6]

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  • 冷水を3度飲む

タンコリ(体の一部が急に痛む病)[6]

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  • 蝿3匹を生で呑む
  • 自分の尿で洗えば再発しない
  • 黄連を母乳に混ぜ、あるいは母乳のみを目に射す

ものもらい[7]

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  • 乳児の亀頭で患部をこする
  • 人糞を焼いて歯に含む
  • 古墓の人骨を歯につけ噛みしめる
  • 松の枝を油で煎じて口に含む

咽頭病[8]

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  • 犬の頭の煮汁を飲む

咽頭病[8]

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  • 松の花粉を白清に含煮して飲む

赤痢(白痢・痢疾)[9]

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  • 松の樹皮を干して粉にし蜜に混ぜて食べる

チフス(熱病)[9]

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  • 人糞を瓦石に塗って熱し、水に入れてその水を飲む

冷水の滞り[10]

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  • ドジョウを生で呑む

豚肉の滞り[10]

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  • 干柿を食べる

干柿の滞り[10]

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  • 豚肉を食べる
  • 人肉または人の陰茎を食べる
  • 数百年の古い人頭骨で水を飲む

各種腫物[12]

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  • トカゲの卵4 - 50個を3 、4日に分けて飲む
  • 人糞に塩を混ぜて貼る

浮皮腫(小児の陰茎の腫れる病)[13]

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  • ミミズに尿をかけたためだという。甘草を煎じて局部を洗う

幼児衰弱[14]

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  • どこで何を盗んだのかと大喝する

漆毒瘡(漆中毒)[15]

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  • 溝を越えて自分の大便を塗り、また溝を越えて戻る

骨折・脱臼・捻挫[15]

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  • 松葉を熱して温める

死人を蘇す方法[15]

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  • 父には子が夫には妻が薬指を切り、血を死人の頭上にそそぎかける
  • 松葉を煎じて飲む
  • 雌犬と交接するか女性に吸わせる

その他の民間療法

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身不足(栄養不良)

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高熱

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  • 解熱剤として野人乾水(大便を水で溶いた物)を飲用する(李氏朝鮮時代・中宗[17]

精力強化

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  • 薪割りをする(薪割りは腰を丈夫にして、性器の血液循環を円滑にすると考えられていた)。

産後の滋養

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  • わかめスープを産後の女性に食べさせる。造血、血の浄化作用があり滋養があると言われている。

その他

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  • 『生肝取りが流行 癩患者の迷信から残虐な殺人をする朝鮮』 名古屋新聞 1923/8/11
  • 『吾子の腹を割き生肝を夫に食はす/亭主の長患ひに/鮮女凶行後に自首』 神戸新聞 1930/8/16
  • 『朝鮮料理屋の正体は魔窟/誘惑した女の生血を絞り己れは豪奢な暮し(葺合)』 大阪朝日新聞 1932/12/9
  • 『殺して生血啜る/業病治りたさの半島人/名古屋で少年を殺い自殺』 北國新聞 1938/6/6 夕
  1. ^ 訳書は『悲劇の朝鮮』(河在龍・高演義訳、白帝社、1989年)
  2. ^ 黄文雄『日本の植民地の真実』扶桑社、2003年10月、146頁。ISBN 978-4594042158 
  3. ^ a b c d 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、420ページ
  4. ^ a b 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、421ページ
  5. ^ a b 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、422ページ
  6. ^ a b 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、423ページ
  7. ^ a b 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、424ページ
  8. ^ a b c d 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、425ページ
  9. ^ a b 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、426ページ
  10. ^ a b c 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、427ページ
  11. ^ 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、428ページ
  12. ^ 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、429ページ
  13. ^ 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、430ページ
  14. ^ 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、431ページ
  15. ^ a b c 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、433ページ
  16. ^ 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、434ページ
  17. ^ “世宗大王は肉食がお好き…肥満に糖尿病”. 東亜日報. (2005年8月22日). http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2005082232258 2008年10月7日閲覧。 

関連項目

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参考資料

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外部リンク

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