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[[Image:Aspergillus fumigatus.jpg|thumb|250px|right|寒天培地上で培養され、コロニーを形成したカビ<br>(''Aspergillus fumigatus'') ]]あああ
'''カビ'''('''黴''')とは、[[菌類]]の一部の姿を指す言葉である。あるいはそれに似た様子に見える、肉眼的に観察される[[微生物]]の[[集落]]([[コロニー]])の俗称でもある。
 
== 定義 ==
[[File:DecayingPeachSmall.gif|thumb|250px|right|カビによって分解と脱水が進む果物]]
'''カビ'''という言葉は、狭い意味で用いれば、[[子実体]]を形成しない、[[糸状菌]]の姿を持つ、つまり[[菌糸]]からなる体を持つ菌類のことである。これに相当するのは、[[接合菌]]類、それに[[子嚢菌]]と[[担子菌]]の[[分生子]]世代([[不完全菌]]とも)のものである。これらはきれいに培養すれば綿毛状の菌糸からなる円形のコロニーを形成し、その表面に多量の[[胞子]]を形成する。
 
[[サビキン]]などの植物寄生菌もこの範疇にはいる。ただし、植物表面に菌糸が出てこない場合、肉眼的にはカビを認めがたい。また、子嚢菌などの中でごく小さい子実体を作るものは、カビの名で呼ばれる例がある([[ケタマカビ]]・[[スイライカビ]]・[[ウドンコカビ]]等)。
 
しかし、そのような姿を持つ微生物一般のコロニーを見た場合、それを指してカビと言うことも多い。特に[[菌類]]の[[菌糸体]]の錯綜したものを指す。従って、日常的に[[キノコ|きのこ]]と俗称される大型の[[子実体]]をもつ菌類でも、その[[栄養体]]である菌糸体だけが視認された場合、カビと認識される。また、菌糸体を生じない菌類である[[酵母]]であっても、密で表面が粉状の集落を形成する場合、これもカビと認識されることがある。
 
なお、水中に成育する糸状の菌類的生物も[[ミズカビ]]などと称される。最近まで菌類と考えられていたのでカビのような名で呼ばれている。これらの生物は生活の型はカビに似るが、現在ではその大部分([[卵菌]]類)は菌類ではないものと考えられている。
 
また、カビという言葉が小型の菌類の名称として使われたことから、[[ツボカビ]]や[[フクロカビ]]など、菌糸を形成しないものにもその名が使われる。菌類以外にも、[[変形菌]](ホコリカビ)や[[細胞性粘菌|タマホコリカビ]]などのように一部の[[原生生物]]には、カビという名称が付けられている。このように、カビを生物学的に定義することは難しいが、ここでは応用[[微生物学]]的見地から、菌類のうち、きのこと認識される子実体を形成するものと酵母を除いたものについて、以下に詳述する。
 
== 特徴 ==
カビは、菌糸と呼ばれる糸状の細胞からなり、[[胞子]]によって増殖する。
生活空間では[[梅雨]],[[台風]]の季節など湿気の多い時期・場所に、たとえば[[食物]]、衣類、浴槽の壁などの表面に発生する。多くの場合、その発生物の劣化や腐敗を起こし、あるいは独特の臭気を嫌われ、黴臭いなどと言われる。人によっては[[食中毒]]や[[アレルギー]]の原因となることもある。カビの除去剤は多く存在するが、それ自体も刺激臭を放ちやや危険なものが多い。その一方で、[[発酵食品]]や[[薬品]]([[ペニシリン]]など)を作るのに重要な役割を果たすものもある。
 
==カビの生活史==
カビというのは、複数の分類項目にまたがる菌類の俗称であり、様々な生活様式をもったカビが存在している。
 
たとえば、カビとして一般的な[[クモノスカビ]](''Rhizopus stolonifer'')は、菌類の一つである[[接合菌門]](Zygomycota)に属する。
空中を漂っている[[胞子]]が、腐敗した[[植物]]など湿った[[有機物]]の表面に触れると[[発芽]]し、菌糸のネットワークを形成する。また、菌糸の表面から[[酵素]]を分泌することで、有機物を分解し、[[栄養]]を吸収している。接合菌門の特徴は、2種類の繁殖様式をもっていることである。無数の胞子を持ったコブ状の胞子嚢を菌糸の先端に形成し、そこから胞子を放出するという単性生殖と共に、両親となる2つの菌糸が融合し接合胞子を形成するという[[有性生殖]]も行う。
 
== 生育環境 ==
[[ファイル:Powdery mildew.JPG|thumb|right|200px|真菌病である[[うどんこ病]]に罹患した植物。]]
上記のように人間の生活空間にも様々なところでカビは出現する。放っておけば食品は黴びる。その主犯格は[[アオカビ]]・[[コウジカビ]]・[[ケカビ]]・[[クモノスカビ]]といったものである。ヨーロッパでは[[アカパンカビ]]もここに顔を出す。これらは、人為的な環境に素早く出現する、いわば[[雑草]]のようなカビである。壁のしみは往々にして[[クラドスポリウム]]である。
 
人間の生活との関わりでは作物に寄生する植物病原菌の影響は大きい。ヒトに寄生するカビは多くなく,ほとんどは偶発的なものであるが,[[白癬菌]]のようにヒトに病気を起こすものもある。
 
しかし実際には自然界の方がはるかに多くのカビが存在する。地表や土壌では多くの不完全菌がキノコの菌糸と共に枯葉の分解を行っており、それはまた[[腐性食物連鎖]]の土台を構成する。また生きた植物に寄生して病気を起こすカビも数多い。野生の植物にも様々な寄生菌が生じる。
 
動物質の分解は主として[[細菌]]の仕事であり、菌類にこれに関与するものは少ない。まれに大型動物死体の周辺に[[トムライカビ]]類などが大量に出現するが、これは細菌類か[[線虫]]類に関係を持つものらしい。昆虫など小型動物には、[[ハエカビ]]・[[クサレケカビ]]など特に決まった種類のカビが関係を持って出現する例が多々ある。
 
淡水中では菌類ではないものの、[[卵菌類]]が[[ミズカビ]]と呼ばれ、動物質を含む腐りやすい有機物塊によく綿毛状のコロニーを作る。真の菌類である[[カワリミズカビ]]などもあるが、ミズカビ類ほどは普通でない。水中の落葉落枝には[[水生不完全菌]]が繁殖するが、これも目にはつきにくい。
 
海中ではカビはあまり知られていない。材木などから若干の水生不完全菌様のカビが知られる。
 
==食品に利用されるカビ==
[[File:Blue Stilton Quarter Front.jpg|thumb|right|200px|ブルーチーズの一種、[[スティルトン]]。主に {{snamei||Penicillium roqueforti}} による熟成。]]
カビが分泌する[[酵素]]による作用は、様々な食品に用いられている。主な作用としては、
*[[タンパク質]]を[[アミノ酸]]に分解することで、[[風味]]を出す。
*[[デンプン]]を[[糖化]]する。
*[[脱水]]する。
が挙げられる。
 
[[チーズ]]では、[[アオカビ]]を用いた「[[ロックフォール (チーズ)|ロックフォール]]」、「[[ゴルゴンゾーラ]]」などの[[ブルーチーズ]]が有名である。また、「[[ブリーチーズ|ブリー]]」や「[[カマンベールチーズ|カマンベール]]」に利用されるものは一般的に「白カビ」と呼ばれるが、生物学的にはすべて[[アオカビ]]属<ref>[http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/sonota/003/houkoku/08111918/002.htm カビ対策マニュアル 基礎編-文部科学省]</ref><ref>[http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/001_event/0101_open/files/h19/mini_lecture_text1.pdf ミニ講演 「食べ物のカビの世界」 - 神奈川県衛生研究所]</ref>である。
 
日本古来の発酵食品では、[[日本酒]]、[[焼酎]]、[[醤油]]、[[味噌]]などが[[ニホンコウジカビ]]を[[穀物]]で[[培養]]し、繁殖させた[[麹]](こうじ)を用いて醸造を行う。[[鰹節]]では脱水目的でカビ付けを行う。
なお、[[納豆]]は発酵に[[納豆菌]]を用いるが、納豆菌は[[細菌]]の一種であり、カビではない。
{{clear}}
 
==生物学・医療分野におけるカビ==
最初の[[抗生物質]]として知られる[[ペニシリン]]は、1940年代に[[アオカビ]]の分泌物より抽出され、[[梅毒]]、[[淋病]]、[[破傷風]]、[[猩紅熱]]などの[[感染症]]の特効薬として、[[医療]]分野に画期的な成果をもたらした。
 
[[アカパンカビ]](''Neurospora crassa'')は、その[[栄養要求株|栄養要求突性然変異]]株の研究から[[一遺伝子一酵素説]]が提唱され、遺伝子の正体の追究に大きな役割を果たした。その他に[[時計遺伝子]]の[[分子]]機構を解明するための[[モデル生物]]として知られている。
 
==カビ毒==
一部のカビは人体に対し有毒な毒素を生成する。カビの生産する[[毒]]を総称して'''[[マイコトキシン]]'''と呼ぶ。
 
*[[コウジカビ|アスペルギルス]]・フラバスやアスペルギルス・パラジチカスの生産する'''アフラトキシン'''。[[発癌性|発癌性物質]]で[[肝炎]]などを引き起こす。
*[[フザリウム]]の一部(いわゆるアカカビ)が生産する'''ニパレノール'''、'''フザレノン・X'''などの'''[[トリコテセン]]毒素'''。嘔吐、下痢、腹痛などを引き起こす。
 
== カビの名称 ==
カビはキノコほど[[和名]]が与えられていない。せいぜい代表的なものに対して、属の単位で与えられているだけである。名前そのものも、アオカビやクロカビなど、見かけの色だけでつけたような雑なものが多く、[[クロカビ]]などはどれを指すのかすら怪しい。例外的にコウジカビは、[[醗酵産業]]などで使用されることから、いくつかの区別された名前を持つが、標準和名とは認識されていないかも知れない。接合菌類に関しては、第二次大戦以前には各属に和名を与えようとしたようだが、その後の分類体系の変化のために無効化している例もある。それ以降は新たな和名を与えようとした例は少ない。
 
==水道のカビ臭==
水道水への不満としてカビ臭が取り上げられることがあるが、これはカビに起因する臭さではなく、貯水池等に繁茂する[[藍藻類]]や[[放線菌]]が産出する[[2-メチルイソボルネオール]]などの成分による<ref>おいしい水を考える会『水道水とにおいのはなしp90』技報道出版</ref>。
 
==出典==
<references/>
 
== 参考文献 ==
*ジョン・ウェブスター/椿啓介、三浦宏一郎、山本昌木訳、ウェブスター菌類概論;1985,講談社
*[[椿啓介]],カビの不思議;1995,筑摩書房
*小林義雄,菌類の世界;1975,講談社、[[ブルーバックス]]
 
==関連項目==
{{Commons|Mold}}
*[[キノコ]]
*[[梅雨]]
*[[食中毒]]
*[[黄変米]]
*[[糸状菌]]
*[[殺菌]]
 
[[Category:菌類|かひ]]
[[Category:カビ|*かひ]]