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[[Image:Many colored pens.jpg|right|200px|thumb|合成色素を利用した製品]]
'''色素'''(しきそ、coloring matter,pigment)とは[[可視光]]の吸収あるいは放出により物体に[[色]]を与える物質の総称。色素となる物質は[[無機化合物]]と[[有機化合物]]の双方に存在する。色刺激が全て可視光の吸収あるいは放出によるものとは限らず、<!--光の散乱による白色顔料や-->[[]]の干渉による[[構造色]]や[[真珠]]状[[光沢]]など、可視光の吸収あるいは放出とは異なる発色原理に依存する[[染料]][[顔料]]も存在する。[[染料]][[顔料]]の多くは色素である。応用分野では色素は染料及び顔料と峻別されず相互に換言できる場合がある。
 
== 概論 ==
光の吸収あるいは放出は物質を構成する[[電荷]][[光子]]の相互作用の結果である。[[電子]][[エネルギー準位]]に相当する光の[[波長]]は多くの場合[[紫外領域]]に存在し、[[分子]]の電気双極子の振動に相当する光の波長は赤外領域に存在する。したがって、可視光を吸収あるいは放出する色素となりうる化合物は少数である。また、通常存在する状態で目で色を感じるほどの呈色を示さないものは色素としてみなされない場合が多い。
 
また、実際には、単純に色素が光の吸収あるいは放出した光に、物質粒子による表面[[散乱]]や[[反射]]、[[透過]]、[[屈折]]、[[干渉 (物理学)|干渉]]などの光学的な効果が重畳する。したがって、色素の色と、それを含む物質の見た目の色とは必ずしも一致しない。
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== 色素の性能 ==
生物において、色彩を持つことが重要である色素の代表が[[光合成]]色素である[[葉緑素]]([[クロロフィル]])である。葉緑素は太陽光の中から赤から近赤外の光エネルギーを効率よく吸収する為の色素である。その上、光エネルギーの収集効率を上げるためにわずかに極大吸収換えた複数の色素が配置され、中心の色素分子に光エネルギーが集中するようになっている('''アンテナ色素'''に詳しい)。クロロフィル類以外にも[[カロテノイド]]や[[フィコビリン]]など多種多様な光合成色素が知られている。植物だけでなく動物や細菌にも広く分布する光受容体においても色素が光シグナルを受容する重要な役割を果たしている。その代表はヒトの[[色覚]]を担う[[ロドプシン]]類である。植物では、日長の測定して開花を調節するなどさまざまな役割をもつ[[フィトクロム]]がよく知られている。また[[紫外線]]による[[DNA損傷]]を防止する[[メラニン]]の機能も色が生物学的機能を持つ例である。また、動物の色覚に対応して進化した植物の[[花弁]]や[[果実]]の色や動物の体色なども能動的な機能では無いものの、[[自然淘汰]]により増強された色素のもつ生物の1つの機能とも言える。
 
生物学的な見地から見ると、色素の持つ色彩以外の機能の方が重要な場合も多い。代表的な例としてヘム鉄が挙げられる。ヘムの中心金属が[[鉄]]である[[ヘモグロビン]]と[[ミオグロビン]]、あるいは金属が[[銅]]である[[ヘモシアニン]]とが存在する。前者2者は赤色で、後者は淡青色であるが、いずれも生体内では[[酸素]]の運搬に関与する重要な色素であり、色とその能力に直接的な関係は無い。[[チトクローム]]等ほかにも生体内では種々の色素が存在するが、このように、生体内で重要な機能を担っているが、たまたま色彩を持っている為に色素と呼ばれるものも多い。
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また、[[1888年]]に[[イギリス]]の'''アームストロング''' (H.E.Armstrong) は呈色には分子内に[[キノン]]構造を持つ必要があるとした'''キノン説'''を提唱した。これは発色団説の特定の場合であると考えられる。
 
その後、呈色の説明として[[分子軌道法]]による機構に発色団説はとって変わられた。したがって、今日の発色団や助色団の意味はウィットの提唱した当時とは異なる。分子軌道法による呈色機構は後に詳説するとして、今日において発色団の意味は、不飽和結合系に作用して[[共役系]]を延長したり電荷の偏りを偏重させる原子団を指す。例を次に挙げる。
:>C=C<、>C=O、>C=N-、>N=N<、-N=O、-N=N(→O)-、-NO<sub>2</sub>
また今日における助色団は塩を形成することで染色性を助け、且つ共役系に対して電子供与性あるいは電子求引性を示す置換基を指す。その多くは非共有電子対を持つ電子供与性置換基である。例を次に挙げる。