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'''キリ'''（桐、[[学名]]: {{Snamei|Paulownia tomentosa}}）は、[[シソ目]]の[[キリ科]] {{Sname||Paulowniaceae}}{{efn|キリは以前は、[[ゴマノハグサ科]]、あるいは[[ノウゼンカズラ科]]に分類していた。}}[[キリ属]]の[[落葉]][[広葉樹]]。別名、キリノキともよばれ{{sfn|山﨑誠子|2019|p=130}}、[[漢語]]の別名として白桐、泡桐、榮がある。初夏に特徴的な淡紫色の花を咲かせる花木で知られる。日本における経済的価値は高く、[[林業]]の特用樹種である<ref name="shinrin">{{cite web|title=樹病研究100年間のエポック|author=鈴木和夫（理事長）|work=[[日本森林学会]]100周年記念事業|url=https://www.forestry.jp/100th_anniv/sisanjubyo.html|website=www.forestry.jp|publisher=[[森林総合研究所]] |accessdate=2021-12-13}}</ref>。アメリカの国立公園では外来種として駆除の対象<ref name="nps" />。

属名は[[フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト|シーボルト]]が『[[日本植物誌]]』（[[1835年]]）において[[アンナ・パヴロヴナ]]に[[献名]]したもの。ただしシーボルトが与えた学名は''P. imperialis''であり、後に[[カール・ツンベルク|ツンベルク]]が[[1783年]]に[[ノウゼンカズラ科]][[ツリガネカズラ属]]として''Bignonia tomentosa''と命名していたことが判明して[[1841年]]に現在のものに改められた<ref>[{{cite web|url=http://www.geocities.jp/kbg_tree/frame-kiri.html|title= キリ]、|work=[[小石川植物園]]の樹木、植物名の由来|archiveurl=https://web.archive.org/web/20190422073110/http://warpal.sakura.ne.jp/kbg/index.html|archivedate=2019-04-22|accessdate=2021-12-12|url-status=dead}}</ref>。

キリと[[アオギリ]]はまったく異なる種である。中国で古くから両方に「桐」の字を用いているために混乱が生じている。『[[斉民要術]]』ではアオギリを「青桐」、キリを「白桐」と呼び分けている<ref>{{cite book|和書|author=賈思勰|title=斉民要術|volume=種槐柳楸梓梧柞第五十|url=https://archive.org/stream/06049859.cn#page/n68/mode/2up|page=68|website=archive.org}}</ref>。現在の中国ではアオギリを「梧桐」、キリを「泡桐」と呼ぶ。[[アブラギリ]]も葉の形が似ているだけでまったく異なるが、おなじく桐と呼ばれる。

[[英語]]の「princess tree」は、属名の Paulownia の語源である[[アンナ・パヴロヴナ]]が[[ロシア大公女]]であったことに基づく{{要出典|date=2021年12月}}。

中国の[[揚子江]]流域、韓国の[[鬱陵島]]、[[日本]]では大分・宮崎県境の山岳地帯に自生地があるが原産地は不明である<ref name="tuat" />。日本では特に東北地方<ref name=":1">{{Cite web|title=青森県の伝統工芸品|url=https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/shoko/chiikisangyo/aomori_dento-kogei_nanbusoukiritansu.html|website=青森県庁ホームページ|accessdate=2021-12-13|language=ja}}</ref>、関東北部、[[新潟県]]などにおいて植栽される<ref name="tuat" />。中でも[[福島県]]の会津桐や[[青森県]]<ref name=":1" />と[[岩手県]]の<ref>{{Cite journal|和書|title=岩手県に生育する桐の種類|date=1980年（昭和55年）8月|year=1980|journal=岩手県林業試験場成果報告|volume=13|url=http://www2.pref.iwate.jp/~hp1017/kenkyu/naibu/seiho/13-4.pdf|format=pdf|author=八重樫 良暉|publisher=岩手県|accessdate=2021-12-13}}</ref>の[[南部藩|南部]]桐などが有名である。本州中部以南ではテングス巣病の影響を受けやすい<ref name="tuat" />{{sfn|川上|1902|ws={{NCID|BA45271944}}}}。キリてんぐ巣病と腐らん病はキリの栽培に重要な影響を及ぼすとされ、病原はかつて[[炭疽菌]]と推定されたが日本で初めて1967年に[[ファイトプラズマ]]である<ref name="sinrin" />ことが解明された<ref>{{cite book|和書|title=クワ萎縮病,ジャガイモてんぐ巣病,Aster yellows感染ペチュニアならびにキリてんぐ巣病の罹病茎葉篩部に見出された[[マイコプラズマ|Mycoplasma]]様(あるいはPLT様)[[微生物]]について|author1=土居 養二|author2=寺中 理明|author3=与良 清|author4=明日山 秀文|doi=10.3186/jjphytopath.33.259}}別題『Mycoplasma- or PLT Group-like Microorganisms Found in the Phloem Elements of Plants Infected with Mulberry Dwarf, Potato Witches' Broom, Aster Yellows, or Paulownia Witches' Broom』。</ref>。このほか日本各地に野生化したものがみられる<ref name="tuat" />。

[[落葉]][[広葉樹]]{{sfn|山﨑誠子|2019|p=130}}。キリは成長すると高さ15[[メートル|m]] (m) 、幹の直径は50[[センチメートル|cm]] (cm) にもなる<ref name="tuat">{{Cite web |url=http://web.tuat.ac.jp/~nokotree/tree2/tree49.pdf|title=キリ|publisher=[[東京農工大学]]|accessdate=2019-12-18}}</ref>。丸く横広がりがあるの樹形になり{{sfn|山﨑誠子|2019|p=131}}、樹皮は灰白色<ref name="tuat" />。日当たりの良いところを好む性質で、短期間で早く生長する{{sfn|山﨑誠子|2020|p=131}}。

[[葉]]は長い[[葉柄]]がついて[[対生]]し<ref name="tuat" />、[[葉身]]は長さ10 - 20[[センチメートル|cm]] (cm) ほどあるの広卵形の大きな葉をつけである{{sfn|山﨑誠子|2019|p=130}}。[[葉縁]]は全縁または浅く3裂し、葉の表面は粘り気のある毛が密生する{{sfn|山﨑誠子|2019|p=130}}。

花期は5 - 6月{{sfn|山﨑誠子|2019|p=130}}。枝の先に大きな[[円錐花序]]をが直立につけてし、淡い[[紫色]]の[[花]]を円錐状につける<ref name="tuat" />{{sfn|山﨑誠子|2019|p=130}}。[[花冠]]は長さ5&nbsp;cmほどの筒状鐘形で、先は口唇状に裂ける{{sfn|山﨑誠子|2019|p=130}}。

翼（よく）のついた小さい[[種子]]は風でよく撒布され、発芽率が高く生長が早いため、随所に野生化した個体が見られる。[[アメリカ合衆国]]でも野生化して問題となっている<ref>{{citationcite book|url=https://www.nps.gov/plants/alien/fact/pato1.htm和書|title=Least Wanted: Princess Treeキリのタネの発芽に及ぼす散光の効果|publisherauthor1=Plant戸田 Conservation Alliance's Alien Plant Working Group良吉|date=2009-07-07}}</ref>。author2+

キリは古くから良質の[[木材]]として重宝されており、[[下駄]]や[[箪笥]]、[[箏]]（こと）、[[神楽]]面の材料となる。また、伝統的に神聖な木とみなされ、[[家紋]]<ref name=":0">{{Cite web|title=桐紋とは |work= きもの用語大全|url=http://www.so-bien.com/kimono/%E5%AE%B6%E7%B4%8B/%E6%A1%90%E7%B4%8B.html#more|website=www.so-bien.com|accessdate=2021-12-13}}</ref>や[[紋章]]の意匠に取り入れられてきた。

キリは日本国内でとれる木材としては最も軽い（比重0.27-0.30）<ref name="tuat" />。また材質は広葉樹や針葉樹の繊維構造とは異なる独立気泡構造をなし<ref name="wako">{{Cite web|title=桐たんす専門メーカー TOP {{!}}|url=https://www.tansu.com/|website=株式会社 総桐箪笥和光－福岡県－|accessdate=2021-12-13|language=ja-JP}}</ref>、湿気を通さず、割れや狂いが少ないという特徴がある<ref name="tuat" />。日本ではの建具、[[家具]]、器具、建具、箪笥や楽器の材料とされてきた<ref name="tuat" />。桐箪笥は高級家具の代名詞でが、かつて日本ヨーロッパやアメリカでは女の子が生まれる用材とキリを植え、結婚する際にはそしてのキリで箪笥特性を作り嫁入り道具にするという風習もあっ活かした。桐材利用は箏の材料にも用進んでいないられた。また、釣具の浮子にも利用された<ref name="tuatnps" />。

[[日本]]には白桐をもとに意匠化された[[紋章]]がいくつかある。それらを総称して[[桐紋]]<ref name=":0" />もしくは桐花紋という。中でも公的機関のシンボルとして多用されている'''五七の桐'''と一般的に[[家紋]]として広まっている'''五三の桐'''と呼ばれる紋が代表的であり[[十大家紋]]に挙げられるほど多く見られる。

古代中国では聖王を象徴する[[鳳凰]]が「梧桐の木に宿り竹の実を食う」とされ神聖視された<ref name="tuat" /><ref group="注釈">ただし中国本来の伝説では鳳凰の止まる木は[[アオギリ]]（[[中国語{{lang-zh-short|中]]：梧桐}}）という、キリ（中：{{lang-zh-short|泡桐|lonks=no}}）とはまったく異なる樹木である。</ref>。日本でも[[嵯峨天皇]]の頃から[[天皇]]の衣類の刺繍や染め抜きに用いられるなど、「[[菊花紋章|菊の御紋]]」に次ぐ高貴な[[紋章]]とされた。また[[中世]]以降は[[天下人]]たる[[武家]]が望んだ家紋でもあり、[[足利尊氏]]や[[豊臣秀吉]]などもこれを天皇から賜っている。このため五七の桐は「'''政権担当者の紋章'''」という認識が定着することになった。

近代以降も五七の桐は「[[内閣 (日本)|日本国政府]]の紋章」として[[大礼服]]や[[勲章 (日本)|勲章]]（[[桐花章]]、[[旭日章]]、[[瑞宝章]]）の意匠に取り入れられたり、菊花紋に準じる[[国章]]としてビサや[[パスポート]]などの書類や[[日本の金貨|金貨]]の装飾に使われたり、「[[内閣総理大臣]]の紋章」として[[総理大臣官邸|官邸]]の備品や総理の演台に取付けられるプレートに使われている。過去に存在した[[日本国有鉄道|国鉄]]の紋章も桐紋に蒸気機関車の動輪を組み合わせたものだった。

{{Reflist|30em}}

}} {{En icon}}

}} {{En icon}} [[アメリカ合衆国農務省]]

* {{NCBI|39353|''Paulownia tomentosa''}} {{En icon}}

* [http://paulownia.info/ paulownia Furniture : Kiri Tansu] {{ja icon}} paulownia.info