'''同化'''(どうか、assimilation)とは、ある[[音素]]Xが、近接する[[音素]]Yの影響により、Yの特徴を共有した[[異音]]Y'として実現するという音韻過程を指す。
*1.# 順行同化
#** Yが先行するような場合、つまり図式的にはの次のように示される同化を順行同化(progressive assimilation)と言う。
#: /...YX.../ → [...YY'...]
#** [[英語]]の[[動詞]]過去接尾辞/+d/。[[語幹]]が[[無声]][[阻害音]]で終わる場合、順行同化によって[t]として具現化される。
#: liked{{ipa|lai'''k'''+'''d'''}} → {{IPA|lai'''kt'''}}
#** [[朝鮮語]]の[[鼻音]]/n/。[[流音]]に連続する場合、順行または逆行同化によって流音として具現化される。ただし朝鮮語では音節中の位置で[r]と[l]が[[相補分布]]をなすため、具現形は[l]。
#: {{lang|ko|구일날}}/ku+i'''r'''+'''n'''ar/ → [ku:i'''ll'''al]「九日のひ」
#** [[日本語]]の[[相 (言語学)|相]]・[[時制]]の接辞/+ta/。語幹が有声音で終わる場合、順行同化によって[da]として実現される。
#: 読んだ/jo'''m'''+'''t'''a/ → [jo'''nd'''a]
*2.# 逆行同化
#** 同化の環境を構成するYがXに後続する場合、図式的には次のように示される同化を逆行同化(regressive assimilation)という。
#: /...XY.../ → [...Y'Y...]
#** assimilateという語自体が逆行同化を含んでいる。
#: assimilate <a'''d''' + '''s'''imilate> → {{IPA|ə'''s'''ɪmɪleɪt}}
#** 日本語の動詞語幹末子音/w/に相・時制の接辞/+ta/が後続した場合、逆行同化により[t]として具現化される。
#: 買った/ka'''w'''+'''t'''a/ → [ka'''tt'''a]
*3.# 同種の音素に挟まれることによる同化
#: /...YXY.../ → [...YY'Y...]
<!--
#** 英語の有声音間における子音の有声化。
#: knives{{ipa|naɪ'''f'''+s}} → {{IPA|naɪ'''v'''z}}
英語の複数は本来 /s/. e が発音されていたため、f が母音間で有声化?
-->
#** 日本語の母音間における有声[[破裂音]]の[[子音弱化|弱化]]。
#: 蕎麦/so'''b'''a/ → [so'''β'''a]
#** 朝鮮語の[[破裂音]]{{ipa|p, t, k}}に[[鼻音]]{{ipa|n, m, ŋ}}が後続した場合、逆行同化により{{IPA|m, n, ŋ}}として実現される。
#: {{lang|ko|입맛}}{{ipa|i'''p'''+mat}} → {{IPA|i'''m'''mat}}[食指]
#: {{lang|ko|옛날}}{{ipa|je'''t'''+nar}} → {{IPA|je'''n'''nal}}[昔]
#: {{lang|ko|악몽}}{{ipa|a'''k'''+moŋ}} → {{IPA|a'''ŋ'''moŋ}}[惡夢]
*4.# [[母音交替]]では隣接していない音素に同化が生じる
#** 英語の'foot'の複数形'feet'は歴史的には、複数を表す[[接尾辞]]/+i/が[[語基]]/fot-/に添加され/foti/となり、[fe:ti]として母音が逆行同化([[ウムラウト]])を受けた後に[i]が脱落し、その後[[大母音推移]]によって[fi:t]となった。
#** [[中期朝鮮語]]までは体系的な[[母音調和]]が存在したが、現代の韓国朝鮮語にも述語活用の一部に残る。
#: /s[-子音,+低舌,+ATR]l+[-子音,αATR]ss+ta/ → [saratt*a]「住んだ、生きた」
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[[Category:歴史言語音声学|とうか]]
[[Category:歴史言語学]]
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