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</ref>。
 
[[国際連合食糧農業機関]](FAO)(FAO)によると、2014年の年間生産量は世界全体で約19万[[トン]]で、[[ミレット]](millet:トウジンビエ、シコクビエ、キビ、アワ、ヒエなどの総称)の2838万トンの約150分の1でしかない。主たる生産国も南米の[[ペルー]]、[[ボリビア]]、[[エクアドル]]に限られている<ref name=FAOSTAT>[httphttps://www.fao.org/faostat/en/#data/QC FAO統計]</ref>が、[[栄養]]面で優れており、いわゆる[[スーパーフード]]の一つとして注目されていることから世界100カ国以上に栽培が広がっており<ref name="農業新聞20201013">「キヌアに多様性 品種の改良期待/干ばつ地帯、高塩分でも発芽 国際農研」『[[日本農業新聞]]』2020年10月13日(11面)</ref>、少量は[[日本]]([[北海道]][[剣淵町]]<ref>[http://www.maff.go.jp/hokkaido/asahikawa/photorepo/huukei/20170802_kenbuti_kinua.html 旭川地域拠点 > フォトレポート > キヌアの花が咲きました] [[農林水産省]]北海道農政事務所(2019年6月1日閲覧)</ref>、[[静岡県]][[裾野市]]<ref>[http://www.city.susono.shizuoka.jp/sangyo/2/5/14198.html 地域戦略策作物「キヌア」試験栽培] 裾野市(2021年3月12日閲覧)</ref>)でも栽培されている。
 
2017年2月、キヌアのほぼ完全な[[ゲノム]]情報が解読された<ref name="AFP20170219"/><ref>{{Citation |author=Tester M, et al. |date=16 February 2017 |title=The genome of Chenopodium quinoa |journal=Nature |volume=542 |issue=7641 |pages=307–312307-312 |doi=10.1038/nature21370 }}</ref>。
 
== 植生・生産 ==
キヌアの[[穂]]は[[品種]]により、赤、黄、紫、白など様々な色を呈し、直径約2[[ミリメートル|mm]]の[[種子]]を一つの[[房]]に250-500個程度つける。[[脱穀]]した種子は白く扁平な円形をしており、食料となる。冷涼少雨な気候でもよく育ち、逆に水はけの悪い土地では種子の収量は大きく減る{{要出典|date=2013年7月}}
 
キヌアの草丈は1-2メートルと高く分枝は少ない。主幹は半木質で<ref>[[:en:quinoa#biology]]より。</ref>[[葉]]は波状のものから歯状のものまで多様な形態で幅が広く先端は狭くなり鋭い歯状である。[[花]]は<ref>「雌性両性花同株または雌性両性花異株」と原典にあるが雌雄両性花の誤植ではないかと思われる。</ref>伸び出した草質の[[円錐花序]]で[[花被片]]は5枚である。現在のキヌアの栽培種には栽培地に応じて「高原型」「塩地型」「谷型」「海岸型」の4つの品種群がある。高原型はアンデス山脈の[[標高]]3000メートル以上のアルティプラノで栽培される。塩地型はボリビア南西部の[[ウユニ塩原]]周辺で栽培される種、谷型は[[クスコ]]より北の谷間で栽培されるもの、海岸型は[[チリ]]の中部(中緯度)海岸地帯で栽培されている。キヌアは数千年の栽培の歴史があるが、[[植物毒]]である[[サポニン]]を種子の表面に含み、種子の脱落性がある等、野生種の特徴を保持している。他の栽培作物では人類による数千年の栽培の過程で利用に適するよう人為選択されるが、キヌアにおけるサポニンの保持は、キヌアが栽培される土地では植生が乏しく、鳥獣による食害を防ぐためではないかと推察されている<ref name=minpaku>[[{{Cite journal|和書|author=藤倉雄司, 本江昭夫, 山本紀夫 |title=キヌアは栽培植物か? : アンデス産雑穀の栽培化に関する一試論 |journal=国立民族学博物館]]調査報告 山本紀夫、藤倉雄司、本江照夫「[|ISSN=1340-6787 |publisher=国立民族学博物館 |year=2009 |volume=84 |pages=225-244 |naid=120006390391 |url=http://irid.minpakunii.ac.jp/dspace1588/bitstream00000645/10502/4021/1/SER84_012.pdf キヌアは栽培植物か?] 」}}</ref>。
 
 
ボリビアでは栽培特性から、ふたつに分類される<ref name="桂圭佑ほか"/>。
; 高地型(Altiplanoタイプ) : 年間降水量約 400mm程 度の比較的降水量のの多い地域でジャガイモやムギ類と輪作して栽培される。
; 塩地型(Salarタイプ) : 年間降水量約 200mm 程度のウユニ塩湖畔の降水量が少ない地域において単作される。
 
しかし、近年のブームによりボリビアでは栽培面積の拡大や作付けをしない期間の短縮によって、土壌劣化の進行による栽培の持続性が懸念されている<ref name="桂圭佑ほか">{{Cite journal|和書|author=桂圭佑, Bonifacio Alejandro, 藤倉雄司, 安井康夫, 藤田泰成 |title=ボリビア・アルティプラノにおけるキヌア(''Chenopodium quinoa'' Willd.)栽培の現状と課題
|journal=農業および園芸 |ISSN=0369-5247 |publisher=養賢堂 |year=2018 |month=nov |volume=93 |issue=11 |pages=951-958 |naid=40021717341 |url=https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030925567}}</ref>。
 
キヌアは[[コロンビア]]からボリビアにかけてのアンデス山脈一帯が原産と考えられており、5千-7千年前頃から野生種の利用が始まり、3千-4千年前頃には栽培が始まっていた<ref name="Quinoa: Production, Consumption and Social Value in Historical Context">{{cite web|url=http://lasa.international.pitt.edu/members/congress-papers/lasa2009/files/KolataAlanL.pdf|title=Quinoa |year=2009|work=Quinoa: Production, Consumption and Social Value in Historical Context|last=Kolata | first=Alan L. |publisher=Department of Anthropology, The University of Chicago|accessdate=2013-7-3}}</ref>。
キヌアの栽培地域では栽培されていない野生のキヌア(''Chenopodium quinoa var. melanospermum'')が自生しており、原種あるいは栽培種の子孫と考えられている<ref>{{cite journal | title = On the Origin of the Cultivated Chenopods (''Chenopodium'') |author1=Heiser Jr., Charles B. |author2 = Nelson, David C. |name-list-style=amp |date=September 1974 | volume = 78 | issue = 1 | pages = 503–5503-5 | journal = Genetics | pmid = 4442716 | url = http://www.genetics.org/cgi/content/abstract/78/1/503 | doi = | pmc = 1213209 }}</ref>。
[[海抜ゼロメートル地帯]]から[[標高]]4000メートルの半乾燥地帯([[温帯ステップ気候]])で生育するが、アンデス地方では主に標高2500メートル以上の地域で栽培されている。[[ウユニ塩原]]北方の標高約4000メートルの{{仮リンク|チパヤ|en|Chipaya}}では降水量が少なく土壌の塩分濃度が高いため他の作物が育たず、キヌアが唯一の作物となっている<ref name=minpaku/>。
 
日本の[[国際農林水産業研究センター]]の分析によると、[[遺伝子]]的には多様で、[[旱魃]]や塩分濃度が高い環境でも育つ系統があり、[[品種改良]]も可能である<ref name="農業新聞20201013"/>。
 
[[インカ文明]]ではキヌアは[[トウモロコシ]]と同様に貴重な作物であり、「チソヤ・ママ」(「穀物の母」)と称され神聖な作物と見なされていた。季節の初めには[[インカ皇帝]]が[[金]]の[[鋤]]で種まきの儀式を行なっていた<ref name= "inca crops">{{Cite book | last=Popenoe | first=Hugh | author=Hugh Popenoe | coauthors= | title=Lost crops of the Incas: little-known plants of the Andes with promise for worldwide cultivation | url=https://books.google.co.jp/books?id=jMlxpytjZq0C&printsec=frontcover&dq=Lost+crops+of+the+Incas&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q=quinoa&f=false | year=1989 | publisher=National Academy Press | location=Washington, D.C. | isbn=0-309-04264-X | page=149}}</ref>。
[[スペイン]]の[[インカ帝国]]征服後、[[スペイン人]]は[[スペインによるアメリカ大陸の植民地化|インカ文明を払拭して現地人を同化させる]]ために、キヌアの栽培を禁止した<ref>{{cite book |author=Bailey, Garrick Alan; Peoples, James |title=Humanity: an introduction to cultural anthropology |publisher=Wadsworth Cengage Learning |location=Belmont, CA |year=2009 |page=120 |isbn=0-495-50874-8 |oclc= |doi= |accessdate=}}</ref>。他の[[ラテンアメリカ]]原産のトウモロコシ、[[ジャガイモ]]、[[インゲンマメ]]などは、スペイン人の交易により世界に広まり、全世界の主要作物となったが、キヌアはそれほど急速に広まらなかった。
 
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== 栄養 ==
キヌアは、その他の雑穀同様に栄養価が高く、キヌアと近縁の[[アマランサス]]は[[エンバク]]、[[ハトムギ]]、[[ライ麦]]同様に[[タンパク質]]を13-14%14%と多く含む。キヌアとアマランサスは他の雑穀に比べ[[マグネシウム]]、[[リン]]、[[鉄]]分など[[無機質]]([[ミネラル]])や[[ビタミン]]B類を多く含む。特に[[葉酸]]は[[緑黄色野菜]]に匹敵する量を含んでいる。ただし、キヌアや雑穀が高栄養価であるとの評価は[[主穀]]であるトウモロコシや[[米]]、[[コムギ|小麦]]と比較してのことであり、キヌアを含む雑穀は、[[豆]]類ほど栄養価は高くない。
 
近年[[ヨーロッパ]]や日本などで[[健康食品]]として注目されてきている。
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[[アミノ酸]]は[[リシン]]、[[メチオニン]]、[[イソロイシン]]などの[[必須アミノ酸]]を多く含み、その量は[[白米]]に匹敵するかそれよりも多い。
 
[[粘性]]の高い[[デンプン]]を含むため、[[小麦粉]]にキヌア粉を混ぜて使うとコシの強い生地を作ることができる。
 
[[脂質]]のほとんどが[[リノレン酸]]、[[オレイン酸]]といった[[不飽和脂肪酸]]で、特にリノレン酸は[[コレステロール]]の産出を抑制するなど、健康増進に役立つ。なお、キヌアの脂質量は乾燥品で8%程度とあまり高くはない。
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| colspan="2" |エネルギー || kcal || 364 || 367 || 356 || 352 || 360 || 334 || 380 || 358 || 371 || 368 || 350 || 356 || 337 || 341
|-
| colspan="2" |[[炭水化物]] || g || 73.1 || 72.4 || 73.1 || 71.1 || 72.2 || 70.7 || 69.1 || 64.9 || 65.3 || 64.2 || 73.8 || 77.1 || 72.2 || 72.1
|-
| colspan="2" |たんぱく質 || g || 10.5 || 9.7 || 10.6 || 10.3 || '''13.3''' || 12.7 || '''13.7''' || '''12.7''' || '''13.6''' || '''14.1''' || 6.8 || 6.1 || 10.6 || 10.9
|-
| colspan="2" |脂質 || g || 2.7 || 3.7 || 1.7 || 4.7 || 1.3 || 2.7 || '''5.7''' || '''6.0''' || '''7.0''' || '''6.0''' || 2.7 || 0.9 || 3.1 || 2.1
|-
| colspan="2" |[[食物繊維]] || g || 3.4 || 4.3 || 1.7 || '''9.7''' || 0.6 || 13.3 || '''9.4''' || 7.4 || 6.7 || 7.0 || 3.0 || 0.5 || '''10.8''' || '''10.3'''
|-
| colspan="2" |水分 || g || 12.5 || 13.1 || 14.0 || 12.0 || 13.0 || 12.5 || 10.0 || 13.5 || 11.3 || 13.0 || 15.5 || 15.5 || 12.5 || 14.0
|-
| rowspan="7" style="line-height:1.1em;" |[[ミネラル|無<br />機<br />質]] || style="width:4em" | [[ナトリウム]] || mg || 1.0 || '''3.0''' || 2.0 || 2.0 || 1.0 || 1.0 || '''3.0''' || 1.0 || '''4.0''' || '''5.0''' || 1.0 || 1.0 || 2.0 || 2.0
|-
| [[カリウム]] || mg || 280 || 240 || 170 || '''590''' || 85 || 400 || 260 || '''600''' || 508 || '''563''' || 230 || 88 || 470 || 220
|-
| [[カルシウム]] || mg || 14 || 7 || 9 || 16 || 6 || 31 || 47 || '''160''' || '''159''' || 47 || 9 || 5 || 26 || 23
|-
| [[マグネシウム]] || mg || 110 || 95 || 84 || '''160''' || 12 || 100 || 100 || '''270''' || '''248''' || '''197''' || 110 || 23 || 80 || 46
|-
| [[リン]] || mg || 280 || 280 || 160 || '''430''' || 20 || 290 || 370 || '''540''' || '''557''' || '''457''' || 290 || 94 || 350 || 180
|-
| [[鉄]] || mg || '''4.80''' || 1.60 || 2.10 || 3.30 || 0.40 || 3.50 || 3.90 || '''9.40''' || '''7.61''' || '''4.57''' || 2.10 || 0.80 || 3.20 || 1.30
|-
| [[亜鉛]] || mg || 2.70 || 2.70 || 2.70 || 2.70 || 0.40 || '''3.50''' || 2.10 || '''5.80''' || 2.87 || '''3.10''' || 1.80 || 1.40 || 2.60 || 1.40
|-
| rowspan="6" style="line-height:1.1em;" |[[ビタミン|ビ<br />タ<br />ミ<br />ン]] || B1<br />[[チアミン]] || mg || 0.20 || 0.05 || 0.15 || 0.35 || 0.02 || '''0.47''' || 0.20 || 0.04 || 0.12 || 0.36 || '''0.41''' || 0.08 || '''0.41''' || 0.22
|-
| style="white-space:nowrap;" | B2<br />[[リボフラビン]] || mg || 0.07 || 0.03 || 0.05 || 0.10 || 0.05 || '''0.20''' || 0.08 || 0.14 || '''0.20''' || '''0.32''' || 0.04 || 0.02 || 0.09 || 0.07
|-
| [[ナイアシン]] || mg || 1.70 || 2.00 || 2.00 || '''6.00''' || 0.50 || 1.70 || 1.10 || 1.00 || 0.92 || 1.52 || '''6.30''' || 1.20 || '''6.30''' || 3.20
|-
| [[ビタミンB6|B6]] || mg || 0.18 || 0.17 || 0.20 || 0.31 || 0.07 || 0.22 || 0.11 || '''0.58''' || '''0.59''' || '''0.49''' || '''0.45''' || 0.12 || 0.35 || 0.14
|-
| [[パントテン酸]] || mg || '''1.84''' || 1.50 || 0.94 || 1.42 || 0.16 || 0.87 || 1.29 || '''1.69''' || || || 1.36 || 0.66 || 1.03 || 0.43
|-
| [[葉酸]] || μg || 29 || 14 || 13 || 54 || 16 || 65 || 30 || '''130''' || 82 || '''184''' || 27 || 12 || 38 || 17
|}
 
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[[発酵]]させることにより、[[ビール]]に似た飲料や[[チチャ]]のようなアルコール飲料を作ることもある。
 
[[サポニン]]化合物由来の苦い味の種が自然に作られることがあり<ref name="AFP20170219">「[http://www.afpbb.com/articles/-/3117177  奇跡の穀物キヌア、ゲノムほぼ解読 世界食糧供給の一助となるか]」[[フランス通信社|AFP]](2017年2月9日)2017年2月12日閲覧</ref>、調理方法によっては食味に影響を与えることがある。
 
日本では、白米に混ぜて炊いて食べるのがブームになったことがあった。キヌアを混ぜて炊いた米は若干粘り気が強く、またいわゆる「薬臭い」香りがすることがある。この独特の臭気を誤魔化すため、[[炊き込み御飯]]にするなどの工夫が行われることもあった。
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キヌアは環境適応能力が高く、年間雨量が少ない[[温帯]]地域([[ステップ気候]])での生育が可能で多くの作物が育たない土地での栽培が可能である。
 
キヌアの広い環境適応性とその高い栄養価から、各国でも栽培が試みられているが、2014年の時点では主な生産国は原産地であるアンデス高地のペルーとボリビアが2大産地で、エクアドルが遠い三位となっている。この3ヶ国では1961年には52,555[[ヘクタール]](ha)(ha)で栽培され32,435トンが収穫されたが、60年代から70年代にかけて作付面積が減少し、収穫量も半分から3/4まで落ちていた。1990年以降は作付面積も増加に転じ、1995年には収穫量も1961年並みの32,995トンとなり、2000年には52,626トン、2010年には79,447トンへと増加し、2011年からさらに急増している。2014年の作付面積は95,843ヘクタールで、これは1961年の約1.8倍で収穫量は2.5倍、単位面積当たりの収量も2010年は987kg/haと1961年の617kg/haより60%増加している。なおキヌアの単位面積当たりの収量は他の作物ができない農地での栽培であることもあり、他の主要穀類と比較すると多くはない。2000年以降、特にボリビアにおいて生産量が増加しており、2014年の1961年比は作付面積で約5.6倍、収量で約8倍となっている<ref name=FAOSTAT/>。
 
キヌアの輸出量はFAOの集計によると1970年代に始まり、1990年には489トン(ボリビア343トン、エクアドル146トン)であったが、2000年には1,478トン(ボリビア1,436トン、エクアドル42トン)、2010年には15,363トン(4653万[[アメリカ合衆国ドル|米ドル]]、ほぼ全量ボリビア)と急増した。輸出単価も1970年には0.08米ドル/kgであったが、2000年に1.254米ドル/kg、2010年には3.029米ドル/kg<ref>小麦の国際価格は2013年6月時点で約0.24米ドルで([http://www.bbc.co.uk/news/business/market_data/commodities/default.stm BBC commoditites])キヌアはその12倍である。先進国では健康食品としてキロあたり10米ドル以上の小売価格である。</ref>と近年急騰している。トウモロコシ、米、麦などの主要穀類の取引価格は豊作・不作などの影響で乱高下するが、キヌアは生産国がほぼペルー、ボリビア、エクアドルに限られており、2010年の輸出はFAOの集計ではボリビアのみで輸出量は15,363トン(4653万米ドル)で他の穀物の取引量の千分の一以下であり<ref name=FAOSTAT/>、取引価格は上昇の一途である。
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=== 取引価格高騰による弊害 ===
[[File:Peru_Chenopodium_quinoa.jpg|thumb|250px|キヌア畑の前で勉強会を開く住民。ペルーの[[プーノ]]近郊 ]]
キヌアに国際的な注目が集まることにより、他の作物に比べ生産国も限られ収穫量も多くはないキヌアの国際市場価格は暴騰している。キヌアの2011年の収穫量は約8万トンで主要穀物であるトウモロコシ、米、小麦などの1万分の1以下である。収量のそれほど多くない穀類である[[ライ麦]](Rye)の160分の1、[[ソバ]](Buckwheat)の20分の1でしかなく、急成長した国際的需要を満たす量の生産はない。最大のキヌア生産国であるペルーのキヌア生産量は約4万トンで他の穀類に比べ生産量は多くはないが、キヌアの比重は高く、米の63分の1、トウモロコシの37分の1、小麦やソバの5分の1の収穫量がある<ref name=FAOSTAT/>。ペルーにおける国民一人あたりのキヌアの年間生産量は1.35kgでしかない。1980年代の価格高騰以前はキヌアはアンデス高地における重要な[[主食]]の一つであり地産地消されていたが、現在では国内外で取引されるようになっている。キヌアの生産量約8万トンに対する世界各国からの需要を例えると、日本の2012年(H24)の[[アズキ|小豆]]生産量約6.8万トン<ref>農林水産省・e-Stat [http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001106532 「小豆」] </ref>に近く、全世界で日本の小豆のブーム的な需要が発生し、価格が高騰しているような状況である。キヌアがより深刻であるのはキヌアは代替作物のない地域での主食であり、生産国ペルー、ボリビアには他国と競争できる購買力がない点である。
 
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「国際キヌア年」はキヌアの栽培を世界に広めることにより[[食料安全保障]]と[[飢餓]]撲滅を意図したものであるが<ref>[[国際連合食糧農業機関]][http://www.fao.or.jp/detail/article/1043.html 「国際キヌア年エキスポ2013・数千年前に種蒔かれた未来」] </ref>、現在[[スーパーフード]]として需要は喚起されたが産地はほぼペルーとボリビアに限られており、価格高騰から産地では消費できない様相になっている。
 
ペルーでは米国と[[世界銀行]]の援助のもとに換金作物として1990年代から[[イカ県]]で高級食材である[[アスパラガス]]の栽培が始まった。2010年にはペルーは全世界のアスパラガスの交易量の40%40%にあたる12万3千トンを輸出する世界最大の輸出国となった。このアスパラガス栽培により仕事および収入が創成されたが、同時に乾燥地帯であるイカ地方に大きな環境負荷を与えている<ref>PRI's The World [http://www.theworld.org/2012/01/peru-asparagus-water-troubles/ Peru's Asparagus Boom Threatening Local Water Table] </ref>。21世紀に入り始まったキヌアブームがアスパラガス同様の影響を与えるのではないかと危惧されている<ref name=Guardian/>。
 
== カシュルート論争 ==
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== 他の近縁の作物 ==
ヒユ科にはキヌアの他にも食用に栽培されている種がある。キヌア同様に高タンパク質であり高栄養価であるが、キヌアよりさらに生産量が少ない。
* [[アマランサス]](西:amaranto、ケチュア語:kiwicha、 quihuicha) - ヒユ科ヒユ属の一年草。古代には{{仮リンク|ヒモゲイトウ|en|Amaranthus caudatus}}(''A. caudatus'')、{{仮リンク|スギモリケイトウ|en|Amaranthus cruentus}}(''A. cruentus'')、{{仮リンク|センニンコク|en|Amaranthus hypochondriacus}}(''A. hypochondriacus'')が[[メキシコ]]、[[グアテマラ]]、ペルーで大規模に栽培されていたが、現在では少規模の栽培に留まっている。葉も食用にされ、観賞作物としても栽培されている。
* {{仮リンク|カニワ|en|Chenopodium_pallidicaule}}(qañiwa*、qañawa、''Chenopodium pallidicaule'') - キヌアと同属でキヌアと一緒に栽培されている。草丈は1mと低く種子はキヌアより小さく1.0-1.2mmで、より多くサポニンを含む<ref name=minpaku/>。
* {{仮リンク|ウアウソントレ|en|Chenopodium nuttalliae}}(西:Huauzontle、 ''Chenopodium nuttalliae'') - キヌアと同属一年草で草丈、葉、花などキヌアによく似ているが種子は約1.5mmと小さい。[[中央アメリカ]]が原産と考えられており[[アステカ]]文明では広く栽培されていたが現在ではメキシコで少量が栽培されているのみである<ref name=minpaku/>。
 
<center><gallery>
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== 脚注・出典 ==
{{Reflist}}
<references/>
 
== 外部リンク ==
* [http://quinua.jp/ キヌア完全まとめ]
 
{{穀物}}