「堕天使」の版間の差分

堕天使の概念は[[ユダヤ教|ユダヤ]]・キリスト教の複雑な歴史を背景にもつ。キリスト教が[[旧約聖書|旧約]]と呼ぶ「[[ヘブライ語聖書|ヘブライ聖書]]」には本来、堕天使という概念は登場しない。天使の堕落の伝説の早期の例は、後期ユダヤ教諸派において成立した、後に[[偽典]]と呼ばれることになる文書のひとつ「[[エノク書]]」にあらわれる。このエノクの伝承は、ヘレニズム期のユダヤ教セクトである[[死海文書|クムラン教団]]を特徴づける「{{仮リンク|善と悪の戦い|en|War of the Sons of Light Against the Sons of Darkness}}」の観念とともに[[原始キリスト教]]に影響を与え、これによって堕天使の概念はキリスト教の基礎の一部となったと考えられている<ref>マルコム・ゴドウィン 『天使の世界』大瀧啓裕 訳、青土社、2004年、112-113頁。 </ref>。

 

 

聖書には多様な解釈を容れる余地があり、後世のキリスト教文学や神学において、サタンと仲間の堕天使たちをめぐるさまざまな物語や理論がつむがれている。いったい何をもってサタンの堕落の本質とするか、という問題についてもいくつかの異説がある。[[ジェフリー・バートン・ラッセル|J・B・ラッセル]]はこれについて、道徳上の頽落とする説、品格の喪失とする説、天からの追放すなわち文字通りの落下であるとする説、自らすすんで神に背き天を離脱したことをもって堕落とする説を挙げている<ref>J・B・ラッセル 『悪魔の系譜』 大瀧啓裕 訳、青土社、83頁。</ref>。