遠山茂樹 (イギリス史家)

日本の西洋史学者

遠山 茂樹(とおやま しげき、1953年 - )は、日本の歴史学者翻訳家東北公益文科大学教授[1]。専門分野はイギリス中世史。植物文化史。

経歴 編集

宮城県出身。早稲田大学教育学部卒業[2]。1978年 文学修士。明治大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。千葉大学、明治大学、玉川大学相模女子大学東京歯科大学の非常勤講師を歴任。2001年4月より、東北公益文科大学教授[3]

学風 編集

著書『森と庭園の英国史』は英国庭園の成り立ち、プラントハンターの活躍、ジェントルマンと狩りの関係を描いている。英国のジェントルマンは「地主貴族層」を意味するが、肉体労働から解放されていることが条件である。その代わりに田舎で余暇を過ごす。余暇としてウサギ狩り、キツネ狩りが好まれる。1671年の狩猟法では狩猟行為をジェントルマン階級に限定した。ジェントルマンは最も多いときでも全人口の5%程度であった。17世紀ステュアート朝フランシス・ベーコンは、庭づくりは「人間の精神の最大の気晴らし」であり、「楽しみの中で最も純粋なこと」であるとした。名誉革命以降は、園芸先進国オランダから国王が迎えられたため、ケンジントン宮殿の庭がオランダ式に改造された。イングリッシュ・ガーデンとは「風景庭園」すなわち、見渡す限りの風景全体を取り込んで構成した庭園を指す。「風景庭園」では不規則性と多様性が重視される。18世紀後半になると「風景庭園」への批判が強まり、花壇やテラスが復活するようになった[3]

『中世ヨーロッパを生きる』(東京大学出版会)では「アルビオンの森林史話」の執筆を担当し、世ヨーロッパを生きる人々の生活と文化を自然との共生を通して語った。訳書『プラントハンター 東洋を駆ける』では、18世紀から20世紀に日本と中国に植物を求めてやってきたヨーロッパの植物収集探検家たちの活躍が描かれている[4]

大学では一般教養向けの「イギリス史」や「西洋史」の講義を担当してきた[5]

著書 編集

  • 森と庭園の英国史文藝春秋、2002年、206頁。ISBN 9784166602667NCID BA5832239Xhttps://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003671391-00 
  • 『歴史の中の植物 花と樹木のヨーロッパ史』(八坂書房、2019年)
  • 『ロビン・フッドの森 中世イギリス森林史への誘い』(刀水書房、2022年)
  • 『中世ヨーロッパを生きる』東京大学出版会、2004年、312頁。ISBN 4130230514 

翻訳 編集

  • 『プラントハンター 東洋を駆ける』(アリス・マーガレット・コーツ、八坂書房) 2007、のち増補版 2020
  • 『西洋中世ハーブ事典』(マーガレット・フリーマン、八坂書房) 2009
  • 『図説 花と庭園の文化史事典』(ガブリエル・ターギット、八坂書房) 2014

地域活動 編集

脚注 編集

  1. ^ 遠山茂樹”. 東北公益文科大学 (2014年6月2日). 2017年4月6日閲覧。
  2. ^ オオシラビソに魅せられたプラントハンター” (PDF). 株式会社 フィデア総合研究所 (2012年7月). 2017年4月6日閲覧。
  3. ^ a b 遠山茂樹 2002.
  4. ^ 遠山茂樹 訳『プラントハンター東洋を駆ける―日本と中国に植物を求めて』八坂書房、2007年、308頁。ISBN 489694898X 
  5. ^ 佐藤清隆「遠山茂樹著『森と庭園の英国史』」『駿台史學』第119巻、駿台史学会、2003年8月、135-136頁、ISSN 0562-5955NAID 1200019704292022年1月6日閲覧