高橋鉄

日本の小説家 (1907-1971)

高橋 鐵[1](高橋 鉄、たかはし てつ、1907年11月23日 - 1971年5月30日)は、日本小説家性風俗研究家。

1953年頃の写真

人物

編集

東京出身。日本大学卒業。小説を書き、社会主義に関心を抱くが、のちフロイトに関心を抱く。第二次世界大戦後は性科学の研究を始め、1950年に日本生活心理学会を設立、『あるす・あまとりあ』がロングセラーとなる。また同年に『人間探求』(第一出版社、1950年5月~53年8月)を創刊する。日本生活心理学会の機関誌『Seishin report』[注 1]を刊行した。

性風俗、性科学に関する多数の著作は一世を風靡してよく売れ、1950年代~1980年代は高橋の著作が古書店にも多数並べられていた。戦前は阿部定事件に関する著作もある。戦中に刊行された小説『世界神秘郷』『南方夢幻郷』は特別高等警察の弾圧を受けた。自らの生い立ちはあまり語らず、逝去直前の1971年に刊行した自伝『或る阿呆の人性(ゆまにて)』は童貞を失う22歳で未完に終わっている[1]

著書

編集
  • 『世界神秘郷 幻奇小説』霞ケ関書房 1941 
  • 『南方夢幻郷 科学幻奇小説』東栄社 1942
  • 『性典研究 性愛術篇』性科学資料刊行会 1947 
  • 『性愛五十年 実例・文献・統計による』千代田社 1949
  • 『あるす・あまとりあ』あまとりあ社 1950 のち河出文庫
  • 『異常性愛36相の分析』あまとりあ社 1950 あまとりあ選書
  • 『続あるす・あまとりあ 性愛雰囲気86法の分析』あまとりあ社 1951
  • 『性愛50年』あまとりあ社 1951 あまとりあ選書
  • 『裸の美学 女体美を探求する』あまとりあ社 1951
  • 『結婚愛会話辞典』「あまとりあ付録」 1951 のち『隠語辞典集成 20』大空社
  • 『女(おみな)とは…?』あまとりあ社 1952 あまとりあ選書
  • 『人性記 日本インテリゲンチャ一千名の懺悔録』第1巻 編 あまとりあ社 1952
  • 『補冊あるす・あまとりあ 新態位368型の分析 天の巻』あまとりあ社 1952
  • 『えろす福音書』あまとりあ社 1953 のち河出文庫 
  • 『紅閨秘筪』あまとりあ社 1953
  • 『フロイド眼鏡』宝文館 1956 のち河出文庫 
  • 『性愛雰囲気86法の分析』あまとりあ社 1959 実用セックス講座
  • 『図鑑結婚教室 人性トゥルー・ラブ図説』有光書房 1960
  • 『性的人間の分析』秋田書店 1960 のち河出文庫 
  • 『せっくす・かうんせりんぐ 精神分析による女性の相談解決実例集』あまとりあ社 1960
  • 『女体人性記 女とは?』あまとりあ社 1960
  • 『本朝艶本艶画の分析鑑賞』有光書房 1960
  • 『おとこごろし 女における妖魅の研究』有光書房 1962 のち河出文庫 
  • 『新・あるす・あまとりあ 全世界の性典による態位の研究』あまとりあ社 1962
  • 『人物分析学入門 天才たちのSEXを剥ぐ』大樹書房 1962
  • 『高橋鉄コレクション』高橋鉄コレクション刊行会 1962
  • 『性感の神秘』日本文芸社 1965 のち河出文庫 
  • 『秘宝絵巻考』関東書房 1965
  • 『あぶ・らぶ』青友社 1966 のち河出文庫
  • 『日本の神話 天の岩戸は、何を象徴するか』光文社カッパブックス 1967 のち河出文庫 
  • 『近世近代150年性風俗図史』久保書店 1968-69 
  • 『人性記 現代人の性体験報告』三有出版 1968
  • 『浮世絵 その秘められた一面』光文社カッパブックス 1969 のち河出文庫 
  • 『愛の形』あまとりあ社 1972
  • 『異常愛 異常性愛の心理と行動の分析』立風書房 1972 「アブノーマル」河出文庫 
  • 『悪魔妖書 part 1 (王妃の淫姦記)』青木信光編 図書出版美学館 1981 高橋鉄生心レポート
  • 『悪魔妖書 part 2 (妻の愛人)』青木信光編 図書出版美学館 1982 高橋鉄生心レポート

編纂・訳

編集
  • 『徳川性典大鑑』徳川性典大鑑普及会 1953
  • 『色道禁秘抄』評釈 伏見冲敬校註 あまとりあ社 1954
  • 『日本性典大鑑』日本生活心理学会,1954
  • ウィーン性科学研究所編『性学事典』訳 河出書房新社 1958 世界性学全集 のち文庫 
  • 『濡れた女 高橋鉄性心リポート』全12巻 青木信光編 図書出版美学館 1982-83
  • 『生心リポート』編 銀座書館 1987

脚注

編集

注釈

編集
  1. ^ 誌名は、英字表記が正式であるが、「生心リポート」とも通称され、後に、掲載記事の選集が河出文庫から刊行された際には『生心リポート・セレクション』と題された。「セイシンリポート」として言及されることもある。

出典

編集
  1. ^ a b 出久根達郎【書物の身の上】性科学者の真摯な解説/発禁処分 続々時の人に『日本経済新聞』朝刊2020年5月16日(詩歌・教養面)

関連文献

編集
  • 斎藤夜居『悩まざりし人ありや 評伝高橋鉄』太平書屋 1980
    • 改題『セクソロジスト高橋鉄』青弓社 1996 
  • 鈴木敏文『性の伝道者高橋鉄』河出書房新社 1993
  • 『高橋鉄』河出書房新社 1993 新文芸読本
  • 山本直英『性のタブーに挑んだ男たち 山本宣治キンゼイ・高橋鉄から学ぶ』1994 かもがわブックレット

外部リンク

編集