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=== 疾患との関連 ===
*;関節リウマチ
:[[Image:Etanercept.svg|thumb|170px|エタネルセプト。図中で赤で示されているTNFRに対してIgGのFc鎖が結合した構造をとる。]]
:慢性炎症性疾患である関節リウマチは関節破壊などの臨床症状を有し、TNF-αはIL-6などと並んで関節リウマチの病態形成において中心的な役割を果たすサイトカインの一つである。わが国においても臨床においてTNF-αをターゲットとした[[生物学的製剤]]が用いられており、sTNFRと[[免疫グロブリンG]]の[[融合タンパク質]]である[[エタネルセプト]]や抗TNF-α[[モノクローナル抗体]]である[[インフリキシマブ]]および[[アダリムマブ]]が適応となっている。しかしこれらの薬剤は副作用も多く、感染症や発癌に対するリスクが高まることが警鐘されている<ref>Bongartz T, Sutton AJ, Sweeting MJ, buchan I, Matteson EL and Montori V.(2006)"Anti-TNF antibody therapy in rheumatoid arthritis and the risk of serious infections and malignancies: systematic review and meta-analysis of rare harmful effects in randomized controlled trials."'' [[ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション|JAMA]].'' '''295''',2275-85. PMID 16705109</ref>。これらの医薬品は[[疾患修飾性抗リウマチ薬]](DMARDs)である[[メトトレキサート]]との併用により優れた効果を示し、インフリキシマブにおいては併用が必須である<ref>レミケード&reg;点滴静注用(田辺三菱製薬) 添付文書 2007年11月改訂</ref>。
*;糖尿病・高脂血症
 
*糖尿病・高脂血症
:脂肪組織は炎症性サイトカインを分泌しており、TNF-αにより細胞内への[[グルコース]]の取り込み阻害や[[インスリン]]に対する感受性低下が生じる<ref>Hotamisligil GS, Shargill NS and Spiegelman BM.(1993)"Adipose expression of tumor necrosis factor-alpha: direct role in
obesity-linked insulin resistance."''Science.'' '''259''',87-91. PMID 7678183</ref>。また、TNF-αは脂肪細胞や肝細胞における脂肪酸の産生を促進し、主にTNFR1を介して抗グリセリン血症を引き起こすことが報告されている<ref>Uysal KT, Wiesbrock SM and Hotamisligil GS.(1998)"Functional analysis of tumor necrosis factor (TNF) receptors in TNF-alpha-mediated insulin resistance in genetic obesity."''Endocrinology.'' '''139''',4832-8. PMID 9832419</ref>。
*;敗血症
 
*敗血症
:[[敗血症]]とは細菌感染により全身的な炎症が引き起こされた状態である。細菌が持つエンドトキシン(リポ多糖)はマクロファージなどの細胞を活性化しTNF-αやIL-1をはじめとしたサイトカインの産生を亢進させる。TNF-αは感染の拡大を防ぎ、局所にとどめる働きを有するが、全身的なTNF-αへの暴露は末梢血管拡張による急激な血圧低下(敗血症性ショック)や[[播種性血管内凝固症候群]](DIC)を引き起こす。
*;骨粗鬆症
 
*骨粗鬆症
:骨では常に[[破骨細胞]]による[[骨吸収]]と[[骨芽細胞]]による[[骨形成]]が行われており、正常な状態ではこれらのバランスが保たれていることから見かけ上では骨の大きさは変化していない。しかし骨代謝に異常が生じ、この平衡が骨吸収側に傾くと骨量が減少し、[[骨粗鬆症]]に陥る。TNF-αは骨吸収を促進するサイトカインの一つとして知られており、[[間質細胞]]やT細胞、[[B細胞]]、[[内皮細胞]]などに作用してRANKLと呼ばれる分子の産生を促進する。RANKLはTNF-αファミリーに属する細胞表面に発現する分子であり、RANKLに対する受容体として働くRANKに結合([[RANKL/RANK]]系)することにより[[骨髄]]細胞から破骨細胞への[[分化]]誘導に関与している。また、破骨細胞の形成にはRANKL非依存的な経路が存在することも示唆されている<ref>Kobayashi K, Takahashi N, Jimi E, Udagawa N, Takami M, Kotake S, Nakagawa N, Kinosaki M, Yamaguchi K, Shima N, Yasuda H, Morinaga T, Higashio K, Martin TJ and Suda T.(2000)"Tumor necrosis factor alpha stimulates osteoclast differentiation by a mechanism independent of the ODF/RANKL-RANK interaction."''J.Exp.Med.'' '''191''',275-86. PMID 10637272</ref>。
 
== TNF-β(LT-α)およびLT-β ==
LT-αはリンホカインの一種であり、TNF-αと同様に三量体を形成して安定に存在しているが、ホモ三量体を形成している場合(LT-α<sub>3</sub>)もあれば、LT-βと結合して三量体と結合している場合(LT-α<sub>2</sub>β<sub>1</sub>)もある。LTはTNF-αと同一の受容体を介して作用を発現し、類似した生物活性を有する。
 
== 脚注 ==
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== 出典 ==
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*宮園 浩平、菅村 和夫 編『BioScience 用語ライブラリー サイトカイン・増殖因子』羊土社 1998年 ISBN 4897062616
*本郷 利憲、廣重 力、豊田 順一 監修『標準生理学 第6版』医学書院 2005年 ISBN 9784260101370
 
== 参考文献 ==
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