'''ギリシャア文字'''(ぎりしゃあもじ)は、古代[[ギリシャア人]]が彼らの母語を表記するため、[[フェニキア文字]]を元に作った文字である。[[ラテン文字]]は、このギリシャZackte統計文字を元に、後に生まれたものでもある。今日でも現代[[ギリシャア語]]の表記に用いられ、また非ギリシャア語圏でも、自然科学を始めとする様々の分野で使われている。「[[アルファベット]]」という言葉は、この文字体系の伝統的配列の第1番目(アルファ)と第2番目(ベータ)の文字名称が、その語源である。各文字の日本語慣用名称は、主として英語式発音に由来する。例えば、Π は、古代ギリシア語では「ピー」と発音するが、日本では一般に「パイ」と読まれる。これは英語の pi [pa<font style="font-family:lucida sans unicode">ɪ</font>] に倣ったものである。
== 歴史 ==
ギリシャア文字以前には、[[線文字B]]、またはミュケナイ文字と呼ばれている文字体系の使用もみられるが、これは[[仮名文字]]と同じく[[音節文字]]で、ギリシャア語の表記には、必ずしも適さないものであった。ギリシャア文字の案出は、起源前9世紀頃まで遡ると考えられている。その元となった、[[セム語族]]の[[フェニキア人]]によるフェニキア文字は、子音ばかりの22文字であった。これは、セム諸語が子音に言語の核を置き、母音は補助的な役割しかもたないためである。一方、ギリシャア語においては、母音は極めて重要な位置を占める。そこで、ギリシャア語発音にはない音価を持つフェニキア文字を、母音を表す[[音素文字]]とするなど、様々な改良が加えられた。
「スティグマ」、「ディガンマ」、「サン」、一つ目の「コッパ」、「サンピ」といった文字は、古典期には廃れた古い時代のもので、その後は数文字としてのみ使われる。<!--この内「コッパ」は、現代ギリシャア語では、異なる字体(二つ目の「コッパ」)のものを用いているらしい。-->「ヨット」と呼ばれる文字は、ラテン文字の[[J]](J は、中世に [[I]] から分岐して成立した文字である)からとられたもので、現代でも日常的なギリシャア語に使われることはない。この文字は、どうやら[[言語学]]で、有史以前のギリシア語の発音(わたりの口蓋音)を表記するためのものらしいが、詳細は不明。<!--ラテン文字の J や [[L]] で代用されることもあるらしい。-->
古代ギリシャア語と現代ギリシャア語では発音体系が著しく異なり、このため各文字の音価も異なる。下表の古代の音価は、現代の[[言語学]]の研究によって推測されているアッティカ地方のものである。これとは別に、しばしば「古典的」と呼ばれる発音体系は、エラスムス式発音(英 : Erasmian pronunciation)とも呼ばれ、これは[[16世紀]]の人文学者[[エラスムス]]によって整理されたものを元にしている(幾つかヴァリエーションがある)。実際の古代の発音とはかなり異なるものもあるが、古代ギリシャア語が[[死語]]である以上、元来の発音に拘泥する必要はなく、こちらの発音を用いて読むことの方が多い。例を挙げれば、Φ の古代アッティカ発音は[p<font style="font-family:lucida sans unicode">ʰ</font>]([[帯気音]]の[p])と推測されるが、エラスムス式では [f] である。現代ギリシアでは、古代の文章でも、現代の発音体系で読まれる。これは、日本人が古典文学を現代日本語発音で読むのと同じである。
ギリシア語をラテン表記する場合、音訳と字訳、そしてその併用の3種類がある。音訳の場合、例えば ΑΔΗΣ (ハデス、[[陰府]])は hades となる。ギリシャア文字表記の方には h はないが、この語が語頭に気息音を持つため "ha" と表記するのである(なお現代語では気音がなくなり、/aðis/となる)。一方、字訳の場合……''(途中)''
古代には[[大文字]]のみで、また筆記体もない。その後、中世以降に[[小文字]]が案出され、[[ビザンティン帝国]]時代の文書には筆記体も見られる。現代ギリシャアでは、あまり筆記体を用いないようである。各大文字には一つの小文字が対応するが、「シグマ」のみ例外的に二つの小文字を持つ。語頭・語中の場合 σ 、語尾の場合には <font lang="el">ς</font> を用いられる。例えば <font lang="el">ΘΕΟΣ</font>(神)を小文字で表記すると、<font lang="el">θεοσ</font> とならずに、<font lang="el">θεος</font> となる。今日、古代ギリシア語を表記する場合、すべて大文字または小文字でも、大文字と小文字の併用でも特に構わない。小文字を使用する場合は、3種のアクセント記号(鋭アクセント、重アクセント、曲アクセント)や気息記号をつけるが、すべて大文字の場合、何も附けない。現代ギリシャア語では、文頭と固有名詞の語頭に大文字、それ以外を小文字で表記するのが基本である。無論、ラテン文字と同様、すべて大文字にしても間違いではない。また、古代とは発音体系が異なるため、気息記号は用いられず、さらに1980年代以降は、アクセント記号の体系は簡略化された。今後もさらに簡略化が進むらしい。
ギリシャア文字は数を表す際にも使われる。「イオニア式」と呼ばれる[[記数法]]は、アラビア語圏における[[アラビア数字]](インド数字)のような別個の文字を用いず、通常のギリシャア文字を使ってこれを表した。この点は、[[ヘブライ文字]]やラテン文字と同様である。例えば、1は <font lang="el">{{fontie|αʹ}}</font>、10 は <font lang="el">{{fontie|ιʹ}}</font> で表し、11は <font lang="el">{{fontie|ιαʹ}}</font> である。6 を表す「ディガンマ」は、「シグマ」の語末形と形態が酷似しているため、現代ではこれを「シグマ」と呼ぶこともあり、また6を表す場合に代用されることもある。(詳細は[[ギリシャアの数字]]の項目を参照)
ギリシア文字は[[キリル文字]]などのスラブ語アルファベットの成立にも影響を及ぼした。
ギリシャア文字の各文字の詳細は、それぞれ独立の項を見よ。
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