TNIK阻害薬
TNIK阻害薬(TNIKそがいやく)とは、リン酸化酵素の一つであるTNIKを阻害する医薬品群である。
結腸直腸癌の大多数 (>90%[1]) でWnt/β-cataninシグナル伝達が活性化されて癌化が開始される[2]。TNIKはWntシグナル経路の最下流に位置し[3]、大腸癌細胞の活性化・増殖維持に必須であるので[4]、TNIKを阻害することで大腸癌の進行を阻止できる可能性がある[2]。
大腸癌幹細胞は極めて高い増殖能力を持ち、細胞1個から腫瘍塊を形成することができる[5]。大腸癌のほとんどでWntシグナルが恒常的に活性化されており[6]、これにより癌幹細胞が生成されるので、TNIKを阻害するとWntシグナルが停止し、大腸癌を抑制可能となる[1]。
例
編集NCB-0846は、TNIK阻害薬であり、がん幹細胞阻害活性を有する[7]。NCB--0846はATM/Chk2 DNA損傷応答シグナル経路の活性化を介し、細胞周期をG2期で停止させ、アポトーシスを誘導する[3]。しかしNCB--0846は催吐作用を有するので、代替となる新たな化合物が探索されている[8]。
参考資料
編集- ^ a b “TNIKの阻害は大腸がん幹細胞を抑制する | おすすめのコンテンツ | Nature Communications | Nature Portfolio”. www.natureasia.com. 2021年5月30日閲覧。
- ^ a b Masuda, Mari; Sawa, Masaaki; Yamada, Tesshi (2015-12). “Therapeutic targets in the Wnt signaling pathway: Feasibility of targeting TNIK in colorectal cancer” (英語). Pharmacology & Therapeutics 156: 1-9. doi:10.1016/j.pharmthera.2015.10.009 .
- ^ a b 増田万里「TNIK 阻害剤のapoptosis 誘導機序の解明」『日本臨床プロテオゲノミクス研究会要旨集』第15回日本臨床プロテオゲノミクス研究会セッションID: 2、日本臨床プロテオゲノミクス研究会、2019年、10頁、CRID 1390564238091499264、doi:10.14905/jscpp.2019.0_10、ISSN 2434-2998、NAID 130007651882。
- ^ Shitashige, Miki; Satow, Reiko; Jigami, Takafumi; Aoki, Kazunori; Honda, Kazufumi; Shibata, Tatsuhiro; Ono, Masaya; Hirohashi, Setsuo et al. (2010-06-15). “Traf2- and Nck-Interacting Kinase Is Essential for Wnt Signaling and Colorectal Cancer Growth” (英語). Cancer Research 70 (12): 5024-5033. doi:10.1158/0008-5472.CAN-10-0306. ISSN 0008-5472 .
- ^ “大腸がん幹細胞を抑制する新規化合物を創出|国立がん研究センター”. www.ncc.go.jp. 2021年5月30日閲覧。
- ^ “大腸癌幹細胞を抑制する化合物(リン酸化酵素TNIK阻害剤)の前臨床試験進む”. crisp_bio. 2021年5月30日閲覧。
- ^ Masuda, Mari; Uno, Yuko; Ohbayashi, Naomi; Ohata, Hirokazu; Mimata, Ayako; Kukimoto-Niino, Mutsuko; Moriyama, Hideki; Kashimoto, Shigeki et al. (2016-08-26). “TNIK inhibition abrogates colorectal cancer stemness” (英語). Nature Communications 7 (1): 12586. doi:10.1038/ncomms12586. ISSN 2041-1723 .
- ^ “TNIK阻害による骨肉腫新規治療薬の探索,分化転換誘導の機序解明”. 国立情報学研究所. 2021年5月30日閲覧。