「電離層」の版間の差分

地球を取り巻く大気の上層部にある分子や原子が紫外線やX線などにより電離した領域
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2003年12月10日 (水) 18:48時点における版

我々が聞いているラジオは当然どこかのラジオ局から発された電波なのだが、ラジオ局から電波が発される時、その基となるアンテナは通常、上の方向を向いていることが多い。単純に考えると、この電波は地球内のどこかのラジオにキャッチされるどころか、そのまま空をめがけて宇宙空間に放り出されてもおかしくないはずだ。その電波がラジオ局から遠く離れたどこかでキャッチされるのは、上空のどこかでこの電波が何らかの原因により反射されたのに他ならない。

この例から分かるように、上空には電波をも反射してしまう層が存在する。すなわち、熱圏内及び上空約80kmから500kmの間に位置し、電子密度がほぼ一定で、そこに存在する原子分子電離している層を電離層(ionosphere)という。また、この電離層は電子密度の違いに注目し、下から順にD層(80km)、E層(100~120km)、F1層(170~230km)、F2層(200~500km)の四つに分けられる。また、後に述べる理由より、今述べた四つの層のうち、D層は夜間になると消滅する。同じく夜間にはF1層とF2層が合併し一つのF層(300~500km)となる。

まず、熱圏にあたる高度約100kmあたりから上は電子が非常に多く存在している。このあたりに含まれる窒素酸素や原子・分子に太陽光線があたと、その原子・分子などが太陽光線に含まれる紫外線を吸収してしまう。そのエネルギーにより、原子核の回りを回転する電子を原子からたたき出してしまうのだ。この現象を原子の光電離などという。この電離状態にある範囲のことを電離層であると定義される。また、このことから何故熱圏には電子が多く存在しているかが分かる。地球大気に入った紫外線は熱圏内でどんどん原子などに吸収されていく。その間、原子などをどんどん電離しているわけだが、光電離する際に原子から電子をたたき出しているので、これを繰り返していくと当然この層の電子密度が高くなっていく。これが原因で熱圏では電子密度が高いのである。

電離層は前に述べたように四つに区分できるが、それぞれの層の電子密度は異なり、上の層に行くほど電子密度が大きくなっていくという状態である。したがってD層などは非常に弱い電離状態にある。前に述べたように電離とは、原子が太陽からの紫外線を吸収した際に原子核から電子が出てしまうという現象である。しかし、D層に関しては、非常に弱い電離状態にあるため、太陽からの紫外線があたらない夜間は電離状態になることができない。この結果夜間にはD層は消えてしまうのだ。

電離層が電波を反射する現象は、厳密にいえば電離層が電波を屈折させてしまうということである。これは空気から水に入った光が屈折するといった現象とそれほど違わない。まず、地上からやってきた電波が電離層に入ると、今まで通ってきた空気中よりも電子の数が急激に増し、電波はそのスピードを失う。最終的に電波は電離層に屈折(これを電波の全反射という)させられ、再び地上に戻ってくるのである。(ただし、電離層が電波を屈折させるのは、電子数・電子密度と電波の周波数などにもよる)

また、太陽フレア爆発などが起きるとき、当然、電離層の電子密度が通常の場合よりもさらに増加する。すると地上からの電波は電離層に反射させられるどころか、電波事態が電離層に吸収させられ、国際通信などに障害をもたらすこともある。このような現象をデリンジャー現象という。