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'''菅野 盾樹'''(すげの たてき、[[1943年]][[8月6日]] - )は、哲学者(記号学、人間学、形而上学)。[[大阪大学]][[名誉教授]]。[[東京都]]生まれ。[[博士]]([[人間科学]])(大阪大学、1995年)(学位論文「いのちの遠近法-意味と非意味の哲学」)。
 
== 略歴 ==
1967年、[[東京大学]][[文学部]]哲学科卒業、1972年東京大学[[大学院]][[博士課程]]単位取得満期退学、東京大学文学部[[助手 (教育)|助手]]、[[山形大学]][[教養部]][[専任講師]]、[[助教授]]、大阪大学[[人間科学部]]助教授、1984年『我、ものに遭う』で[[サントリー学芸賞]]受賞。その後[[教授]]。2007年定年退職し名誉教授、ヒューマニック記号学研究所代表。その間、[[カリフォルニア大学バークレー校]]客員研究員、[[ロンドン大学]]バークベックカレッジ客員研究員、[[ハーヴァード大学]]教育学大学院客員研究員。[[日本記号学会]]会長。
 
2007年より、東京工業大学世界文明センターにフェローとして在職。私塾《現在思想の会》を主宰している。
 
== 研究内容 ==
 菅野の哲学へのかかわりは、多くの哲学者の場合と同様、少年期以来の<生の不透明さ>の感覚に発している。<生きることに意味がある>という了解が、どこまで・そしてなにゆえに・了解できるのか/できないのか――これが彼にとっての基本の問題である。この感覚にはもちろん<生の意味>が判然としていないという渇望感も含まれるが、むしろ<生の意味を問うこと>それ自体の意味合いが曖昧だというリアルな認識が含まれている。<br>
 こうした問題意識に駆られて、大学院では主としてフランスにおける現象学派の著作を読み、メルロ=ポンティに関する修士論文を執筆することになる。メルロの身体性の哲学には明晰な言語表現へと濾過される以前の両義的な<意味>の問題が仔細に観察されているからである。<br>
 <b>哲学研究の道程</b><br>
 その後、近代の意識哲学の脱構築を問題意識として抱懐しながら、とりわけ身体表現-身振りとしての言語-比喩(すなわち非字義的表現)などの問題群を考究することになる。ここから、彼は英米系の分析哲学(とりわけ言語哲学ないし心の哲学)との対質を自覚的に試みている。彼が親炙したのは、どちらかというと非正統的な哲学者であるセラーズ(W. Sellars)、特にグッドマン(N. Goodman)であった。(グッドマンに関してはその著作の翻訳を試みている。)この事態には正統的な分析哲学への彼の深い不満がうかがえる。この点は後にマーク・ジョンソン(M. Johnson)の著作を翻訳することにもつながる。<br>
 言うまでもないが、パースとソシュールを源泉とする記号学への本格的な取り組みも同じ動機に発している。<br>
 哲学の隣接領域について言えば、<意味>や<記号>の問題を介して、とりわけ文化人類学における構造主義の展開を追尾しつつ、文化人類学者として出発しながら後に言語哲学者あるいは認識論者として独自な地歩を築いたダン・スペルベル(D. Sperber)の業績に影響を受けつつそれを我が国に紹介する役割を演じた。<br>
 本来の形而上学的探究と並び、生命倫理や教育哲学(この呼び方は確かなものではないが)などの領域においても研究を行っている。その際の基本的構えは概していって記号論的性格を呈している。<br>
 <b>哲学研究における成果</b>
 哲学研究への菅野のオリジナルな寄与としては以下を挙げたい。<br>
・レトリックの哲学的・統合的研究に一定の成果を導いたこと<br>
・20世紀前半に成立した<哲学的人間学>の現代化にある程度の方向性を与えたこと。<br>
・<記号学>の現代における再構築に一定の寄与を果たしたこと。<br>
・以上を遂行するなかで、<身体性>の問題に一定程度の積極的解明をなしたこと。<br>言うまでもなくこれらはいまなお継続されている。
 
 こうした問題意識に駆られて、大学院では主としてフランスにおける現象学派の著作を読み、メルロ=ポンティに関する修士論文を執筆することになる。メルロの身体性の哲学には明晰な言語表現へと濾過される以前の両義的な<意味>の問題が仔細に観察されているからである。<br>
==受賞歴==
*1984年『我、ものに遭う』で[[サントリー学芸賞]]受賞
==著書==
*我、ものに遭う 世に住むことの解釈学 新曜社, 1983
*メタファーの記号論 勁草書房, 1985
*いじめ=<学級>の人間学 新曜社, 1986
*いのちの遠近法 意味と非意味の哲学 新曜社, 1995
*人間学とは何か 産業図書, 1999
*恣意性の神話 記号論を新たに構想する 勁草書房, 1999
*新修辞学 反<哲学的>考察 世織書房, 2003
 
 <b>=== 哲学研究の道程</b><br> ===
==編著==
 その後、近代の意識哲学の脱構築を問題意識として抱懐しながら、とりわけ身体表現-身振りとしての言語-比喩(すなわち非字義的表現)などの問題群を考究することになる。ここから、彼は英米系の分析哲学(とりわけ言語哲学ないし心の哲学)との対質を自覚的に試みている。彼が親炙したのは、どちらかというと非正統的な哲学者であるセラーズ(W. Sellars)、特にグッドマン(N. Goodman)であった。(グッドマンに関してはその著作の翻訳を試みている。)この事態には正統的な分析哲学への彼の深い不満がうかがえる。この点は後にマーク・ジョンソン(M. Johnson)の著作を翻訳することにもつながる。<br>
*レトリック論を学ぶ人のために 世界思想社, 2007
*現代哲学の基礎概念 大阪大学出版会, 2008
 
 言うまでもないが、パースとソシュールを源泉とする記号学への本格的な取り組みも同じ動機に発している。<br>
==翻訳==
*象徴表現とはなにか 一般象徴表現論の試み [[ダン・スペルベル]] 紀伊国屋書店, 1979
*ことばの運命 現代記号論序説 F.レカナティ 新曜社, 1982
*人類学とはなにか その知的枠組を問う ダン・スペルベル 紀伊国屋書店, 1984
*世界制作の方法 ネルソン・グッドマン 中村雅之共訳 みすず書房, 1987
*アメリカン・マインドの終焉 文化と教育の危機 [[アラン・ブルーム]] みすず書房, 1988
*心のなかの身体 想像力へのパラダイム転換 マーク・ジョンソン 中村雅之共訳 紀伊国屋書店, 1991
*[[サルトル]]/[[モーリス・メルロー=ポンティ|メルロ=ポンティ]]往復書簡 決裂の証言 みすず書房, 2000
*記号主義 哲学の新たな構想 N.グッドマン,C.Z.エルギン みすず書房, 2001
*表象は感染する 文化への自然主義的アプローチ ダン・スペルベル 新曜社, 2001
*世界制作の方法 ネルソン・グッドマン ちくま学芸文庫,2008,2009(2刷)
 
 哲学の隣接領域について言えば、<意味>や<記号>の問題を介して、とりわけ文化人類学における構造主義の展開を追尾しつつ、文化人類学者として出発しながら後に言語哲学者あるいは認識論者として独自な地歩を築いたダンスペルベル(D. Sperber)の業績に影響を受けつつそれを我が国に紹介する役割を演じた。<br>
==外部リンク==
 
*[http://www33.ocn.ne.jp/~homosignificans/ 本人のHP]
 本来の形而上学的探究と並び、生命倫理や教育哲学(この呼び方は確かなものではないが)などの領域においても研究を行っている。その際の基本的構えは概していって記号論的性格を呈している。<br>
*[http://d.hatena.ne.jp/namdoog/ ブログ形式の研究ノート]
 
 <b>=== 哲学研究における成果</b> ===
 哲学研究への菅野のオリジナルな寄与としては以下を挙げたい。<br>
* レトリックの哲学的・統合的研究に一定の成果を導いたこと<br>
* 20世紀前半に成立した<哲学的人間学>の現代化にある程度の方向性を与えたこと。<br>
* <記号学>の現代における再構築に一定の寄与を果たしたこと。<br>
* 以上を遂行するなかで、<身体性>の問題に一定程度の積極的解明をなしたこと。<br>言うまでもなくこれらはいまなお継続されている
言うまでもなくこれらはいまなお継続されている。
 
== 受賞歴 ==
* 1984年『我、ものに遭う』で[[サントリー学芸賞]]受賞
 
== 著書 ==
* 我、ものに遭う 世に住むことの解釈学 新曜社, 1983
* メタファーの記号論 勁草書房, 1985
* いじめ=<学級>の人間学 新曜社, 1986
* いのちの遠近法 意味と非意味の哲学 新曜社, 1995
* 人間学とは何か 産業図書, 1999
* 恣意性の神話 記号論を新たに構想する 勁草書房, 1999
* 新修辞学 反<哲学的>考察 世織書房, 2003
 
== 編著 ==
* レトリック論を学ぶ人のために 世界思想社, 2007
* 現代哲学の基礎概念  大阪大学出版会, 2008
 
== 翻訳 ==
* 象徴表現とはなにか 一般象徴表現論の試み [[ダン・スペルベル]] 紀伊国屋書店, 1979
* ことばの運命 現代記号論序説 F.レカナティ 新曜社, 1982
* 人類学とはなにか その知的枠組を問う ダン・スペルベル 紀伊国屋書店, 1984
* 世界制作の方法 ネルソン・グッドマン 中村雅之共訳 みすず書房, 1987
* アメリカン・マインドの終焉 文化と教育の危機 [[アラン・ブルーム]] みすず書房, 1988
* 心のなかの身体 想像力へのパラダイム転換 マーク・ジョンソン 中村雅之共訳 紀伊国屋書店, 1991
* [[サルトル]]/[[モーリス・メルロー=ポンティ|メルロ=ポンティ]]往復書簡 決裂の証言 みすず書房, 2000
* 記号主義 哲学の新たな構想 N.グッドマン,C.Z.エルギン みすず書房, 2001
* 表象は感染する 文化への自然主義的アプローチ ダン・スペルベル 新曜社, 2001
* 世界制作の方法 ネルソン・グッドマン ちくま学芸文庫,2008,2009(2刷)
 
== 外部リンク ==
* [http://www33.ocn.ne.jp/~homosignificans/ 本人のHP]
* [http://d.hatena.ne.jp/namdoog/ ブログ形式の研究ノート]
 
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