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{{Infobox Scottish Distillery
| Name = アードベッグ蒸留所<br />Ardbeg distillery
| Type = Islay
| Image = File:Ardbeg distillery, Islay - panoramio (1).jpg
| Image size = 300
| Caption = 2013年撮影
| Location = [[アイラ島]]{{sfn|土屋守|2021|p=28}}
| coordinates = {{coord|55|38|25.8|N|6|6|29.99|W|region:GB_type:landmark|display=inline,title}}
| Owner = [[モエヘネシー・ルイヴィトン]]{{sfn|土屋守|2021|p=29}}
| founded = 1815年{{sfn|土屋守|2021|p=29}}{{Refnest|group="注釈"|なお同地での蒸留は1794年以前から行われている{{sfn|ジョン・R・ヒューム|マイケル・S・モス|2004|p=84}}。}}
| founder = ジョン・マクドゥーガル{{sfn|土屋守|2021|p=29}}
| architect =
| Status = 稼働中<ref name="SMWSja">{{Cite web|url=https://smwsjapan.com/distilleries/ardbeg-distillery |title=アードベック|蒸溜所一覧|SMWS |publisher=smwsjapan.com |date= |accessdate=2023-07-02 |language=ja}}</ref>
| Source = ウーガダール湖{{sfn|土屋守|2021|p=29}}
| Mothballed = 1981-1989, 1995-1997{{sfn|土屋守|2021|pp=28-30}}
| Stills = {{Ubl|[[スコッチ・ウイスキー#蒸留|初留器]] 2基{{sfn|土屋守|2021|p=29}}|[[スコッチ・ウイスキー#蒸留|再留器]] 2基{{sfn|土屋守|2021|p=29}}}}
| Capacity = 年間240万リットル{{Refnest|group="注釈"|name="alcohol"|100%アルコール換算{{sfn|土屋守|2021|p=10}}。}}{{sfn|土屋守|2021|p=29}}
| Brand 1 =
| Type 1 =
| Age 1 =
| Cask 1 =
| ABV 1 =
| misc_heading = 位置
| misc = {{Infobox mapframe|zoom=14|frame-width=300|type=point|id=Q274}}
}}
'''アードベッグ蒸溜所'''(アードベッグじょうりゅうじょ、{{lang-en|'''Ardbeg Distillery'''}}<!--※ゲール語表記は出典がないためCOしています {{lang-gd|''Taigh-staile na h-Àirde Bige''}}-->)は、[[スコットランド]]の[[スコッチ・ウイスキー#アイラ_(Islay)|アイラ島]]にある[[スコッチ・ウイスキー]]の蒸留所。アイラ島のウイスキーの中でも特に[[スコッチ・ウイスキー#製麦|ピート]]香の強い味わいが特徴で、「アードベギャン」と呼ばれる熱心なファンが存在することで知られる。
== 歴史 ==
=== 創業期 ===
[[File:Ardbeg distillery Alfred Barnard.jpg |thumb|right|250px|{{仮リンク|アルフレッド・バーナード|en|Alfred Barnard}}著『Whisky Distilleries of the United Kingdom』(1887年)で描かれたアードベッグの絵。]]
[[File:Ardbeg across bay - Canthusus.JPG |thumb|right|250px|アードベッグ蒸留所の遠景(2001年)。海岸沿いに建てられている。]]
アードベッグ蒸留所が位置する周辺は密造酒づくりが盛んであり、1794年以前からアレキサンダー・スチュアートによって蒸留所が稼働していた{{sfn|土屋守|1995|p=16}}{{sfn|ジョン・R・ヒューム|マイケル・S・モス|2004|p=84}}。そして1794年に同蒸留所は差し押さえられ{{sfn|ジョン・R・ヒューム|マイケル・S・モス|2004|p=84}}、1798年にはダンカン・マクドゥーガルが農地でとれた穀物を利用しての密造を行っていた<ref name="ballantines"/>。正式なライセンスのある蒸留所として設立されたのは1815年で、ダンカンの息子であるジョン・マクドゥーガルによる<ref name="ballantines">{{Cite web|url=https://www.ballantines.ne.jp/scotchnote/119/index.html |title=稲富博士のスコッチノート 第119章 アイラ島蒸溜所総巡り−4.アードベッグ蒸溜所 |publisher=ballantines.ne.jp |date=2020-12-01 |accessdate=2023-07-04 |language=ja}}</ref>。良港を備えていることがこの立地の魅力であった{{sfn|ジョン・R・ヒューム|マイケル・S・モス|2004|p=84}}。その後1885年にはアードベッグはアイラ島最大の蒸留所になっており、年間生産量は120万リットルにも及んだ{{sfn|土屋守|ウイスキーワールド編集部|2016|p=21}}。これは2016年当時のアードベッグの生産量とほとんど変わらない量であり{{sfn|土屋守|ウイスキーワールド編集部|2016|p=21}}{{Refnest|group="注釈"|2016年当時は年間130万リットルを生産していた{{sfn|土屋守|ウイスキーワールド編集部|2016|p=21}}。}}、この当時のアードベッグは[[ブレンデッドウイスキー]]用の原酒として人気が高かったという<ref name="ballantines"/>。
名前の「アードベッグ」は「小さな岬」を意味する[[ゲール語]]の「An Àird Bheag<ref>{{cite web|url=https://www.ainmean-aite.scot/?id=41105|title=Ardbeg|website=www.ainmean-aite.scot|language=en-GB|access-date=2023-07-09}}</ref>」が由来である{{sfn|土屋守|1995|p=16}}。
=== 不遇の時代 ===
1973年には[[カナダ]]の[[ハイラム・ウォーカー]]社と{{仮リンク|ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド|en|The Distillers Company}}社(DCL社)によって買収され{{sfn|土屋守|2021|p=28}}、1977年にはハイラム・ウォーカー社の単独所有となる{{sfn|ジョン・R・ヒューム|マイケル・S・モス|2004|p=65}}。1815年の創業から150年にわたって続いたマクドゥーガル家の経営はこれによって終わることになった{{sfn|土屋守|2021|p=28}}{{sfn|土屋守|1995|p=16}}。ハイラム・ウォーカー社は1987年にアライド・ライオンズ社と合併し、1988年にアライド・ディスティラーズ社が発足した<ref>{{Cite web|url=https://www.suntory.co.jp/whisky/Ballantine/chp-05.html |title=Ballantine's Story |publisher=suntory.co.jp |date= |accessdate=2023-07-08 |language=ja}}</ref>。
かつてはアイラ島最大の蒸留所として栄えたアードベッグだったが、1981年にはウイスキー不況のあおりを受けて生産を停止した{{sfn|土屋守|2021|p=29}}。1989年にはアライド社のもとで生産を再開するものの、当時のアライド社はアイラ島に[[ラフロイグ蒸溜所]]も所有しており、[[スコッチ・ウイスキー#製麦|ピート]]香の強いウイスキーは供給過多に陥っていたことから1990年代は1年のうち2~3ヶ月のみ操業するような状態であった{{sfn|土屋守|2021|p=28}}{{sfn|土屋守|2021|p=29}}{{sfn|マイケル・ジャクソン|2007|p=115}}。そして1995年には再び操業を停止した{{sfn|土屋守|2021|p=29}}。
<!-- アードベッグのロゴデザインの特徴的な「A」の字は、美術大学で教鞭を執っていたロロ・カイルによって1975年に考案されたものである<ref>{{Cite web|url=https://scotchwhisky.com/magazine/whisky-heroes/17594/hamish-scott-ardbeg/ |title=HAMISH SCOTT, ARDBEG|publisher=scotchwhisky.com |date=2018-01-23 |accessdate=2023-07-09 |language=ja}}</ref>。 -->
=== グレンモーレンジィ社による買収 ===
上述の通りアライド社はアードベッグと同じくアイラ島でピート香の強いウイスキーを造るラフロイグ蒸溜所を所有しており、設備が老朽化しているアードベッグは手放されることになった{{sfn|土屋守|2023-2|p=8}}。1997年に[[グレンモーレンジィ蒸留所|グレンモーレンジィ]]社によってアードベッグは買収され{{sfn|土屋守|2021|p=30}}、操業を再開した<ref name="ballantines"/>。買収額は700万[[ポンド (通貨)|ポンド]]{{Refnest|group="注釈"|当時の金額で日本円に換算するとおよそ12億円{{sfn|土屋守|2021|p=30}}。}}であり、うち550万ポンドは熟成中の原酒の代金だったという<ref name="whiskymag_ardbeg3"/>。その後グレンモーレンジィ社は2004年に[[モエヘネシー・ルイヴィトン]]に買収された<ref>{{Cite web|url=http://whiskymag.jp/wm147_glenmoray/ |title=グレンマレイの過去と未来 |publisher=whiskymag.jp |date=2017-12-22 |accessdate=2023-07-09 |language=ja}}</ref>。
グレンモーレンジィ社のもとでアードベッグは[[シングルモルトウイスキー]]専用の蒸溜所として再建を進め<ref name="ballantines"/>、シングルモルトとして高い人気を得るようになる{{sfn|マイケル・ジャクソン|2007|p=115}}。需要増に応えるために、2018年には生産能力をそれまでの倍の年間240万リットルに伸ばす工事を開始<ref name="whiskymag_ardbeg1">{{Cite web|url=http://whiskymag.jp/ardbeg2020_01/ |title=アードベッグの新時代【第1回/全3回】 |publisher=whiskymag.jp |date=2020-10-19 |accessdate=2023-07-04 |language=ja}}</ref>。[[新型コロナウイルス]]の影響で工事は遅れたものの<ref name="whiskymag_ardbeg1"/>、2021年4月には新たな蒸留棟が完成した<ref name="whiskymag_islay3">{{Cite web|url=http://whiskymag.jp/islay2022_03/ |title=変わりゆくアイラの現在地【第3回/全3回】 |publisher=whiskymag.jp |date=2022-05-13 |accessdate=2023-07-04 |language=ja}}</ref>。
== 製造 ==
年間生産能力は240万リットル{{sfn|土屋守|2021|p=29}}{{Refnest|group="注釈"|name="alcohol"}}であり、生産された原酒はすべて自社のシングルモルトとしてボトリングされる{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}。2023年現在、他社には一切原酒を卸していない{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}。[[アイラ島]]のシングルモルトとしては[[ラフロイグ蒸溜所|ラフロイグ]]、[[ボウモア蒸溜所|ボウモア]]に次ぐ第3位の売上を誇り、2021年のシングルモルト販売本数は180万本である{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}。
<gallery caption="アードベッグの製造設備" mode="packed-hover" heights="120">
Ardbeg Distillery - geograph.org.uk - 1945489.jpg|キルン。ビジターセンターに改修された。
Ardbeg (9860725873).jpg|ローラーミル
Ardbeg_(9860737473).jpg|ウォッシュバック
Ardbeg Distillery 3.jpg|マッシュタン
Ardbeg_Stills_-_geograph.org.uk_-_682653.jpg|ポットスチル
Ardbeg (9860770113).jpg|熟成庫
</gallery>
=== 麦芽 ===
[[ハイラム・ウォーカー]]社による買収直後の1975年にキルン(製麦棟)が閉鎖されたため、以降[[スコッチ・ウイスキー#製麦|製麦]]は行っていない{{sfn|土屋守|2021|p=28}}。かつてアードベッグで行われていた製麦では[[麦芽]]の乾燥に[[ピート]]のみを使用していた<ref name="ballantines"/>。また、アードベッグのキルンには換気装置がなかったためピート香が一般的なウイスキーよりも極端に強くなる特徴があり、この極端なピート香がブレンダーから敬遠されたことが製麦を廃止した理由のひとつになっている{{sfn|土屋守|1995|p=16}}。
1975年の製麦中止以降は{{仮リンク|ポートエレン蒸留所|en|Port Ellen distillery}}製の麦芽のみを使用している{{sfn|土屋守|2021|p=28}}{{sfn|土屋守|2021|p=30}}。品種はイングランド産のロリエット種{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}。ウイスキーのピート香の強さを表す指標のひとつである[[フェノール]]値は55~65 [[ppm]]であり、[[ブルックラディ蒸溜所]]の「オクトモア」シリーズを除けばアイラ島の蒸留所の中でも最も高い数値である{{sfn|土屋守|2021|p=30}}{{Sfn|西川大五郎|2022|p=55}}。仕込み1回あたり5[[トン]]の麦芽を使う{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}。
麦芽を粉砕するローラーミルは1921年製のロバート・ボビー社製のものを使用し続けている{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}<ref name="ballantines"/>。これはスコットランドで現存するのは4~5台だと言われている{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}。[[スコッチ・ウイスキー#仕込み|麦芽の粉砕粒度]]は2019年時点ではフラワー10%、グリッツ70%、ハスク20%という一般的な構成である<ref name="ballantines"/>。麦芽の穀皮を粉砕過程で除去せずそのまま仕込みに使うことでフェノール成分の回収効率を高めている<ref name="ballantines"/>。
=== 仕込み・発酵 ===
仕込み水はウーガダール湖から採水している{{sfn|土屋守|2021|p=29}}。ライターのマイケル・ジャクソンは仕込み水のピーティさがアードベッグの土やタールを思わせる風味に影響していると述べている{{sfn|マイケル・ジャクソン|2021|p=81}}。
[[スコッチ・ウイスキー#仕込み|マッシュタン]](糖化槽)は[[ステンレス]]製で、1回の仕込みで得られる麦汁は26,500[[リットル]]である{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}。1961年に設置されたニューミル社製の[[鋳鉄]]製のマッシュタンの側面だけが残してあり、その中にステンレス製のマッシュタンをはめ込んで運用している<ref name="ballantines"/>。1度の糖化にかかる時間は7.5時間<ref name="whiskymag_ardbeg3"/>。
[[スコッチ・ウイスキー#発酵|ウォッシュバック]](発酵槽)は2023年時点で[[オレゴンパイン]]製のものが12基ある{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}。容量は平均して36,000リットル<ref name="whiskymag_ardbeg3"/>。発酵に用いる[[酵母]]はアンカー社のドライイーストを使用しており{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}、発酵には65時間以上の時間をかける<ref name="ballantines"/>。出来上がった[[もろみ]]のアルコール度数はおよそ8.2%である<ref name="ballantines"/>。
=== 蒸留 ===
アードベッグの[[単式蒸留器|ポットスチル]]は背の高い[[スコッチ・ウイスキー#単式蒸留器|ランタンヘッド型]]のものが[[スコッチ・ウイスキー#蒸留|初留器]]・[[スコッチ・ウイスキー#蒸留|再留器]]それぞれ2基ずつ、合計4基である{{sfn|土屋守|2021|p=30}}。もともとポットスチルは2基だったが、2021年に完了した改修工事によって従来のポットスチルと同じ形状のものを4基導入した{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}。
初留器に投入するもろみは11,500リットルで、再留器には13,000リットルである{{sfn|土屋守|2021|p=30}}。初留2回分をまとめて再留に投入するため、再留器のほうが初留器よりも大きくなっている{{sfn|土屋守|2021|pp=30-31}}。初留にかかる時間は5〜5.5時間<ref name="ballantines"/>。[[スコッチ・ウイスキー#蒸留|再留]]は前溜15分、本溜5.5時間、後溜3〜5時間であり、[[スコッチ・ウイスキー#蒸留|ミドルカット]]は72~58%の範囲である<ref name="ballantines"/>。
蒸留工程における最大の特徴は再留器のラインアームに「[[スコッチ・ウイスキー#蒸留|精留器]]」がついていることである{{sfn|土屋守|2021|p=31}}。これによって[[還流]]が促され、アードベッグの原酒が持つフルーティな味わいにつながるとされている{{sfn|土屋守|2021|p=31}}。ライターのマイケル・ジャクソンは精留器によって得られる味わいを「リンゴの木やレモンの皮のようなフルーティさ」と評している{{sfn|マイケル・ジャクソン|2021|p=81}}。
=== 熟成・ボトリング ===
アードベッグにおいて使用される樽の9割は[[ホワイトオーク|アメリカンオーク]]の[[スコッチ・ウイスキー#樽|ファーストフィル]]もしくは[[スコッチ・ウイスキー#樽|セカンドフィル]]の[[バーボン・ウイスキー|バーボン]]樽である{{sfn|土屋守|2021|p=31}}<ref name="ballantines"/>。グレンモーレンジィ社の原酒熟成管理部長であるブレンダン・マキャロンは、スモーク香を高めたいときはアルコール度数63.5%以上で、フルーティな風味を強調したいときは63.5%以下で樽詰めすると述べている<ref>{{Cite web|url=http://whiskymag.jp/fillingstrengths_02/ |title=樽入れ時のアルコール度数【後半/全2回】 |publisher=whiskymag.jp |date=2021-04-26 |accessdate=2023-07-04 |language=ja}}</ref>。熟成庫は[[スコッチ・ウイスキー#熟成|ダンネージ式]]および[[スコッチ・ウイスキー#熟成|ラック式]]を併用している<ref name="ballantines"/>。
熟成後の原酒の樽出しは蒸留所内で行われ、ボトリングは[[ウェスト・ロージアン]]にあるグレンモーレンジィ社のボトリング工場で行われている<ref name="whiskymag_ardbeg3">{{Cite web|url=http://whiskymag.jp/ardbeg2020_03/ |title=アードベッグの新時代【第3回/全3回】 |publisher=whiskymag.jp |date=2020-10-26 |accessdate=2023-07-04 |language=ja}}</ref>。ボトリング時に[[スコッチ・ウイスキー#熟成終了後|低温濾過]]は行われない{{sfn|肥土伊知郎|2010|p=72}}。
== 製品 ==
アードベッグで生産された原酒はすべて自社のシングルモルトとしてボトリングされ、2023年現在、他社には一切原酒を卸していない{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}。アライド社時代は[[ブレンデッドウイスキー]]である[[バランタイン]]の味わいの中核をなす7つの[[ウイスキー#ブレンデッド・ウイスキー|キーモルト]]「魔法の7柱」のひとつとされていた{{sfn|土屋守|1995|p=16}}。
=== 現行のラインナップ ===
<!-- WP:NOTCATALOGに則って冗長な列挙を防ぐため、日本語公式HPに記載が確認されていないボトルは掲載していません。-->
==== アードベッグ10年 ====
[[File:Ardbeg 10 years old whisky.jpg |thumb|right|300px|アードベッグ10年]]
2000年に発売されたアードベッグの看板商品<ref name="whiskymag_ardbeg3"/>。ファーストフィルおよびセカンドフィルのバーボン樽で熟成された原酒が使われている<ref name="official_products">{{Cite web|url=http://www.ardbegjapan.com/products/ |title=商品紹介|publisher=ardbegjapan.com |date= |accessdate=2023-07-09 |language=ja}}</ref>。
評論家の土屋守はアードベッグ10年を「スモーキーだがよりクリーンに仕上がっている。ヨードと甘みのバランスが堪らない」と評している{{sfn|土屋守|2021|p=29}}。また、評論家のイアン・バクストンはアードベッグ10年を下記のようにテイスティングしている。
{{Quotation|香り:とてつもないピート香はもちろん、魅力的な柑橘、[[シナモン]]や[[洋ナシ]]の香りも伴う。
味:ピートの最初のアタックは次第にシリアルや大麦の香り、タバコ、コーヒー、リコリス、チョコレートの香りへと移り変わっていく。
フィニッシュ:スモーキーでほんのり甘い。大麦の風味が長く尾を引き、バニラの風味も感じられるかもしれない。|Ian Buxton『101 Whiskies to Try Before You Die』(2010)より翻訳{{Sfn|Ian Buxton|2010|p=23}}}}
==== アードベッグ5年 ウィー・ビースティ ====
[[File:Ardbeg Wee Beastie.jpg |thumb|right|200px|アードベッグ5年 ウィー・ビースティー]]
2020年に発売された5年熟成の定番商品<ref name="whiskymag_ardbeg2"/>{{sfn|土屋守|渋谷寛|2020-2|p=112}}。「ウィー・ビースティー」は「リトルモンスター」の意味であり、アードベッグの個性であるスモーキーさを強調するため熟成期間を短くしている{{sfn|土屋守|渋谷寛|2020-2|p=112}}。バーボン樽と[[シェリー (ワイン)|オロロソシェリー]]樽で熟成された原酒が使われている<ref name="whiskymag_ardbeg2"/>。
ウイスキーガロアのテイスターである松木崇は「巧みな樽使いで、熟成年数の割に多彩でリッチ」と述べている{{sfn|土屋守|渋谷寛|2020-2|p=114}}。また、BAR LIVETのオーナーバーテンダーである静谷和典は「体幹が良くヤングアイラの新しい定番品として確立できる1本だろう」と述べている{{sfn|土屋守|渋谷寛|2020-2|p=114}}。
==== アードベッグ ウーガダール ====
2003年に発売された製品で<ref name="whiskymag_ardbeg3"/>、バーボン樽とオロロソシェリー樽原酒をブレンドしたがゆえのスモーキーかつスイートな味わいが特徴{{Sfn|土屋守|2012-8|p=36}}。仕込み水を採水しているウーガダール湖が名前の由来であり、「暗くて神秘的な場所」という意味がある<ref name="official_products"/>。
==== アードベッグ コリーヴレッカン ====
2008年に発売された製品で、バーボン樽とフレンチオークの新樽で熟成された原酒が使われている<ref name="whiskymag_ardbeg3"/>。[[スコッチ・ウイスキー#熟成終了後|カスクストレングス]]でボトリングされている<ref name="whiskymag_ardbeg3"/>。評論家のドミニク・ロスクロウはその味わいを「情熱的でスパイシーそしてフルーティなウイスキー」と評している<ref>{{Cite web|url=http://whiskymag.jp/%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%83%89%e3%83%99%e3%83%83%e3%82%b0%e9%9d%a9%e5%91%bd%e3%81%ae%e4%b8%80%e6%9d%af/ |title=アードベッグ革命の一杯 |publisher=whiskymag.jp |date=2013-09-07 |accessdate=2023-07-09 |language=ja}}</ref>。アイラ島と[[ジュラ島]]の間にある渦潮が発生することで有名な海域が名前の由来である<ref name="official_products"/>。
=== 主な限定品 ===
<!-- WP:NOTCATALOGに則って冗長な列挙を防ぐため、二次出典が見つかり特筆性のあるもの以外は掲載していません。 -->
==== アードベッグ ガリレオ ====
2011年10月、無重力状態が熟成にどのような影響を与えるかという実験のため、オークの木片を浸したアードベッグのニューポットが国際宇宙ステーションに運ばれた{{Sfn|イアン・バクストン|土屋守|2015|p=222}}<ref name="bbc_ardbeg">{{Cite web|url=https://www.bbc.com/news/uk-scotland-glasgow-west-29174389 |title=Ardbeg 'space whisky' back on Earth after flavour experiment |publisher=bbc.com |date=2014-09-12 |accessdate=2023-07-19 |language=en}}</ref>{{Refnest|group="注釈"|なお、宇宙に送られたアードベッグはおよそ3年後の2014年9月に地上に帰還している<ref name="bbc_ardbeg"/>。}}。ガリレオはこの実験を記念して2012年の秋に発売されたボトルである{{Sfn|イアン・バクストン|土屋守|2015|p=222}}。1999年蒸留で{{Sfn|マイケル・ジャクソン|2021|p=85}}、ファーストフィルおよびセカンドフィルのバーボン樽と{{仮リンク|マルサラワイン|en|Marsala_wine}}樽で熟成した原酒をヴァッティングしている<ref>{{Cite web|url=https://www.whiskymag.com/articles/peatinspace/ |title=Peat...In...Space!! |publisher=whiskymag.com |date=2012-10-26 |accessdate=2023-07-19 |language=en}}</ref>。その味わいは高く評価されており、[[ワールド・ウイスキー・アワード]]2013年ではシングルモルト部門の世界最高賞を受賞している<ref name="wwa_galileo"/>。
==== アードベッグ キルダルトン ====
稼働休止直前の1979-1981年のアードベッグはキルダルトンスタイルと呼ばれるほぼノンピート原酒を少量だけ生産しており、それらをボトリングしたもの{{sfn|橋口孝司|2014|p=56}}。1980年ビンテージのものがアードベッグコミッティーの限定ボトルとして販売された{{sfn|土屋守|2007|p=51}}。
== 評価 ==
アードベッグの熱心なファンは「アードベギャン」と呼ばれ{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}、ライターのガヴィン・スミスはその人気について「アイラモルトの中でも、ひときわ力強いピート香と華やかな風味」が理由であると述べている<ref name="whiskymag_ardbeg2">{{Cite web|url=http://whiskymag.jp/ardbeg2020_02/ |title=アードベッグの新時代【第2回/全3回】 |publisher=whiskymag.jp |date=2020-10-26 |accessdate=2023-07-04 |language=ja}}</ref>。また、アードベッグにはファンの会員組織「アードベッグコミッティー」があり、2023年時点の登録者数は全世界で15万人にも及ぶ{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}。
=== 風味 ===
評論家の土屋守は「アイラ・モルトのキャラクターを最もよく伝えるモルトのひとつだ」{{Sfn|加藤節雄ほか|1992|p=21}}と述べており、2023年には近年のアードベッグ人気は凄まじいと評価している{{sfn|土屋守|2023-2|p=11}}。
ライターの[[マイケル・ジャクソン (ライター)|マイケル・ジャクソン]]はアードベッグのハウススタイルを「土っぽい、非常にピーティ、スモーキー、塩っぽい、こくがある。就寝時のモルト」と評し{{sfn|マイケル・ジャクソン|2021|p=81}}、その味わいについて「非常にピート香が強いが、スモークの下に繊細さが存在している。ほのかなライム、シリアル、ラノリン、そして、軽く海の衝撃」と述べている{{sfn|マイケル・ジャクソン|2007|p=115}}。
2020年当時のアードベッグ蒸留所長のミッキー・ヘッズは、アードベッグの特徴について「スピリッツは軽やかで、フルーティーかつフローラルな香りがあります。そして最後に、スモーク香の大爆発を楽しめるのがアードベッグの特徴です」と<ref name="whiskymag_ardbeg1"/>、2021年当時のアードベッグ蒸留所長のコリン・ゴードンはアードベッグの特徴を「煤っぽさとフルーツ香の融合」だと述べている<ref>{{Cite web|url=http://whiskymag.jp/phenol_03/ |title=ピートの謎を解く【第3回/全3回】 |publisher=whiskymag.jp |date=2021-05-10 |accessdate=2023-07-09 |language=ja}}</ref>。
=== 受賞 ===
{{仮リンク|ジム・マーレイ|en|Jim Murray (whisky writer)}}のウイスキー・バイブル2008では、アードベッグ10年がワールド・ウイスキー・オブ・ザ・イヤーとスコッチ・[[ウイスキー#モルト・ウイスキー|シングルモルト]]・オブ・ザ・イヤーを受賞した<ref>{{cite news| url=http://news.bbc.co.uk/1/hi/scotland/glasgow_and_west/7100733.stm | title=Island whisky wins top accolade | accessdate=2019-12-13 | work=BBC News | date=November 18, 2007| archiveurl= https://web.archive.org/web/20071120142642/http://news.bbc.co.uk/1/hi/scotland/glasgow_and_west/7100733.stm| archivedate= 20 November 2007 <!--DASHBot-->|url-status = live}}</ref>。またアードベッグ10年は、{{仮リンク|サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション|en|San Francisco World Spirits Competition}}において2006年から2017年まで連続してメダル(3個の金メダルと9個の銀メダル)を獲得している<ref>{{cite web|url=http://www.proof66.com/whiskey/ardbeg-10yr-scotch.html |title=Proof66.com Summary of Ardbeg 10-Year Awards|accessdate=2019-12-13}}</ref>。
ジム・マーレイのウイスキー・バイブル2009と2010では、ウーガダールがワールド・ウイスキー・オブ・ザ・イヤーとスコッチ・シングルモルト・オブ・ザ・イヤーを受賞した。サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティションでは、2006年から2017年の間に4個のダブル金メダル、6個の金メダル、2個の銀メダルを獲得している<ref>{{cite web|url=http://www.proof66.com/whiskey/ardbeg-uigeadail-scotch.html|title=Proof66.com Summary of Ardbeg Uigeadail Awards|accessdate=2019-12-13}}</ref>。
ガリレオは2013年の[[ワールド・ウイスキー・アワード]]においてシングルモルトの世界最高賞を受賞した<ref name="wwa_galileo">{{cite web|url=http://www.whiskymag.com/awards/wwa/2013/|title=Ardbeg Galileo win World's Best Single Malt Whisky Award|accessdate=2013-05-10|archive-url=https://web.archive.org/web/20130512011249/http://www.whiskymag.com/awards/wwa/2013/|archive-date=2013-05-12|url-status = dead}}</ref>。
<!-- === 文化における言及 ===
【出典をウェイバックマシンで確認しましたが、[[フィンランド放送交響楽団]]によって演奏されたものが2014年にリリースされたことしか書いておらず、前半部分は無出典状態です。記述内容は事実であれば興味深いので、削除せずCOに留めました。復帰させる場合は出典を追加してください。】
[[フィンランド]]の現代音楽作曲家の{{仮リンク|オスモ・タピオ・ライハラ|en|Osmo Tapio Räihälä}}はアードベッグに触発され、[[交響詩]]『アードベッグ - 管弦楽のための究極の小品』(2003年)を作曲した。この作品は2004年の[[ウーノ・クラミ]]国際作曲コンペティションで1位を獲得した。2011年4月28日、この作品は{{仮リンク|ガリシア交響楽団|en|Orquesta Sinfónica de Galicia}}の{{仮リンク|ディーマ・スロボデニューク|fi|Dima Slobodeniouk}}の指揮で[[フィンランド放送交響楽団]]によって録音され、2014年1月にリリースされた<ref>{{cite web |url=http://www.alba.fi/en/shop/products/5109 |title=ABCD 367 Osmo Tapio Raihala: Peat, Smoke & Seaweed Storm |publisher=alba.fi |date= |accessdate=13 December 2019 }}{{Dead link|date=May 2019 |bot=InternetArchiveBot |fix-attempted=yes }}</ref>。 -->
== 関連項目 ==
* [[スコッチ・ウイスキーの蒸留所一覧]]
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== 脚注 ==
=== 注釈 ===
{{
=== 出典 ===
{{Reflist|3}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書
|author = 土屋守
|authorlink = 土屋守
|year = 2021
|title = 完全版 シングルモルトスコッチ大全
|publisher = [[小学館]]
|isbn = 978-4093888141
|ref = {{SfnRef|土屋守|2021}}
}}
* {{Cite book|和書
|author = 土屋守
|authorlink = 土屋守
|year = 1995
|title = モルトウィスキー大全
|publisher = [[小学館]]
|isbn = 4093871701
|ref = {{SfnRef|土屋守|1995}}
}}
* {{Cite |和書
| author = マイケル・ジャクソン
| authorlink = マイケル・ジャクソン (ライター)
| translator = [[山岡秀雄]],土屋希和子
| title = モルトウイスキー・コンパニオン 改訂第7版
| date = 2021
| publisher = パイ・インターナショナル
| isbn = 4-756-25390-3
| ref = {{SfnRef|マイケル・ジャクソン|2021}}
}}
* {{Cite |和書
| author = マイケル・ジャクソン
| authorlink = マイケル・ジャクソン (ライター)
| translator = 土屋希和子,Jimmy山内,山岡秀雄
| title = ウィスキー・エンサイクロペディア
| date = 2007
| publisher = [[小学館]]
| isbn = 4093876681
| ref = {{SfnRef|マイケル・ジャクソン|2007}}
}}
* {{Cite |和書
| author = ジョン・R・ヒューム
| author2 = マイケル・S・モス
| translator = 坂本恭輝
| title = スコッチウイスキーの歴史
| date = 2004
| publisher = [[国書刊行会]]
| isbn = 4-336-04517-8
| ref = {{SfnRef|ジョン・R・ヒューム|マイケル・S・モス|2004}}
}}
* {{Cite book|和書
|author = 土屋守
|authorlink = 土屋守
|year = 2007
|title = ウイスキー通
|publisher = [[新潮社]]
|isbn = 978-4106035937
|ref = {{SfnRef|土屋守|2007}}
}}
* {{Cite |和書
| author = 西川大五郎
| title = ウイスキー図鑑 世界のウイスキー218本とウイスキーを楽しむための基礎知識
| date = 2022
| publisher = マイナビ出版
| isbn = 978-4-83998-100-6
| ref = {{SfnRef|西川大五郎|2022}}
}}
*{{Cite book|和書
|author = 橋口孝司
|title = ウイスキーの教科書
|date = 2014
|publisher = [[新星出版社]]
|isbn = 978-4-405-09237-2
|ref = {{SfnRef|橋口孝司|2014}}
}}
* {{Cite |和書
| author = イアン・バクストン
| author2 = [[土屋守]]
| translator = 土屋茉以子
| translator2 = 土屋守
| title = 伝説と呼ばれる 至高のウイスキー101
| date = 2015
| publisher = [[WAVE出版]]
| isbn = 978-4872907537
| ref = {{SfnRef|イアン・バクストン|土屋守|2015}}
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* {{Cite book
| author = Ian Buxton
| title = 101 Whiskies to Try Before You Die
| date = 2010
| publisher = Hachette UK
| isbn = 978-0-7553-6083-3
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* {{Cite |和書
| author = 加藤節雄
| author2 = [[土屋守]]
| author3 = 平澤正夫
| author4 = 北方謙三
| coauthors = 橋口孝司
| title = スコッチ・モルト・ウィスキー
| date = 1992
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| isbn = 4-10-602000-9
| ref = {{SfnRef|加藤節雄ほか|1992}}
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* {{Cite |和書
| author = 肥土伊知郎
| authorlink = 肥土伊知郎
| title = シングルモルト&ウイスキー大事典
| date = 2010
| publisher = [[ナツメ社]]
| isbn = 481634831X
| ref = {{SfnRef|肥土伊知郎|2010}}
}}
* {{Cite journal |和書
|author = 土屋守
|authorlink = 土屋守
|title = スコッチ最前線2022 [第2弾]
|journal = Whisky Galore(ウイスキーガロア)
|volume = 36
|publisher = ウイスキー文化研究所
|date = 2023-2
|pages = 4-56
|asin = B0BQYM7M4Z
|ref = {{SfnRef|土屋守|2023-2}}
}}
* {{Cite journal |和書
|author = 土屋守
|author2 = ウイスキーワールド編集部
|title = スコッチ最前線 アイラ大特集 第一弾 アイラ島最古の蒸留所と、キルダルトン三兄弟
|journal = Whisky World(ウイスキーワールド)
|volume = 35
|publisher = ゆめディア
|date = 2016-8
|pages = 2-31
|isbn = 978-4-908896-00-2
|ref = {{SfnRef|土屋守|ウイスキーワールド編集部|2016}}
}}
* {{Cite journal |和書
|author = 土屋守
|title = 蒸留所最新リポート
|journal = Whisky World(ウイスキーワールド)
|volume = 5
|publisher = ゆめディア
|date = 2012-08
|pages = 21-36
|isbn = 978-4-905131-30-4
|ref = {{SfnRef|土屋守|2012-8}}
}}
== 外部リンク ==
{{Commons category|Ardbeg distillery}}
* [http://www.ardbegjapan.com/
* [https://www.ardbeg.com/en-int/home 公式サイト]{{en icon}}
{{Authority control}}
{{DEFAULTSORT:ああとへつくしようりゆうしよ}}
[[Category:スコットランドのウイスキー蒸留所]]
[[Category:1815年設立]]
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