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原子力潜水艦

原子力を動力源として利用する潜水艦
アメリカ海軍のバージニア級
ロシア海軍のタイフーン型
イギリス海軍のアスチュート級

原子力潜水艦(げんしりょくせんすいかん)は、動力に原子炉を使用する潜水艦のことである。原潜(げんせん)と略されることもある。

以下では原子力潜水艦について説明するが、機密事項になっており不明な事柄も多い。

概要編集

原子力潜水艦の構造は、もう一方の代表的な潜水艦の推進動力方式であるディーゼルエンジンを備えた通常動力型潜水艦と基本的な構造の点では同様である。すなわち、いずれも、船体は涙滴型や葉巻型をしており、船体上部前寄りにセイル、その側面か船体前部側面に潜舵を持ち、艦尾のスクリュープロペラで推進する。

原子力潜水艦と通常動力型潜水艦との大きな違いは、スクリューを回転させるためのエネルギーの発生源である。原子力潜水艦では原子力すなわち核分裂により生成される熱エネルギーで水を沸かしてタービンを回すことでスクリューを回転させるのに対し、通常動力型潜水艦ではディーゼル機関を作動させてスクリューを回している。その違いを反映し、原子力潜水艦は通常型潜水艦より複雑な構造となっており、船体も大型となる。また、その運用を比較すると、通常型潜水艦が沿岸域での運用を比較的得意とするのに対し、原子力潜水艦はより広い外洋域での運用を得意とする。ただし、これらの運用は専門化している訳ではない。

潜水艦建造と原子力技術の双方を持つ国は限られており、日本オーストラリアなど技術はあっても原子力の軍事利用を禁止している国は導入できないため、原子力潜水艦保有国は2019年現在、アメリカ合衆国ロシアイギリスフランス中国インドの6ヶ国のみである。インドを除く5カ国が、攻撃型原子力潜水艦弾道ミサイル原子力潜水艦(=戦略ミサイル潜水艦)という2種の潜水艦を保有している。このうち攻撃型は、通常型潜水艦と同様に敵水上艦船や敵潜水艦を攻撃するため、場合によっては隠密裏に人員輸送を行なうために利用される。これに対し弾道ミサイル型は、通常型潜水艦では行なえない弾道ミサイルの発射プラットフォームとしての任務を担っている。このため、弾道ミサイル型は攻撃型より大きな船体となっている。

アメリカ海軍は21世紀に入って、弾道ミサイル搭載型を、巡航ミサイルの発射プラットフォームである巡航ミサイル潜水艦へと改造している。

歴史編集

 
ノーチラス、世界初の原子力潜水艦である

1940年代、ウラン核分裂反応の軍事利用に関する研究がなされた過程で、核エネルギーを利用した潜水艦の構想がナチス・ドイツ等で考えられていた。

戦後、ナチス・ドイツの原潜構想を知ったアメリカ海軍のハイマン・G・リッコーヴァー大佐は、その革新性に着目し、原潜開発を上層部に訴えた。当時の軍事的な核利用は爆弾が中心であり、巨大な原子力発電プラントを潜水艦に搭載することなど夢のまた夢と考えられていたため、リッコーヴァー大佐の提案はまともに取り上げられなかった。しかし、リッコーヴァー大佐がチェスター・ニミッツ提督に直訴までして実現を訴え続けた結果、最終的にはその熱意が認められ、合衆国海軍原子力部が設立され、リッコーヴァーはその長に就任した。大佐は熱心かつ強力に原潜開発を推進した[1]

こうして、リッコーヴァーの指揮の下、世界最初の原子力潜水艦「ノーチラス」(1954年竣工、1955年初航行)が開発された。このことからリッコーヴァーは「原潜の父」と呼ばれている。「ノーチラス」は世界ではじめて北極の氷の下を潜航して横断したことでも知られる。この後、アメリカ海軍は1950年代後半から、量産型の攻撃型原子力潜水艦として「スケート」級[2]に始まるSSNなどを建造・就役させた[3]

また、世界初の戦略ミサイル原潜は同じくアメリカが開発した「ジョージ・ワシントン」で1959年に竣工した。「ジョージ・ワシントン」は、アメリカ海軍のラボーン少将指揮の下で、搭載するポラリス・ミサイルを含めてわずか4年という短期間で開発された[4]

特徴編集

以下に原子力潜水艦の特徴を示す。

原子力による駆動力の生成編集

原子力潜水艦では、高温高圧の水蒸気を発生させる熱源として原子炉が利用され、その水蒸気によるエネルギーを利用してスクリューを回すための駆動力を得ている。その駆動力生成の形式は二つに大別される。

  1. 水蒸気により蒸気タービンを作動させ、その蒸気タービンにより(適当な減速装置を介在させて)スクリューを回転させる、という原子力機関を利用するもの。
  2. 水蒸気により駆動したタービンにより一旦発電し、その電力を電動機に供給してスクリューを回転させるもの。

いずれにしても、原子力潜水艦では推進動力の生成のために原子力を使用する。以下、特に断りのない限り主に前者について説明し、後者は原子力ターボ・エレクトリック方式として説明する。

原子力による主機関編集

 
加圧水型原子炉の構成概要

通常、原子炉の冷却系は安全のために複数設けられている。なお、原子炉自体の数は、原子力空母では1つの艦に原子炉を2基以上備えているのに対し、原子力潜水艦では1基、または多くても2基である。

原子力潜水艦の原子炉の形式は、現在までのところ一部例外を除いて加圧水型原子炉(PWR)のみである。別の代表的な原子炉形式である沸騰水型原子炉(BWR)が採用されたことはない。これは、潜水艦においては海洋状態や気象、艦の機動によって船体が揺れたり傾いたりする可能性があり、沸騰水型では冷却水が炉心を十分に冷やせない事態が懸念されるためである。なお、沸騰水型原子炉との比較の上で加圧水型原子炉では、いくつかの機械要素を追加しなくてはならない。例えば、蒸気発生器、加圧水を循環させる強力な循環ポンプおよびその高圧配管、ならびに2次冷却水のためのポンプおよび配管は加圧水型原子炉にのみ必要となる。このため、加圧水型原子炉では構造が複雑となるものの、利点も生じる。つまり、1次冷却水系統と2次冷却水系統が分離されているため、2次系にある蒸気タービンや復水器といった補機類の点検整備が放射線の危険から離れた位置で行なうことが可能となるのである。ただし、1次冷却水が何らかの形で漏洩した場合はこの限りではなく、特に蒸気発生器は複雑で脆弱な配管構造を持ち、放射能漏れ事故の原因となり易い。実際、初期の原子力潜水艦においては信頼性が低く、これらの構造がしばしば事故の原因となった。

原子力潜水艦中における原子炉は、鉛等が組み込まれた専用の耐圧隔壁で仕切られた原子炉区画の内部に設置されている。これは、人体に有害な放射線を遮蔽して船内の他の領域を安全に保つためである。原子炉区画は艦の後ろ寄りに設けられていることが多く、艦の主要な部分を占める前部とタービンや操舵機などのある後部を結ぶために、鉛などで防護された狭い通路が原子炉区画の上部や側面を貫いている[5]

長期間の連続潜航編集

原子炉の動作には酸素を必要としないために長期間の連続潜航が可能である。また、原子炉の核燃料棒の交換も数年から十数年に一度で済む。このため、ディーゼル燃料を消費する通常型潜水艦のような酸素補給のための潜航時間の制約や頻繁な燃料補給の手間は無い。蒸気タービン軸受減速機用の潤滑油は定期的な補給が必要となるが、他の燃料に比べ、その頻度は少ない。原子力潜水艦では、艦内の人員の呼吸に必要な酸素も豊富な電力で海水から電気分解によって作り出すことができ、呼吸により排出される二酸化炭素も化学的に吸着除去される。

これらの特徴から、原子力潜水艦では、機能維持および人員生存のための浮上は原理的には数か月間に一度で十分である。ただし、長期間の連続潜航が原理的に可能であっても、実際には長くても2か月程度の連続潜航しか行わない。これは、新鮮な食料の補給、艦外からの整備などが必要であること、および乗組員の心理面への影響が考慮されるためである。

アメリカ海軍では戦略ミサイル原潜のクルーは、ブルーとゴールドの2組を用意しており、ひとつのグループが70日間の航海を終えて帰港すると、約1ヶ月ほど艦の整備などを行い、その後もうひとつのグループが70日間の航海に出て行く。そして、航海を終えた方のグループは、しばしの休暇の後訓練をおこなう、というローテーションを繰り返す。

水中機動編集

原子力機関は最大出力でも燃料消費をそれほど考慮する必要が無いため、高速航走を長時間継続することで、大洋の辺地まで遠征することが可能である。溶融金属冷却原子炉を採用したロシアのアルファ型などは水中最高速度は40ノットを超えるといわれる。通常動力潜水艦でもアメリカ海軍の実験潜水艦「アルバコア」の様に30ノット以上を発揮することは不可能ではないが、費用便益比において現実的ではなく同様の機軸を実現した例は他にはない。

ただ、原子力潜水艦においても、タービン音や外部装置の引き起こす渦流などが大きくなり容易に探知されるので、高速での航行はそれほど頻繁に行われるものではない。しかしながら、十分な探知能力を持たない紛争地域への急行などでは、その機動性は絶大な力を発揮する。戦術運用では無く、定位置付近でのミサイル基地としての役割や通常パトロール的な敵艦の追尾などにも適している。

騒音問題編集

原子力潜水艦の欠点は、電動機推進時(エンジンは停止)のディーゼル・エレクトリック方式の潜水艦に比べ、静粛性が劣ることである。

原子力機関は他の動力に比べ頻繁な停止・再起動が難しいことから、一度起動した後は事故が発生しない限り定期検査まで起動させたまま出力を調整するにとどめるのが基本である。また作動中は冷却水循環ポンプを止めることが出来ないため、加圧水型原子炉ではこのポンプも大きな騒音発生源となっている。なお、アメリカ海軍の最新原子力潜水艦では、低出力時には冷却材自然循環のみによる運転が可能で、ポンプの運転が不要といわれている。

ギアド・タービン方式特有の弱点を克服するため、蒸気タービンで発電機を動かし、電動モーターでスクリューを駆動する原子力ターボ・エレクトリック方式による推進システムが採用された例がある。例えば、フランス海軍の原子力潜水艦はすべてこの方式を採用しており、他にもアメリカ海軍が2度(「タリビー」、「グレナード・P・リプスコム」)試用している。ただ、この方式は、蒸気タービン方式(ギアド・タービン方式)に比べて出力/重量比・効率・整備性が悪く、水中速力も劣る。この方式のメリットは、短時間であれば原子炉を低出力に維持した状態で内蔵の蓄電池によって航行する事も可能で、蓄電池を介して電力が供給されるので電動機の出力応答性も優れる。また、タービンと推進器を伝達軸で連結する必要がない為、水密区画に伝達軸を通す為の穴を開ける必要がないので、ダメージコントロールや機器配置の自由度に優れる一面もある。なお、近年では交流電動機やパワーエレクトロニクスの導入により整備性や効率、出力に関しても改善されつつある。

加えて、原子力潜水艦特有の問題ではないが、原子力によって大きな推進力が得られても、それに応じスクリュー・プロペラで生じる騒音も大きくなるという問題もある。また高速回転する蒸気タービンの軸出力で低回転のスクリューを回すため、減速装置として減速ギヤを介在させる必要があり、(ギアド・タービン方式)この減速ギヤが大きな騒音発生源となる。そのため、ポンプジェット方式による推進方式を採用する潜水艦も一部にある。ポンプジェットは高速性、静粛性において優れていたものの、推進効率に関しては従来のスクリューよりも劣る。このため、通常動力型潜水艦では実験的に使用された段階に留まっていたが、原子力潜水艦ではこの利点を生かすことができる。

他の問題点編集

原子炉としての問題点と同様であり、開発・建造・維持運用に非常に費用がかかり、用途廃止となったあとの原子炉・核燃料の処理の問題、メルトダウンや放射能漏れの危険性などがある。

アメリカ海軍では新造艦の原子炉に濃縮度20〜30%程度の高濃縮ウランを用いた燃料棒を使用することで燃料の寿命を艦の寿命と等しくし、実質的に燃料交換を不要にして、原子炉の維持費の大きな部分を占める燃料棒の交換費用を無くし稼動率の向上と放射性廃棄物の減少をはかっている。ただ、この高濃縮ウランの使用が原子力潜水艦の危険性をさらに高めたという指摘がある[6]

通常型潜水艦の特徴編集

原子力動力との対比のために通常動力での潜水艦(通常型潜水艦)の特徴を以下に示す。なお以下の通常型潜水艦にはAIP動力潜水艦は含まれないものとする。

通常型潜水艦は、水中では蓄電池を動力とし、この充電のために適宜、浅深度を航走してシュノーケルから空気を取り入れ、内燃機関であるディーゼルエンジンで発電機を動かさなければならない。通常型潜水艦は通常の潜水航行では充電したバッテリーとモーターしか使えないため、バッテリーを消耗すると潜水航行できなくなる(連続潜航時間の制約)。また、内燃機関の燃料が尽きればそれ以上の航海は不可能である(連続航海日数の制約)。通常型潜水艦の連続潜航時間および連続航海期間を延長する努力は長年にわたって行われてきたが、単に「潜ることができる艦 (submersible ship)」ではなく「潜ることが専門の艦」、すなわち潜航状態を常態とする艦が達成されたのは、原子力機関の長所を生かした原子力潜水艦が登場してからのことである。

潜航中の通常動力潜水艦の動力は蓄電池に蓄えられた電力のみで、これによる水中速力は最大でも20数ノットが限界であり、また、その速度で航行した場合には、短時間で蓄電池の電力を使い切ってしまう。

代表的な艦種編集

原子力潜水艦は、当初、第二次世界大戦までの潜水艦の延長線上において魚雷を用いた水上艦への攻撃を主な任務とした。だが、水中性能の向上にともなって、潜水艦を水上や空中から探知することが困難になり、脅威の度合いが増すにつれて、潜水艦を潜水艦で「狩る」水中戦の重要度が増すこととなった。こうして、遅くとも1960年代末以降には、潜水艦に対する最も有効な兵器は潜水艦であるとの認識が一般化した。このような艦種は攻撃型原子力潜水艦(SSN)と呼ばれることが多い。

その特性上、秘匿性が非常に高いことを活かし、核戦略の一端を担う海中ミサイル基地とでも言うべき艦種も登場した。こうした潜水艦を弾道ミサイル原子力潜水艦、戦略ミサイル原子力潜水艦(戦略原潜)などと呼ぶ。初期のポラリス原潜では、核弾頭1発を搭載した長射程の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)16基を装備していたが、MIRV技術の進歩により、現在では、1発あたり10 - 14発の核弾頭を搭載した多弾頭式の弾道ミサイルを16 - 24基搭載するまでになっている。弾道ミサイル原潜は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の固定サイロよりも発見され難いという特徴があるため、先制攻撃の手段としてではなく攻撃を受けたあとの反撃手段・第二次攻撃手段としての意味合いが強い。こうした潜水艦の登場は冷戦を背景にしたものである。アメリカ海軍のジョージ・ワシントン級(1番艦は1959年就役)を嚆矢として、まずアメリカ・ソ連、次いでイギリス・フランスが弾道ミサイル原潜を保有するようになると、攻撃型原子力潜水艦の重要な任務には、味方弾道ミサイル原潜の護衛、または敵方弾道ミサイル原潜の捜索・追尾・攻撃が加わった。

その後に、弾道ミサイル原潜を原型に対地攻撃や対艦攻撃用の巡航ミサイルを装備した型も造られ、このような艦種は巡航ミサイル原子力潜水艦(SSGN)などと呼ばれることとなった。これは、旧ソ連海軍において、仮想敵たるアメリカ海軍の空母戦闘群(現 空母打撃群)への対抗上の観点から特に大きく発展した。しかし、旧ソ連海軍は、母国から遠く離れた地上発進の航空機兵力においてアメリカに大きく劣るため、戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBN)とは別の種類の専用の巡航ミサイル原子力潜水艦(SSGN)を何十隻も建造し、3種類の原潜(SSN・SSGN・SSBN)を運用していた。

日本の原子力潜水艦保有の検討と議論編集

1958年、帝国海軍時代より通常動力潜水艦の建造実績を積み重ねてきた川崎重工業は、原子力潜水艦を建造した場合のコスト、必要な設備等について81ページのレポートをまとめ、後年これが明らかとなった。このレポートによれば、当時の試算では後の攻撃型原子力潜水艦に相当する艦1隻を建造するためには通常動力艦10隻分の資金を要すると結論されたと言う[7]

1960年3月11日、衆議院内閣委員会において当時の中曽根康弘科学技術庁長官は、アメリカが豊富な原子力推進艦艇の建造実績をもって商業原子力船「サヴァンナ」を建造していることと比較して「日本は原子力潜水艦なんかを作る力も意思もありません。従ってやはり商業採算ベースに合うということが非常に大事」と答弁しており、商業化によってコストの問題が解決されない限りは「(原子力潜水艦を建造する、しないという)政治力が働く余地がない」としていた[8]。作家の谷三郎は、1986年に出版された著書で「ソ連海軍力の伸長が続けば1990年代には必要性が高まる一方、日本には建造する能力があり、1950年代よりは通常動力艦と比べたコストを5倍程度まで低減させることが可能」であると主張していた[7]

1986年、海上自衛隊は原子力潜水艦の導入について具体的な検討に入っており、原潜導入の意向をアメリカ海軍にも非公式に打診し、昭和66年度(平成3年度)以降の中期防衛力整備計画に組み込もうとしていた。核ミサイルや核魚雷搭載型ではなく、非核の攻撃型原潜を検討対象としていた。当時、日本周辺にいる外国の潜水艦の大半が原潜という状況の中で、海自内には「作戦行動をとるには通常型ではもう限界」との声が強まっていた。さらに、海自は1986年の5月から6月にかけて中部太平洋で行われたリムパック86(環太平洋合同演習)に初めて「たかしお」を派遣したが、アメリカ海軍の原潜に比べて足が遅く「通常型の限界が明白になった」(海自幹部)との声が出ていた。このため、海上幕僚監部は原潜導入を検討すべき時に来ていると判断したという。原潜の導入にはアメリカの同意が重要となるため、海幕幹部がアメリカ海軍の幹部に原潜導入の意向を伝え、非公式に意見を求めたが、アメリカ海軍側は海自に対して具体的な反応を示さなかった。日本初の原子力船むつ」が膠着状態に陥っている中で、原潜の国内での開発は難しい状況にあるため海幕は、原子力推進の部分だけを外国から購入し、海自の潜水艦に組み入れる方法も検討していた。原子力の利用については、原子力基本法で「平和目的に限る」と定められているが、防衛庁は「推進力として原子力が普遍的になれば使っても同法に違反しない」との考え方をとっており、海幕は「原潜は世界的にも主流となっており、推進力として使うだけなら問題ないはず」と判断している。海自は昭和65年度(平成2年度)までの中期防ではイージス艦こんごう型護衛艦)を2隻導入することを計画しており、次期中期防で原潜の導入を盛り込みたい考えであった。ただし、防衛庁内局は「船舶の推進力として原子力が普遍的になったとはまだいえない。今は原潜導入を考えていない」として海幕の動きをけん制している。以前にも海自が原潜導入の検討を開始した際にも、国会で問題になり、原潜導入計画が中止になっていた。そのため、海幕は今回の原潜導入計画を表立って検討することを避けていた[9]。海幕による原潜導入計画について、毎日新聞の取材を受けた軍事アナリストの小川和久は、「海上自衛隊は(昭和)40年代ごろまでは原潜の技術的検討をしてきたが、最近は導入の実現可能性について検討を始めている。防大出身者が指導的立場に立ってから防衛面での独立志向が強まったためと思う。わが国が原潜を導入するには米国との関係と国民の核アレルギーの問題があるが、最大のネックは日米関係。海自は戦後ずっと米国の戦略に組み込まれ、対潜能力と掃海機能を充実してきた。しかし最近は米国内にも日本の主体性を一定程度認めようという機運ができつつある。原潜は対潜能力の一環でもあるので米国を説得しやすいのではないか。同日選での自民圧勝で防衛面でも独立国家の姿勢をとろうという意識が強まりつつあり、原潜導入の可能性はかなり高まってくると思う」と指摘していた[9]

2004年の防衛計画の大綱の策定時に、防衛庁の「防衛力の在り方検討会議」に於いて、中国が潜水艦戦力の近代化を急ピッチで進めていることに対抗するために、海上自衛隊の原子力潜水艦保有の可否が検討されていた。平成16年12月に、防衛大綱を策定するのに合わせ、防衛庁では平成13年9月に、「防衛力の在り方検討会議」が設置された。その際に「日本独自の原子力潜水艦保有の可能性」が検討された。検討対象となったのは、SLBMを搭載し「核抑止」を担う「戦略原潜」ではなく、艦船攻撃用の「攻撃型原潜」であり、日本が自主開発する案や、アメリカから導入する案が俎上に載せられていた。防衛庁幹部によると、「防衛力の在り方検討会議」では、原子力の平和利用を定めた原子力基本法との法的な整合性や、日本独自で潜水艦用の原子炉が開発できるかといった技術論に加え、運用面にも踏み込んだ議論が行われたとされる。16大綱では潜水艦は16隻態勢を維持することになったため、その上限内で原潜を保有した場合に海自の潜水艦戦力全体の警戒監視任務に与える影響や、乗員の確保策や訓練方法なども総合的に検討した結果、原潜の導入は時期尚早と判断したという[10]

2008年、自由民主党石破茂農林水産大臣が、大臣在任中に「日本は原子力潜水艦を持つべきである」との論文を発表していた[11]

運用国編集

アメリカ合衆国編集

就役中編集

SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)
SSGN(巡航ミサイル原子力潜水艦)
SSN(攻撃型原子力潜水艦)

退役編集

SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)
SSGN(巡航ミサイル原子力潜水艦)
SSN(攻撃型原子力潜水艦)
SSRN レーダー哨戒潜水艦

計画中編集

SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)

イギリス編集

就役中編集

SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)
SSN(攻撃型原子力潜水艦)

退役編集

SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)
SSN(攻撃型原子力潜水艦)

計画中編集

SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)

ソビエト連邦・ロシア連邦編集

就役中編集

SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)
SSGN(巡航ミサイル原子力潜水艦)
SSN(攻撃型原子力潜水艦)

退役編集

SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)
SSGN(巡航ミサイル原子力潜水艦)
SSN(攻撃型原子力潜水艦)

計画中編集

SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)
SSN(攻撃型原子力潜水艦)

フランス編集

就役中編集

SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)
SSN(攻撃型原子力潜水艦)

退役編集

SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)

計画中編集

SSN(攻撃型原子力潜水艦)

中華人民共和国編集

就役中編集

SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)
SSN(攻撃型原子力潜水艦)

計画中編集

SSN(攻撃型原子力潜水艦)

インド編集

就役中編集

SSBN(弾道ミサイル原子力潜水艦)
SSN(攻撃型原子力潜水艦)

脚注編集

  1. ^ アメリカ合衆国大統領ジミー・カーターは海軍在職時リッコーヴァーの指揮下原潜実用化に携わった。
  2. ^ 「スケート」は、潜水艦としては世界最初に北極点に達し、その氷を割って浮上したことで知られる。
  3. ^ 多田智彦、「圧倒的な強さを保持する米原潜戦力」『軍事研究』(株)ジャパン・ミリタリーレビュー、2017年5月号、208-221頁、ISSN 0533-6716
  4. ^ 世界初の戦略ミサイル原潜「ジョージ・ワシントン」に用いられたのが、マネジメント手法として今日でも知られるPERT(Program Evaluation and Review Technique)である。
  5. ^ 岩狭源清著『中国原潜技術&漢級侵犯事件』 軍事研究2005年4月号 ジャパン・ミリタリー・レビュー2005年4月1日発行 ISSN 0533-6716
  6. ^ 原子力資料情報室
  7. ^ a b 谷三郎 第5章『精鋭・日本自衛艦隊 : 世界が瞠目する“海軍"の実力』(世界大戦文庫スペシャル)サンケイ出版 1986年6月
  8. ^ 第034回国会 内閣委員会 第15号 昭和三十五年三月十一日(金曜日)
  9. ^ a b 原潜導入 海自が検討 核兵器抜き 推進力に限定 非公式に米に打診 「通常型、能力劣る」平和利用に抵触、論議必死 内局は消極的 毎日新聞 1986年(昭和61年)7月14日
  10. ^ 原潜保有 政府が検討 16年防衛大綱 中国に対抗も断念 産経新聞 2011年(平成23年)2月17日
  11. ^ 小林よしのり 『希望の国・日本 9人の政治家と真剣勝負』 飛鳥新社 p.114

関連項目編集

外部リンク編集