007 カジノ・ロワイヤル
『007 カジノ・ロワイヤル』(ダブルオーセブン カジノ・ロワイヤル、Casino Royale / You Asked for It)は、イアン・フレミングの小説007シリーズ長編第1作、およびその映画化作品。
小説編集
第二次世界大戦中、イギリス海軍情報部に所属していたイアン・フレミングが、戦後その知識と経験を基に創作したスパイ小説である。1953年にイギリスのジョナサン・ケープから刊行された。イギリスの秘密情報部員ジェームズ・ボンドの活躍を描いた物語で、シリーズ化された。アメリカ合衆国で刊行されたペーパーバック版は当初『You Asked for It』というタイトルで刊行された。
ストーリー編集
ソ連・スメルシュのフランスにおける工作員であるル・シッフルは、使い込んだ組織の資金を穴埋めするため、ロワイヤル・レゾーのカジノでテキサスホールデムポーカーによる一攫千金を狙っていた。
イギリス秘密情報部員007、ジェームズ・ボンドは、上司 M から、テキサスホールデムポーカーでル・シッフルを負かして破滅させるよう命令される。ボンドは、同僚の女性ヴェスパー・リンド、フランス参謀本部2課のルネ・マティス、CIAのフェリックス・ライターと連携し、一度は窮地に陥りながらも任務に成功する。
しかし、その直後にヴェスパーがル・シッフルに拉致され、後を追ったボンドも捕まり、金を返すよう拷問にかけられるが、ル・シッフルはスメルシュの刺客に粛清され、ボンドは命拾いをする。ボンドは自分の仕事に疑問を抱いて辞職を決意し、ヴェスパーとの結婚を考えるが、その結末は悲劇に終わる。
映像化編集
- 1954年10月21日、アメリカCBSにより生放送で単発テレビドラマ化。60分枠『クライマックス!』の1エピソードとして放送。ジェームズ・ボンド作品では初の映像化であった。ジェームズ・ボンドはアメリカ人の設定で、バリー・ネルソンが演じた。他にはピーター・ローレ、リンダ・クリスチャン、マイケル・ペイトらが出演。
- このテレビドラマ版は放送後、数十年間、キネコされたフィルムが散逸していた。発見されてからは1980年代のビデオソフト化、ターナー・ブロードキャスティング・システムでの放送がなされた(ただし、いずれも終盤部分が欠落)。その後、全編が再度ビデオソフトとして収録。2012年に完全版のDVDやブルーレイも発売された。なお、現在視聴できるキネコされたフィルムは白黒だが、1954年の放送時はカラーでオンエアされた。
- 1967年、コロムビア映画製作のパロディ映画。ボンド役はデヴィッド・ニーヴン。
出版編集
- イアン・フレミング(井上一夫訳)『カジノ・ロワイヤル 秘密情報部〇〇七号』(創元推理文庫)東京創元社、1963年6月、ISBN 4-488-13801-2
- イアン・フレミング(井上一夫訳)『007/カジノ・ロワイヤル』(創元推理文庫)東京創元社、新版2006年6月、ISBN 4-488-13806-3 [1]
- イアン・フレミング(白石朗訳)『007/カジノ・ロワイヤル 新訳版』(創元推理文庫)東京創元社、2019年8月
- Ian Fleming "Casino Royale" Penguin USA, 2006/10, ISBN 978-0-14-303766-8
2006年の映画編集
007 カジノ・ロワイヤル | |
---|---|
007 Casino Royale | |
監督 | マーティン・キャンベル |
脚本 |
ニール・パーヴィス ロバート・ウェイド ポール・ハギス |
原作 | イアン・フレミング |
製作 |
バーバラ・ブロッコリ マイケル・G・ウィルソン |
製作総指揮 |
アンソニー・ウェイ カラム・マクドゥガル |
出演者 |
ダニエル・クレイグ エヴァ・グリーン マッツ・ミケルセン ジャンカルロ・ジャンニーニ カテリーナ・ムリーノ シモン・アブカリアン イザック・ド・バンコレ イェスパー・クリステンセン イワナ・ミルセヴィッチ トビアス・メンジーズ クラウディオ・サンタマリア セバスチャン・フォーカン ジェフリー・ライト ジュディ・デンチ |
音楽 | デヴィッド・アーノルド |
主題歌 |
「You Know My Name」 クリス・コーネル |
撮影 | フィル・メヒュー |
編集 | スチュアート・ベアード |
配給 |
SPE MGM コロムビア映画 |
公開 |
2006年11月16日 2006年11月17日 2006年12月1日 |
上映時間 | 144分 |
製作国 |
イギリス アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | $150,000,000 |
興行収入 |
$167,445,960[2] |
前作 | 007 ダイ・アナザー・デイ |
次作 | 007 慰めの報酬 |
2006年のアメリカ イギリスの合作スパイアクション映画。007シリーズ第21作にして初のリブート作。同シリーズ17作目の『007 ゴールデンアイ』で監督をし、高い評価を得たマーティン・キャンベル監督の2度目の作品で、ジェームズ・ボンド役としてダニエル・クレイグが演じた初の作品であり、シリーズ初の「金髪のボンド」ということでも注目を集めた。
ストーリー編集
プラハでの内部汚職の根を絶ち、殺しのライセンス・00(ダブルオー)を得たボンドはマダガスカルで、ある爆弾密造人の監視をしていた。監視に気付いてアフリカ某国の大使館に逃げ込んだその男の携帯電話に残されたメッセージ「エリプシス」の糸を手繰り、ボンドはバハマのホテルへ向かう。そこでメッセージの送信者である武器商人ディミトリオスと、その妻ソランジュと接触したボンドは、マイアミ国際空港で披露される超大型旅客機の爆破計画を知る。この計画に絡んでいるとして、ボンドはMからル・シッフルという男の情報を得る。
ル・シッフルは世界各国のテロ組織から預かった資金をマネーロンダリングしつつ運用しており、今回は大型旅客機製造会社の株の空売りを仕込んだ上で、同社が製造した超大型旅客機をお披露目式で爆破して、巨額の利益を得ようとしていた。
旅客機の爆破はボンドによって阻止され、投機の失敗により巨額の金を失ったル・シッフルは、テロ組織に返済するための資金を稼ぐためにモンテネグロの「カジノ・ロワイヤル」にて開催されるポーカーゲームに参加する。ボンドもそのゲームに参加し、国の資金を使ってテロ資金稼ぎを阻止するよう命じられ、監視役として送られて来た金融活動部(FATF)のヴェスパー・リンドとともにモンテネグロへ向かう。
キャスト編集
役名 | 俳優 | 日本語吹替 | |
---|---|---|---|
ソフト版 | テレビ朝日版 | ||
ジェームズ・ボンド | ダニエル・クレイグ | 小杉十郎太 | 藤真秀 |
ヴェスパー・リンド | エヴァ・グリーン | 岡寛恵 | 冬馬由美 |
ル・シッフル | マッツ・ミケルセン | 中多和宏 | 藤原啓治 |
M | ジュディ・デンチ | 此島愛子 | 沢田敏子 |
フィリックス・ライター | ジェフリー・ライト | 辻親八 | 石田圭祐 |
ルネ・マティス | ジャンカルロ・ジャンニーニ | 菅生隆之 | 西村知道 |
ソランジュ・ディミトリオス | カテリーナ・ムリーノ | 北西純子 | 山像かおり |
アレックス・ディミトリオス | シモン・アブカリアン | いずみ尚 | 横島亘 |
スティーブン・オバンノ | イザック・ド・バンコレ | 江川央生 | 大友龍三郎 |
ミスター・ホワイト | イェスパー・クリステンセン | 伴藤武 | 大塚芳忠 |
ヴァレンカ | イワナ・ミルセヴィッチ | 東條加那子 | 北西純子 |
ヴィリアーズ | トビアス・メンジーズ | 川本克彦 | |
カルロス | クラウディオ・サンタマリア | 吹替なし | |
モロカ | セバスチャン・フォーカン | セリフなし | |
ドライデン | マルコム・シンクレア | 浦山迅 | 中博史 |
アドルフ・ゲットラー | リチャード・サメル | 勝沼紀義 | |
メンデル | ルドガー・ピストール | 塾一久 | 仲野裕 |
株式仲買人 | トム・シャドボン | をはり万造 | |
インファンテ | エイド | 朝倉栄介 | 乃村健次 |
マダム・ウー | ツァイ・チン | セリフなし | |
ディーラー | ダニエル・アンドレアス | 風間秀郎 | 宗矢樹頼 |
トーナメント責任者 | カーロス・リール | 金子達 | 堀川仁 |
オーシャンクラブの受付嬢 | クリスティナ・コール | 一木美名子 | 武田華 |
シュルツ | ユルゲン・タラッハ | 大西健晴 | かぬか光明 |
女性ディーラー | ジェシカ・ミラー | 川庄美雪 | 橘凜 |
医師 | ポール・バッターチャージー | 近藤広務 | 岡哲也 |
クリスピン・ボナム=カーター | 中村浩太郎 | 小松史法 | |
技術スタッフ | サイモン・コックス | 丸山壮史 | 林和良 |
レベッカ・ゲッシングス | 永吉ユカ | 亀岡真美 | |
ホテル・スプレンディドの受付嬢 | レジーナ・ガバジョーヴァ | 田中晶子 | |
その他 | かつまゆう 小松史法 |
||
演出 | 三好慶一郎 | 鍛治谷功 | |
翻訳 | 松崎広幸 | 前田美由紀 | |
調整 | オムニバス・ジャパン | 長井利親 | |
プロデューサー | 上田めぐみ 小久保聡 水谷圭 吉川大祐 山田兼司 | ||
制作 | 東北新社 | ブロードメディア | |
初回放送 | 2012年11月28日 『水曜プレミアシネマ』 21:00-23:24 |
2009年10月11日 『日曜洋画劇場』 21:00-23:39 |
- ソフト版:20世紀フォックス ホーム エンターテイメントから発売のDVD/BDに収録
- テレビ朝日版:キングレコードから発売の特別版DVDにカット部分を追加収録した『吹替完声版』を収録
※ 2019年12月18日発売の「007/ダニエル・クレイグ 4K ULTRA HD BOX <8枚組> Blu-Ray」の4K ULTRA HDディスクには2種類の吹き替え版を全て収録。[4]
スタッフ編集
- 監督 - マーティン・キャンベル
- 製作総指揮 - アンソニー・ウェイ、カラム・マクドゥガル
- 製作 - マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ
- 原作 - イアン・フレミング
- 脚本 - ニール・パーヴィス 、ロバート・ウェイド、ポール・ハギス
- 音楽 - デヴィッド・アーノルド
- 主題歌 - クリス・コーネル
- 撮影 - フィル・メヒュー
- 編集 - スチュアート・ベアード
- プロダクション・デザイン - ピーター・ラモント
作品解説編集
ティモシー・ダルトン主演第15作『007 リビング・デイライツ』以来のイアン・フレミングの小説が原作となっている。また、今作品のラストシーン(ボンドがホワイトを襲撃するシーン)と、次作『007 慰めの報酬』の冒頭シーン(ボンドがホワイトをカーチェイスの上、MI6本部まで搬送するシーン)がシンクロしており、次作『007 慰めの報酬』は本作の続編かつオリジナル脚本による作品となった[5]。本作は正確にはリメイクとなるが、1967年の旧作は原作を大幅に逸脱したパロディ作品だった。今回のリメイク作は原作(フレミングによる一連のボンド作品の第1作目)に比較的忠実になっている。
それまでのボンド映画とは別の、新しいボンド映画の1作目である。そのため、ボンドは1968年4月13日生まれに設定され、冷戦時代にボンドはスパイとして活躍していないなど、それまでの設定とは異なっている(それまでは、ショーン・コネリー~ロジャー・ムーアが演じたボンドは1920年代生まれで、ダルトン、ブロスナン、クレイグのボンドはそれぞれの俳優が誕生した年がボンドの産まれた年となった)。そのため、ジュディ・デンチ演じるMも性格の異なった新しいMとなっている。
当初、作品の舞台はシリーズ第1作『007 ドクター・ノオ』より以前になり、同作でショーン・コネリーとバーナード・リーの会話で語られていた、ボンドが駆け出しで一般任務に就いていた頃の話になると伝えられた。また、007の誕生秘話、ボンドとM、マネーペニー、Qとの初めての出会いが描かれるとも伝えられたが、紆余曲折の末この案は採用されず、殺しの許可証を得るまでのエピソードも大きく絡むことはなかった。
製作編集
企画編集
1967年に公開された第1作目の『カジノ・ロワイヤル』はコロムビア映画作品(現ソニー)。1990年代に入りソニーは『ネバーセイ・ネバーアゲイン』のプロデューサーと組んで別の007シリーズを開始しようとしたため、シリーズを配給してきたメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)、版権元のイオン・プロダクションとの法廷闘争に発展した[6]。しかし、その後にソニーがMGMを買収した[7][8]ことから、シリーズ続編製作の権利を得た。
キャスティング編集
前作までの配役で変わっていないのはM役のジュディ・デンチのみ。シリーズ従来のレギュラーキャストであるマネーペニーとQは今作には登場しない。フィリックス・ライターはシリーズ初の黒人となった[9]。
ボンド候補者になった俳優は、アレックス・オロックリン、ゴラン・ヴィシュニック、ヘンリー・カヴィル、ユアン・スチュワート、ジュリアン・マクマホン、ダグレイ・スコット、ジェームズ・ピュアフォイ、ヒュー・ジャックマン[10][11][12]、クライヴ・オーウェン[13]、ヨアン・グリフィズ、クリスチャン・ベール、エリック・バナ[14]、コリン・ファレル[15][16]、ジュード・ロウ[17]、オーランド・ブルーム、ジョシュ・ブローリン、ベン・アフレックなど。三代目ボンドを演じたロジャー・ムーアの長男ジョフリーも有力な候補者の一人だった[18]。当初、ユアン・マクレガーがボンド役にオファーされたが、タイプキャスト(同じような役柄を繰り返し演じることでイメージが固定されること)を恐れて断ったため、ダニエル・クレイグにオファーがされた。前作まで主役を演じたピアース・ブロスナンも意欲を示していた[19][20][21][22]が、作品中のジェームズ・ボンドの年齢設定が若く起用が見送られた[23][24]。
他のキャストではジェシカ・アルバがボンド・ガールに立候補し、ベン・キングスレー[25]、アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・トラボルタ、アラン・リックマンが悪役を熱望した。
爆弾密造人モロカを演じたセバスチャン・フォーカンはパルクールの創始者の一人であり、作中の追跡シーンでその体技を披露しているほか、ダニエル・クレイグも彼から技術を学んでいる[26]。
製作協力しているヴァージン・アトランティック航空のリチャード・ブランソン会長が、マイアミ国際空港のシーンにカメオ出演している。しかし2007年4月21日、ブリティッシュ・エアウェイズが、同社の機内上映版でブランソン会長の出演部分と、ヴァージン機の尾翼の写ったシーンをカットすると発表し、物議をかもした[27]。
撮影編集
撮影地はカルロヴィ・ヴァリ(チェコの温泉)、プラハ、バハマ、イタリア、イギリス。劇中、モンテネグロと表示されている場所は実際は上記のカルロヴィ・ヴァリで撮影されたものであり、モンテネグロの町並みとあまりにも違うためモンテネグロの観客からは失笑されたと言う。
2006年7月30日にカジノ・ロワイヤルの撮影が行われているロンドン郊外のパインウッド撮影所で火災が発生し、撮影に使われているセットなどが灰になってしまった。しかし、撮影はすでに終了し、セットは解体の最中だったので、作品には殆ど影響がない[28][29][30][31]。
音響編集
『ワールド・イズ・ノット・イナフ』、『ダイ・アナザー・デイ』と2作続けてドルビーデジタル・サラウンドEXで音響製作されていたが、本作以降は通常のドルビーデジタルに戻っている。
主題歌編集
当初、エイミー・ワインハウスが制作することが決まっていたが、ドラッグ摂取にて逮捕され外された。その後、サウンドガーデン、オーディオスレイヴのヴォーカリスト、クリス・コーネルが起用され、映画とは別タイトルの"You Know My Name"を歌った。イギリスのチャートでは、最高位7位と健闘したが、アメリカの「ビルボード」誌では、チャート入りを果たしたものの最高位81位だった。同サウンドトラック・アルバムは、チャート入りを果たせなかった。主題歌“You Know My Name”は、本作のサウンドトラック盤には収められていない[32]。これはシリーズ開始以来、初めてのことである[33]。
公開編集
興行収入は全世界で5億9420万ドルに達し、2002年の『007 ダイ・アナザー・デイ』の記録を破り、シリーズ最高記録を樹立。2012年に『007 スカイフォール』がその記録を更新した[34]。
批評家から高い評価を得ており、Rotten Tomatoesでの支持率は95%となった[35]。『シカゴ・サンタイムズ』のロジャー・イーバートは星4つの満点を付け、「私の45年間のボンド映画に関する批評に対して、私自身考えもしなかった答えを導き出した」と語っている[36]。
本作はシリーズで初めて中華人民共和国で上映許可が下り[37]、北京でプレミア上映も行われ、その後全国1000館以上において無修正で上映されることになった[38][39]。
日本でも劇場公開終了後も人気が高い作品であり、2018年4月29日、東京国際フォーラムでオーケストラ演奏付きの上映が予定されている[40]。
ホームメディア編集
2007年5月23日、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントより『007 カジノ・ロワイヤル』Blu-ray Disc版・DVD版・UMD版が発売された。Amazon.co.jpやビックカメラなどでは「プレイステーション3」60GB版(店舗により20GB版も対象)を購入すると、数量限定で『007 カジノ・ロワイヤル』Blu-ray Disc版が贈呈される(2007年5月23日現在)。
DVD / Blu-ray(ソニー・ピクチャーズ版)編集
- 007 カジノ・ロワイヤル デラックス・コレクターズ・エディション(DVD2枚組、2007年5月23日発売)
- 007 カジノ・ロワイヤル Blu-ray(1枚組、2007年5月23日発売)
- 007 カジノ・ロワイヤル スペシャル・エディション Blu-ray(2枚組、2008年12月19日発売)
- 007 カジノ・ロワイヤル スペシャル・エディション DVD(3枚組、2008年12月19日発売)
DVD / Blu-ray(20世紀フォックス ホーム エンターテイメント版編集
DVD(キングレコード版)編集
- 007 カジノ・ロワイヤル TV放送吹替初収録特別版(1枚組)
その他編集
- 恒例のガンバレル・シークエンスがシリーズ史上初めて冒頭に登場しない。中でも本作では演出としてオープニング前に使われる(以降の作品では『007 スカイフォール』までエンディング前に登場する)。
- 従来の作品では悪役の首領はボンドに殺害されるか、アクシデントで命を落としているが、今作品では悪の首領(ル・シッフル)は組織の上層部によって始末されている。
- 本作は、メインのボンドガールが死亡する3作目の作品。しかし、ヒロインが彼女自身の意志で自殺する点でほかの作品と異なっている(『女王陛下の007』ではブロフェルドに射殺され、『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』ではボンド自身が任務遂行のため射殺する)。
- ボンドカーとして新型のアストンマーティンのDBSが使用される。ただし、ダニエル・クレイグはオートマチック車しか運転できないということで6速マニュアル・ミッションをオートマチック・ミッションに乗せ換えた物を使用していた。その他、DB5(1964年製)やフォードの新型モンデオも登場する。他にも敵役や脇役のクルマとしてフォード傘下のジャガー・XJやランドローバー社のレンジローバー、起亜自動車のワゴン、フォード・エクスプローラーなどが登場するなど、フォードとのタイアップを生かし、全ての主要シーンに登場する車がフォードとその子会社のブランドに統一されている。
- 本作でカースタントを担当したベン・コリンズは、『007 慰めの報酬』と『007 スカイフォール』でも起用されている[41]。
- 劇中でボンドが着用する腕時計は、オメガ「シーマスター ダイバー 300M」(ピアーズ・ブロズナン時代に使われていた物の後継機種)と「シーマスター プラネット・オーシャン」である[42]。列車のシーンでヴェスパーがボンドの腕時計を指して「ロレックスの時計?」、「いやオメガだ」と言うシーンまである。撮影でダニエル・クレイグが実際に使った時計「シーマスター・プラネット・オーシャン」は、2007年4月にジュネーブ市内のホテルで行われたオークションで、15万6千ユーロで落札された[43]。
- ボンドが着用するスーツ・タキシードはイタリアのブリオーニ、シャツは英国のターンブル&アッサー、サングラスはイタリアのアイウェアメーカーのペルソール、靴は英国のジョン・ロブである。
- 香水はサンタ・マリア・ノヴェッラの柘榴の香りが登場した。
- シャンパンのボランジェとタイアップしており、ボンドは同社のグランダネを注文する。
- マイアミ国際空港のシーンで登場する新型機スカイフリートS570は、実際はブリティッシュ・エアウェイズの旅客機だったボーイング747-200(G-BDXJ)を改造したものである。2013年現在はイギリスのサリー州にあるTopGearテストトラックに駐機されている。
脚注編集
- ^ 東京創元社: 『007/カジノ・ロワイヤル』(イアン・フレミング)[1]。原作宣伝のページだが、ネタバレにならないよう原作と映画『カジノ・ロワイヤル』の特徴を述べ、原作読者に対する見どころの簡潔な説明。ヴェスパーが登場するシーンは原作と映画とではまったく異なるが、ヴェスパー注文のセリフを忠実に再現した映画の意図を暗示している。
- ^ a b c “Casino Royale (2006)”. Box Office Mojo. 2012年12月29日閲覧。
- ^ 2007年興行収入10億円以上番組 (PDF) - 日本映画製作者連盟
- ^ “007/ダニエル・クレイグ 4K ULTRA HD BOX <8枚組> Blu-Ray”. 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン. 2019年10月18日閲覧。
- ^ 次回作はフレミングの短編「Risico」を原作とする、との報道がイギリスの一部であったが、脚本担当のロバート・ウェイドが否定した。
- ^ “Sony Pictures, in an accord with MGM, drops its plan to produce new James Bond movies” (英語). ニューヨーク・タイムズ. (1999年3月30日) 2009年7月4日閲覧。
- ^ “ソニーがハリウッドの映画会社大手のMGMを買収”. 日経BPnet. (2004年9月15日) 2009年8月25日閲覧。
- ^ “メトロ・ゴールドウィン・メイヤー買収が完了”. ソニー (2005年4月11日). 2009年8月25日閲覧。
- ^ 番外編『ネバーセイ・ネバーアゲイン』を除く。
- ^ “H・ジャックマン、有力ボンド候補”. シネマトゥデイ. (2003年10月30日) 2009年8月5日閲覧。
- ^ “ヒュー・ジャックマン、ボンド役に興味”. シネマトゥデイ. (2004年11月8日) 2009年8月5日閲覧。
- ^ “ヒュー・ジャックマン、ボンド役を断る”. シネマトゥデイ. (2005年8月23日) 2009年8月5日閲覧。
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- ^ “エリック・バナ、ボンド役へ?”. シネマトゥデイ. (2004年8月4日) 2009年8月5日閲覧。
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- ^ “James Bond set goes up in flames”. Mail Online. (2006年7月30日) 2009年6月15日閲覧。
- ^ “James Bond film set in ruins after massive blaze” (英語). ガーディアン. (2006年7月31日) 2009年6月15日閲覧。
- ^ これはクリス・コーネル本人の意向によるものとされる。なお、彼自身のアルバム“Carry On”、および2008年にリリースされたシリーズ主題歌集“Best of Bond...James Bond”には収録。
- ^ 主題歌のなかった『007 ドクター・ノオ』『女王陛下の007』を除く。
- ^ James Bond Moviesat the Box Office - Box Office Mojo
- ^ “Casino Royale - Rotten Tomatoes”. AFPBB News 2012年12月29日閲覧。
- ^ “Casino Royale :: rogerebert.com :: Reviews”. シカゴ・サンタイムズ. (2007年8月17日) 2012年12月29日閲覧。
- ^ “007、中国政府から初の「上映のライセンス」獲得”. AFPBB News. (2006年11月17日) 2009年8月3日閲覧。
- ^ “中国初公開のボンド映画「007/カジノ・ロワイヤル」 記録を塗り替えるか?”. AFPBB News. (2007年1月23日) 2009年8月3日閲覧。
- ^ “映画「007/カジノ・ロワイヤル」がプレミアを迎える”. AFPBB News. (2007年1月30日) 2009年8月3日閲覧。
- ^ CASINO ROYALE IN CONCERT(2018年4月14日閲覧)
- ^ 『トップギア』の元覆面ドライバーが、映画『007』最新作のスタントドライバーに! - autoblog日本版・2012年5月15日
- ^ “ジェームズ・ボンド・ウォッチとはどのシーマスター・ウォッチなのでしょうか?”. オメガ. 2009年8月16日閲覧。
- ^ “ジェームズ・ボンド使用の「オメガ」、約2500万円で落札”. AFPBB News. (2007年4月17日) 2009年7月16日閲覧。