数学におけるシャピロの不等式(シャピロのふとうしき、: Shapiro inequality)、またはシャピロの巡回不等式とは、ハロルド・S・シャピロ英語版によって1954年に提案された不等式である。

内容 編集

 自然数  を非負の実数で、

 

であるとする。ただし、   とする。このとき、

  •    以下の偶数
  •    以下の奇数

のいずれかであれば、次の不等式が成り立つ。

 

より大きな   に対しては不等式は成り立たないが、厳密な下限   が存在する。ここで  

重要なケース   の最初の証明は Godunova と Levin によって1976年に、もう一方の   の最初の証明は Troesch によって1989年に、それぞれ数値計算に依った方法で与えられた。2002年、P.J. Bushell と J.B. McLeod は   のときの解析的な証明を発表した。

  の値は1971年にウラジーミル・ドリンフェルト(1990年のフィールズ賞受賞者)によって求められた。特に、ドリンフェルトは下限となる    で与えられることを示した。ここで   は関数    の関数的凸包である。(つまり、   のグラフの上側の部分は、    のグラフの上側部分の合併の凸包になっている)。

左辺の、内部での極小値は常に   となることが1968年 Pedro Nowosad により証明された。

より大きな n に対する反例 編集

最初の反例は、Lighthill によって1956年に発見された、   に対するものである:

 
(ここで   は 0 に極めて近いとする。)

このとき不等式の左辺は   となり、   が十分小さければ 10 より小さくなる。

次の反例は   に対するもので、1985年 Troesch により与えられた:

 

また、   に対して次の反例がある:

 

n が小さなときの証明 編集

  •  
 
より自明である。
  •  
この場合をネスビットの不等式英語版といい、様々な証明が知られている。
正の数 a に対して、相加平均と相乗平均の不等式から、
 
よって、  とおくと
 
ゆえに  
  •  
正の数 a, b に対して、相加平均と調和平均の不等式から、
 
また、正の数 a, b, c, d に対して、相加平均と相乗平均の不等式から、
 
ここで   とおくと
 
ゆえに  

参考文献 編集

  • Fink, A.M. (1998). “Shapiro's inequality”. In Gradimir V. Milovanović, G. V.. Recent progress in inequalities. Dedicated to Prof. Dragoslav S. Mitrinović. Mathematics and its Applications (Dordrecht). 430. Dordrecht: Kluwer Academic Publishers.. pp. 241–248. ISBN 0-7923-4845-1. Zbl 0895.26001 
  • Bushell, P.J.; McLeod, J.B. (2002). “Shapiro's cyclic inequality for even n”. J. Inequal. Appl. 7 (3): 331–348. ISSN 1029-242X. Zbl 1018.26010. ftp://ftp.sam.math.ethz.ch/EMIS/journals/HOA/JIA/40a3.pdf.  They give an analytic proof of the formula for even  , from which the result for all   follows. They state   as an open problem.

外部リンク 編集