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こうした方がすっきりするか
→‎耐性獲得機構: コメントを踏まえて少し加筆
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外来遺伝子の取り込みは[[遺伝子の水平伝播]]とも呼ばれ、細菌の[[進化]]に重要な役割を果たすが、これによってしばしば耐性遺伝子が伝達される。抗生物質は土壌などの環境中に存在する微生物に由来するが、抗生物質を産生する微生物は当然にその抗生物質に対して耐性を持つ<ref name=":27" /><ref name=":13" />。生態学的[[ニッチ]]を共有する微生物もその抗生物質に対する耐性遺伝子を持っており、その様な遺伝子が医療現場で検出される病原体の耐性遺伝子の元となる可能性が高い<ref name=":13" />。現代においては土壌のような環境が耐性遺伝子の主要な発生源と考えられており、院内、ヒトや動物の[[マイクロバイオーム]]などを含む環境中の耐性遺伝子の集合のことを[[レジストーム]]と呼ぶ<ref name=":27" />。
 
変異により耐性を獲得する場合、感受性を持つ細菌集団の中から抗生物質の活性に影響を及ぼす遺伝子変異を起こす細胞が出現し、その細胞が抗生物質に耐えて生き残る。生き残った細胞は抗生物質の存在下では[[自然選択説|選択圧]]により感受性を持つ細菌を駆逐して優先となるが、耐性遺伝子は一般にコストが大きいため、抗生物質が存在しないと維持されない<ref name=":13">{{Cite journal|last=Munita|first=Jose M.|last2=Arias|first2=Cesar A.|editor-last=Kudva|editor-first=Indira T.|editor2-last=Zhang|editor2-first=Qijing|date=2016-03-25|title=Mechanisms of Antibiotic Resistance|url=https://journals.asm.org/doi/10.1128/microbiolspec.VMBF-0016-2015|journal=Microbiology Spectrum|volume=4|issue=2|language=en|doi=10.1128/microbiolspec.VMBF-0016-2015|issn=2165-0497|pmid=27227291|pmc=4888801}}</ref>。
 
一方、抗生物質は一般に細胞壁合成のように細菌の生存に重要な機能を標的としており、耐性の獲得はこれに変化を生じさせるため、ある環境における生存しやすさを意味する[[適応度]]が低下する。これは、変異による耐性の獲得のみならず、外来遺伝子の取り込みの場合でも同様である。例えば、プラスミドの獲得は一般に細菌の増殖効率を低下させて適応度を低下させる<ref name=":11">{{Cite journal|last=Andersson|first=Dan I.|last2=Hughes|first2=Diarmaid|date=2010-04|title=Antibiotic resistance and its cost: is it possible to reverse resistance?|url=http://www.nature.com/articles/nrmicro2319|journal=Nature Reviews Microbiology|volume=8|issue=4|pages=260–271|language=en|doi=10.1038/nrmicro2319|issn=1740-1526}}</ref><ref>{{Cite journal|和書|author=新谷 政己|year=2018|title=「プラスミドパラドックス」~プラスミドはなぜ「生き残って」いる?~|url=https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/9601/9601_biomedia_1.pdf|journal=生物工学会誌|volume=96|page=25}}</ref>。このように、耐性遺伝子は一般にコストが大きいため、抗生物質が存在しないと維持されない<ref name=":13">{{Cite journal|last=Munita|first=Jose M.|last2=Arias|first2=Cesar A.|editor-last=Kudva|editor-first=Indira T.|editor2-last=Zhang|editor2-first=Qijing|date=2016-03-25|title=Mechanisms of Antibiotic Resistance|url=https://journals.asm.org/doi/10.1128/microbiolspec.VMBF-0016-2015|journal=Microbiology Spectrum|volume=4|issue=2|language=en|doi=10.1128/microbiolspec.VMBF-0016-2015|issn=2165-0497|pmid=27227291|pmc=4888801}}</ref>。しかし、細菌が耐性の獲得による適応度の低下を補う変異を起こすことで適応度の低下を代償することもある。また、適応に必要なコストが低い、あるいは存在しない場合もある。そのため、抗生物質の使用量の減少により選択圧を低下させることで耐性菌の出現率を低下させることは、現実的ではないかもしれない<ref name=":11" />。
 
====耐性のメカニズム====