毛皮をまとったエレーヌ・フールマン

毛皮をまとったエレーヌ・フールマン[1](けがわをまとったエレーヌ・フールマン、: Portret van Hélène Fourment met een bontmantel[2])は、フランドルの画家ピーテル・パウル・ルーベンスにより1636年から1638年頃に描かれた絵画である[1]

『毛皮をまとったエレーヌ・フールマン』
オランダ語: Portret van Hélène Fourment met een bontmantel
英語: Portrait of Hélène Fourment with a fur coat
作者ピーテル・パウル・ルーベンス
製作年1636年 - 1638年
種類油彩[1]
寸法178.7 cm × 86.2 cm (70.4 in × 33.9 in)
所蔵美術史美術館ウィーン

エレーヌ・フールマン[3]または『毛皮ちゃん[1][4]毛皮さん』『小さな毛皮[5]ペルスケン』 (: Het Pelsken)[6] とも。ウィーンにある美術史美術館に収蔵されている[1][7]

概要

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ティツィアーノ『毛皮をまとった婦人像』
 
ルーベンス『毛皮をまとった婦人像』

ルーベンスは1626年、49歳のときに、最初の妻イザベラ・ブラントを亡くした後[8]1630年、53歳のときに、アントウェルペンの絹織物商人の娘で、当時16歳のエレーヌ・フールマンと再婚する[6][9]。この肖像画は、エレーヌを美の女神、ヴィーナスに見立てて製作された[1][10][11]

ルーベンスは、イタリアの画家ティツィアーノ・ヴェチェッリオ1535年頃に描いた『毛皮を着た若い女性』を模写した同名の作品を1629年から1630年頃に製作しているが、本作『毛皮をまとったエレーヌ・フールマン』は、ティツィアーノの同作をベースとして描かれている[4][12]。ルーベンスは、遺言の中で本作について「毛皮さん」(ペルスケン)と呼んで、エレーヌに本作を遺贈している[6][13]

作品

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1人の裸婦が毛皮のコートをまとい、こちらを向いて立っている様子が描かれている。片方の腕で胸を、もう片方の腕で下腹部を隠しているが、このポーズは、古代の彫像にみられる「恥じらいのヴィーナス」 (Venus pudica) と呼ばれるポーズに倣ったものである[1]

本作の中の女性は、茶色の眼をしているが、エレーヌは青色の眼をしていた[1]。画面の右端には、ライオンの顔の形をした噴水頭が描かれている[14]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h 『芸術新潮』 2018, p. 36.
  2. ^ Portret van Hélène Fourment (1614-1673) met een bontmantel”. オランダ国立美術史研究所. 2019年3月3日閲覧。
  3. ^ 『芸術新潮』 2018, p. 23.
  4. ^ a b 仲宇佐ゆり (2013年3月14日). “やわらかな頬、筋骨隆々の肉体 「フランダースの犬」の少年ネロが、憧れた才能”. 東洋経済新報社. 2019年3月3日閲覧。
  5. ^ 伊藤朋子 (2018年12月1日). “西洋絵画における裸婦像”. 東京外国語大学. 2019年3月3日閲覧。
  6. ^ a b c 『名画への旅』 1993, p. 33.
  7. ^ ルーベンス 愛と平和の祈りを絵筆にこめて 「エレーヌ・フールマンと二人の子供」”. BS朝日. 2019年3月3日閲覧。
  8. ^ 高橋裕子. “ルーベンス工房の版画制作”. 学習院大学. 2019年3月3日閲覧。
  9. ^ ネロが憧れた画家ルーベンスは、嫌味なくらい「できる男」だった”. 講談社. 2019年3月3日閲覧。
  10. ^ 「画家の王」ルーベンスとイタリア。その芸術形成のプロセスを読み解く”. 美術手帖 (2018年12月1日). 2019年3月3日閲覧。
  11. ^ ルーベンス、多才な巨匠の家族愛の物語〈前編〉”. 三井ホーム (2018年10月29日). 2019年3月3日閲覧。
  12. ^ 『芸術新潮』 2018, p. 59.
  13. ^ Helena Fourment ("The Little Fur Coat")”. 美術史美術館. 2019年3月3日閲覧。
  14. ^ Point of view #13”. 美術史美術館. 2019年3月3日閲覧。

参考文献

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  • 高橋達史・高橋裕子(責任編集)『名画への旅 第13巻 豊かなるフランドル』講談社、1993年2月。ISBN 978-4-06-189783-0 
  • 芸術新潮』第69巻第11号、新潮社、2018年11月。