1,3-プロパンジチオール英語: 1,3-propanedithiol)は、化学式が HSCH2CH2CH2SH の化合物である。このジチオール有機合成の試薬として用いられる。この液体は市販されており、強烈な悪臭を有する。

1,3-プロパンジチオール
1,3-Propanedithiol molecule{{{画像alt1}}}
識別情報
CAS登録番号 109-80-8 チェック
PubChem 8013
ChemSpider 13848090 チェック
UNII R4LUJ82U52
EC番号 203-706-9
国連/北米番号 3336
ChEBI
ChEMBL CHEMBL1235209 ×
RTECS番号 TZ2585500
特性
化学式 C3H8S2
モル質量 108.23 g mol−1
外観 無色の液体
密度 1.078 g/cm3
融点

-79 °C, 194 K, -110 °F

沸点

169 °C, 442 K, 336 °F

への溶解度 わずか
溶媒への溶解度 すべての有機溶媒
屈折率 (nD) 1.539
構造
双極子モーメント 0 D
危険性
GHSピクトグラム 急性毒性(低毒性)
GHSシグナルワード 警告(WARNING)
Hフレーズ H302, H315, H319, H335
Pフレーズ P261, P264, P270, P271, P280, P301+312, P302+352, P304+340, P305+351+338, P312, P321, P330, P332+313, P337+313
主な危険性 悪臭
引火点 138 °C (280 °F; 411 K)
関連する物質
関連物質 1,2-エタンジチオール
1,2-プロパンジチオール
α-リポ酸
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

有機合成での利用

編集

1,3-プロパンジチオールは主に、ジチアンの可逆的形成によるアルデヒドケトンの保護に使用される[1]。典型的な反応は、ホルムアルデヒドからの1,3-ジチアンの生成である[2]。このジチアンの反応性は、極性変換の概念を示している。アルキル化はチオエーテル、例えば1,5-ジチアシクロオクタンを与える。

1,3-プロパンジチオールの不快臭は、同様の誘導体を生成する代替試薬の開発を促した[3]

1,3-プロパンジチオールはチアパミル英語版の合成にも使用される。

無機合成での利用

編集

1,3-プロパンジチオールは金属イオンと反応してキレート環を形成する。ドデカカルボニル三鉄英語版との反応によるプロパンジチオラートヘキサカルボニル二鉄の合成はその一例である[4]

Fe3(CO)12 + C3H6(SH)2 → Fe2(S2C3H6)(CO)6 + H2 + Fe(CO)5 + CO

安全性

編集

1,3-プロパンジチオールの悪臭は漂白剤で中和できる。

出典

編集
  1. ^ Conrow, R. E.; Le Huérou, Y. (2004). "1,3-Propanedithiol". Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis (Ed: L. Paquette). J. Wiley & Sons, New York. doi:10.1002/047084289X. hdl:10261/236866. ISBN 9780471936237
  2. ^ Corey, E. J.; Seebach, D. (1988). "1,3-Dithiane". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, vol. 6, p. 556
  3. ^ Liu, Q.; Che, G.; Yu, H.; Liu, Y.; Zhang, J.; Zhang, Q.; Dong, D. (2003). “The First Nonthiolic, Odorless 1,3-Propanedithiol Equivalent and Its Application in Thioacetalization”. Journal of Organic Chemistry 68 (23): 9148–9150. doi:10.1021/jo034702t. PMID 14604400. 
  4. ^ Winter, A.; Zsolnai, L.; Huttner, G. (1982). “Zweikernige und dreikernige Carbonyleisenkomplexe mit 1,2- und 1,3-Dithiolatobrückenliganden”. Zeitschrift für Naturforschung 37b: 1430–1436. doi:10.1515/znb-1982-1113. 

関連項目

編集