「カルニチン」の版間の差分

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日本においては、[[薬事法]]の適用を受けない(医薬品に該当しない)食品分野で利用されるL-カルニチン(フリーのL-カルニチン以外に加工特性を高めたL-酒石酸塩とフマル酸塩が使用されている)と、先天性欠乏症患者向け希少病医薬品であるレボカルニチン(塩化レボカルニチン=塩化L-カルニチン)、消化管機能低下に対する胃薬として数十年来使用されているDL-カルニチン(DL-カルニチン塩酸塩)がある。この中で、脂質のエネルギー代謝に関与するのはL-カルニチンである。
 
== カルニチンの構造と生合成 ==
[[ファイル:Biosynthesis L-carnitine.png|thumb|500px|L-カルニチンの生合成の過程]]
カルニチンは、分子構造内に[[四級アンモニウム]]を持ち、[[ベタイン]]構造をとる[[アミノ酸]]の[[誘導体]]である。水酸基を配する不斉炭素と四級アンモニウムイオン、カルボキシラートアニオンとの結合間にはそれぞれ[[メチレン基]]を持っている。タンパク質を構成するα-アミノ酸はもちろん、構造的な広義のアミノ酸には定義上は該当しない物質である。
 
ヒトの体内においては、カルニチンは主に肝臓、腎臓においてタンパク結合性のアミノ酸の[[リシン]]に[[メチオニン]]が[[メチル基]]を供与する反応を経由し、数段階の反応過程を経て生合成される。この際にメチオニンは[[S-アデノシルメチオニン]]に変換されメチル基を供与し、さらに続く反応では[[ビタミンC]]、鉄、[[ビタミンB6]]、[[ナイアシン]]が必要とされる。特に成長時や妊娠中には、カルニチンの必要量が通常時よりも多くなり、また生合成時に必要な各物質も不足気味となる事から外部摂取が推奨されることがある。なお、生合成量は1日10〜20mgとされており、体内保有量約20gと比してごく僅かの量である。
 
カルニチンは赤身の肉、魚肉、鶏肉、牛乳などの動物性食品に豊富に含まれていて、通常、肉の色が赤ければ赤いほど、カルニチン含有量が高くなる<ref name="ncgg">[http://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/02.html カルニチン - 海外の情報 - 医療関係者の方へ]「統合医療」情報発信サイト 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業(2013年5月10日)</ref>。カルニチンが多い畜肉は草食動物由来で「幼畜よりも成畜」からの肉と考えられる<ref>{{Cite journal|和書|last =常石 |first =英作 |author = |authorlink = |date = |year =2006 |month = |title =技術用語解説 カルニチン |journal =日本食品科学工学会誌 |volume =53 |issue =6 |page =361 |pages = |publisher = |location = |issn = |doi =10.3136/nskkk.53.361 |naid = |pmid = |id = |url =https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/53/6/53_6_361/_article/-char/ja/ |format = |accessdate =2017-12-20 |quote = }} </ref>。乳製品では、カルニチンは主に[[ホエー]]画分に含まれる<ref name="ncgg" />。体内のL-カルニチンは、加齢に伴う生合成能の低下および食事量の減少により、高齢になるほど筋肉中のL-カルニチン(遊離カルニチン、アセチルカルニチン)濃度が低下することがわかっており、また、最近ではダイエットや偏食などにより若年層でもL-カルニチンが不足しがちになっていると言われていることから、年齢を問わず積極的な摂取が必要と考えられる<ref>[http://www.ils.co.jp/seihin/karunitin.html L-カルニチンとは] ILS株式会社</ref>。
 
== 生体内での機能 ==
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安定同位体<sup>13</sup>Cを用いた厳密な試験において、運動を伴わない健常人被験者にて、経口摂取したカルニチンにより脂肪燃焼が促進されることが、Wutzkeらにより2004年報告された。
 
== <small>L</small>-カルニチンの摂取構造と生合成 ==
[[ファイル:Biosynthesis L-carnitine.png|thumb|500px|L-カルニチンの生合成の過程]]
体内には約20gのカルニチンがほとんど筋肉細胞に存在する。1日のカルニチン生合成推定量は10〜20mgであり、大部分は肉食により補給される。ただし、「健康な小児および成人は、1日に必要なカルニチンを肝臓および腎臓でアミノ酸のリジンとメチオニンにより十分な量を合成するため、食物やサプリメントから摂取する必要はない」<ref name="ncgg">[http://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/02.html カルニチン-海外の情報-医療関係者の方へ] -「統合医療」情報発信サイト 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業</ref>という報告もあり必須栄養素とはみなされず、摂取基準量などは設定されていない。
カルニチンは、分子構造内に[[四級アンモニウム]]を持ち、[[ベタイン]]構造をとる[[アミノ酸]]の[[誘導体]]である。水酸基を配する不斉炭素と四級アンモニウムイオン、カルボキシラートアニオンとの結合間にはそれぞれ[[メチレン基]]を持っている。タンパク質を構成するα-アミノ酸はもちろん、構造的な広義のアミノ酸には定義上は該当しない物質である。
 
ヒトの体内においては、カルニチンは主に肝臓、腎臓においてタンパク結合性のアミノ酸の[[リシン]]に[[メチオニン]]が[[メチル基]]を供与する反応を経由し、数段階の反応過程を経て生合成される。この際にメチオニンは[[S-アデノシルメチオニン]]に変換されメチル基を供与し、さらに続く反応では[[ビタミンC]]、鉄、[[ビタミンB6]]、[[ナイアシン]]が必要とされる。特に成長時や妊娠中には、カルニチンの必要量が通常時よりも多くなり、また生合成時に必要な各物質も不足気味となる事から外部摂取が推奨されることがある。なお、生合成量は1日10〜20mgとされており、体内保有量約20gと比してごく僅かの量である。
 
== カルニチンの構造と生合成食物等からの摂取 ==
体内には約20gのカルニチンがほとんど筋肉細胞に存在する。1日のカルニチン生合成推定量は10〜20mgであり、大部分は肉食により補給される。ただし、「健康な小児および成人は、1日に必要なカルニチンを肝臓および腎臓でアミノ酸のリジンとメチオニンにより十分な量を合成するため、食物やサプリメントから摂取する必要はない」<ref name="ncgg">[http://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/02.html カルニチン-海外の情報-医療関係者の方へ] -「統合医療」情報発信サイト 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業(2013年5月10日)</ref>という報告もあり必須栄養素とはみなされず、摂取基準量などは設定されていない。また、「腎臓はカルニチンを効率的に保持するため、摂取した食事のカルニチン含有量が低くても、体内のカルニチン量にはほとんど影響しない。」とする報告もある<ref name="ncgg" />
 
一方、体内のL-カルニチンは、加齢に伴う生合成能の低下および食事量の減少により、高齢になるほど筋肉中のL-カルニチン(遊離カルニチン、アセチルカルニチン)濃度が低下することがわかっており、また、最近ではダイエットや偏食などにより若年層でもL-カルニチンが不足しがちになっていると言われていることから、年齢を問わず積極的な摂取が必要と考えられる<ref>[http://www.ils.co.jp/seihin/karunitin.html L-カルニチンとは] ILS株式会社</ref>。
「<small>L</small>-カルニチンはアミノ酸の <small>L</small>-[[リシン|リジン]]と <small>L</small>-[[メチオニン]]から[[生合成]]されるので、成長期あるいは出産期以外には特に補給する必要はない」という意見もあるが、上述の通り生合成量はわずかであり、主に食事により摂取されるものが大部分である。一方、「腎臓はカルニチンを効率的に保持するため、摂取した食事のカルニチン含有量が低くても、体内のカルニチン量にはほとんど影響しない。」とする報告もある<ref name="ncgg" />。L-カルニチンはビタミンではないものの、conditional nutrientとして[[コリン (栄養素)|コリン]]、[[イノシトール]]や[[タウリン]]などとともに重要な栄養素として位置づけられている<ref>[http://www.fsai.ie/uploadedFiles/Legislation/FSAI_-_Legislation/2009/10_October09/Reg953_2009.pdf COMMISION REGULATION (EC) No 953/2009 of 13 October 2009 on substances that may be added for specific nutritional purposes in foods for particular nutritional uses, ANNEX Category 4. Carnitine and taurine] - Official Journal of the European Union</ref>。利用しやすい食材の中では、ヒツジ肉や牛肉など赤身の肉に比較的豊富に含まれる
 
カルニチンは赤身の肉、魚肉、鶏肉、牛乳などの動物性食品に豊富に含まれていて、通常、肉の色が赤ければ赤いほど、カルニチン含有量が高くなる<ref name="ncgg">[http://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/02.html カルニチン - 海外の情報 - 医療関係者の方へ]「統合医療」情報発信サイト 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業(2013年5月10日)</ref>。カルニチンが多い畜肉は草食動物由来で「幼畜よりも成畜」からの肉と考えられる<ref>{{Cite journal|和書|last =常石 |first =英作 |author = |authorlink = |date = |year =2006 |month = |title =技術用語解説 カルニチン |journal =日本食品科学工学会誌 |volume =53 |issue =6 |page =361 |pages = |publisher = |location = |issn = |doi =10.3136/nskkk.53.361 |naid = |pmid = |id = |url =https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/53/6/53_6_361/_article/-char/ja/ |format = |accessdate =2017-12-20 |quote = }} </ref>。乳製品では、カルニチンは主に[[ホエー]]画分に含まれる<ref name="ncgg" />。体内のL-カルニチンは、加齢に伴う生合成能の低下および食事量の減少により、高齢になるほど筋肉中のL-カルニチン(遊離カルニチン、アセチルカルニチン)濃度が低下することがわかっており、また、最近ではダイエットや偏食などにより若年層でもL-カルニチンが不足しがちになっていると言われていることから、年齢を問わず積極的な摂取が必要と考えられる<ref>[http://www.ils.co.jp/seihin/karunitin.html L-カルニチンとは] ILS株式会社</ref>。
「<small>L</small>-カルニチンはアミノ酸の <small>L</small>-[[リシン|リジン]]と <small>L</small>-[[メチオニン]]から[[生合成]]されるので、成長期あるいは出産期以外には特に補給する必要はない」という意見もあるが、上述の通り生合成量はわずかであり、主に食事により摂取されるものが大部分である。一方、「腎臓はカルニチンを効率的に保持するため、摂取した食事のカルニチン含有量が低くても、体内のカルニチン量にはほとんど影響しない。」とする報告もある<ref name="ncgg" />。L-カルニチンはビタミンではないものの、conditional nutrientとして[[コリン (栄養素)|コリン]]、[[イノシトール]]や[[タウリン]]などとともに重要な栄養素として位置づけられている<ref>[http://www.fsai.ie/uploadedFiles/Legislation/FSAI_-_Legislation/2009/10_October09/Reg953_2009.pdf COMMISION REGULATION (EC) No 953/2009 of 13 October 2009 on substances that may be added for specific nutritional purposes in foods for particular nutritional uses, ANNEX Category 4. Carnitine and taurine] - Official Journal of the European Union</ref>。利用しやすい食材の中では、ヒツジ肉や牛肉など赤身の肉に比較的豊富に含まれる。
 
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! 仔羊(ラム)
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== 動脈硬化との関連 ==
カルニチンは腸内で一部の細菌により動脈硬化の原因物質とも言われる[[トリメチルアミン-N-オキシド]]へと代謝され、これが動脈硬化を引き起こすとする説がある。カルニチンは赤肉などに多く含まれている{{要出典|date=2017年12月}}
 
== 脚注 ==