「男はつらいよ 寅次郎真実一路」の版間の差分

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『'''男はつらいよ 寅次郎真実一路'''』(おとこはつらいよ とらじろうしんじついちろ)は、[[1984年]][[12月28日]]に公開された[[日本映画]]。[[男はつらいよ|男はつらいよ』]]シリーズの34作目。
 
== あらすじ ==
寅次郎の夢。日本に突如として怪獣が現れるも、撃退する術はない。タコ社長演ずる総理大臣は、かつて学会から追放された車寅次郎博士を頼るも、博士は自らを理解しなかった社会への恨みから手を貸そうとはしない。だが車博士はついに決断する。「怪獣よ、俺が憎いのは、お前を怪物にさせた愚かな文明だ!」……
 
柴又に帰った寅次郎は、あけみとタコ社長の喧嘩に巻き込まれた挙げ句に大げんかをし、さくらにあきれられてしまう。[[上野]]の[[焼き鳥]]屋で飲んでいたところ、持ち合わせがないことに気付き、電話でさくらを頼るが、突き放される。たまたま隣り合わせた大手[[証券会社]]課長の富永([[米倉斉加年]])は、寅次郎が無銭飲食になってしまうことを気の毒に思い、それでも脳天気な寅次郎の自由さに憧れて、寅次郎の支払いもしてくれる。翌日、前日の礼を言おうと、もらった名刺を頼りに富永の勤務先を訪ねた寅次郎は、またも富永と飲みに行く。富永が寅次郎も行ったことがある郷里・枕崎の話、そこからはるばる上京してきた自分が寅次郎と同じ「旅人」だという話などをして、さらに意気投合。痛飲した寅次郎は、泥酔した富永を[[牛久沼]]近く([[つくば市]][[森の里 (つくば市)|森の里]])の自宅まで送り、そこで泊まる。
 
翌朝目覚めた寅次郎は、富永の清楚で美しい[[妻]]ふじ子([[大原麗子]])の存在に気付く。寅次郎はふじ子から、富永が朝早く家を出て夜遅く帰り、家族との接点のあまりない、ほとんど仕事ばかりの生活をしていることを知る。そして、ふじ子から手厚いもてなしを受けた事もあって、人妻であるにもかかわらず想いを寄せるようになってしまう。
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数日後、富永は過労による現実逃避で、出勤途中に失踪する。寅次郎はふじ子からそのことを知らされると、直ちに富永の家に向かい、ふじ子と善後策を相談する。また、落ち込んでいるふじ子を励ますため、寅次郎はふじ子と息子の隆をとらやに招待する。ふじ子は、とらやの団らんを味わいながら、たくさんの家族で一緒に過ごすことの大切さを改めて感じる。
 
その数日後、郷里の鹿児島から富永の目撃情報が伝えられたと、ふじ子からとらやに連絡がある。寅次郎は、タコ社長に旅費を借りて、ふじ子とともに枕崎へと旅立つ。寅次郎は鹿児島に着くと、バスや列車の中など様々な場所で富永の特徴を話し、写真を見せて、精力的に富永を探す。いったん富永の実家に寄って宿泊した後、翌日はタクシーで富永の思い出の地を回る。富永を目撃した親族の家、名勝・丸木浜を経て鰻温泉に至り、ある旅館の宿帳に富永の字で「車寅次郎」と書いてあったことから、富永が数日前にそこに来ていたことは分かった。しかし、富永自身を見つけることはできず、とりあえず旅館で宿泊することに。
 
そこで寅次郎は翌日の捜索の提案をするが、ふじ子はどんなことが起こっても覚悟していると言い、きっと生きてるよという寅次郎の言葉にも、気休めなんか言わないでと泣く。「今日、寅さんと一緒にあちこち歩いたでしょ。それだけでもここに来てよかったと思ってるの」というふじ子の言葉が、寅次郎に突き刺さる。<ref>ふじ子と同宿しない理由として「旅先で妙な噂が立っちゃ、課長さんに申し訳ないと思いまして」と言いつつ、「俺はきったねえ男です」とこの時点で既に自分の “醜い” 気持ちに気付いている。</ref>
 
結局富永を見つけられないまま鹿児島を発ち、ふじ子と別れ、[[柴又]]へと戻った寅次郎は、食事もせず横になったまま、鬱々とした時間を過ごす。ふじ子を想うあまり、心のどこかで富永が戻らない事を願ってしまう自分の醜さ、恐ろしさに嫌気がさしたのだ。<ref>このあたりの寅次郎の心情は、『無法松の一生』をモチーフにしている。(『男はつらいよ 寅さんの歩いた日本』p.89 、『完全版「男はつらいよ」の世界』p.270)</ref>寅次郎の内心を理解し、「自分の醜さに苦しむ人間はもう醜くありません」<ref>第42作『ぼくの伯父さん』で寅次郎が満男を薫陶する際に、「博がいつか俺にこう言ってくれたぞ」とこの言葉(と同趣旨の言葉)が引用されている。</ref>と言う博たちの慰めに感謝しつつも、ふじ子の事を忘れられるよう、旅に出ようとする。
 
と、そこに、無精ひげを生やした富永が現れる。「生きてたのか」と一瞬落胆するような表情を見せる寅次郎だったが、すぐ我に返り、ふじ子に一刻も早く知らせようと、富永の手を引っ張りタクシーで富永の自宅へ急行。寅次郎は富永が帰ってきたことをふじ子に告げる。再会を果たし涙を流して喜び合う家族の姿を見届けると、すぐに背を向け、寅次郎はそのまま旅に出てしまう。しかし、とらやにかかってきた寅次郎の電話の声は、自分の醜さから解放されたのか、晴れ晴れとしていた。
 
正月になり、ふじ子からとらやに年賀状が来る。富永は自宅から近い土浦営業所勤務となって家族と過ごす時間が増え、ふじ子にとって身近に感じられる存在<ref>旅先の旅館でも、富永の思い出の地を歩いて「今まで気付かなかった主人の心のうんと奥の方、覗いたような気がしたの」とふじ子は言っていた。また、富永も同じようなコースをたどったことが劇中で示されており、この心和む美しい自然に触れる旅により、富永が人間性を回復し、仕事一辺倒ではなく家庭を顧みられる人間になったとする書物もある。(前掲『男はつらいよ 寅さんの歩いた日本』p.89)</ref>になっていた。そして、寅次郎との思い出を一生忘れないと綴ってあった。
 
== エピソード ==