「重症筋無力症」の版間の差分

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==== クリーゼの治療 ====
呼吸障害の評価と管理、誘因の除去、免疫調節療法の開始、合併症の予防が治療の基本となる。呼吸状態が生命に危険を及ぼす程劣悪である場合、直ちに[[気管挿管]]する。重症筋無力症診療ガイドライン2014では抗コリンエステラーゼ阻害薬は中止することが推奨される。もし使用する場合はテンシロンテストで筋無力性クリーゼとコリン作動性クリーゼの判別を行う。症状が改善した場合、筋無力性クリーゼと判断し、臭化ピリドスチグミン製剤等のコリンエステラーゼ阻害剤を投与する(副作用のムスカリン作用に対しては硫酸アトロピン製剤を用いる)。症状が悪化した場合、コリン作動性クリーゼと判断し、コリンエステラーゼ阻害剤投与を中止して硫酸アトロピン製剤を投与する。なお、コリンエステラーゼ阻害剤により症状をコントロールしている場合、テンシロンテストを行うよりもコリンエステラーゼ阻害剤の投与を中断しての反応を見て判断するのが望ましい。挿管している場合は抜管の数日前にテンシロンテストを行いながら抗コリンエステラーゼ阻害薬は再投与する。免疫調節療法としては血漿交換や免疫グロブリン大量療法が検討されるが、治療効果の発現が速やかであることから血漿交換が選択されることが多い。
 
=== 年齢 ===
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=== アイスパック試験 ===
冷凍したアイスパックをガーゼなどに包み3〜5分上眼瞼に押し当てることにより眼瞼下垂が改善すれば陽性である。感度は80〜92%、特異度は25〜100%とされている。
=== [[テンシロンテスト|テンシロン®・テスト]](エドロホニウム・テスト) ===
[[コリンエステラーゼ阻害剤]]である'''[[エドロホニウム]]'''(商品名:'''テンシロン®'''または'''アンチレクス®''')を静注し、改善をみる。副作用となるムスカリン作用として悪心・下痢・流涎・失神(徐脈、AVブロック)などが起こりうるので、[[硫酸アトロピン]]を用意しておく。まず[[対照実験|コントロール]]として生理食塩水を静注し、症状が変化しないのを確認する。次にエドロホニウムを2mg投与しムスカリン効果(腹痛、嘔吐など)が出現しないのを確認してから、残りの8mgを投与し改善を評価する。検者が判断に迷うような改善であった場合は陰性と判定する。
 
=== 誘発筋電図検査 ===
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*:急激に発症し、広範囲の筋が侵される。呼吸筋も早期に侵されるため死亡率が高い。
*'''成人第IV型'''('''晩期重症型''')
*:I型・II型より約2年の経過で見られることが多く、III型とほぼ同様の症状を呈する。
*'''成人第V型'''('''筋萎縮型''')
*:II型・III型・IV型の内、廃用性の萎縮ではない[[筋萎縮]]を示すもの。
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*:[[神経筋接合部]]の構成要素(神経終板・アセチルコリン受容体・[[コリンエステラーゼ]])の[[遺伝子変異]]による。最多の型はアセチルコリン受容体の変異によるもので、テンシロンテストで症状が増悪する。
*'''[[ランバート・イートン症候群]]''' (Lambert-Eaton myasthenic syndrome:'''LEMS''')
*:[[肺癌]](小細胞癌)に合併する抗VGCC (voltage-gated Ca Channel) 抗体による。神経筋接合部でCaチャンネルが作動せずアセチルコリンを放出できないため、重症筋無力症と似た症状を呈する。[[筋電計]]を用いた神経反復刺激試験で'''漸増現象'''('''waxing''')が確認されたり、軽負荷運動の反復により一時的な筋力回復が起こることが主な特徴。
*'''[[神経衰弱 (精神疾患)|神経衰弱]]'''
*'''[[甲状腺機能亢進症]]'''
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; 免疫抑制剤
カルシニューリン阻害薬である([[タクロリムス]]水和物製剤や[[シクロスポロン]]の他に、[[アザチオプリン]]製剤、[[シクロホスファミド]]が用いられる。副作用としてはシクロスポリンでは感染症、血圧上昇、[[耐糖能異常]]、腎障害、歯肉肥厚、多毛などがある。タクロリムスでは感染症、耐糖能異常、白血球増多、筋痙攣などがみられる。カルシニューリン阻害薬やシクロホスファミドは症状改善効果が期待できるがアザチオプリンは効果発現に2〜3年必要とされている。
; 免疫グロブリン大量療法
[[免疫グロブリン大量療法]]はクリーゼの際になどに用いられる。
; 血漿交換
単純[[血漿交換]]のほか、[[トリプトファン]]カラムによる免疫吸着療法なども行われる。
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* [[手塚治虫]]原作の漫画「[[ブラック・ジャック]]」の第96話「座頭医師」で、原因不明の病気を針治療をして各地を放浪している謎の針治療の名人「鍼師琵琶丸」が、ブラックジャックから拡大[[胸腺]]摘出術を受ける予定の重症筋無力症の患者の少女に勝手に針を打つシーンでもこの病気が登場する。
 
== 脚注 出典==
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== 参考文献 ==