S2G (原子炉)
S2G は、アメリカ海軍の原子力艦艇向け発電・推進用原子炉であり、現在までにアメリカ海軍が艦艇に搭載した唯一の液体金属冷却炉である。
型式名のS2Gは以下のような意味である。
- S = 潜水艦用
- 2 = 設計担当メーカにおける炉心設計の世代
- G = 設計担当メーカ(ゼネラル・エレクトリック)
S2Gは原潜シーウルフの建造時に搭載された原子炉であり、冷却材としてナトリウムを用いるナトリウム冷却高速炉であった。シーウルフの建造プログラムでは、ノーチラスのときと同様に3基の原子炉が製作された。どちらも1基は陸上での研究・訓練用、もう1基は艦への搭載用、残りの1基は予備であった。S2Gの陸上用がS1Gである。
シーウルフは過熱水蒸気を用いるように設計されていたが、蒸気漏れなどの問題に悩まされ、しばしば過熱器をバイパスして運転されたため、平凡な性能しか発揮できなかった。このことと冷却材である液体ナトリウムの安全性の問題により、アメリカ海軍の標準型原子炉としては加圧水型炉が選択されることになった。シーウルフに搭載されていたS2Gは、ノーチラスの建造プログラムで製作された予備の原子炉(S2Wa)に交換された。
アメリカ原子力委員会の研究者らは、アメリカ海軍がナトリウム冷却炉で得た経験について以下のように述べている。
Although makeshift repairs permitted the Seawolf to complete her initial sea trials on reduced power in February 1957, Rickover had already decided to abandon the sodium-cooled reactor. Early in November 1956, he informed the Commission that he would take steps toward replacing the reactor in the Seawolf with a water-cooled plant similar to that in the Nautilus. The leaks in the Seawolf steam plant were an important factor in the decision but even more persuasive were the inherent limitations in sodium-cooled systems. In Rickover's words they were "expensive to build, complex to operate, susceptible to prolong shutdown as a result of even minor malfunctions, and difficult and time-consuming to repair."[1]
(仮訳)
1957年2月に、シーウルフの海上公試を完了させるため原子炉の出力を下げる応急措置が認可されたが、リッコーヴァー提督はこのとき既にナトリウム冷却炉を放棄することを決めていた。1956年11月初めに、原子力委員会はリッコーヴァー提督からシーウルフの原子炉をノーチラスと同じ軽水冷却炉に交換する措置を取るであろう、という通知を受けていた。プラントでの蒸気漏れの問題がこの意思決定の重要な要因であったが、ナトリウム冷却炉に固有の制約の方がより切実であった。リッコーヴァー提督の言葉によれば「製造費が高く、運用が複雑で、わずかな不具合でも停止時間が長く、修理は難しく時間がかかる」という問題である。
脚注
編集- ^ Frank von Hippel (February 2010). Fast Breeder Reactor Programs: History and Status. International Panel on Fissile Materials. pp. 90-91. ISBN 978-0-9819275-6-5 28 April 2014閲覧。