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Kinori (会話 | 投稿記録)
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'''集団思考'''(しゅうだんしこう、{{lang-en-short|''groupthink''}})とは[[集団]]で合議を行う場合に不合理あるいは危険な[[意思決定]]が容認されること。'''集団浅慮'''と訳されることもある。
 
集団思考という言葉は[[ウィリアム・ホワイト]](William H. Whyte)が[[1952年]]に[[フォーチュン (雑誌)|フォーチュン誌]]の中で用いたのが最初であるが、集団の心理的な特徴を表す語として政治分析に適用したのは[[アメリカ合州国]]の心理学者の[[アーヴィング・ジャニス]]である。[[ジャニス]]は[[真珠湾攻撃]](日本が真珠湾を攻撃する可能性を過小評価した、ハワイおよびワシントンDCの米海陸軍首脳)、[[朝鮮戦争]](国連軍が38度線を越えて進軍した場合に、中国が参戦する可能性を十分に検討しなかった[[ハリー・S・トルーマン|トルーマン政権]])、[[ベトナム戦争]](各方面からの警告を無視した、1964年から67年にかけての[[リンドン・ジョンソン|ジョンソン政権]]による戦争の拡大)、[[ピッグス湾事件]](CIAの立案したキューバ侵攻作戦の非現実的な前提を見逃した[[ジョン・F・ケネディ|ケネディ政権]])、[[ウォーターゲート事件]](事件が政権存立に与える危険性への認識が欠如していた[[リチャード・ニクソン|ニクソン政権]])などが起きたときの記録を調査し、誤った政策決定につながる集団の心理的傾向をモデル化した。ジャニスが用いた事例は主として、米国大統領とアドバイザーたちで構成される集団の失敗である<ref>Janis, Irving, ''Decision Making: Psychological Studies of Policy Decisions and Fiascoes'', 2nd edition (Boston: Houghton Mifflin Company, 1982).</ref>。
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ジャニスは上述の事例に基づく検討から、次にあげる条件があるとき、集団思考の兆候が現れ、それが欠陥のある意志決定(Defective Decision-Making)につながると結論づけた<ref>Janis, Irving, ''Decision Making: Psychological Studies of Policy Decisions and Fiascoes'', p.244.</ref>。
 
*;先行する条件
(1)団結力のある集団(Cohesive Group)が(2)構造的な組織上の欠陥を抱え、(3)刺激の多い状況に置かれると、集団思考に陥りやすい。構造的な組織上の欠陥(Structural Faults of the Organization)とは、メンバーに発言の機会を平等に与える公平なリーダーシップの欠如<ref>ibid., pp.42-43.</ref>、整然とした手続きを求める規範の欠如、構成員の社会的背景とアイデンティティの均一性などのことである。また、刺激の多い状況(Provocative Situational Context)とは、リーダーの意見よりもよい解決策が望めないような、集団外部からの強い脅威(High Stress from External Threats with Low Hope of a Better Solution than the Leder's)などのことを指している
 
構造的な組織上の欠陥(Structural Faults of the Organization)とは、メンバーに発言の機会を平等に与える公平なリーダーシップの欠如<ref>ibid., pp.42-43.</ref>、整然とした手続きを求める規範の欠如、構成員の社会的背景とアイデンティティの均一性などのことである。また、刺激の多い状況(Provocative Situational Context)とは、リーダーの意見よりもよい解決策が望めないような、集団外部からの強い脅威(High Stress from External Threats with Low Hope of a Better Solution than the Leder's)などのことを指している。
*集団思考の兆候
 
*;集団思考の兆候
上述の先行する条件があるとき、次のような集団思考の兆候を示し始めることが多い。
 
*第1類型:自分たちの集団に対する過大評価。自分たちを不死身と見なす幻想(Illusion of Invulnerability)や、集団固有の倫理に対する信仰のことである。例えば、ニクソン大統領とそのアドバイザーは、不死身の幻想に陥り、ウォーターゲート事件による致命的ダメージを警告する声を無視したとされる<ref>ibid., pp.220-225.</ref>。
 
*第2類型:閉ざされた意識(Closed-Mindedness)。集団による自己弁護、集団外部に対する偏見が具体例である。例えば、ピッグス湾事件における意志決定では、「敵は間抜けで弱体」と見なす集団外部への偏見が働いていたという<ref>ibid., pp.36-37.</ref>
 
*第3類型:均一性への圧力(Pressure Toward Uniformity)。自分の意見が集団内の明白な合意から外れていないかを自ら検閲する行為(Self-censorship)や、決定が多数派の見解と一致するよう留意すること[[全会一致の幻想]](Illusion of Unanimity)、決定の倫理性、効果に対する集団の自己満足を妨げる情報が集団に伝わるのを防ぐ成員(自薦のマインドガード、Self-Appointed Mindgurads)の出現を指す<ref>ibid., p.175.</ref>
第2類型:閉ざされた意識(Closed-Mindedness)。集団による自己弁護、集団外部に対する偏見が具体例である。例えば、ピッグス湾事件における意志決定では、「敵は間抜けで弱体」と見なす集団外部への偏見が働いていたという。<ref>ibid., pp.36-37.</ref>
 
*;欠陥のある決定の兆候
第3類型:均一性への圧力(Pressure Toward Uniformity)。自分の意見が集団内の明白な合意から外れていないかを自ら検閲する行為(Self-censorship)や、決定が多数派の見解と一致するよう留意すること[[全会一致の幻想]](Illusion of Unanimity)、決定の倫理性、効果に対する集団の自己満足を妨げる情報が集団に伝わるのを防ぐ成員(自薦のマインドガード、Self-Appointed Mindgurads)の出現を指す。<ref>ibid., p.175.</ref>
集団思考の兆候を示す3類型のうち、全てまたはいずれかに当てはまると、集団内の合意形成の努力の結果として、欠陥のある決定を下すことが多い<ref>ibid., p.175.</ref>。
 
集団思考の兆候を示す3類型のうち、全てまたはいずれかに当てはまると、集団内の合意形成の努力の結果として、欠陥のある決定を下すことが多い<ref>ibid., p.175.</ref>。その兆候とは、(1)代替案を充分に精査しない、(2)目標を充分に精査しない、(3)採用しようとしている選択肢の危険性を検討しない、(4)いったん否定された代替案は再検討しない、(5)情報をよく探さない、(6)手元にある情報の取捨選択に変更がある(Selective Bias in Processing Information at Hand)、(7)非常事態に対応する計画を策定できないという、諸点である。
*欠陥のある決定の兆候
集団思考の兆候を示す3類型のうち、全てまたはいずれかに当てはまると、集団内の合意形成の努力の結果として、欠陥のある決定を下すことが多い<ref>ibid., p.175.</ref>。その兆候とは、(1)代替案を充分に精査しない、(2)目標を充分に精査しない、(3)採用しようとしている選択肢の危険性を検討しない、(4)いったん否定された代替案は再検討しない、(5)情報をよく探さない、(6)手元にある情報の取捨選択に変更がある(Selective Bias in Processing Information at Hand)、(7)非常事態に対応する計画を策定できないという、諸点である。
 
==脚注・出典==