アストンマーティン・レーシング

アストンマーティン・レーシングは、自動車メーカーのアストンマーティンとエンジニアリンググループのプロドライブとのパートナーシップで、2004年に設立されたイギリスのレーシングチーム。当初は、アストンマーティン・DB9を大幅に改造したレーシングカーDBR9を使用して、アストンマーティンがスポーツカーレースに復帰することを目的として設立された。2005年のDBR9のデビュー以来、アストンマーティン・レーシングは、カスタマーが利用できるレーシングカーの製造も行い、ル・マン・プロトタイプ用のV型12気筒エンジンも開発した。

アストンマーティン・レーシング
国籍 イギリスの旗 イギリス
チーム代表 ポール・ハワース
活動期間 2004年 -
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2007年ル・マン24時間レースLMGT1クラスで優勝したDBR9

全ての車両はプロドライブの工場で製造されているが、アストンマーティンはレースカーの設計に不可欠な役割で、またレースカーの要素をロードカーに反映させている。

2020年12月、アストンマーティンはF1参戦に集中する為、FIA 世界耐久選手権(WEC)のヴァンテージ GTEでのワークス参戦を終了すると発表した。今後はカスタマーチームの支援を続けていく[1]

マシン 編集

アストンマーティン・レーシングは、主にGTカーを製造。チーム運営も行い、以前の最高峰クラスであるGT1クラスにDBR9で参戦。プライベーターにもカスタマー供給された。WECのLM-GTE(旧GT2クラス)へは、2012年から参戦。マシンはヴァンテージをベースにした、ヴァンテージ GTE。その後ヴァンテージは、GT3およびGT4クラスでも登場した。ヴァンテージ GT3が導入される前は、DBRS9英語版がGT3でレースに参戦していた。2017年11月、アストンマーティンは新型ヴァンテージを発表[2]。同日レーシングカーの2018年型、ヴァンテージ GTEを発表した[3]

またル・マン・プロトタイプローラ-アストンマーティン・B09/60AMR-Oneをプロドライブと開発し、レースに参戦した。

レース戦績 編集

 
2008年、DBR9ガルフカラー
 
2008年シルバーストンチャロウズ・レーシングシステムがチーム運営し、アストンマーティン・レーシングが支援した、ローラ・B08/60
 
2009年ALMS岡山国際サーキットローラ-アストンマーティン・B09/60

チームは、2005年のセブリング12時間レースでレースデビュー。最初のレースでいきなり初勝利をもたらし、コルベット・レーシングにも勝利した。その年の後半にRACツーリストトロフィーでも優勝した。

2006年、アメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)に参戦。プチ・ル・マンを含むシーズン5勝し、GT1クラス2位、3点差でコルベット・レーシングに敗れた。

2007年、ル・マン24時間レースでコルベット・レーシングを破り、1959年の総合優勝以来となる、LMGT1クラス優勝を収めた。

2008年、LMGT1クラスでル・マン連覇を達成した。またアストンマーティン・レーシングは、チャロウズ・レーシングシステム英語版と組んで、ル・マン・プロトタイプ1(LMP1)クラスへの参戦を開始し、DBR9の6リッターV型12気筒エンジンをローラ・B08/60に搭載し、ル・マンでは総合9位。ル・マン・シリーズはクラス5位だった。

2009年、チームはローラ-アストンマーティン・B09/60で、2009年のル・マン24時間レースのLMP1クラスへワークス参戦を発表した[4]。この参戦は、1959年のル・マンDBR1英語版での最後の総合優勝から50周年を記念し行われた。計3台で参戦。ル・マンでは、ヤン・チャロウズトーマス・エンゲシュテファン・ミュッケがドライブする、AMRイースタン・ヨーロッパの007号車がプジョーアウディのファクトリーに次ぐ4位でフィニッシュ、ガソリンエンジン車では最高位だった。またアンソニー・デビッドソンが午前中、GT1クラスのDBR9と衝突するまで、008号台は総合3位まで走っていた。その後の修理と、接触原因で5分間のストップアンドゴー・ペナルティにより、13位だった。009号車は252周でリタイアした。2009年のル・マン・シリーズ(LMS)では、初戦カタロニア1000kmで優勝した。第4戦ニュルブルクリンクでは1-2-3位で表彰台独占し、007号車のヤン・チャロウズ、トーマス・エンゲ、シュテファン・ミュッケがドライバーズタイトルを獲得。そしてAMR・イースタン・ヨーロッパがチームタイトルを獲得した。岡山国際サーキットで行われた、アジアン・ル・マン・シリーズにも参戦[5]。レース2で優勝を飾った。

2010年のル・マン24時間レース英語版も3台が参戦し、007号車と009号車がアストンマーティン・レーシングによって運営、008号車はフランスのレージングチーム、シグナチュール・チームによって運営された。008号車と009号車がトラブルを抱えてリタイアし、007号車が総合6位でフィニッシュした。

 
2011年ル・マン24時間レース、AMR-One

2011年、マシンをB09/60から、新型AMR-Oneに引き継がれた。初レースであるカステレ6時間では、予選ではLMP2マシンと同じ速さしかなく、メカニカルトラブルに悩まされ、たった96周しか走行できなかった。そのため2011年のル・マンまで、インターコンチネンタル・ル・マン・カップの参戦中止を決定。メカニカルトラブルを改善する為に、プライベートテストを続行した。そしてル・マン24時間レースに参戦したが、2台体制にもかかわらず、予選ではLMP2クラスの真ん中のタイムだった。レースでは009号車は、サルト・サーキットを2周しただけでリタイアし、007号車はその2周後の4周でリタイアした。この衝撃的な結果の後、チームは残りのシーズンの期間、旧型のB09/60でレースしたが、2011年の新規定に準拠するために大幅にダウングレードされた。

2012年、アストンマーティン・レーシングはヴァンテージ GTEでGTレースに復帰した。ル・マン24時間レースに、LMGTE-ProクラスとLMGTE-Amクラスに1台づつ計2台で参戦した。それぞれクラス3位とリタイヤだった。FIA 世界耐久選手権(WEC)にもヴァンテージ GTEで参戦し、LMGTE-Proクラスで2位を獲得した。

2013年、ル・マン24時間レースにアストンマーティン創立100周年を祝う為、LMGTE-Proクラスに3台の2013年仕様のヴァンテージ GTEと、LMGTE-Amクラスに2台の2012年仕様のヴァンテージ GTEで参戦した[6]。結果GTE-Proクラスでクラス3位となった。またWECにも参戦し[7]、元F1ドライバーのブルーノ・セナ[8]、GTE-Proクラスでフレデリック・マコヴィッキィとロバート・ベルともに参戦。メインのGTE-Proマシンには、AMRの常連であるダレン・ターナーシュテファン・ミュッケ。またピーター・ダンブレックがル・マン24時間レースとスパ・フランコルシャンに参戦した。結果GTE-Amクラスではドライバーズタイトルを獲得した。

 
2016年ル・マン24時間レースヴァンテージ GTE
 
2018年シルバーストンヴァンテージ AMR

2014年クリスチャン・ポールセンデイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソンが、LMGTE Amクラスでチーム、ドライバーズのダブルタイトルを獲得した。またル・マン24時間レースのLMGTE Amクラスでもクラス優勝を果たした。

2016年ニッキー・ティームマルコ・ソーレンセンが、GTクラスドライバーズタイトル、またLMGTE Proチームタイトルも獲得した。

2017年、LMGTE Amクラスでドライバーズ、チームのダブルタイトルを獲得した。ル・マン24時間レースでは、LMGTE Proクラスでダレン・ターナージョナサン・アダムダニエル・セラがクラス優勝を果たした。

2018-19年、LMGTE Proクラスに2台の新型ヴァンテージ GTEで参戦した。

2019-20年、LMGTE Proクラスでドライバーズ、マニュファクチャラーのダブルタイトルを獲得した。ル・マン24時間レースでは、LMGTE Proクラスでクラス優勝、3位を獲得した。

ル・マン24時間レース 編集

エントラント No 使用車両 ドライバー クラス 周回数 Pos. Class Pos.
2005年   アストンマーティン・レーシング 58 アストンマーティン・DBR9 GT1 327 DNF DNF
59 アストンマーティン・DBR9 GT1 333 9位 3位
2006年   アストンマーティン・レーシング 007 アストンマーティン・DBR9 GT1 350 6位 2位
009 アストンマーティン・DBR9 GT1 342 10位 5位
2007年   アストンマーティン・レーシング 007 アストンマーティン・DBR9 GT1 337 9位 4位
009 アストンマーティン・DBR9 GT1 343 5位 1位
  アストンマーティン・レーシング・ラルブル 006 アストンマーティン・DBR9 GT1 272 29位 13位
008 アストンマーティン・DBR9 GT1 341 7位 3位
  アストンマーティン・レーシング BMS 100 アストンマーティン・DBR9 GT1 336 11位 6位
2008年
10 ローラ・B08/60-アストンマーティン LMP1 354 9位 9位
  アストンマーティン・レーシング 007 アストンマーティン・DBR9 GT1 339 16位 4位
009 アストンマーティン・DBR9 GT1 344 13位 1位
2009年   AMR イースト ヨーロッパ 007 ローラ-アストンマーティン・B09/60 LMP1 373 4位 4位
  アストンマーティン・レーシング 008 ローラ-アストンマーティン・B09/60 LMP1 342 13位 11位
009 ローラ-アストンマーティン・B09/60 LMP1 252 DNF DNF
2010年   アストンマーティン・レーシング 007 ローラ-アストンマーティン・B09/60 LMP1 365 6位 5位
009 ローラ-アストンマーティン・B09/60 LMP1 368 DNF DNF
  シグナテック・チーム 008 ローラ-アストンマーティン・B09/60 LMP1 302 DNF DNF
  ヤング ドライバー AMR 52 アストンマーティン・DBR9 LMGT1 311 22位 3位
2011年   アストンマーティン・レーシング 007 アストンマーティン・AMR-One LMP1 4 DNF DNF
009 アストンマーティン・AMR-One LMP1 2 DNF DNF
2012年   アストンマーティン・レーシング 97 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Pro 332 19位 3位
99 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Am 31 DNF DNF
2013年   アストンマーティン・レーシング 95 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Am 2 DNF DNF
96 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Am 301 30th 6th
97 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Pro 314 17位 3位
98 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Pro 221 DNF DNF
99 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Pro 248 DNF DNF
2014   アストンマーティン・レーシング 95 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Am 334 19位 1位
97 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Pro 310 35位 6位
98 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Am 329 26位 6位
99 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Pro - WD WD
2015年   アストンマーティン・レーシング 95 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Pro 330 27位 4位
96 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Am 187 DNF DNF
97 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Pro 110 DNF DNF
98 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Am 321 NC NC
  アストンマーティン・レーシング V8 99 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Pro 320 34位 6位
2016年   アストンマーティン・レーシング 95 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Pro 338 23位 5位
97 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Pro 337 24th 6th
98 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Am 281 DNF DNF
99 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Am 318 36位 7位
2017年   アストンマーティン・レーシング 95 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Pro 334 26位 9位
97 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Pro 340 18位 1位
98 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Am 329 37位 8位
2018年   アストンマーティン・レーシング 95 アストンマーティン・ヴァンテージ AMR LMGTE Pro 339 23位 8位
97 アストンマーティン・ヴァンテージ AMR LMGTE Pro 327 37位 13位
98 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Am 92 DNF DNF
2019年   アストンマーティン・レーシング 95 アストンマーティン・ヴァンテージ AMR LMGTE Pro 132 DNF DNF
97 アストンマーティン・ヴァンテージ AMR LMGTE Pro 325 44位 12位
98 アストンマーティン・ヴァンテージ GTE LMGTE Am 87 DNF DNF
2020年   アストンマーティン・レーシング 95 アストンマーティン・ヴァンテージ AMR LMGTE Pro 343 22位 3位
97 アストンマーティン・ヴァンテージ AMR LMGTE Pro 346 20位 1位
98 アストンマーティン・ヴァンテージ AMR LMGTE Am 333 33位 8位

脚注 編集

外部リンク 編集