「プラネタリウム」の版間の差分

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[[画像:ChibaCityPlanetariumInterior.jpg|thumb|224px|ドーム内部中央に設置されたプラネタリウム本体]]
[[画像:Belarus-Minsk-Planetarium.jpg|thumb|224px|プラネタリウム施設の外観。[[ベラルーシ]]、[[ミンスク]]]]
'''プラネタリウム'''({{lang-en-short|planetarium}}{{#tag:ref|{{IPA-en|ˌplænɪˈte(ə)riəm}} プラニ'''テ'''(ァ)リアム|group="脚注"}})は、投影機から発した光を[[ドーム]]状の[[天井]]の内側に設置された曲面[[スクリーン]]に映し出すことで[[天体|星]]の像およびその運動を再現する設備あるいは施設を指す。'''プラネタリューム'''、'''プラネタリュウム'''、'''天象儀'''(てんしょうぎ)ともいう。'''プラネ'''と略すこともある{{#tag:ref|アストロアーツ発行・[[KADOKAWA]]発売の[[天文雑誌]]『星ナビ』2001年3月号(当時の発売元は[[アスキー (企業)|アスキー]])背表紙には「さらば五島プラネ」と記載されており(同号には五島プラネタリウム閉館についての特集記事が掲載されている)、同誌40-45頁に掲載されている『星ナビタウンページ』の欄外には「プラネイベント」の文字が見られる(勿論「プラネタリウムイベント」の意)<ref>『星ナビ』2001年3月号、40頁、42頁、44頁。</ref>。|group="脚注"}}。
 
[[惑星]]({{lang-en-short|planet}}{{#tag:ref|{{IPA-en|ˈplænɪt}} プ'''ラー'''ニトゥ|group="脚注"}})に由来する言葉であるが、惑星のみならず[[恒星]]を含む星空全体とその運動を再現する。また、[[地球]]上の任意の場所・時代の星空を投影したり、曲面スクリーンに投影されることを前提に撮影された映画を上映したりするなど、様々な機能を持つ。公的な機関が[[天文台]]、あるいは、[[科学館]]や[[博物館]]に併置する例がしばしば見られるが、民間企業が集客の目玉として商業施設に設置する例もある。
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[[日本]]で最初に設置されたプラネタリウムは、[[1937年]]に[[大阪市立電気科学館]](のちの[[大阪市立科学館]])に設置されたカール・ツァイス・イェーナ社製「ツァイスII型」である。これは、[[アジア]]で最初に設置されたプラネタリウムでもあった{{#tag:ref|1937年3月13日から1989年5月31日まで52年稼働し、現在は大阪・中之島の大阪市立科学館で展示されている。|group="脚注"}}。同型が1938年に有楽町の[[東日天文館]]に設置されたが、1945年に戦災で焼失した。
 
戦後、1957年には東京・渋谷に[[天文博物館五島プラネタリウム]]{{#tag:ref|旧西ドイツ・オーバーコッヘン製カール・ツァイスIV型。2001年3月閉館。現在はコスモプラネタリウム渋谷に展示中。|group="脚注"}}が、1960年には兵庫県明石市に[[明石市立天文科学館]]{{#tag:ref|旧東ドイツ・イエナ製カールツァイス・イエナUPP23/3型。稼働期間52年、現役。|group="脚注"}}が、1962年には名古屋市に[[名古屋市科学館]]{{#tag:ref|旧西ドイツ・オーバーコッヘン製カール・ツァイスIV型、現在は同所に展示中。|group="脚注"}}が開館した。
 
日本国産として最初に開発されたプラネタリウムは、[[五藤光学研究所]]が[[1959年]]に製作したM-I型投影機(当時の価格で約800万円)である。この投影機は[[静岡県]]清水市(のちの[[静岡市]][[清水区]])の富士観センターや東京・[[浅草]]の新世界などに設置され、うち1台は[[1960年]]ニューヨークの国際見本市に出品、見本市終了後にコネチカット州のブリッジポート博物館へ販売され、[[1962年]]に一般公開された。
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==== 光学式投影機 ====
[[画像:Zeiss ZKP2.jpg|right|224px|thumb|光学二球式投影機の一例(カール・ツァイスZKP2)。中央部に水平に配置されている緯度軸から惑星棚→恒星球と並んでいるツァイス型の構造がわかる。]]
'''恒星球'''と呼ばれる球形または半球形の恒星投影機の中心に光源となる電球(主に[[ハロゲンランプ]]や[[メタルハライドランプ]]が用いられるが、近年では白色の高輝度[[発光ダイオード|LED]]も用いられる)を設置し、その光を恒星の光に見立ててドーム内に投影する方式。恒星球の構造により、'''ピンホール式'''と'''レンズ式'''に大別される。また形状により、緯度軸を中心に恒星球が北半球用と南半球用とそれぞれ独立して存在する'''二球式'''と、北半球用南半球用の恒星球を合わせてひとつの球形(またはほぼ球形)とした'''一球式'''に大別される。二球式はさらに、主にカール・ツァイスやコニカミノルタプラネタリウムが採用する緯度軸を中心として緯度軸→惑星投影機群(惑星棚と呼ぶ)→恒星球という順で構成される'''ツァイス型'''と、主に五藤光学研究所が採用する緯度軸→恒星球→惑星棚という順で構成される'''モリソン型'''とに区別される(なお、五藤光学研究所のGSS-IおよびGSS-IIは惑星投影機群が独立して設置されているが、惑星棚を廃止したモリソン型である)。近年では、大型の二球式投影機は投影機本体により観客の視野が遮られてしまうことから減少傾向にある。
 
光学式における天体の運動は[[日周運動]]、[[方位]]、[[緯度]]、[[歳差]]の4軸で制御される。ただし、歳差軸は一球式の場合省略されることがある。歳差軸を省略した場合は、[[歳差]]によって天の北極(南極)が移動した場合の[[日周運動]]を仮想軸を使って再現する。また、[[地平線]]下に恒星が投影されないように、主投影機には恒星シャッターが設けられている。恒星シャッターは重力式とXY制御式の2種類あるが、ドームが水平式の場合は重力式、傾斜式の場合はXY制御式を用いる(ドームの形式については後述)。また主投影機本体には恒星シャッターを設けず、恒星球をすだれ形シャッターで覆う方式をコニカミノルタプラネタリウムが採用している。
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光学式投影機とデジタル式投影機を両方設置し、投影する番組の内容に応じてそれぞれの投影機を別々にも同時にも使用可能としたシステムを指す。光学式の精緻な星像とデジタル式の自在な映像という双方の利点を併せ持ち、より臨場感溢れる番組制作および投影が可能となる反面、複数の投影機が必要となることからイニシャルコストの面ではどうしても割高になってしまう欠点もある。また、投影機を複数台稼動させることに伴う操作系の複雑化や、システムの特色を最大限に生かした番組を制作しようとする場合、番組製作に掛かる時間的コストや人的コストも無視することはできない。
 
ハイブリッド式投影機に用いられる機材(光学式投影機とデジタル式投影機)はほとんどの場合同一のメーカーで揃えることが多く、投影機メーカーもこうした運用に対応した機材を各種ラインアップしている(五藤光学研究所のCHIRON、コニカミノルタプラネタリウムのジェミニスター、カールツァイスのUNIVERSARIUMなど)が、導入する側の意図により、光学式投影機とデジタル式投影機が異なるメーカーになることもある(例えば[[大阪市立科学館]]では、光学式投影機はコニカミノルタ製、デジタル式は五藤光学製を採用し、名古屋市科学館では、光学式はカール・ツァイス製、デジタル式はコニカミノルタ製である)。
 
このように導入時や運用時におけるコストなどの問題はあるものの、多彩な投影と柔軟な運用が可能であることからハイブリッド式投影機の需要は高く、現在、施設の新規建設・改築や既存機材の老朽化にともなう投影機の更新や入替の際にハイブリッド式投影機を導入する施設は増加している。