第XI因子(だい11いんし、: factor XI)または血漿トロンボプラスチン前駆物質(plasma thromboplastin antecedent)は、血液凝固カスケードの酵素の1つ第XIa因子酵素前駆体である。他の凝固因子と同様、セリンプロテアーゼである。ヒトでは、第XI因子はF11遺伝子にコードされる[5][6][7][8]

F11
Protein F11 PDB 1xx9.png
PDBに登録されている構造
PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
識別子
記号F11, FXI, coagulation factor XI, PTA
外部IDOMIM: 264900 MGI: 99481 HomoloGene: 86654 GeneCards: F11
遺伝子の位置 (ヒト)
4番染色体 (ヒト)
染色体4番染色体 (ヒト)[1]
4番染色体 (ヒト)
F11遺伝子の位置
F11遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点186,266,189 bp[1]
終点186,289,681 bp[1]
RNA発現パターン
PBB GE F11 206610 s at fs.png
さらなる参照発現データ
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_000128
NM_019559
NM_001354804

NM_028066

RefSeq
(タンパク質)

NP_000119
NP_001341733

NP_082342

場所
(UCSC)
Chr 4: 186.27 – 186.29 MbChr 4: 45.24 – 45.26 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス

機能編集

第XI因子は肝臓で産生され、不活性型のホモ二量体体として循環する[9]血漿中の半減期は約52時間である。第XI因子は、第XIIa因子トロンビンによって第XIa因子へと活性化され、第XIa因子自身によっても活性化される。第XIIa因子によって活性化されるため、内因系のメンバーである[10]

第XIa因子は、第IX因子の特定のアルギニン-アラニン、アルギニン-バリン間のペプチド結合を切断し、活性化する。その結果生じた第IXa因子は第VIIIa因子と複合体を形成し、第X因子を活性化する。

第XIa因子の阻害因子にはプロテインZ依存性プロテアーゼインヒビター英語版(ZPI、セルピンのメンバー)があり、その作用はプロテインZ英語版非依存的である(ZPIの第X因子への作用はプロテインZ依存的であり、名称はそれに由来する)。

構造編集

第XI因子は1本のポリペプチド鎖として合成されるが、ホモ二量体として血液を循環する。各鎖の分子量はおよそ80000である。第XI因子の一般的な血漿中の濃度は5 μg/mLで、二量体としておよそ30 nMに相当する。第XI因子の遺伝子の長さは23kbで、4番染色体(4q32-35)に位置し、15のエクソンを持つ[6][7]

第XI因子は4つのAppleドメイン英語版から構成され、5番目のセリンプロテアーゼドメインの下にディスク状のプラットフォームを形成する。1つ目のAppleドメインはトロンビンとHMWK英語版の結合部位を含み、3つ目のドメインは第IX因子とヘパリン糖タンパク質Ib英語版を結合する。4つ目のドメインは第XI因子のホモ二量体の形成に関与しており、ジスルフィド結合を形成するシステイン残基を含む[11]

ホモ二量体では、Appleドメインは斜めに連結された2つのディスク状のプラットフォームを形成し、触媒ドメインはそこから両側に突き出している。

トロンビンまたは第XIIa因子による活性化は、二量体の両方のサブユニットのアルギニン369-イソロイシン370間のペプチド結合の切断によって行われる。その結果、触媒ドメインはディスク状のAppleドメインから部分的に解離し、4番目のドメインとはジスルフィド結合で連結されたままであるが、3番目のドメインからは離れた位置となる。これによって3番目のAppleドメインの第IX因子結合部位が露出し、第XI因子の第IX因子に対するプロテアーゼ活性が発揮されるようになると考えられている[12]

疾患における役割編集

第XI因子の欠乏は、稀な疾患である血友病Cを引き起こす。この疾患は主にアシュケナジムユダヤ人にみられ、集団の約8%が影響を受けていると考えられている。頻度はより低いものの、血友病Cはイラクにルーツを持つユダヤ人やイスラエルアラブ人にもみられる。他の集団では、血友病症例の約1%が血友病Cである。常染色体劣性の遺伝疾患で、特発性出血は稀であるものの手術時に過剰な失血が生じる可能性があり、予防が必要である[13]

低レベルの第XI因子は、ヌーナン症候群など多くの他の疾患でも見られる。

高レベルの第IX因子は血栓症との関連が示唆されているが、何が因子のレベルを決定しているのか、そしてそれがどの程度重症であるのかについては不確実である。

出典編集

  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000088926 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000031645 - Ensembl, May 2017
  3. ^ Human PubMed Reference:
  4. ^ Mouse PubMed Reference:
  5. ^ “Amino acid sequence of human factor XI, a blood coagulation factor with four tandem repeats that are highly homologous with plasma prekallikrein”. Biochemistry 25 (9): 2417–24. (May 1986). doi:10.1021/bi00357a018. PMID 3636155. 
  6. ^ a b “Organization of the gene for human factor XI”. Biochemistry 26 (23): 7221–8. (Nov 1987). doi:10.1021/bi00397a004. PMID 2827746. 
  7. ^ a b “Factor XI gene (F11) is located on the distal end of the long arm of human chromosome 4”. Cytogenetics and Cell Genetics 52 (1-2): 77–8. (1989). doi:10.1159/000132844. PMID 2612218. 
  8. ^ “A detailed multipoint map of human chromosome 4 provides evidence for linkage heterogeneity and position-specific recombination rates”. American Journal of Human Genetics 48 (5): 911–25. (May 1991). PMC 1683054. PMID 1673289. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1683054/. 
  9. ^ “Factor XI homodimer structure is essential for normal proteolytic activation by factor XIIa, thrombin, and factor XIa”. The Journal of Biological Chemistry 283 (27): 18655–64. (Jul 2008). doi:10.1074/jbc.M802275200. PMC 2441546. PMID 18441012. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2441546/. 
  10. ^ Walsh, P. N. (2001-07). “Roles of platelets and factor XI in the initiation of blood coagulation by thrombin”. Thrombosis and Haemostasis 86 (1): 75–82. ISSN 0340-6245. PMID 11487044. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11487044. 
  11. ^ Minnema, Monique C.; Meijers, Joost C. M. (2013) (英語). Factor XI, TAFI and DIC. Landes Bioscience. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK6496/ 
  12. ^ “Structure and function of factor XI”. Blood 115 (13): 2569–77. (Apr 2010). doi:10.1182/blood-2009-09-199182. PMC 4828079. PMID 20110423. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4828079/. 
  13. ^ “Factor XI deficiency”. Baillière's Clinical Haematology 9 (2): 355–68. (Jun 1996). doi:10.1016/S0950-3536(96)80068-0. PMID 8800510. 

関連文献編集

外部リンク編集

  • ペプチダーゼとその阻害因子に関するMEROPSオンラインデータベース: S01.213