「非圧縮性」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
Krdnzm (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
m sty
1行目:
{{otheruses|連続体|データ圧縮|非圧縮}}
連続体力学における'''非圧縮性'''({{lang-en|incompressibility}})とは、
{{wikify}}
連続体の密度が変形の前後で変化しないような性質を表す。
連続体力学における'''非圧縮性'''({{lang-en|incompressibility}})とは、連続体の密度が変形の前後で変化しないような性質を表す。
一般に、[[連続体力学]]では[[質量保存則]]を考えるため、密度が一定であるならば体積も一定となる。
非圧縮性を有する材料として、流体では河川を流れる水や音速を超えない範囲で運動している空気が挙げられる。
これらを総称して、[[非圧縮性流体]]と呼んでいる。一方で、固体の場合は、ゴムに代表される[[超弾性体]]や降伏した金属などのような[[塑性体]]が挙げられる。
流体では河川を流れる水や音速を超えない範囲で運動している空気が挙げられる。
これらを総称して、[[非圧縮性流体]]と呼んでいる。
一方で、固体の場合は、ゴムに代表される[[超弾性体]]や降伏した金属などのような[[塑性体]]が挙げられる。
 
== 非圧縮性の定式化 ==
 
[[ファイル:Deformation.png|400px|right|thumb|図1.連続体の変形]]
連続体力学では、次に示す[[連続体力学の基礎|変形勾配]]<math>F</math>を用いて連続体の変形を考える。 以後、使用する文字は図1に合わせた。
{{indent|<math>
d \boldsymbol{x} = \boldsymbol{F} d\boldsymbol{X}, {\,} F_{ij} = \frac{\partial x_i}{\partial X_j}
</math>}}
ここで、<math>\boldsymbol{x}</math>は[[連続体力学の基礎|変形形状]]<math>\kappa_t</math>内の位置を表し、
<math>\boldsymbol{X}</math>は[[連続体力学の基礎|基準形状]](変形なし形状)<math>\kappa_0</math>内のもとの位置を表す。
 
連続体力学では、
次に示す[[連続体力学の基礎|変形勾配]]
<math>F</math>を用いて連続体の変形を考える。
以後、使用する文字は図1に合わせた。
 
:<math>d \boldsymbol{x} = \boldsymbol{F} d\boldsymbol{X},
{\,} F_{ij} = \frac{\partial x_i}{\partial X_j}</math>
 
ここで、<math>\boldsymbol{x}</math>は[[連続体力学の基礎|変形形状]]<math>\kappa_t</math>内の
位置を表し、
<math>\boldsymbol{X}</math>は[[連続体力学の基礎|基準形状]](変形なし形状)<math>\kappa_0</math>内のもとの位置を表す。
[[体積変化率]]<math>J</math>と[[連続体力学の基礎|変形勾配]]<math>\boldsymbol{F}</math>に[[体積変化率|次の関係]]があることを利用する。
{{indent|<math>
 
:<math>
J = \frac{dv}{dV} = \det(\boldsymbol{F})
</math>}}
ここで、<math>dv</math>は[[連続体力学の基礎|変形形状]]<math>\kappa_t</math>内の微小六面体要素の体積を表し、<math>dV</math>は[[連続体力学の基礎|基準形状]](変形なし形状)<math>\kappa_0</math>内の微小六面体要素の体積を表す。
 
非圧縮性とは上記の[[体積変化率]]<math>J</math>が1であることに等しいので、次のように定式化ができる。
ここで、<math>dv</math>は[[連続体力学の基礎|変形形状]]<math>\kappa_t</math>内の微小六面体要素の体積を表し、
{{indent|<math>
<math>dV</math>は[[連続体力学の基礎|基準形状]](変形なし形状)<math>\kappa_0</math>内の微小六面体要素の体積を表す。
非圧縮性とは上記の[[体積変化率]]<math>J</math>が1であることに等しいので、
次のように定式化ができる。
 
:<math>
J = \det(\boldsymbol{F}) = 1
</math>}}
 
== 流体力学との関連性 ==
非圧縮性流体の基礎式のひとつに、次に示す[[連続の式]]がある。
 
{{indent|<math>
 
非圧縮性流体の基礎式のひとつに、
次に示す[[連続の式]]がある。
 
 
:<math>
\mathrm{div\,} \boldsymbol{v} = 0, \, \frac{\partial v_j}{\partial x_j} = 0
</math>}}
 
これは、[[質量保存則]]に密度が一定であることを利用して導き出されるが、次のように[[体積変化率]]<math>J</math>の[[連続体力学の基礎|物質時間微分]](物質時間導関数)を考えることでも導き出される。
これは、
{{indent|<math>
[[質量保存則]]に密度が一定であることを利用して導き出されるが、
次のように[[体積変化率]]<math>J</math>の[[連続体力学の基礎|物質時間微分]](物質時間導関数)を考えることでも導き出される。
 
:<math>
\frac{D J}{D t} = J \mathrm{div\,} \boldsymbol{v}
</math>}}
 
上式に<math>J = 1</math>と<math>\frac{D J}{D t} = 0</math>を代入することで、結局[[連続の式]]が得られる。
を代入することで、
結局[[連続の式]]が得られる。
 
==固体力学との関連性==
固体力学において、[[体積ひずみ]]という概念がある。
ここでは、[[体積ひずみ]]<math>\epsilon_V</math>と[[体積変化率]]<math>J</math>との関連性について述べる。
 
[[連続体力学の基礎|変形勾配]]<math>\boldsymbol{F}</math>は、[[連続体力学の基礎|変位勾配]]<math>\boldsymbol{H}</math>と[[恒等テンソル]]<math>\boldsymbol{I}</math>を用いると次のように表される。
固体力学において、
{{indent|<math>
[[体積ひずみ]]という概念がある。
\boldsymbol{F} = \boldsymbol{I} + \boldsymbol{H}, F_{ij} = \delta_{ij} + H_{ij}
ここでは、
</math>}}
[[体積ひずみ]]<math>\epsilon_V</math>と[[体積変化率]]<math>J</math>との関連性について述べる。
[[連続体力学の基礎|変形勾配]]<math>\boldsymbol{F}</math>は、
[[連続体力学の基礎|変位勾配]]<math>\boldsymbol{H}</math>と[[恒等テンソル]]<math>\boldsymbol{I}</math>を用いると次のように表される。
 
ここで、[[連続体力学の基礎|変形勾配]]<math>\boldsymbol{H}</math>は
 
:{{indent|<math>
\boldsymbol{F} = \boldsymbol{I} + \boldsymbol{H}, F_{ij} = \delta_{ij} + H_{ij} </math>
 
ここで、
[[連続体力学の基礎|変形勾配]]<math>\boldsymbol{H}</math>は
 
 
 
:<math>
d\boldsymbol{u} = \boldsymbol{H} d\boldsymbol{X}, H_{ij} = \frac{\partial u_i}{\partial X_j}
</math>}}
 
である。<math>\boldsymbol{u}</math>は変位を表す。
[[連続体力学の基礎|変形勾配]]<math>\boldsymbol{F}</math>の各要素は[[連続体力学の基礎|変位勾配]]<math>H_{ij}</math>を用いると、
以下の様に表される。
 
[[連続体力学の基礎|変形勾配]]<math>\boldsymbol{F}</math>の各要素は[[連続体力学の基礎|変位勾配]]<math>H_{ij}</math>を用いると、以下の様に表される。
 
:{{indent|<math>
\boldsymbol{F} = \begin{pmatrix}
1 + H_{11} & H_{12} & H_{13} \\
93 ⟶ 60行目:
H_{31} & H_{32} & 1 + H_{33}
\end{pmatrix}
</math>}}
 
ここで、[[体積変化率]]<math>J</math>を[[連続体力学の基礎|変位勾配]]の成分<math>H_{ij}</math>で表すと、下の式を得る。
ここで、
{{indent|<math>
[[体積変化率]]<math>J</math>を[[連続体力学の基礎|変位勾配]]の成分<math>H_{ij}</math>で表すと、
下の式を得る。
 
:<math>
J = \det(F)
= \begin{vmatrix}
107 ⟶ 71行目:
\end{vmatrix}
= 1 + H_{11} + H_{22} + H_{33} + H^{(2)} + H^{(3)}
</math>}}
 
ここで、<math>H^{(2)}</math> および <math>H^{(3)}</math>は[[連続体力学の基礎|変位勾配]]の2次の項と3次の項を表す。非圧縮性であることから、<math>J = 1</math>とすると、結局次の式を得る
{{indent|<math>
非圧縮性であることから、<math>J = 1</math>とすると、
結局次の式を得る。
 
 
:<math>
H_{11} + H_{22} + H_{33} + H^{(2)} + H^{(3)} = 0
</math>}}
 
[[微小変形]]を考えると、<math>H^{(2)}</math>と<math>H^{(3)}</math>が無視でき
{{indent|<math>
<math>H^{(2)}</math>と<math>H^{(3)}</math>が無視でき、
<math>
\frac{\partial }{\partial X_i}
\approx \frac{\partial }{\partial x_i}
</math>}}
となるため、次の式を得る。
{{indent|<math>
次の式を得る。
 
:<math>
H_{11} + H_{22} + H_{33}
= \frac{\partial u_1}{\partial X_1}
135 ⟶ 93行目:
+ \frac{\partial u_3}{\partial x_3}
= \epsilon_V = 0
</math>}}
 
上記のように、非圧縮性から体積ひずみが0となることが示された。
非圧縮性から体積ひずみが0となることが示された。
 
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author=京谷孝史|authorlink=京谷孝史|year=2008|month=12|title=よくわかる連続体力学ノート|publisher=森北出版|isbn=978-4-627-94811-2|}}
 
[[Category{{デフォルトソート:応用力学|ひあつしゆくせい]]}}
[[Category:力学]]