「熱暴走」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
ZéroBot (会話 | 投稿記録)
m r2.7.1) (ロボットによる: fi:Lämpökarkaaminenを追加
m編集の要約なし
1行目:
{{Otheruses|化学や回路設計の分野において温度の制御ができなくなる現象|単純な過熱による動作不良や、熱によってコンピュータのプログラムが暴走する現象|オーバーヒート}}
'''熱暴走'''(ねつぼうそう、Thermal runaway)とは、[[化学]]や[[電気回路|回路]]設計の分野で用いられる用語で、[[発熱反応|発熱]]が更なる発熱を招くという正の[[フィードバック]]により、[[温度]]の制御が出来できなくなる現象、あるいはそのような状態のことを指す。
 
==解説==
この現象が生じると温度が際限なく上昇し、最終的には機器の破壊や爆発に至る。単純な過熱による動作不良や、熱によって[[コンピュータ]]の[[プログラム (コンピュータ)|プログラム]]が暴走する現象については[[オーバーヒート]]を参照
 
例えば、[[バイポーラ[[トランジスタ]]は温度上昇に従って[[電気伝導性]]が増す性質を持っている(負の[[温度係数]]を持つ)。このため、適切な処理を行なわずに利用した場合、一旦温度上昇が生じることで、より大きな電流が流れ、さらなる温度上昇を招いて、最終的には素子の破壊に陥る。
 
熱衝撃(Thermal Shock)(による故障)も、熱による回路部品の故障のため熱暴走と呼ばれることがある。しかし、熱による素子自体の破壊ではないため、別の現象である。これは[[集積回路]]の製造技術が未熟であった1980年頃まで、比較的よく見られた故障の一つである。なんらかの外因(急激に温度が上昇するなど)で[[集積回路]][[ダイ]]の上で[[クラック]][[歪み]]による構造破壊が発生し、低温では導通状態にあるものの一定温度を超えると破壊された部分の導通が失われ、装置は異常動作を起こす。異常動作した後、集積回路を搭載した装置(例えば[[コンピュータ]])を一定時間冷やすと機能を回復するため、全く違う現象であるものの熱暴走の呼称が使われた。現在の集積回路は温度エージングによってこれらの欠陥が含まれている製品を後行程で取り除いているため、現在は極めて稀な故障となった。またこのような故障が許されない装置では回路は恒温槽に置かれたり、あるいは動作に関係なく発熱と冷却が一定温度で拮抗状態となるように設計されている([[MOSFET|N-MOS]]プロセス技術等)。砂漠地帯での運用が想定される軍事用コンピュータ<ref>Mil-Std-883G: Department of Defense Test Method Standard for Microcircuits [http://www.aspentechnologies.com/resources/mil_std_883g]</ref>、超低温から超高温まで激しい温度変化に曝される[[エンジンコントロールユニット|ECU]]、航空宇宙向けや[[人工衛星]]で採用されている。
 
その他、大規模集積回路で採用されている[[歪みシリコン]]技術は、結晶格子の大きさが異なる[[シリコン]][[ゲルマニウム]][[合金]]によって[[電子]]の移動速度を加速し、応答速度を改善する技術である。しかし、温度変化に非常に鈍感である(100℃(100[[セルシウス度|℃]]以上になっても問題はない)シリコンに比べて、ゲルマニウムは温度に敏感で、温度が上昇すると固定されてなければならない回路定数が変化してしまい正常な機能を喪失する恐れがある。このため歪みシリコン技術を使用した集積回路の動作温度は比較的低温(35 - 65℃)で稼働させる様、回路上に温度センサーを多数配置してダイ全域の温度を監視して通電状態を制御したり、非常に強力な冷却装置(ヒートシンクなど)を併用する事が多い。
 
==脚注==