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BAZIAN (会話 | 投稿記録)
特に臨床的記述について加筆させていただきました。薬理学的記述もお願いします。
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[[Image:Gentamycin.png|thumb|240px|ゲンタマイシンの構造式]]
 
'''ゲンタマイシン''' ( 英 gentamicin : gentamycin ) は[[アミノグリコシド]](アミノ配糖体)系[[抗生物質]]で、多くの細菌感染症に用いられ、特に[[グラム陰性菌]]に用いられる。しかし、ゲンタマイシンは淋菌( ''Neisseria gonorrheae'' )、髄膜炎菌 ( ''Neisseria meningitidis'' ) やレジオネラ菌 ( ''Legionella pneumophila'' ) によ感染症には使えない
 
英語名称は、正式にはgentamicinという。同じアミノグリコシドのtobramycin、streptomycin、kanamycinとは意図的に異なる[[綴り]]が与えられている。これは、これらのStreptomycesに由来する薬物に-mycinの名を与えたのに対し、Micromonospora由来のゲンタマイシンには-micinの名を与えたからである。
 
[[大腸菌]] ( ''E. Coli'' )はグラム陰性菌であるが、ゲンタマイシンに耐性を持つ。また、ゲンタマイシンは熱に安定な抗生物質の一つであり、[[滅菌|高温高圧滅菌]]後においても活性を持つ。そのため、ある種の微生物[[培地]]の調製に使われる。
 
==作用起序==
ゲンタマイシンは殺菌性の抗生物質で、細菌の[[リボソーム]] 30S サブユニットに結合して、蛋白合成を阻害する。
 
他のアミノグリコシド系抗生物質と同様経口投与では無効である。これは、小腸にて吸収された後、門脈を経由して肝臓に到達し、不活化されるためである。そのため、静脈注射、筋肉注射、局所投与にて利用される。
 
==臨床応用==
[[大腸菌]] ( ''E. Coli'' )はグラム陰性菌であるが、ゲンタマイシンに耐性を持つ。また、ゲンタマイシンは熱に安定な抗生物質の一つであり、[[滅菌|高温高圧滅菌]]後においても活性を持つ。そのため、ある種の微生物[[培地]]の調製に使われる。
ゲンタマイシンは、[[グラム陰性菌|グラム陰性桿菌]]による感染症にほぼ専門的に用いられる。殺菌能の高い薬剤で、[[緑膿菌]]などの[[日和見感染症]]の起炎菌による[[敗血症]]に対する効果が高い。また、広範囲の薬剤が無効である[[腸球菌]]に対しても、[[ペニシリン]]系薬剤と併用することによって相乗効果を発揮する。緑膿菌のほか、[[大腸菌]]、[[インフルエンザ桿菌]]、[[クレブシエラ菌]]、[[セラチア菌]]、[[アシネトバクター]]、[[シトロバクター]]、[[エンテロバクター]]など血液感染の原因となるようなグラム陰性桿菌はほぼ網羅する抗菌スペクトラムを有する。ゲンタマイシンは[[黄色ブドウ球菌]]などの[[グラム陽性菌]]や、[[淋菌]]・[[髄膜炎菌]] のようなグラム陰性球菌、また[[レジオネラ菌]] による感染症には効果がない。アミノグリコシド系抗生物質には、他の抗生物質に比較すると非常に耐性化しにくいという特徴がある。<!--[[大腸菌]] ( ''E. Coli'' )はグラム陰性菌であるが、ゲンタマイシンに耐性を持つ。-->よく似た[[トブラマイシン]]とは、ゲンタマイシンが[[緑膿菌]]を得意とするに対し、トブラマイシンは[[セラチア菌]]により活性が高いという違いが知られている(どちらもよく効く)。
 
[[敗血症]]のほかは、[[腎盂腎炎]]に主に用いられる。組織移行性が低いので、[[肺炎]]などといった主要臓器の感染症に用いられることは少ないが、上記の日和見感染症に対する効果を期待し用いることはある。一方[[血液脳関門]]を通過できないため、静脈注射では、[[髄膜炎]]には完全に無効である。髄腔内投与を行う場合もあるが、この効果を積極的に支持する科学的根拠はない。また、軟膏製剤もあるが、この使用を正当化するような科学的根拠も乏しい。
==副作用==
すべてのアミノグリコシド系抗生物質は耳に対し毒性を持つが、[[聴覚]]や[[平衡感覚]]に対する影響など様々である。ゲンタマイシンは[[内耳]]の器官である[[前庭]]に毒性を持ち、稀に平衡感覚の永久損失を起こすことがある。聴覚にはほとんど毒性は無い。
多くの場合、患者に対し2週間以上の治療が行われる。少数の患者において、通常は影響が無いミトコンドリア RNAの変異が見られ、ゲンタマイシンの細胞への作用が可能になる。この耳の細胞は特に敏感となる。そのため、ゲンタマイシンは前庭の障害である重度の[[メニエール病]]に対して故意に用いいられることがある。
 
==副作用==
ゲンタマイシンは高い腎毒性をもち、特に治療コースを超える複数回の投与による蓄積がおこった場合におこる。これにより、ゲンタマイシンは通常、体重により投薬を行う。ゲンタマイシンの投与量の計算はいくつかの計算式がある。治療中は血清中のゲンタマイシンレベルを監視する。
すべてのアミノグリコシド系抗生物質は耳に対し毒性を持つ。[[前庭神経]]に対する毒性は平衡感覚障害をきたし、一方[[蝸牛神経]]に対する障害は聴覚障害をおこし、まれに[[聾]]にいたる。アミノグリコシドの中で、ゲンタマイシンの聴覚毒性は最も強い。聴覚障害は、薬剤中止によってもあまり改善しない。
多くの場合、患者に対し2週間以上の治療が行われる。<!--少数の患者において、通常は影響が無いミトコンドリア RNAの変異が見られ、ゲンタマイシンの細胞への作用が可能になる。この耳の細胞は特に敏感となる。そのため、ゲンタマイシンは前庭の障害である重度の[[メニエール病]]に対して故意に用いいられることがある。-->
 
ゲンタマイシンは高い腎毒性をもち、場合によっては[[急性腎不全]]に至ることがある。腎障害は、薬剤中止によって改善することが多い。腎毒性の発症頻度は、ゲンタマイシンの血中最低濃度(トラフ)と相関する。腎障害を予防するため、体重により投与量を調節する。欧米では、ゲンタマイシンの投与量の計算式があるが、わが国の[[保険医療]]の範囲内でこれに従うことは、よほど体が小さくない限り難しい(投与量が上限をこえてしまう)。治療中は血清中のゲンタマイシン濃度を監視する。
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[[Category:抗生物質|けんたまいしん]]