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静止型無効電力補償装置(せいしがたむこうでんりょくほしょうそうち、: static VAR compensator, SVC)は、高圧送電網に対し即応的に無効電力を提供する一連の設備をいう[1][2]。SVCは、フレキシブルAC伝送システム英語版[3][4]デバイスファミリの一部であり、電圧力率高調波を調整し、電力系統を安定化する。 SVCが発明される以前は、同期調相機英語版やスイッチトキャパシタバンクなどの大型の回転装置により力率補償が行われていたが[5]、SVCは内部スイッチを除いて可動部品を用いないため静止型と呼ばれる。

SVCは、電力系統の力率を1に近づけるよう設計された、自動インピーダンス整合装置である。 SVCは、主に2つの状況で使用される。

  • 送電電圧を調整するために、電力システムに接続される(「送電SVC」)
  • 電力品質の向上のために、大きな産業用負荷の近くに接続される(「産業用SVC」)

機械式スイッチ送電用途においては、SVCは系統電圧の調整のために用いられる。電力系統の無効負荷が容量性(進相)の場合、SVCはサイリスタ制御リアクトル英語版を使用して系統からVARを消費し、系統電圧を低下させる。電力系統の無効負荷が誘導性(遅相)状態の場合、キャパシタバンクが自動的にスイッチインされ、系統電圧を上昇させる。段階的に制御されるコンデンサバンクと共に連続可変のサイリスタ制御リアクトルを接続することにより、進相・遅相ともに連続的に制御することができる。

産業用途では、典型的にはアーク炉などの変動の速い高負荷の近くに配置することにより、電圧フリッカ英語版を平滑化できる[1][6]

説明

原理

通常、SVCは、一つ以上の固定またはスイッチ可能なシャントコンデンサバンクもしくはリアクトルバンクにより構成され、そのうちの少なくとも1つのバンクはサイリスタによってスイッチングされる。 SVCに典型的に使用される素子として、以下のようなものが挙げられる。

 
典型的なSVC構成の単線系統図英語版。<span typeof="mw:Transclusion" data-mw="{&quot;parts&quot;:[{&quot;template&quot;:{&quot;target&quot;:{&quot;href&quot;:&quot;Template:仮リンク&quot;,&quot;wt&quot;:&quot;仮リンク&quot;},&quot;params&quot;:{&quot;1&quot;:{&quot;wt&quot;:&quot;サイリスタ制御リアクトル&quot;},&quot;2&quot;:{&quot;wt&quot;:&quot;en&quot;},&quot;3&quot;:{&quot;wt&quot;:&quot;Thyristor-controlled reactor&quot;},&quot;label&quot;:{&quot;wt&quot;:&quot;&quot;}}}}]}"></span>、<span typeof="mw:Transclusion" data-mw="{&quot;parts&quot;:[{&quot;template&quot;:{&quot;target&quot;:{&quot;href&quot;:&quot;Template:Ill2&quot;,&quot;wt&quot;:&quot;Ill2&quot;},&quot;params&quot;:{&quot;1&quot;:{&quot;wt&quot;:&quot;サイリスタ開閉コンデンサ&quot;},&quot;2&quot;:{&quot;wt&quot;:&quot;en&quot;},&quot;3&quot;:{&quot;wt&quot;:&quot;Thyristor switched capacitor&quot;},&quot;label&quot;:{&quot;wt&quot;:&quot;&quot;}}}}]}"></span>、高調波フィルタ、機械式スイッチコンデンサ、および機械式スイッチコンデンサを採用した構成となっている。

サイリスタによりスイッチングの位相角変調を行うことで、リアクトルは回路に可変的にスイッチングされ、電力系統に対し連続可変量のVARを提供(および消費)することができる[2]。この構成では、コンデンサによりおおまかな電圧制御を行い、サイリスタ制御リアクトルによりなめらかな制御を行う。コンデンサのスイッチングをサイリスタ制御することにより、よりなめらかな制御と柔軟性を達成することができる[7]

 
デルタ接続されたサイリスタ制御リアクトル(TCR)
 
デルタ接続されたサイリスタ開閉コンデンサ(TSC)

サイリスタは電子的に制御される。すべての半導体と同様、サイリスタは熱を発生するため、一般的には脱イオン水により冷却される[5]。この方式で無効負荷を回路にチョッピングすると、望ましくない奇数次の高調波が注入されるため、通常は高出力フィルタバンクにより波形を平滑化する。フィルタ自体も容量性であるため、電力系統に数MVARを提供する。

正確な電圧調整が必要な場合は、クローズドループ制御器によって電圧調整を行う、より複雑な構成が用いられる[7]遠方監視制御および制御目標電圧値の手動調整も一般的におこなわれる。

接続

一般に、静止型無効電力補償装置に直接線間電圧を印加することはなく、数段の変圧器バンクを用いて送電電圧(例:230 kV)からはるかに低い電圧(例:9.0 kV)に下げたうえで接続する[5]。これにより、SVCに必要な部品のサイズと数を抑えることができるが、電圧を下げた分大きくなる電流を処理するために導体を非常に大きくする必要が生じる。アーク炉などの産業用設備には既存の中電圧(例:33〜34.5 kV)バスバーが存在する場合もあり、変圧器増設コストを節約するためにSVCを直接中電圧バスバーに接続する場合もある。

また、伝送電圧からの変圧に用いられるY接続オートトランスのデルタ巻線にSVCを接続することも一般的に行われる。

SVCの動的特性の源である、多数のサイリスタを直列および逆並列に接続したものは「サイリスタバルブ」と呼ばれ、通常直径数インチの円盤状をしており、「バルブハウス」室内に設置される。

利点

単純な機械的スイッチを用いる補償方式に対するSVCの主な利点は、系統電圧の変化に対しほぼ瞬時に応答ができる点である[7]。このため、必要なときに即時提供できる無効電力補償を最大化するために、ゼロ点近くで運転されることが多い。

それらは、一般に、同期コンデンサなどの可動部を持つ補償装置よりも安価かつ大容量で、高速かつ信頼性も高い[7]。ただし、機械開閉式コンデンサより高価であるため、多くの系統運用者はSVCを使用して高速応答性を担保し、機械開閉式コンデンサを併用して定常的なVAR供給を行う。

参照項目

参考文献

  1. ^ a b De Kock, Jan; Strauss, Cobus (2004). Practical Power Distribution for Industry. Elsevier. pp. 74–75. ISBN 978-0-7506-6396-0. https://books.google.com/books?id=N8bJpt1wSd4C&pg=PA74 
  2. ^ a b Deb, Anjan K. (2000-06-29). Power Line Ampacity System. CRC Press. pp. 169–171. ISBN 978-0-8493-1306-6. https://books.google.com/books?id=ebZHT8gzpksC&pg=PA169 
  3. ^ Song, Y.H., Johns, A.T. Flexible ac transmission systems. IEE. ISBN 0-85296-771-3.
  4. ^ Hingorani, N.G. & Gyugyi, L. Understanding FACTS - Concepts and Technology of Flexible AC Transmission Systems. IEEE. ISBN 0-7803-3455-8.
  5. ^ a b c Ryan, H.M. (2001). High Voltage Engineering and Testing. IEE. pp. 160–161. ISBN 978-0-85296-775-1. https://books.google.com/books?id=Jg1xA65n56oC&pg=PA160  引用エラー: 無効な <ref> タグ; name "Ryan"が異なる内容で複数回定義されています
  6. ^ Arrillaga, J.; Watson, N. R. (2003-11-21). Power System Harmonics. Wiley. pp. 126. ISBN 978-0-470-85129-6. https://books.google.com/books?id=1h9aqRj4o8EC&pg=PA126 
  7. ^ a b c d Padiyar, K. R. (1998). Analysis of Subsynchronous Resonance in Power Systems. Springer. pp. 169–177. ISBN 978-0-7923-8319-2. https://books.google.com/books?id=QMSELoMjsg0C&pg=PA169  引用エラー: 無効な <ref> タグ; name "Padiyar"が異なる内容で複数回定義されています