足あがり
あらすじ
編集さる大家の番頭は、店の金を着服しては芸妓遊びを繰り返している。今夜も中座でお茶屋の連中を侍らしての桟敷で芝居見物を楽しみ、お供で連れてきた芝居好きの丁稚定吉に自身の悪事を吹聴し、「旦那はんにはこう言うんやで。決して芝居に行ったて言うんやないで。」と嘘の理由を教えて先に帰らせる。
定吉は旦那に「番頭はんは、播磨屋はんとこで横田はんらと碁打ってたんでやすが、遅なるのでわたい先に帰らしたんだす。」と、教えられたまま言うが、「定吉、そのお座布団触ってみ。温ったかいやろ。最前まで、播磨屋はん座ってはったんや。今日は番頭はんに会わんならんけど、まだ帰ってこんのかいな言うて、帰らはったばっかしやねん。ここにいてはった人が自分の家にいるとはおかしいやないか。嘘つきなはんな。」と旦那に決め付けられ、とうとう洗いざらい白状してしまう。
旦那は「何ちゅう奴っちゃ。飼い犬に手噛まれるとはこのことや。明日、請け人呼んで話つける。」と怒る。定吉は「ええっ!番頭はん、足上がるんでっか。どうぞ勘弁しとくれやす。番頭の過ちはこの丁稚が代わって・・・」と必死にとりなすも、旦那は許さず「アホ!あべこべじゃ。」と、口止めを命じて奥に入ってしまう。その後、帰ってきた番頭は定吉を部屋に呼び、「お前が帰ったあとの芝居よかったんやで。」と、「東海道四谷怪談」の大詰「蛇山庵室の場」を仕方噺で聞かせる。定吉はお岩の幽霊の件に怖がって「わたい怖うて、夜、手水に行かれへん。」とこぼしながらも「けど、番頭はん、芝居巧いなあ。」と褒める。
気を良くした番頭が「どや、ここで、幽霊が蚊帳の中に消えるとこ、まるで宙に浮いとるようやったやろ。」と得意げに言うと、定吉「宙に浮くはず、既に足が上がっています。」
概略
編集関連項目
編集脚注
編集- ^ 小佐田定雄「米朝らくごの舞台裏」ちくま新書1123 筑摩書房 2015年 P・16