魔魚戦記』(まぎょせんき)は、吉村夜による日本ライトノベル

魔魚戦記
ジャンル SFファンタジー
小説
著者 吉村夜
イラスト OKAMAC-SHOWあらいずみるい
出版社 富士見書房
レーベル 富士見ファンタジア文庫
刊行期間 2000年1月 -
巻数 既刊2巻
テンプレート - ノート

1巻相当の魔魚戦記のイラストOKAMAが担当、2巻相当のレスト&ハーウィン 星に願いをはC-SHOWが担当、単行本未収録の月刊ドラゴンマガジン増刊をあらいずみるいが担当。

富士見ファンタジア文庫富士見書房)から、2巻まで刊行された。

あらすじ

編集

銀河系全土へ開拓と植民の波が押し寄せた大進出時代。人類は発祥の地である太陽系を中心にして半径五千光年までの宙域に進出していた。

300年前。平和を維持してきた銀河連盟が大恐慌によって呆気なく崩壊してから強国が争う大戦国時代が幕を開ける。

40年前。数ある強国の中でも五指に入るアルゴ帝国がフォルテッシモ星系を占領下に収め、軍と政府は解体され、ドが付くほど田舎の星系に暮らすフォルテッシモ人は日用品の使用にまで差別され、アルゴ帝国の支配の中で日々を過ごしていた。

20年前。フォルテッシモ星系最外円部にて一隻の準巡洋艦が『我、デビルフィッシュと交戦す』と謎の緊急通信を最後に通信途絶したのを切っ掛けに事態は動き出す。

当初は老朽艦の整備不良による不幸な遭難事故と思われていた出来事だったが、調査を進めていく内に信じられない真実が発覚する。

準巡洋艦が交戦した相手は銀河系の外からやってきた宇宙人。しかも一方的につっかかっての自滅した事故だと判明した。そして宇宙人がフォルテッシモ星系を訪れた目的とは、なんと、お嫁さん探し。

アルゴ帝国の支配から脱したい地下組織フォルテッシモ軍は宇宙人の強大な力を借りる為に必死になってお嫁さん候補を探し続けた。

そして現代。有人惑星ピアニッシモの星立学校第VII号中等部に通うレスタンティと宇宙人ハーウィンの運命が遂に交錯する。

登場人物

編集

主要人物

編集
レスタンティ・スタッカート
深夜番組が大好きでありとあらゆる授業で居眠りばかりしている14歳の女子。変人と呼びたくなるエピソードの数々を抱える以外は自分を曲げない性格の持ち主ぐらいで、問題児とは言われる以外は普通の少女。ただし、突然起こった軍の召喚で自宅からヘリで移動する事態に陥りながらも景色に見飽きてさっさと寝てしまったり、ウルガイバの異相にすぐに馴染んでしまったりと、かなり太い神経の持ち主。
ハーウィンの外見と大きさを知らずに見初められたと知った際には、ロマンチックな話、世が世ならキスで目を覚ますお姫様、と常識外れの理解力で事態をあっさり受け入れてしまう。直にハーウィンを見て少し驚いたが、ビルが激昂する事態にも殆ど動じなかった。
翻訳機を通して語られるハーウィンの言葉に頬を染め、彼氏彼女のお付き合いを承諾する。ハーウィンの印象は何となく話が合いそうな人、結構カッコいいだった。ハーウィンと惹かれあう気持ちは共通の死生観を持っているからではないかと思っている。
小柄で兄のビルからは五頭身のおチビと言われている。愛称はレスト。
フォルテッシモ星系解放作戦後、何かしなくちゃいけない気持ちが心の中で膨らんでいき、少しずつ自己改革の意識が芽生えていく。その思いが発端となり難民問題を解決へと導いていった。
ハーウィン
全長3000キロメートル、イトマキエイそっくりの宇宙人。宇宙空間での高速航行や超長距離跳躍航行を可能にし、宇宙に適応進化した皮膚は人類が建造したどんな装甲よりも頑丈で、コロナの中を通ってもくすぐったい程度にしか感じず、皮膚が一番薄い所でも2キロある。衛星なみの大きさながら質量は土星級惑星に匹敵する。ウルガイバの予測では体内にブラックホールを内蔵し、それを利用して莫大なエネルギーを生み出している模様。
一族の中では小柄なほうで、年齢は約12000歳。食べるのは主に小惑星。一族の歴史は140億年あり、宇宙に現存する最も古い知的生命体の一つである。
結婚相手を探す為に三つの銀河を歴訪し、十億光年ほど離れた距離を八千年かけて旅してきた。
普段は巣と呼ばれる小惑星密度の最も高い宙域に待機して、体長3メートルほどの遠隔操作型ロボットを操ってレスタンティと接する。後に尻尾の先に翻訳機が装着された。
20年前にフォルテッシモ軍が結婚相手の捜索を全面的に協力するのに対し、結婚相手の女性が見つかった段階でその相手に協力する形なら力を貸してやらないでもない、と軍事同盟を結ぶ。結婚相手の条件は大きく分けて五つ。
  1. 炭素を基礎とした生物である。
  2. 二重らせん型DNAを持つ生物である。
  3. ある一定以上の知能レベルを持つ知的生命体である。
  4. 女性である。
  5. 美しいこと。
体内に電気を受容する器官を有し、そこで相手の脳波を感知して美醜を判断する。ハーウィンの美的感覚は色や形や光学的な容姿を問題にせず、人の考える美しさと見た目の美しさは一致しない。
フォルテッシモ星系解放作戦後、惑星ピアニッシモ屈指の高級ホテルのスイートルームにレスタンティと住む。
恒星は無理だが惑星や衛星なら独力で運べることが発覚し、200億人の難民問題を解決する為に星を移動させるという物理的に途方もない計画を発足させる切っ掛けを作った。
ビル・スタッカート
レスタンティの兄であり、両親が八年前に事故死してから保護者となる。電子工学の教師。妹にしてこの兄ありと軟派だか硬派だかはっきりしない人物だが、見かけによらずきれる。周囲への観察力は高く、軍人であるアルマインを驚かせて警戒心を抱かせる程。警戒厳重な宿舎を警備員に気付かれずに脱出、監禁されながらもお手製爆弾でドアを破壊して脱出、ハーウィンの装着する翻訳機のプログラムを誰にも気付かれずに書き換えるなど行動力もある。
アルマインによると下手なスパイよりも勘が良く、その勘の良さはハーウィンを驚かせる程。
妹同様に神経は太く、初めて訪れた軍事施設のカウンターバーで勝手にウイスキーの水割りを作り出して、僅か一分たらずで自分の家のようにくつろいでしまう。
日課のごとくメイを口説いているが全く相手にされず、むしろ鬱陶しがられている。
丸眼鏡がトレードマークで、人工角膜の移植手術を行い近眼が治ってもかけたままだった。

フォルテッシモ軍関係者

編集
メイ・ヴィブラホン
レスタンティの通うピアニッシモ星立学校第VII号中等部の生物学女性教師であり担任。教師はハーウィンのお嫁さん探し、通称デビルフィッシュ計画の一環としてレスタンティの調査の為に派遣されたからで、実際は新生フォルテッシモ軍の中尉。
スタイル抜群のブロンド美女でウルガイバを慕っている。以前はウルガイバの助手をしていた。
ハーウィンとキャンサーの協力によって行われたフォルテッシモ星系解放作戦後、レスタンティのお目付け役兼護衛となった。
技術士官なので荒事に慣れておらず、エレベーターの扉が壊れる轟音を銃声と勘違いして気絶してしまったことがある。
アルマイン・トライアングル
ビルと同年代の貴公子然とした凛々しい顔立ちと褐色の肌を持つ男。階級は少佐、元諜報部のエース。ビルには自身の事をアリーと呼ばせているが、時折ワトソン君と呼び方が変わる。なお、その場合にアルマインはビルの事をホームズと呼び返す。
表向きはアルゴ帝国の軍人だが、実は新生フォルテッシモ軍に所属する。
事あるごとにスタッカート兄妹に振り回されている。
メイにふられた過去を持つ。複数の女性と交際しており、一人は長い黒髪の美女。
ギュロイ・アンダンテ
新生フォルテッシモ軍の元帥。スキンヘッドの大柄な人物。
ハーウィンの協力を得る為ならビルを人質にとっての強要策や洗脳やロボトミー手術なども厭わない。20億のフォルテッシモ人の為にレスタンティ一人の為の安っぽいヒューマニズムにはかまけていられないと豪語する。だがその案はウルガイバを筆頭とした研究チームに反対され、レスタンティがハーウィンとのお付き合いを快諾した事により消失した。
40年、雌伏と屈辱と忍耐を味わいながら新生フォルテッシモ軍を率いてきた。ハーウィンを利用して解放作戦を行ったが、人間と異なる宇宙人の力をあてにはしていない。
後に大統領と元帥を兼任する。
ウルガイバ・ギタリスティ
教授。
ハーウィンとのコンタクトを果たし、軍事同盟を立案し、20年ものあいだ研究チームを率いてきた新生フォルテッシモ軍の立役者。フォルテッシモ軍最高の頭脳の持ち主。
顔をマイクロチップやコードなど多くの機械で覆い、背中には鋭い金属板が背びれのように並ぶ。これは人間の記憶能力の限界を超えて科学者として職務を努める為に脳領域の一部気を機械化して、外部記憶装置を増設していった結果である。背中の金属板は放熱板。
本人も不気味な面構えだと自覚している。帝国の圧政下では機械化のパーツが不足して、闇商人を通じて入手したジャンクパーツを繋ぎ合わせるしかなかったので、仕方なく不気味になってしまったとは本人談。
メイからは科学者の鑑であり本当の勇気と聡明さを兼ね備えた方と慕われている。
宇宙人とのコンタクトの為に使われるブレスレット型翻訳機、芽から毒を取り去った無害なジャガイモの開発などを行った。
後に科学省の筆頭顧問官となり、レスタンティが小学生の手紙から思いついた惑星運搬計画、正式名称ミシュラン計画の陣頭指揮を執って実現可能な計算結果を出した。なお、最終的に三つの惑星を移動する案を出したのは同僚の科学者であるロロッツ・リコルダーである。

アルゴ帝国関係者

編集
ダレル・メルバイン
地球型の惑星メルバインの帝都ピラミデに君臨するアルゴ帝国総統。徹底的な機械化により直径2.5メートルほどの金属球になっているが、強化し続けられた体はそれ単体で重戦車を凌駕する戦闘能力を保有する。端末を繋げば一人で戦艦一隻を制御することも可能。
アルゴ帝国が建国された400年前から生きている。人間の価値を常にプラスとマイナスの合計値で判断し、帝国の利益になるならば背信行為も見逃す度量の持ち主。
座右の銘は、戦いにおいて優れた兵器と圧倒的な物量が最良の作戦である。
クレネディ・ラグダイト
アルゴ帝国フォルテッシモ星系方面総督。
五十代半ばを過ぎた白髪の老人。線誘致の統治にあたる派遣独裁者で、私腹を肥やす為に不当に多額の税の徴収を行っていたが、フォルテッシモ星系解放作戦によって地位を追われた。
イアン・レウダヌス
アルゴ帝国フォルテッシモ星系方面将軍。
耐衝撃コーディングを施した灰色の人工皮膚を持ち、骨格や筋肉も機械化しているアルゴ帝国軍人の見本とも言うべき人物。
三万の大艦隊を率いてハーウィンと戦い、人類が所有する最強兵器の一つ豪炎爆雷(スーパーフレア)をも使用したが五分で敗北。何とか生き延びるも敗軍の将としてアルゴ本星に召喚される。査問会でハーウィンの事を話して薬物使用や精神病の兆候を疑われるも、ダレル総統より事実ならば敗残の責任は不問にすると言われた。

その他

編集
ラヴュ
鋏のついた手を左右に二本ずつ持つタカアシガニに似た宇宙人の長。種族名はキャンサーと呼ばれ、成人の平均的な甲長は約400メートルなのに対し1キロの甲長を持つ大型宇宙人。種族共通でハーウィン同様に真空の宇宙でも活動可能。子供でも甲長は約100メートル、ミサイルと火炎弾とランチャーとビーム砲と振動弾の直撃を受けても痛くも痒くもくすぐったくも無いほど強固な甲羅を持つ。
四本の鋏に力を集めて巨大な稲妻を撃ち出せる。
主食は自然石。普段は全てのキャンサーと共にハーウィンの体内に作られた街の中で生活している。ハーウィンの操る遠隔操作型ロボットと同様に3センチほどのミニキャンサーを雑用係として配備させている。ただしミニキャンサーでも小型の光線兵器を容易に跳ね返して、人間を掴んでぶん投げられる力を持つ。
アン・ジュエル
赤毛の女。スーツと手袋と靴は全て黒。フォルテッシモでもアルゴでもない、どこかから派遣された正体不明の人物。
自称博愛主義者だが、酔っ払いに扮した軍人を笑顔で罵倒しながら容赦なく殴打する危険人物。ビル曰くサディスト。殻の付いたクルミを素手で割る。
驚異的な格闘能力の持ち主でもあり、エレベーターのドアを蹴りで破壊し、八人の賊を素手で撃退した。機械化は行っておらず、ビルとアルマインには薬物による強化あるいは遺伝子操作された亜人間と予測されている。

既刊一覧

編集
  • 魔魚戦記
  1. 2000年1月発売、ISBN 978-4829129418
  • レスト&ハーウィン 星に願いを
  1. 2000年9月発売、ISBN 978-4829129890