削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
(同じ利用者による、間の2版が非表示)
13行目:
という平面上の線型変換を定めている。一方で、2つの平面ベクトル {{math|''u'' {{=}} (''u''{{sub|0}}, ''u''{{sub|1}})}}, {{math|''v'' {{=}} (''v''{{sub|0}}, ''v''{{sub|1}})}} に対して、これらが張る平行四辺形の「向きも込めた」面積は
: <math>A(u,v)=u_0 v_1 -u_1 v_0</math>
により指定されると考えることができる。このとき {{math|''A''(''Xu'', ''Xv'') {{=}} (''ad'' &minus; ''bc'')''A''(''u'', ''v'')}} が成り立っているが、これは {{mvar|X}} の定める線型変換によって平面内の図形の面積が {{mathmath2|(''ad'' &minus; ''bc'')}}- 倍される、と解釈できる。
 
したがって、実2次正方行列 {{mvar|X}} に対して(上の記号の下で){{mathmath2|det ''X'' {{coloneqq}} ''ad'' &minus; ''bc''}} を対応させると、{{mathmath2|det(''XY'') {{=}} (det&thinsp;''X'')(det&thinsp;''Y'')}} であることや、{{mathmath2|det ''X'' > 0}} であるとき {{mvar|X}} の定める変換は図形の向きを保ち、反対に {{mathmath2|det ''X'' < 0}} であるとき図形の向きは反転させられることが分かる。{{math|det}} の乗法性から {{mvar|X}} が可逆ならば {{math|det ''X''}} は逆数を持つ数であることが従うが、反対に {{mvar|X}} が退化した行列(つまり {{mvar|X}} の定める変換の像が一次元の部分空間)になる場合にはすべての図形の変換後の面積が {{math|0}} になることから {{mathmath2|det ''X'' {{=}} 0}} となることがいえる。こうして、正方行列 {{mvar|X}} が正則であることと {{mvar|X}} の行列式が可逆であることは同値であることが分かる。
 
同様にして一般の次数のN次[[正方行列]] {{mvar|X}} に対し、{{mvar|X}} の定める線型変換が超立体(N(N次図形)の超体積を何倍にしているかという符号付き拡大率を {{mvar|X}} の行列式として定義することができる。これは行列の成分を変数とする多項式の形でけ、二次の場合と同様にこれは[[正則行列|正則性]]など正方行列の重要な性質に対する指標を与えている。[[線型方程式|一次方程式系]]が与えられるとき、方程式の係数行列に対してその行列式の値を調べることにより、方程式系の根の状態をある程度知ることができる。特に[[クラメルの公式]]により、[[方程式|根]]が一組である[[線型方程式系]]の根の公式が行列式を用いて表示される。
 
== 定義 ==
135行目:
 
== いくつかの行列式 ==
2次[[対称群]] <math display="inline">\mathfrak{S}_2</math> は恒等置換 {{mathmath2|1=id}} ({{math|id(1) {{=}} 1, id(2) {{=}} 2)}}) と互換 {{mathmath2|1=''σ'' {{=}} (1, 2)}}{{math|''σ''(1) {{=}} 2, ''σ''(2) {{=}} 1)}} の 2 つの置換からなるので
: <math>\begin{vmatrix}
a_{1 1} & a_{1 2} & a_{1 3} \\
\begin{vmatrix}
a_{12 1} & a_{12 2} \\
\end{vmatrix} = a_{21 1} &a_{2 2} - a_{2 1} a_{1 2} </math>
:<math>\endbegin{vmatrix}=
a_{1 1} &a_{21 2} - &a_{2 1} a_{1 23} \\
a_{2 1} & a_{2 2} & a_{2 3} \\
</math>
a_{3 1} & a_{3 2} & a_{3 3}
<math>\beginend{vmatrix} = a_{1 1}a_{2 2}a_{3 3}
a_{1 1} & a_{1 2} & a_{1 3} \\
a_{2 1} & a_{2 2} & a_{2 3} \\
a_{3 1} & a_{3 2} & a_{3 3}
\end{vmatrix} =
a_{1 1}a_{2 2}a_{3 3}
+ a_{1 2}a_{2 3}a_{3 1}
+ a_{1 3}a_{2 1}a_{3 2}
- a_{1 3}a_{2 2}a_{3 1}
- a_{1 1}a_{2 3}a_{3 2}
- a_{1 2}a_{2 1}a_{3 3}</math>
</math>
となる(第 1 項が {{math|id}}, 第 2 項が {{math|(1, 2)}} に対応する項である)。
 
[[ファイル画像:Det (mod1).GIF|thumb|300px|thumb|サラスの方法]]
2 次あるいは 3 次の正方行列については、左上から右下へ向かう方向に「{{math|+}}」、右上から左下へ向かう方向に「{{math|−}}」の符号を付けて積を取りそれらの和を取ると行列式が求められる。これを「'''{{ill2|[[サラスの方法|en|Rule of Sarrus|preserve=1}}]]'''」または「'''サラス展開'''」、「'''たすきがけの法'''」と言う。{{mvar|n}} 次正方行列に対して、サラスの方法で取り出せる項の数は高々 {{math|2''n''}} であり、一般には行列式の総項数 {{math|''n''!}} に比べてはるかに少ないため、'''4次以上の正方行列にはこの方法は使えない'''。
 
[[三角行列]]の行列式は、主対角成分の総乗をとることで求まる。三角行列の主対角成分には[[固有値]]が並ぶから、行列式の値は固有値の総乗である。このことは、基底の取替えによる行列の三角化可能性と行列式の乗法性によって、一般の正方行列に対しても正しい。つまり、与えられた行列の行列式の値は、その行列の固有値の総乗に等しい。